Chapter22 ミャンマーと東インド国境

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 カルカッタ・ラジオ管制がHF無線より聞き取りやすいVHF無線の周波数を知らせてきた。
JAS8517 フリクエンシー カルカッタ・コントロール 125.7 ダッカ・コントロール 120.1
(日本エアシステム8517へ。カルカッタ東インド管制のVHF周波数は125.7 ダッカ管制は120.1です)
エアシステム8517 カルカッタ 125.7 ダッカ 120.1 サンキュー バイバイ

 エアシステム8517は現在、ミャンマーとインド東の国境付近を飛んでいる。まもなく国境の通過点アンソス上空である。
 周波数を確認して、良かった、良かったと仙波機長。そしてインド東エリアを管制するカルカッタ東インド管制に連絡しょうとしていた。、

カルカッタにまず、やりますね」と管制をVHFで呼んだ。
カルカッタ エアシステム8517 ポジション ANSOS
……
 しかし、無線は何にも答えない。
これは駄目ですかね…」と仙波機長、小首を捻った。
うーん。これは届かないんじゃないかな…」牧機長も同意するように頷いた。
 VHF電波はHF電波に較べて音声が明瞭であるが電波の届く距離が短い。これから入国しょうとしているインドの東地区はカルカッタで管制コントロールしている。現在地からカルカッタまでまだ700マイルの距離があるのだ。
それではダッカに先にゆきます
 仙波機長はカルカッタのVHFを諦めて、東インドを通過後、フライオーバーするひとつ先のバングラディシュ・ダッカ管制に連絡を取ろうとした。その方が距離が短い。
57ね」と牧機長もダッカ・コントロールのVHF周波数を薦める。
そのとき、コックピットの中でカルカッタ・ラジオ管制が呼ぶセルコールのブザーが響いた。
ああ、又、呼んできたよ。これに応えた方が良いんじゃないかな。」と牧機長。
 カルカッタ・ラジオの無線はHFー2である。セルコールのブザー音をリセットすることを牧機長に頼んで仙波機長がHF無線を取った。
…スタンバイ JAS8517 カルカッタ
(…待機して下さい。日本エアシステム8517へ。こちらカルカッタ・コントロールです)
 カルカッタ・ラジオ管制は他機の呼び掛けをスタンバイさせて8517便を呼んだ。
JAS8517 ポジション ANSOS
(こちら日本エアシステム8517です。現在地はアンソスです)
…JAS8517 フリクエンシー…カルカッタ・コントロール 120.1 ダッカ・コントロール 125.7 カルカッタ
(日本エアシステム8517へ。こちらカルカッタ・コントロールです。VHF周波数はカルカッタが120.1メガヘルツ。ダッカが125.7です)
 先ほどの交信で管制官がカルカッタとダッカのVHF周波数を間違えて伝えたためその訂正の交信であった。
サンキュー エアシステム、JAS8517 スィッチ トゥ カルカッタ 120.1 & ダッカ 125.7 バイバイ
(ありがとうございます。エアシステム8517です。これからカルカッタ管制120.1とダッカ管制125.7へ連絡します。さようなら)
 ああ、それでか…と周波数の違いで交信が出来なかったことに納得しながら、仙波機長は、「それではこっち(カルカッタのVHF)を先にやりますね」と改めてVHF無線でカルカッタ120.1を呼んだ。
カルカッタ、カルカッタ エアシステム8517 ポジション ANSOS
……
 しかし、依然として無線機からは応答がなかった。
これが(カルカッタのVHFが)駄目なんですよ。だから、セカンド(ダッカのVHF)でやります
 どうしても連絡が取れないカルカッタの東インド管制へのVHF無線のコンタクトをあきらめて、仙波機長はバングラディシュのダッカ管制を呼ぶためにVHF周波数を125.7メガヘルツに合わせた。
 現在、飛行機はミャンマーの国境上でまもなくインドの東に入る。

武田一男

A300-600コックピット「ヒマラヤ飛行」/全31回
The Voice Recording of The Airbus A300-600 Cockpit
福岡〜昆明〜カトマンズ フライトドキュメント/録音&解説 武田一男/©Director’s House

【著作について】「ヒマラヤ飛行」の文章、及び音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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    • Mike(Akio)
    • 2009年 4月16日 5:53pm

    なんか、最初の方より日本語が増えてきましたね。
    もう、カルタッタか。。。
    あと少しでランディングですね。

    • hiro
    • 2009年 4月19日 2:17am

    面白いエリアに入ってきましたね。
    パイロットの方々の苦労が分かります。
    これを聞くと日本の管制は進んでるんだなーと思います。
    最後に牧機長も言っていましたが。
    と、ここでまた間違いを発見しましたので…
    各パートで気がついていたのですが、
    了解 が 領解 になっています。
    間違いではないのですが、一般的には前者を使いますので…
    もし良ければ訂正をお願いします。

    • 武田一男
    • 2009年 4月19日 9:48am

    hiro さま いつも訂正ありがとうございます。このあともインドガンジス河上空でこのフライト最大のブラインド・コントロールに見舞われます。インドカルカッタ管制との無線が通じないので降下予定地点に近づいても下降許可は得られない。ヒマラヤは眼前に壁のように聳え立ち、A300はまもなくカトマンズ空域に入る・・。という状況の中でクルーのあせりは最高潮に達しました。でも、管制システムが進んでいるのは先進国だけでアラビアやアフリカ、ロシアなど世界の大半はまだまだ大変な様子ですよ。とくにチャーターフライトの場合のコミュニケーションの苦労は察してあまりあるものがありますね。武田一男

    • 竜子
    • 2009年 4月20日 2:57am

    ■Akioさん
    いよいよ、旅の盛り上がり。コックピットがこんなやり取りをしているなんて、客席にいる方は想像もしないですよね…。まだまだ気の抜けない途上国上空、一体どうなることやら…。
    ■hiroさん
    いつもありがとうございます。本当に、文明が成熟するに従ってこういった基幹システムも完備されるのでしょうけれど、今日の発展にはそもそも日本人の気質に素晴らしいものがあったのでしょうね…。
    さて、「了解」と「領解」についてご指摘、ありがとうございました。確かに一般的ではないのだと思いますが、この点についてはこのままイキとさせていただければと思います。以前にも同様のご指摘をいただいたことがあり、また、全般にわたって「領解」については頻出しておりますが、「領解」は、書き手の個性を感じるところでしたので、当初より(初回スタート時より)そのまま修正せずに掲載いたしました。もしかすると、一部「了解」が混在しているかもしれません。それは、私が一旦は修正しようと思って手を付けたところです(その後、修正するのを辞め、初段の原稿通りにもどしたものの、残しミスです。よって、「了解」となっているものがあれば、そちらのほうが私の統一表記ミスです)。
    このようにお伝えいただき、ありがたく拝見いたしました。
    ■武田さん
    早々にありがとうございました。焦っている様子が、目の前のできごとのようにわかりますね…。チャーターフライトがここまでパイロットを悩ますものとは、やはり実際の音声を聞かないことにはわからないものです。

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