Chapter31 カトマンズ・トリブバン空港着陸

※「▶」の再生ボタンをクリックすると航空サウンドが流れます

 仙波機長は着陸を担当するカトマンズ空港タワー管制に周波数を変えた。そして再度、高度設定を確認した。

(現高度、6,800フィートは)6マイルまでですね
はい。6マイル」と頷いて牧機長も確認する。仙波機長はタワー管制を呼んだ。
カンマンズ・タワー エアシステム8517 ナウ 7マイル ファイナル ランウエイ インサイト
(カトマンズ・タワー管制へ。こちらスアシステム8517です。現在、最終7マイル地点です。滑走路確認しました)
エアシステム8517 ウインド ウエスタリー 10ノット クリア トゥ ランド ランウエイ02
(エアシステム8517へ。風は西から10ノット吹いています。滑走路02へ着陸を許可します)
 管制官は女性である。独特の訛りのある英語が響いてきた。
エアシステム8517 クリア トゥ ランド ランウエイ02」 仙波機長は着陸許可を復誦し、牧機長が再度、高度設定を確認した。
6の68」(6マイルまでは高度6,800フィートで)
6マイル OK、ネクストは5マイルの6,100
 仙波機長はチャートをチェックして次の高度設定、5マイルを6,100フィートで飛行することを確認し、牧機長がナビゲーションをコンピューターにセットする。
OK、5マイル過ぎましたら、4マイルまでは5,800(フィート)、5マイル、5,800。スピード アルトスタンド
 牧機長が頷く。
ゴーアラウンド アルトは15,000(フィート)
(着陸やりなおしの場合の高度は15,000フィートです)
セット
ランウエイ イン サイト ランディング」と牧機長。
(滑走路確認。着陸します)
 もう、エアシステム8517は空港を取り巻く山の最後のなだらかな山腹を降りてランウエイに向かっていた。
 高度は5,800フィートだが滑走路の標高が約4,200フィート(1,400メートル)あるので実質高度は約1,600フィートしかない。
アプローチ、ナウ グライドスロープ」(グライドスロープに乗りました)
 滑走路の末端から発する下降進入のビームに乗って高度を下げる。
サーフェス・ウインド(滑走路上の風)は…?
もう一度、聞きますか? あまり当てににならないサーフェス・ウインドですけど…
そうね」と牧機長。普段の着陸なら管制官が風速と方位が変わるたびに航空機に知らせてくるが、カトマンズの管制官はランディング・クリアランスの時に、ウエスタリー、10ノット、と大まかに知らせただけでその後アナウンスはない。
これが350度の15ノットです
 仙波機長は飛行機の計器に表われている風速と方位を読み上げた。ヘディングが20度なのでほぼ正面の風、若干、左から吹いている。「マニュアル スラスト」と牧機長はオートパイロットをオフにして、手動に切り替えた。
 眼前を鳥の群れが飛んだ。
バード」と牧機長が確認する。ランウエイの末端が薄暮の中に鮮やかに浮き上がって見える。
ワン・タウザンド」仙波機長が高度1,000フィート通過を告げた。そして下降ビームを見ながら、
スライトリー ビロー」と機体が少し低く進入していることを告げる。すぐ牧機長は飛行機をビームに乗せた。
ちょっと、(高度が)高く見えると思いますので
 滑走路の末端が目の前に迫った。
400(フィート)」コンピューターの音声が高度を読み上げる。あと、接地まで120メートルだ。
300(フィート)」仙波機長が高度計を読んだ。
スタビライズド ランデング!」牧機長が着陸を告げる。
200(フィート)」とコンピューターの声。滑走路が茶色の帯びを流したように後へ飛ぶ。
330(度から)、10ノット」仙波機長が滑走路の風を計器で読み伝える。
100…50、30、20、10、5…
 エアシステム8517は滑走路に接地した。すぐリバースがかかり機体が減速する。
80(ノット)」仙波機長がスピードを告げた。
エアシステム8513…コンタクト・グランド121.9
 訛りの強い管制官の音声は聞き取り憎い。
ラジャ。ピックアップ3 エコシナ2 スイッチ トゥ グラウンド 121.9
(領解しました。ピックアップ3、エコシナ2、地上管制121.9メガヘルツに変えます)
ア ファーム ゲート2」(ゲート2です)
それではレフトターンで
カトマンズ・グランド エアシステム8517 リクエスト タクシー
(カトマンズ地上管制へ。こちらエアシステム8517です。地上走行の許可を願います)
 客室ではカトマンズ到着のアナウンスが流れている。
皆様、ながらくのご搭乗お疲れ様でございました。只今、カトマンズ・トリブバン国際空港へ到着いたしました。こちらの時間で午後4時42分でございます……

見上げると周囲の薄暗い山並みから抜きんでるようにエベレストがあるクーンブー・ヒマラヤの峰々が黄金色の夕陽をあびて王者の風格で天空にそびえ立っていた。

END

武田一男

A300-600コックピット「ヒマラヤ飛行」/全31回
The Voice Recording of The Airbus A300-600 Cockpit
福岡〜昆明〜カトマンズ フライトドキュメント/録音&解説 武田一男/©Director’s House

【著作について】「ヒマラヤ飛行」の文章、及び音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

にほんブログ村 その他趣味ブログ 航空・飛行機へ
[ad_himalaya]

  1. コメント 0

  1. トラックバック 0