Chapter23 インドの東

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 インドの東からバングラディシュにかけては国境線が入り組んでいる。インド国境はインド北部から東へヒマラヤの山麓ブータン、アッサムへ伸び、アッサムからバングラディツシュとミャンマーの間から南へ入り込んでいる。
 A201の航空路上、ミャンマー国境付近のANSOSからバングラディシュの国境のAAT(AGARTALAアガルタラ)の間がインド東の領域であるが、その領域は縦に細長いので横断しても120マイルほどの距離しかない。AAT(アガルタラ)の先(西)はバングラディシュの首都ダッカがある。

ダッカ エアシステム8517 ポジション ANSOS
(ダッカ管制へ。エアシステム8517です。現在地、アンソス)
 カルカッタ・ラジオとの交信でインド上空のクリアランスを得ているので、仙波機長は周波数を変えてひとつ先のダッカを呼んだ。
…コーリング ダッカ セイ アゲイン
(…こちらダッカ管制です。もう一度お願いします)
 ダッカ・コントロールの管制官の声は明瞭に入った。
コーリング エアシステム8517 ポジション ANSOS
(機名はエアシステム8517です。現在地はアンソス)
ア ファーム JA8517?
(JA…日本国籍…の8517便ですか?)
ジス イズ ジャパン エアシステム8517 パスド ANSOS 0928 レベル 350 エスティメティング AAT 45 RAJ(ロメオ アルアァ ジュリエット) 1006
(こちらはエアシステム8517です。アンソスを9時28分に過ぎて高度35,000フィートで飛行しています。AAT到着予定は9時45分、RAJは次の時間の06分です)
ジャパン・エアシステム8517 メインテイン 350 & レポート AAT レポート …
うん?」最後の部分が聞き取れないので牧機長が小首を傾げ、仙波機長がコンファームする。
エアシステム8517 リポート AAT ナウ ウドゥ ユー セイ アゲイン アフター
……」再び、雑音が入って良く聞き取れない。
ああ、タイプ オブ エアクラフト」多分、飛行機の種類を聞いているんだよと牧機長が言った。
エアシステム8517 アー ユー リクエスティング タイプ オブ エアクラフト?
(エアシステム8517です。当飛行機の種類が必要ですか?)
ウイ ゴット イット ジャャパンエアシステム8517 リポート AAT
(エアシステム8517へ。それは判明しました。AATで連絡して下さい)
ラジャ エスティメテーング AAT 45 & タイプ オブ エアクラフト アー A300ー600
(領解しました。AAT着予定は7時45分です。そして飛行機の種類はエアバスA-300ー600です)
ダッカ コピー」とダッカ管制官が領解して無線を閉じた。
 交信が終わると再び、仙波機長は無線を取った。
ちょっと、こっちで(VHF周波数120.1で)カルカッタに言って(コンタクトして)みますから

 このフライトの任務は今後、続くであろうカトマンズ便のために飛行資料を集めることも含まれている。中でも複雑で聞き取り難いこのミャンマー、インド東、バングラディシュのATC状況を熟知することは重要な任務のひとつであった。
 仙波機長は蛇足とは思いながらも、カルカッタ・コントロールのVHF状況を知るために再度、カルカッタ東インド管制と交信しようとしていた。
A300に搭載されたVHF無線機は3台である。そのNO.1には現在、125.7メガヘルツでダッカ・コントロールが。NO.2には120.1メガヘルツのカルカッタ・コントロールの周波数が入っている。3台目は緊急予備に空けている。

じゃあ、NO.1(VHF1)ユー ハブ」と仙波機長が牧機長にダッカとの交信を頼んだ。(じゃあ、NO.1無線機をお願いします)
OK アイ ハブ。ダッカね。僕がダッカをモニターしますから」と牧機長。僕はカルカッタをやりますから、と仙波機長はVHFでカルカッタを呼んだ。
カルカッタ ジス イズ エアシステム8517 メインテイン レベル 350
……」やはりまだ遠いのか、ブー、ブーというノイズが聞こえるだけで応答がない。
ちょっとですね。120.1ではコンタクトできないですね」仙波機長が左席の牧機長を振り返って言った。
あとは(バングラディッシュを過ぎて)カルカッタ(管制エリア)に入るAATでダッカにレポートして…
うん。(今、カルカッタと連絡を取るのは)無理だね。でもいいですよ。カルカッタとも(HFで)連絡がとれているんだから」と牧機長。「もう、このままダッカをキープしながらAATまで行って、スイッチ トゥ カルカッタ120.1で、(連絡が)取れますよ
 うん、と頷きながら、仙波機長はこの南アジアにおける管制エリアの複雑さにほとほと困惑した表情を見せた。
もう、これは3つだから(ミャンマー、インド、バングラディシュの入り組んだ3つの管制だから)グジャグジャになっていますね、下が…
まあ、管制システムが遅れてますよね」と牧機長も日本やアメリカなどの先進国に較べて彼らが使用している管制機器の性能の遅れを指摘した。
 現在地はインドの東の上空である。地図を見ながら仙波機長はこれからカトマンズまでの管制コンタクトを総括して言った。
じゃですね。ここから(AATから)ここまで(TEBID)はダッカ(の管制エリア)なんですよ。だからAAT(アルファ アルファ タンゴ)で混乱しないようにダッカにコンタクトをします。向こうが(ダッカの管制官が)多分、言ってくると思うんですよ、この辺で(AAT付近で)スイッチ トゥ カルカッタと。そうすれば、テビト(TEBID)とモンダ(MONDA)の通過予定時間を言うと、この辺で(IPLAS付近でスイッチ トゥ)カトマンズ・コントロールと言ってくると思いますから
 牧機長も同じ意見だった。
そしたらディセント・クリアランス(カトマンズへの下降許可)を早めに貰えるしね
 無線からルフトハンザ航空の女性副操縦士のダッカとの交信流れている。

武田一男

A300-600コックピット「ヒマラヤ飛行」/全31回
The Voice Recording of The Airbus A300-600 Cockpit
福岡〜昆明〜カトマンズ フライトドキュメント/録音&解説 武田一男/©Director’s House

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