機長席第3回 羽田空港ディパーチャー

※「▶」の再生ボタンをクリックすると航空サウンドが流れます

 ボーイング777-200の機首から尾翼までの全長は63.7メートルある。ボーイング747-400より6.9メートル短いが、それにつぐ長さである。
 両翼を広げた長さ(全幅)は60.9メートル。これは747-400に3.5メートル及ばないが、747-300やSRよりは1.3メートル長く、全体として胴体に比例して翼が長い。
 翼が長いことがボーイング777をとても優雅に見せる。
 14時40分。
 出発20分前、エアーシステム115便札幌千歳空港行きのボーディングの時間がきた。乗客がグランドホステスの案内で三々五々と機内へ搭乗を始めた。
 飛行機の入り口ドアでは、キャビン・クルーが華やかな笑顔で乗客を迎えている。
 コックピットでは乗客がボーディングを開始する前から、木村副操縦士が今日の飛行プランにもとずいた飛行ルートのデータをコンピュータのデータ・ベースから呼び出してセットし、すでに外部の目視点検を終えた森田機長と共に飛行前のプライマリーチェックを行っていた。
 ボーイング777の特徴のひとつにECL、すなはちエレクトリック・チェックリストというシステムがある。
 従来の飛行機では、点検の確認には紙に印刷されたチェックリストを一項目ごとに読み上げ、機長と副操縦士がそれぞれチェックし、確認していた。たとえばDC-9-41の計器チェックは158項目ある。これを一つ一つ項目ごと読み上げてパイロットは計器点検をする。その労力と時間は大変なものであった。
 ところが777では、チェックリストの項目がすべてコックピット中央ペデステルにある液晶デスプレイMFDに表示される。
 しかも飛行の進行段階に沿って適切な項目が示され、自動的にECLシステムのコンピュータがそれらの項目をチェックする。
 チェックリストの項目は画面に白字で現われ、チェックが完了すると緑に変わる。パイロットがチェックする項目もあるが、従来の方法に比べて格段にシンプルになり、時間もミスも少なくなったという。
 時間が節約出来るということは、機長や副操縦士はその分、他の事柄に注意配分ができるということだ。それだけ運航業務の効率が良く安全につながる。エンジン始動の効率の良さも同様だが、777は飛行技術だけでなく運航業務の未来をも考慮された21世紀の旅客機なのである。
 14時50分。
 飛行機の真下では飛行機を誘導路へ押し出すトーイングカーが位置につき、飛行機へ供給する地上電源が外され、乗客の荷物を運んだバゲージカーや給油車、飲物や軽食類を積み込むケータリング車など地上の車が機体を離れた。
 14時55分。
 飛行機周辺の障害物がなくなり、地上での出発準備がほぼ完了する。そして出発5分前が地上のスタッフから飛行機にコネクトしているインターホンで機長に告げられた。
コックピット。グランドです」。
ハイ。どうぞ」と森田機長がインターホンを取った。
5ミニッツ ビフォァスタート エンジン & セット パーキング ブレーキ」(出発5分前の準備完了しました。パーキングブレーキをセットして下さい)
ラジャ。パーキング ブレーキ セット 了解
森田機長はブレーキをセットして地上整備員に伝えた。
 コックピットのスピーカーから日本航空105便大坂行きのB747-400機へクリアランス交信が聞えている。
トーキョー デリバリー ジャパンエア105 グッドアフタヌーン スポット 10」(東京デリバリー管制へ。こちら日本航空105便です。スポット10に駐機しています)
 飛行機と管制官の交わす無線の声は、コックピット・クルーがつけているヘッドホンとコックピットの天井にあるスピーカーから聞くことが出来る。
グッドアフタヌーン ジャパンエア105 トーキョー・デリバリー クリア トゥ オオサカエアポート ハヤマ・ワン・ディパーチャー ヨコスカ・トランジション フライトプラン ルート メインティン フライトレベル 220 スクォーク2322 リードバック オンリー スクォーク
(日本航空105便へ。こちらデリバリー管制です。貴機の飛行プランを承認し大阪空港への飛行計画を許可します。葉山1出発方式で横須賀トランジション(通過)で高度2万2000フィートまで上昇してください。レーダー認識番号(スクォーク)2322です。レーダー認識番号を復唱(リードバック)してください)
ジャパンエア105 スクォーク2322」(こちら、日本航空105便です。レーダー認識番号2322確認しました)
ジャパンエア105 モニター グラウンド 121.7 アドバイス レディ フォァ プッシュバック」(日本航空105便へ。プッシュバックの用意をしてグランドコントロール121.7へコンタクトして下さい。)
ジャパンエア105  サンキュー グッディ
 このATCクリアランス交信が終わると、日本航空105便は地上管制と連絡をとり飛行機を移動させるトーイングカーに押され(プッシュバックされ)てゲートを離れるのだ。
