Chapter18 機長アナウンス

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エアシステム8517は高度35,000フィートで中国とミャンマーの国境に向けて飛行中であった。仙波機長が東京からエーカーズで機上に電送されてきた気象状況のメッセージを牧機長に渡した。

えーと、メッセージが来ています
ユー ハブ コントロール」(操縦交代して下さい)
アイ ハブ」(交代します)
 牧機長が仙波機長と操縦を交代して気象情報に目を通す。
(カトマンズは)良い天気だ。(気温が)26度ありますね。クンミンより暖かいな。それからVZRはダッカだな。ダッカも非常に良い天気ですね。カルカッタは(視程が)3キロ。カルカッタ オルタネート ビロー バット ランディング アバーブ で、いざという時は(オルタネート=代替空港としてカルカッタ空港を)使いますよね
ダッカですか?
いや、カルカッタ。ダッカは良い天気でカルカッタはビジが(ビジビリティ視界の略)3キロしかないのです
 フライトプランでは代替空港はバングラディシュのダッカ空港だが、イマージンシーの時はカルカッタ着陸も機長として視野に入れておく必要があった。
 牧機長は最新の気象情報をもとにキャプテン・アナウンスを始めた。

えー、ご搭乗の皆様こんにちは。変わりまして当便のこのルートの機長でございます。飛行状況のご案内を申し上げます。さきほどクンミンを現地時間の16時06分に離陸しております。中国の雲南省の上空を飛行中でございます。飛行高度は3万5千フィート、1万と七百メーター、対地速度は時速800キロメーターの速度をもちまして順調に運航中でございます。
 当機はこの先、ミヤンマーの上空、それからインドの上空に入りまして、バングラディッシュの上空を経由いたします。それから再び、インドの上空にはいります。インド上空からネパール、カトマンズ空港へと飛行いたします。目的地のネパール、カトマンズ、トリブバン国際空港には日本時間の20時50分の到着の到着予定でございます。現地時間で16時5分でございます。
 これから目的地カトマンズまでの途中の航路上の天候でございますが、気象データによりますと概ね良好な状態が続いております。気流の方もスムースな気流が続いていると予想しております。尚、目的地カトマンズのお天気ですが大変良いお天気でございます。快晴26度Cでございます。あと2時間と30分弱で到着の予定でございます。どうぞごゆっくりとおくつろぎ下さい。ご用の節はどうぞご遠慮なく客室乗務員までお申し出ください。本日のご搭乗ありがとうございました

 エアシステム8517は現在、機首方向245度(西南西)で、航空路A(アンバー)599を西へ一路ミャンマーに向けて飛行している。
 クンミンを離陸して約35分、現在地は中国の亜熱帯気候の地として知られる雲南省の西だ。
 ここはタイ、ミャンマー、ベトナム、ラオスと国境を接する地で気候も暖かく、同時にタイ系民族やベトナム系民族、クメール系民族、チベット系民族など多様な民族が集り、独特の文化をもつ土地柄である。
 例えばペー族の自治州「大理」。大理古城と呼ばれる美しい町並みは紺碧の湖、珥海(じかい)の湖岸にあり、そこから4000メートル級の山並みの蒼山が見渡せる。タイ族の自治州シーサンパンナもここにある。ラオスとミャンマーに国境を接する熱帯雨林気候の高地は独特の熱帯植物が咲き誇って中国とは思えない風物をかもしだす。窓の下にはそんな雲南省の幾筋もの川や湖、無数の丘陵や山などが織り成す緑豊かな大地が見渡すかぎりに広がっている。
 高度35,000フィート。仙波機長がクンミン管制へ報告を始めた。まもなく中国とミャンマーの管制分岐点になっている国境のVOR GENGMA(GMA)の上空に達する。

クンミン・コントロール エアシステム8517 ホジション ゴルフ(G) マイク(M) アルフア(A)
(クンミン管制へ。エアシステム8517です。現在地はGMAです)
エアシステム8517 バイバイ」と中国の管制官との最後の交信が終わった。
エアシステム8517 サンキュー スイッチ トゥ ヤンゴン 133.2
(エアシステム8517です。ありがとうございました。ヤンゴン管制133.2メガヘルツに切り替えます)
 眼下に雲南省の国境の街、瑞麗(ルイリー)が見えてきた。街の西をイラワジ河の支流、瑞麗江が細い帯びのように流れている。いよいよミャンマーだ。

武田一男

A300-600コックピット「ヒマラヤ飛行」/全31回
The Voice Recording of The Airbus A300-600 Cockpit
福岡〜昆明〜カトマンズ フライトドキュメント/録音&解説 武田一男/©Director’s House

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