Chapter16 昆明空港離陸 ミャンマー上空へ

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 昆明空港の管制官がクリアランス交信を始めた。

ATCクリアランス エアシステム8517 トウ ディスティネーション バイ フライトプラン・ルート フライトレベル 310 アフター デパーチャー フォロー ゴルフ(G) マイク(M) アルフア(A) 2 デルタ(D) ディパーチャー クライム トウ 6,000メーターズ スクォーク6405
(エアシステム8517へ。巡航高度31,000フィートで貴機の目的地までの飛行計画を承認します。離陸後、GMA2D出発方式で6,000メーターまで上昇して下さい。貴機のレーダー認識番号は6405です)
OK」と交信を聞いていた牧機長が承認の親指を立てると仙波機長がフライトプランのクリアランスと出発方式を復誦した。
エアシステム8517 クリア デスティネーション フライトプラン・ルート メインテイン 310 GMA 2 D ディパーチャー イニシャル クライム 6,000メーターズ スクォーク6405
ザッツ ライト」と管制官は無線を切った。
6,000 197」高度6,000メーター、19,700フィートを確認する。
197
310とくるんですね」と仙波機長が驚く。
ええ、面白いですね」と牧機長が笑った。中国の管制官が高度をフィート表示したことが珍しく聞こえたのだ。中国では飛行高度はすべてメーター表示だが、中国から国外に出発する航空機の飛行プランにはフィート表示を使う。
 滑走路21に向かって地上走行しているエアシステム8517を地上管制官が再び呼んだ。管制エリアが離陸を担当するタワー・コントロールに変わるのだ。
エアシステム8517 コンタクト・タワー 118.1 バイバイ
(エアシステム8517へ。以後は管制タワー 118.1メガヘルツに連絡して下さい)
エアシステム8517 スイッチ ザ タワー 118.1 サンキュー グッディ

 ここでエアシステム8517の今後のフライトプランを確認しておこう。

 JAS8517 JA8563 ZPPPーVNKT/VGZR

 JAS8517は便名でエアシステム8517便。JA8563は使用飛行機の機体登録番号。以上の飛行機はZPPP(中国クンミン空港を表わす4レター・コード)からVNKT(ネパール・カトマンズ)空港へ向かう飛行計画という意味である。そして代替空港はVGZR(バングラディッシュ・ダッカ空港)であると明記されている。そして3行目には飛行ルートの記載がある。

 FLT RT; ZPPP GMA2D GMA A599 LSO A201 RAJ G463 ROMEO VNKT

 FLT RT(フライトルート)はZPPP(クンミン空港)をGMA2D出発方式で離陸し、GMA(中国とミャンマー国境のウエイポイント)を通過する。GMAより飛行航路A(アンバー)599でLSO(ミャンマーの西にあるウエイポイント)に向かう。 LSOで飛行航路A201に乗りRAJ(インドの東にあるウエイポイント)まで飛び、RAJから航空路G463でバングラディシュ上空を通過後、再びインド上空に。そしてガンジス川を飛び越えてネパールのROMEO(ネパールの入り口にあるウエイポイント)まで、そこから最終目的地VNKT(カトマンズ)に着陸する。
 そしてプラン・サマリーの記述には次のように書かれている。

PLAN SUMMARY
 ALT TAS W/F  GSーKT/KM
×310 449 MO46 403 /0746

 TIME/BOF   DST
 0250/33,000/1121

 この記述は、まずALT(巡航高度)は31,000フィートが最適で、その高度で飛行した場合の各状態が次に連なる。
 TAS(エアースピード)は449ノットであるが、W/F(ウインドファクター)MO46(迎え風の平均が46ノット)なので、GS(グランドスピード)は時速403ノット(KT)/キロ表示では時速746キロとなる。
 目的地までのTIME(飛行時間)は2時間50分で、BOF(消費燃料)は33,000ポンド。DST(クンミンからカトマンズまでの距離)は1121マイルである。