 新幹線の出発時刻は駅のホームで車両が動きだす時間であるが、飛行機の出発時刻は滑走路を離陸する時間ではなく、駐機しているゲートを離れるランプアウトの時間を指す。
 森田機長は木村副操縦士に出発5分前の管制塔との交信を指示した。無線交信の担当は副操縦士である。木村副操縦士は管制121.8メガヘルツの周波数で東京デリバリー管制を呼んだ。
トーキョー・デリバリー エアシステム115 ゲート2」(東京デリバリー管制へ こちらエアシステム115便です スポット(ゲート)2番に駐機しています)
 この5分前の交信は、出発する飛行機が管制塔と最初に交わす交信である。
 搭乗前にディスパッチ・ルームで、機長が承認した飛行プランが、ディスパッチャーから運輸省航空局にコンピュータで送られており、115便は今、その管制承認(ATCクリアランス)を待っているのであった。
エアシステム115 トーキョー・デリバリークリア トゥ ニューチトセ・エアポート モリヤ7 ディパーチャー フライトプランルート メインテイン フライト レベル210 スクォーク2460 リードバック オンリー スクォーク」(エアシステム115便へ 貴機の飛行プランを承認し、新千歳空港までの飛行を承認します 守谷7出発方式で高度2万1000フィートまで上昇して下さい レーダー認識番号は2460です レーダー認識番号のみを復誦して下さい)
スクォーク2460 エアシステム115」(レーダー認識番号2460で了解しました)

▼守谷7出発方式
守谷7出発方式

 羽田空港の東には成田空港や百里自衛隊の基地。西には横田基地。北西には騒音規制がある東京の市街地が広がっている。羽田空港を離陸する飛行機はそれらのエリアの空域規制を避けて上昇しなければならないので、出発に際して飛行機が飛ぶ空の道が決められている。端目には自由に飛んでいるように見える飛行機も実際は”狭い空の道”を選びながら飛行しているのだ。
 この空の道をスタンダード・インスツルメント・ディパーチャアー、SID(標準出発方式)といい、沖縄や金沢、大阪、札幌など飛行する目的地によって、そして使用する滑走路によって何種類かの出発方式が定められている。
 着陸の場合も同様にスタンダード・ターミナル・アライバル・ルート、STAR(標準着陸方式)と呼び、出発同様に着陸進入する方式がある。
 例えば、大阪空港へ向かう日本航空105便に指示された{葉山1デパーチャー}は、今日のように滑走路16から離陸する場合、離陸して高度500フィート以上になるまでそのまま上昇し木更津の上空に向かう。木更津VOR/DMEの上空を通過して相模半島に向う。相模半島にある横須賀を高度9000フィートで通過(トランジッション)後、静岡の燒津を経て高度も上げ大阪に飛行するというSIDである。
 エアシステム115便は守谷7出発方式を指定された。滑走路16Rから離陸し、500フィート以上上昇し木更津に向かう。そこまでは日本航空105便と同じであるが、115便は木更津で左旋回後、機首方向014度(約北北東)で茨城県守谷VORに向かう。高度制限があり守谷の手前11マイル地点を1万3000フィート以下で飛行しなければならない。この空域の東は成田空港があり、又上空は東京航空交通管制部(東京ACC)の管轄空域なのでその許可が出た後、高度を上げて那須VORに向かうのである。
エアシステム115 モニター グランド 121.7 アドバイス ウェン レディ フォァ プッシュバック」(エアシステム115便へ プッシュバックについては、東京グランド管制121.7メガヘルツへ連絡して下さい)
121.7」(了解 121.7に連絡します)
 115便のコックピット・クルーは、乗降口、貨物室などすべてのドアが閉じられていることを確認すると羽田の地上管制、グランド・コントロールからプッシュバックの許可を貰い、地上の整備員にインターホンで飛行機を誘導路までプッシュバックする依頼をした。
 15時00分定刻。115便はトーイングカーに押されてゆっくりとゲート2番を離れた。 
 ゲートから誘導路入り口までおよそ100メートルくらいある。115便はトーイングカーに押されながら誘導路につくまでにエンジンを始動させるのだ。森田機長が整備員へ伝えた。
グランド。コックピット スタート ボース」(地上整備へ。こちらコックピットです。ふたつ一緒に回します)
了解しました。グランド、クリアー」整備員の声がインターホンに響く。そして、両翼につけられたプラット&ホイットニーPW4074エンジンが轟音を響かせて2つ同時に始動を始めた。
スタート ライト」(右エンジン始動)
スタート レフト」(左エンジン始動)
 ボーイング747など従来の飛行機は、エンジンを1つ1つ始動させなければならないので、とくにジャンボ機の場合は四発のエンジンが始動するまで時間がかかった。ところが777は同時に2つのエンジンを回すことが可能でエンジン始動の時間が極端に短縮された。これも777の大きな特徴のひとつである。
