Chapter19 中国、ミャンマーの国境上空

※「▶」の再生ボタンをクリックすると航空サウンドが流れます

▼ミャンマー上空
ミャンマー上空

 これから管制エリアが中国のクンミン管制からミャンマーのヤンゴン管制に変わる。

(フライトプランを)くれなんだ(くれなかった)」と仙波機長。
 結局、中国管制はカトマンズへの正式なフライトプランを出さなかった。あとはミャンマーの管制に直接、交信して上空通過を許可してもらう他に手はない。
 もしミャンマー上空を通過出来なければカトマンズへの飛行は断念しなければならなくなる。
いってみます。」仙波機長は少し緊張した面持ちで牧機長を見た。そして周波数133.2に合わせてVHF無線でヤンゴンを呼び始めた。
ヤンゴン・コントロール エアシステム8517 オーバー
(ヤンゴン管制へ。こちらエアシステム8517です。どうぞ)
……
 やはり空電のみで無線は沈黙している。
……
 再度、仙波機長はVHF無線で呼んだ。ミャンマー上空に入るまでにどうしても連絡しておきたいのだ。今までの飛行を無駄にしたくない。
ヤンゴン ジャパンエアシステム8517 フライトレベル 350
………
HF2でやってみたら?

ミャンマーの首都ヤンゴンはベンガル湾に面した位置にあるので、まだ1,000キロ以上離れていてVHF無線では届かない距離である。それで、牧機長は仙波機長にHF無線2での交信を薦めた。
 頷いて仙波機長はダッカの周波数をはずしてHF2の無線機をヤンゴン・コントロールのプライマリー周波数3482に合わせた。
 突然スピーカーから音声が響く。

ノベンバー(N)オスカー(O)08…リンソー…リンソー…
 リンソー(LINSO)とは北緯23度22、5分 東経98度55分にある中国とミャンマーの国境にあるウエイポイントで、現在地からまだ28マイル、約4分の飛行を残している。
あ、やっている。やっている。リンソー、リンソーって。OK、OK、それではこっち(僕が)やりますからね」と仙波機長は嬉しそうにHF2無線のマイクをオンにした。カルカッタ・ラジオ管制の周波数を設定したHF1無線機は牧機長が聴居ている。その無線機からはカルカッタ管制官と他の航空機の交信が入り混じる。
ロメオ・キロ・オスカー2743…ロメオ・アルファ・チャリー…カルカッタ
チャリー、チャリー…
 仙波機長はHF2無線機でヤンゴン管制を呼んだ。
…ヤンゴン、ヤンゴン、ジスイズ エアシステム8517 オーバー
(ヤンゴン、ヤンゴン、こちらエアシステム8517です。応答願います)
……
 スピーカーからHF1のカルカッタ・ラジオ管制の交信が入るが、HF2は無言であった。
シンガポール41 セルコール チェック イズ OK メインティニング…コール ユー リプトー」(シンガポール41便、カルカッタ・ラジオ管制です。HFのセルコール(呼び出しナンバー)のチェック完了。高度は…通過点リブトーで呼んで下さい)
……
メインテイン…セルコール ホワット?」(高度は…。セルコールは?)
1066プライマリー 5506セコンドリー リポート リスコ カルカッタ
(HFの周波数は1066がメインで予備周波数は5506です。リスコで呼んで下さい)
 エアシステム8517は国境のウエイポイント・リンソー(LINSO)を通過した。
既に今はミャンマーに入っている。再び、仙波機長がヤンゴンを呼んだ。
ヤンゴン・レディオ ジス イズ エアシステム8517 オーバー
……
ヤンゴン、ヤンゴン、エアシステム8517 ポジション リンソー
 そのとき遠くからヤンゴンが応えた。
…8517 ヤンゴン ゴーアヘッド」(…8517.こちらヤンゴンです。どうぞ。)
やった!」交信出来て仙波機長が歓声を上げる。そして声を張り上げてマイクに向かった。
エアシステム8517 ポジション リンソー 0844 メインテニング 350 エスティメート ラシオ(RSO)54 アンソス(ANSOS) ネクスト オーバー
(エアシステム8517です。リンソーを標準時間の8時44分に通過しました。高度は35,000フィート。次のウエイポイント、ラシオ(RSO)には54分の到着予定です。そしてアンソス(ANSOS)に向かいます)
 仙波機長はミャンマー通過の飛行ルートと時間を管制官に伝えた。
エアシステム8517 ラジャ コピー リポーティング リマ シエラ オスカー(RSO)」(エアシステム8517へ。領解。RSOに到着したら連絡して下さい)
エアシステム8517 リポート RSO サンキュー
 これで無事、ミャンマーに入国出来たわけである。
OK よかった。よかった。コンタクト出来ましたので。フライオーバーパーミッション(上空通過許可)も取っていますので。(もし)聞かれたらナンバーを控えていますので…」 と仙波機長は興奮隠しやらぬ口調で言った。
 事前にミャンマーから取得している上空通過許可(フライオバーパーミッション)には許可ナンバーがあり、もし、通過を拒否されればその許可ナンバーを無線で知らせることになっていた。チャーター便フライトには定期便では考えられない苦労が山積する。

武田一男

A300-600コックピット「ヒマラヤ飛行」/全31回
The Voice Recording of The Airbus A300-600 Cockpit
福岡〜昆明〜カトマンズ フライトドキュメント/録音&解説 武田一男/©Director’s House

【著作について】「ヒマラヤ飛行」の文章、及び音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

にほんブログ村 その他趣味ブログ 航空・飛行機へ
[ad_himalaya]

  1. コメント 0

  1. トラックバック 0