Chapter15 昆明空港

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 クンミン空港で給油を受けたエアシステム8517は最終地ネパールのカトマンズに向けて出発するため、現在はスポット58に待機して準備に忙殺されていた。操縦室のスピーカーから中国語と英語でクンミン空港の空港情報(ATIS)が聞こえている。

クンミン空港ATIS
クンミン・ウージャーパー・エアポート.インフォメーションX.0700ユニバーサルタイム コールディネーション.ILSアプローチ ランウエイ21L トランディション・アルティティード2300メーターズ トランジッション・レベル 2600メーターズ ウインド 230 ディグリーズ ウインドスピード 02メーター パー セカンド ビジビリティ アバーブ 10キロメーターズ フュー 690メーターズ ブロークン 1290メーターズ テンパラチャー 12 センチグレート デューポイント 07 センチグレート QNH1019 QSB0810 アドバイス オン イニシャルコンタクト ユー ハブ インフォメーション エクスレイX
(クンミン ウージャーパー空港です。インフォメーションX。標準時07時00の空港情報をお知らせします。進入はILSアプローチで滑走路は21L(レフト)を使用、トランジション高度は2300メーター、トランジッション・レベルは2600メーターです。風は230度方向から風速2メーター、視界は10キロです。ビューは690メーター、ブロークン 1290メーター 気温は12度、露点7度、気圧1019ミリバール、QSBは0810です。この空港情報Xを聞いた上で連絡して下さい)

皆様、お待たせいたしました。最終目的地カトマンズに向けて出発いたします。離陸後2時間50分を予定しております

 牧機長が地上に待機している整備員にインターホンで指示を出した。
グランド コックピット スタートエンジン 2&1
 エンジンが轟音を上げて回り始めた。昆明空港からカトマンズへの飛行は昆明まで副操縦士役だった牧機長がパイロット オブ コマンドで操縦を担当し左席へ。仙波機長が副操縦士役で交信を担当し右席に座っている。
 エンジンが順調に立ち上がると仙波機長は滑走路へ向かうべく地上走行の許可を管制塔に求めた。

クンミン・グランド エアシステム8517 リクエスト タクシー
(クンミン地上管制へ。エアシステム8517です。地上走行(TAXI)の許可を願います)
エアシステム8517 クリア タクシー トウ ランウエイ21 ヴィア アルファ ヴィア エコー
(エアシステム8517へ。地上走行を許可します。滑走路21へAポイント、Eポイントを経由して地上走行して下さい)
タクシー ランウエイ21 エコー アルファ
はい。領解しました」と牧機長も滑走路までの道順を確認すると、ふたりのパイロットは窓からそれぞれのサイドの地上障害物の有無をチェックした。
ライトサイド クリア」(右サイドOKです)
レフトサイド クリア」(左サイドOKです)
先にフラップ15」(フラップを離陸位置15度にして下さい)と牧機長。
エコー(E)はこれですね」とタクシールートのエコー(E)ポイントの位置を空港の地図で確認して仙波機長が言った。そして機体の両サイドをもう一度チエックすると牧機長はスロットルを上げた。
 エンジンのパワーが増して機体がゆっくりとスポットを離れる。標準時で7時45分。現地時間の16時45分だ。

 離着陸機が少ないこの時間のクンミン空港はガランとして広く灰色にくすんでいる。
 誘導路に向かうエアシステム8517の横を数人の整備員たちが自転車に乗って手を降るのが見える。空港のランプの中を自転車で往き来する風景は中国独特のものだろう。すべてがのんびりして、まもなく訪れる黄昏のように穏やかである。エアシステム8517は滑走路に並行した誘導路を時速40キロほどスピードで進んだ。

フラップス15
 フラップを離陸位置まで降ろすとふたりのパイロットはブレーキと操縦装置のチェックを始めた。
ブレーキ・チェック
プレッシャー ゼロ
コントロール チェック」(操縦装置の点検)
エルロン、エレベータ…チェック
 コックピットのスピーカーから着陸する中国国内線の航空機のボイスが響いている。
ラダー レフト。ニュートラル
ゼロ
 昇降柁や補助翼などが次々に点検されていく。
ライト
ニュートラル
コントロール チェック ノーマル
クンミン地上管制官がエアシステム8517を呼んだ。
エアシステム8517 コピー クリアランス
(エアシステム8517ヘ。飛行計画を承認します。コピーして下さい)
 クンミン地上管制官がエアシステム8517を呼んだ。

 フライトプランの承認の交信である。普通ではエンジン始動の前にクリアランス交信をするのだが、ここでは滑走路への地上走行中に行われる。但し、昆明空港では中国とミャンマーの国境までの飛行許可しか出ない。離陸したのちミャンマーの上空通過許可を確認の上、再度、カトマンズまでのクリアランスがでることになっている。何しろ、ミャンマーは軍事国家である。突然の内乱勃発で上空通過が出来なくなる可能性だって起こりうる。ミャンマーの上空通過許可が降りない場合は、ここ、昆明空港に引き返さなければならない。チャーターフライトならではのスリリングな飛行である。

エアシステム8517 コピー クリアランス
(エアシステム8517ヘ。飛行計画を承認します。コピーして下さい)
エアシステム8517 ゴー ア ヘッド プリーズ
(エアシステム8517です。どうぞお願いします)

武田一男

A300-600コックピット「ヒマラヤ飛行」/全31回
The Voice Recording of The Airbus A300-600 Cockpit
福岡〜昆明〜カトマンズ フライトドキュメント/録音&解説 武田一男/©Director’s House

【著作について】「ヒマラヤ飛行」の文章、及び音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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