Chapter30 山越へのアプローチコース

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スペアー…チェック
それではこちら(VHF無線NO.2)をモニターします

 仙波機長がカトマンズのカンパニー無線の周波数をNO.2無線機に合わせて言った。
 管制官がブッダ84便に9,500フィートまでの下降を指示する無線交信が聞こえる。そして新たにカトマンズ進入管制エリアにブッダ航空664便が入ってきた。ポカラ(アンナプルナに近いネパールの観光地)からカトマンズに向かう双発旅客機である。

フラップ 20」(フラップを20度に下げてください)
 牧機長の指示で仙波機長は下げ翼を20度にして言った。
16マイル、ノペン過ぎましたら、(高度)10,500(フィート)で13マイルまで(水平飛行)ですね
 前述のように盆地の底にあるカトマンズ空港へのアプローチは周囲にある山並み(山の高さはおよそ6,000から9,000フィート)に添って尾根の階段を下るように進入する。そのため滑走路までの距離によって微妙な高度設定がある。
OK、ギア ダウン」(車輪を降ろしてください)
ギア ダウン
 牧機長の指示で仙波機長が車輪を降ろした。床からゴトンとくぐもった車輪の降りる音が響く。
バーチカルスピード
ギア ダウン スリー・グリーン」車輪が完全に降りた緑色のランプが灯った。着陸に際してコックピットでは一連の点検作業が続く。
マスター コーション
AFS
インカム アクション
ウインド・シェア アラート ノット アベラブル
OK
フラップ 40」最終フラップが降りた。
セームが出たら切りますから…ノペン
 エアシステム8517はウエイポイント・ノペンに達した。仙波機長がすぐ報告する。
カトマンズ・アプローチ エアシステム8517 デパーテッド ノペン
(カトマンズ進入管制へ。こちらエアシステム8517です。ノペンを過ぎました)
エアシステム8517 ラジャ コンティニュー アプローチ
(エアシステム8517便へ。領解。そのまま進入して下さい)
ラジャ コンテニュー アプローチ
 仙波機長は交信を復誦して、
13マイルまで(このまま水平飛行で)」と牧機長に現在高度での飛行を確認した。
ノット アプリカブル
クリア
ステータス…クリア
ブリード アドバイザリー セームですのでクリア
スピード アルトスター
バーチカル スピード
 アプローチの計器点検が続いたあと、仙波機長は再度、進入方式を確認する。
13マイルを過ぎましたら…
(高度は)95。9,500(フィート)」と牧機長。

 3,000メートルほどの山を超えた。ヒマラヤの夕映えを除いては下界は薄暗く、山麓に広がる段々畑も灰色の縞模様となって足元から消え去っていく。
 又、ひとつ大きな尾根を超えた。尾根の背にはえた広葉樹林をかすめるように飛ぶ。
 まだまだ続く山並みの向こうにやっと平野が現われその真中にカトマンズの街が見えた。街は数センチの小さな茶色の箱を無数に散らしたように平野の中に不規則に広がり黄昏の中で煙っている。

はい。95(9,500フィート)です。13マイル(地点通過)」「リトル オア アバーブ」(少し高い)
ちょっと2,000ほど使わないと駄目みたいですね。ランウエイはインサイト(目視可能な状態)ですが、結構、(高度が)高いですからね
 街の外れに空港が見え、薄闇に消えようとする灰色の滑走路が放つ白と赤の光が小さなクリスマス・ツリーのように瞬く。
 だが、空港は遥かにまだ下の谷底にある。
今、飛行機は取り囲む高い山々が作るすり鉢の縁を飛行しており、これから山を下ってその底にあるカトマンズ空港へ下降するのである。
 管制官が西から進入するブッダ航空84に前方、10マイル地点にエアシステムのエアバスがアプローチしていることを告げた。

10マイルまで9,500(フィート)
 仙波機長がアプローチ・チャートを見ながら、再び、進入方式を確認する。
 パキスタン航空のA-300は10マイル地点、高度7,500フィートで山腹に激突している。尾翼を山の小さな峰でこすって機体がまふたつに折れたのだ。
(次は)8マイルまで8,200(フィート)

 進入は滑走路から1マイルの所にあるアプローチ・ポイント、KTM(キロ・タンゴ・マイク)より10マイル手前まで9,500フィートで飛び、10マイルを過ぎると高度を8,200フィートに維持し8マイル地点まで飛ばねばならない。水平飛行と下降が微妙な距離と高度で何回も繰り返される。このアプローチが難しいのだ。
じゃあ、ランディング・チェックリストをしておきます
 仙波機長が着陸最後の計器点検を始めると客室ではランディングのアナウンスが流れた。

ご案内いたします。当機は最終の着陸体制に入っております……
ランディング ギア
スリー グリーン
フラップ
40
ランディング チェックリスト コンプリート
(着陸最終計器点検完了)
8マイル過ぎたら、6マイルまで6,800(フィート)
はい。領解
アルト スター
はい。8マイル(地点)です
 8マイル地点で管制官から交信が入った。
エアシステム8517 ポジション 8マイルス フロム キロ・タンゴ・マイク(ランウエイ手前の最後のウエイポイント)コンタクト カトマンズ・タワー 118.1
(エアシステム8517へ。現在、KTMから8マイル地点です。以後はカトマンズ・タワー 118.1メガヘルツに連絡して下さい)
エアシステム8517 サンキュー スイッチ トゥ ザ タワー 118.1
(エアシステム8517です。ありがとうございました。タワー管制118.1に連絡をします)

武田一男

A300-600コックピット「ヒマラヤ飛行」/全31回
The Voice Recording of The Airbus A300-600 Cockpit
福岡〜昆明〜カトマンズ フライトドキュメント/録音&解説 武田一男/©Director’s House

【著作について】「ヒマラヤ飛行」の文章、及び音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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