ディパーチャーは…124.55ですか」と出発管制の周波数を確認した。
そうです」と牧機長。ここクンミン空港の離着陸を担当するタワー・コントロール管制の周波数は118.1メガヘルツ。そして離陸して上昇するエアシステム8517を誘導するレーダー出発管制の周波数が124.55メガヘルツである。
 仙波機長は二つの周波数を二台のVHF無線機にそれぞれセットした。

キャビンのレディはOKですね。それではビフォア テイクオフ チェックリストを先にやって下さい
牧機長は客室の準備を確かめて仙波機長に離陸前の計器点検を依頼した。
ビフォー テイクオフ えー、フラップ」(離陸前計器点検。えー、下げ翼)
15」(15度、離陸位置)
フライト・コントロール」(操縦装置)
チェック
ビフォア テイクオフ・チェックリスト コンプリート
(離陸前の計器点検は完了です)
6,000 197…ね。スクォークは6405 チェック&セット レディ
(離陸して6,000メートルまで上昇、機首方位は197度、レーダー認識番号は6405、確認してセット済です)
 牧機長が離陸準備の確認をし、仙波機長がタワー・コントロールに報告をする。
クンミン・タワー エアシステム8517 ウイズ ユー レディ
(クンミン・タワーへ。こちらエアシステム8517です。離陸準備完了しています)
8517 クリアー トウ ラインアップ
(8517へ滑走路のラインに入ってエンジンアップして下さい)
ラジャ クリア ラインアップ
OK クリア ラインアップ チェックリストをやって下さい。全部通しでやって結構ですから」と牧機長は最後の点検を指示し、ゆっくりと機体を滑走路に入れた。
はい
ファイナル クリア」とすべての準備を確認した牧機長は客室へチャイムを2点打して離陸を知らせる。客室ではすぐにチーフパーサーが離陸のアナウンスを始めた。
皆様、お待たせいたしました。まもなく離陸いたします。お席のベルトをお確かめ下さい
 エアシステム8517は滑走路21へ入った。前方の空を薄い灰色の雲が覆い青空は見えない。
ビフォア テイクオフ チェックリストはコンプリートですね」と仙波機長が自分の座る右席の準備が整っていることを知らせる。
ライトサイド・クリア
はい。ファイナル・クリア
 そのとき管制官が離陸クリアランスをマイクに乗せた。
エアシステム8517 アフター テイクオフ ゴルフ マイク アルファ 2 デルタ ディパーチャー イニシアルクライム トウ 6,000メーターズ ゼン クリア テイクオフ ウインド 240 ディグリー 4メーターズ
(エアシステム8517へ。離陸後はGMA2D出発方式で6,000メートルまで上昇して下さい。離陸を許可します。滑走路上の風は240度から4メーターです)
エアシステム8517 アフター デパーチャー フォロー GMA2Dディパーチャー イニシアルクライム 6,000メーターズ クリア テイクオフ ランウエイ21 サンキュ」仙波機長が管制クリアランスを確認する。
OK じゃあ、ライト、お願いします
 ライトのスイッチが入り、強力な白色光が灰色の滑走路を照らした。
さて、じゃあ、いきましょう」と牧機長がスラストレバーに手を置いて力強く叫ぶ。
テイクオフ!
 エンジンが一気にパワーを上げた。
スラストSRS ヘディング
 ぐんぐん加速が加わる。
100(ノット)」仙波機長がスピードメーターを読み上げた。
チェック
 主翼が風を受ける。
V1、VR、V2」牧機長が操縦悍を引く。
ポジティブ」浮上完了。
ギア アップ」(車輪上げ)
ギア アップ
 ゆっくりと音を立てて車輪が上がる。右旋回して機首方向を244度にしてエアシステム8517は南に向かって上昇していった。

武田一男

A300-600コックピット「ヒマラヤ飛行」/全31回
The Voice Recording of The Airbus A300-600 Cockpit
福岡〜昆明〜カトマンズ フライトドキュメント/録音&解説 武田一男/©Director’s House

【著作について】「ヒマラヤ飛行」の文章、及び音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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    • 匿名
    • 2016年 8月9日 2:00pm

    本日はANA125便東京行きをご利用いただきましてありがとうございます。

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