Chapter28 世界でも最も難しいカトマンズ・アプローチ開始

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エアシステム8517はヒマラヤを正面に見て高度を下げていた。高度計の指針は20,000フィートに近づいている。メートル換算で高度約6,000メートル。ヒマラヤの高峰は8,000メートルを超えるので、今では仰ぎ見るように山が視界一杯に広がっている。

はい。リーチング」高度20,000フィートに達した。
トランジション。1015」仙波機長が計器を読み上げた。
1015がオーケーですね
はい」と牧機長が滑走路上の気圧1015ミリバールに気圧高度計をセットする。とくにカトマンズ空港着陸は微妙な飛行高度の維持を要求されるのだ。油断すると尾翼を山の傾斜に接触させることになる。

 過去、カトマンズ着陸では大事故が2度も起こっている。1992年の7月31日と9月28日にタイ航空とパキスタン航空のともにエアバスA-300が起こした事故である。
 最初のタイ航空の事故はフラップが調子が悪くゴーアラウンドする際に空港を取り囲む山の岸壁に激突して乗員、乗客113名が全員死亡した(日本人も含む)。
 その2か月後、カラチ発のパキスタン航空268便がアプローチ中に山腹に激突し乗員、乗客167名が全員死亡している。
 この事故の内、とくにパキスタン航空の事故は進入中に空港を囲む山に胴体をこするように接触、炎上したもので、指定高度より1,000フィート(約300メートル)低く飛んでいたことが直接の原因とされて気圧高度計設定のパイロット・ミスともいわれている。
 どちらにしてもカトマンズ空港の立地条件の厳しさと当時、カトマンズ空港にはレーダー誘導設備が無かったことが大事故につながった要因とされている。
 エアシステム8517の飛行高度が20,000フィートに達した。仙波機長が無線でカトマンズ・コントロールに報告をする。

エアシステム8517 ナウ 21DME フロム ロメオ 200
(エアシステム8517便です。現在、ロメオの手前21マイル地点です。高度は20,000フィート)
JAS8517 メインティン フライト・レベル 200 スクォーク 2526 コンタクト アプローチ 120.6 ナウ」(日本エアシステム8517便へ。飛行高度は20,000フィートを維持して下さい。レーダー認識番号(スクォーク)は2526です。以後はカトマンズ・アプローチ管制、120.6メガヘルツへコンタクトして下さい)
エアシステム8517 スクォーク 2526 スイッチ トゥ アプローチ 120.6
 仙波機長は交信を復誦し、無線周波数を120.6メガヘルツに変えてカトマンズへの進入を誘導するカトマンズ・アプローチ管制を呼んだ。
カトマンズ・アプローチ エアシステム8517 メインテニング 200
(カトマンズ進入管制へ。こちらエアシステム8517です。飛行高度20,000フィートを維持しています)
エアシステム8517 カトマンズ・アプローチ ディセント トゥ フライトレベル 150 スクォーク アイデント
(エアシステム8517便へ。こちらはカトマンズ進入管制です。高度15,000フィートに下降して下さい。レーダーで捕捉しています)
ディセント 150 スクォーク アイデント エアシステム8517
(15,000フィートへ降下します。レーダー捕捉、領解しました)「はい。150」と牧機長は降下高度を確認し15,000フィートへの下降を開始した。
エアシステム8517 アイデントアィル 15マイル…ロメオ リポート レベル
(エアシステム8517 領解。ロメオまで15マイル…の高度を報告して下さい)
 エコーがかかったような聞き取り難い管制官の声。
エアシステム8517 リポート レベル
(エアシステム8517です。(15,000フィートに到達したら)高度を報告します)
 すぐ管制官の声。
エアシステム8517 リポート ユア パッシング レベル
(エアシステム8517便へ。現在の飛行高度を知らせて下さい)
あ、今(現在)の高度を言え、と言っいるんだな」と牧機長が言う。仙波機長は頷いて無線機に向かった。
ナウ リービング 1974 150
(今、19740フィートを通過して15,000フィートに向けて下降中です)
エアシステム8517 クリア トゥ ノベンバー ロメオ アライバル ディセント 12,500 QNH 1016 ビア DME ランウエイ02 アプローチ ノーディレイ エクスペクテッド
(エアシステム8517便へ。ノペン(ウエイポイントNOPENのこと)ロメオ アライバルで高度12,500フィートまでの下降を許可します。現在の気圧は1016ミリバールです)
エアシステム8517 クリア ノペン ロメオ アライバル ディセント 12,500 QNH 1015
 ふたりの機長はカトマンズへの進入方式を確認した。いよいよアプローチが世界でも屈指の難しさといわれているカトマンズ空港への進入が始まる。

武田一男

A300-600コックピット「ヒマラヤ飛行」/全31回
The Voice Recording of The Airbus A300-600 Cockpit
福岡〜昆明〜カトマンズ フライトドキュメント/録音&解説 武田一男/©Director’s House

【著作について】「ヒマラヤ飛行」の文章、及び音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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