Chapter17 昆明空港を上昇 機首244度でミャンマー国境へ

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 昆明空港を離陸して方位244度で南行しているエアシステム8517は離陸後から雲の中に入り、幾分、明るさを増したものの所々にまだ黒い雨雲が群れて機体がかなり激しく揺れている。まもなく指定高度6,000メートルに達しようとしていた。そのときクンミン・コントロールから交信が入った。

クンミン・コントロール エアシステム8517 メインテイン レベル 6,000メーターズ」(クンミン・コントロールへ。こちらエアシステム8517です。高度6,000メーターに達しました)
ラジャ エアシステム8517 リービング 6,000メーターズ アンド コンティニュー クライム トウ 310 アット フライトレベル 310 レポート リーチング
(領解。エアシステム8517へ。引き続き6,000メーターから31,000フィートへ上昇して下さい。31,000フィートへ到達したら報告願います)
サンキュー エアシステム8517 クライム 310 リポート リーチング
(ありがとうございます。31,000フィートへ上昇し、到達したらレポートします)
 再びクンミン・コントロールから交信が入った。
エアシステム8517 リクエスト エスティメート(ETA) ゴルフ(G) マイク(M)アルファ(A) アンド リンソー」(エアシステム8517へ。GMAとリンソー(LINSO)の予定通過時間を知らせて下さい)

 この後、エアシステム8517は飛行ルートA(アンバー)599でウエイポイント、GMAを通過し、国境を超えてミャンマーにあるリンソーへ向かうことになっている。
 中国の国境GMAまで約18分。GMAからリンソーまで4分の所要時間である。

▼クンミン離陸後GMAまでのチャート
クンミン離陸後GMAまでのチャート

エアシステム8517 エスティメーティング GMA 39 リンソー 43
(エアシステム8517です。GMAには(午後8時標準時)39分。リンソーには43分の到着予定です)
GMA イズ 39 カンボー?
(GMAには39分ですか?)
ア ファーム エアシステム8517
(そうです。エアシステム8517)
ラジャ レポート リーチング 310
(領解。31,000フィートに到達したら報告して下さい)
ラジャ レポート リーチング 310 エアシステム8517
 仙波機長は31,000フィート到達後報告することを復誦して無線を切った。
OK」と牧機長が確認する。
 雲が切れると再び、厚い雲層に入る。灰色をした大きな瘤の間を縫うようにエアシステム8517は上昇を続けていた。
ちょっと、今の時点でリクエスト 350を言ってくれますか?

 フライトプランではミャンマーから東インドへ入る時点で35,000フィートの巡航予定が組まれていたが、決して最新の設備とはいえないミャンマーの管制通信設備の状態を考えると高高度の方が電波の入りが良いし、コンタクトが取りやすいという理由から牧機長はこのまま35,000フィートまで一気に上昇しようと考えたのである。

領解」と仙波機長が再び、マイクを取った。
クンミン・コントロール エアシステム8517 リクエスティング
(クンミン・コントロールへ。こちらエアシステム8517です。リクエストがあります)
プリーズ」と管制官。
エアシステム8517 イフ ユー エイブル リクエスト ハイヤー 350
(もし、可能ならば35,000フィートへ上昇したいのですが?)
ラジャ 350 コンティニユー クライム トウ 350 リポート リーチィング
(領解。35,000フィートまで上昇を許可します。到達後、報告願います)
 牧機長はあれ、という表情で聞いた。まさか、こんなにすぐにクリアランス(許可)が貰えるとは考えていなかったからだ。
サンキュー エアシステム8517 コンテニュー クライム トウ 350 リポート リーチング」(ありがとうございます。こちらエアシステム8517です。このまま35,000フィートまで上昇し、到達後報告します)
OK。これでヤンゴン(とのコミニュケーションは)OKだな」と牧機長。

 ヤンゴンとはヤンゴン・コントロールのことでミャンマーの管制エリアの名前である。
 日本を出発する前から、ミャンマー上空通過にはいろいろ懸念事項が指摘されていた。東京で行われたブリーフィングではミャンマー上空は管制コミニュケーションが取りずらいエリアであること以外にも、不定期便の場合は事前にミャンマーの上空通過許可を得てはいるが国籍不明機として国境上空で空中待機させられる場合もあるということであった。

ほっとしましたね。35(35,000フィートの高度が)あればヤンゴン(ミャンマー通過)はOKだと思うんですよ
そうだな。但しATC(ヤンゴンが上空通過のクリアランス)をくれるかどうか、だね
唯、こっちから(中国側からミャンマーへ)出るのはOKらしいんですよ。向こうから(インド、バングラディッシュ側からミャンマーへ入るのは)出る時はカトマンズで(事前にミャンマー通過許可を)貰わないんと(カトマンズを)出発するなと(東京での事前の打合せでは)言われています

 日本では考えられないが、インドやパキスタン、そしてミャンマーなどの国は国防上の理由からフライト・パーミッションのほかに国防許可ADC(AIR DEFFENSE CLEARANSE)を取得する必要があった。
 とりあえず、ミャンマー通過の可能性がみえてコックピットにほっとした空気が流れた。
 飛行機が雲を抜けた。

OK エンジン アンティアイス オフ。…(シートベルトサインも)少し早いけど切ります
 エンジン氷滴防止のヒーターを切って客室にシートベルトオフの指示を出して、牧機長は機窓から下界を眺めた。
 低い高度に点在するちぎれ雲の間から川が見える。メコン河だ。チベットに源を発して、ここ中国雲南省の西を下り、ラオス、カンボジアを抜けてベトナムで南シナ海に注ぐアジア有数の大河である。
 それにしてもこのヒマラヤ・フライトは長江をはじめメコン河、イラワジ川、プラマプトラ河、ガンジス河とアジアの名高い大河を横断し、あるいはそれに沿って飛行するルート設定なので機窓には川のある風景が多い。

皆様、ベルト着用サインは消えましたが、飛行中の急な揺れに備えて着席中はお席のベルトを引き続きお締め下さい
客室ではチーフ・パーサーのアナウンスが流れた。

武田一男

A300-600コックピット「ヒマラヤ飛行」/全31回
The Voice Recording of The Airbus A300-600 Cockpit
福岡〜昆明〜カトマンズ フライトドキュメント/録音&解説 武田一男/©Director’s House

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