 直径が2メートル90センチに近い777の巨大なエンジンは、ジャンボ機を含めてどの飛行機のエンジンより大きい。
 ボーイング747-400型ジャンボ機のエンジン推力は、ひとつのエンジンが約26トン。777は38トン。その差14トンはA300のエンジン1基に匹敵する。すなはち777のエンジンは、ジャンボ機のエンジンとA300のエンジンを合わせたくらいの推力を持っているのだ。
 もっとも747-400の場合、26トンのエンジンが4基ついているので、全推力からみればエンジン2基の777よりは多くなるが。それにしても777のエンジンは巨大である。
オールニッポン743 コンティニュー タクシー ウィスキー6(W6) アウター(O-TWAY)」 (全日空743便へ。W6から、外側の誘導路アウターへタクシーを続けて下さい)
ウイスキー6 アウター オールニッポン743
この時間の羽田は出発便が集中している。滑走路へ向かって地上走行をしている全日空743便、羽田14時55発釧路行き767と管制の交信が聞こえている。こんどは到着便だ。全日空646便B737が熊本からランウェイ16レフトへ着陸しJ3地点からゲート15へ向かう交信である。
グランド。オールニッポン646 ジュリエット3(J3)  タクシー ゲート トゥ 15
オールニッポン646 グランドコントロール タクシー ヴィア ウイスキー3 アウター ウイスキー5」(全日空646便へ。こちら地上管制です。ウイスキー3からアウター経由でウイスキー5に向かって下さい)
ウイスキー3 アウター ウイスキー5 オールニッポン646
 函館へ向かう全日空B747-SRが出発する交信が聞こえる。
グランドコントロール オールニッポン861 ウィ アー レディ フォァ プッシュバック」(地上管制へ。全日空861便です。プッシュパックの用意が出来ました)
オールニッポン861 グランドコントロール ラジャ プッシュバック ランウェイ16ライト メイク クリア ウイスキー5」 (全日空861便へ。こちら地上管制です。滑走路16Rへウィスキー5を確認してプッシュバックして下さい)
メイク クリア ウイスキー5 オールニッポン861 クリア プッシュバック」 
 115便はトーイング・カーに押されて誘導路入り口P3に着いた。
パーキングブレーキ セット」森田機長がブレーキをセットする。木村副操縦士がエンジン計器を見ながら右エンジンが安定していることをコールした。
ライト スタビライズド」(右エンジン安定) そして続いて左エンジンの状態も安定していることを知らせる。
レフト スタビラテズド」(左エンジン安定)
 すぐ,ふたりは液晶デスプレイMFDに表示されるメッセージを確認する。
チェック リコール
…キャンセル メッセージ
アフタースタート・チェックリスト」続いてコックピット・クルーはエンジン始動後の計器点検に移った。ECLシステムのコンピュータで計器点検が迅速に行われる。
エンジン、アンティアイス オート(エンジンの凍結防止装置を自動に)
リコール チェック。アフタースタートチェックリスト コンプリーテッド
 森田機長はインターホンで地上整備員を呼びエンジンが順調に稼働したことを告げ、地上走行に移る旨伝える。.
グランド コックピット エンジン・スタート コンプリート リムーブ チョーク ディスコネクト インターフォン 行ってきます」(地上整備員へ エンジン始動しました タイヤ止めを外し、インターフォンを切って下さい それでは行ってきます)
ラジャ リムーブド チョーク。 インターホン リセプト ステアリング バイパス ロックピン リムーブト いってらっしゃい」(了解しました タイヤ止めを外し、インターフォンを切り、セレクターピンを外しました。お気をつけて行ってらっしゃい)
 交信が終わるとすぐ地上の整備員が飛行機につながっているインターホンをぬき、トーイングカーを移動させ、飛行機のタイヤ止めを外し機体から離れた。14時55分発の全日空釧路行きB767がタワー管制に移管する交信が聞こえている。
オールニッポン743 コンタクト タワー 118.1」(全日空743便へ 以後は東京タワーコントロールの118.1メガヘルツに連絡して下さい)
オールニッポン743 コンタクト タワー 118.1」(全日空743便、東京タワー管制の118.1に連絡します)
 全日空743便釧路行きに続いてグランド管制は、日本航空195便、14時50分発の熊本行きB777を呼んだ。出発便が多くなり誘導路が混んできたのだ。
ジャパンエア195 トーキョー・グランド ホールド ショート オブ アウター アドバイス ウェン レディ」(日本航空195便へ アドバイスするまでアウターの手前で待機して下さい)
ジャパンエア195 ホールド ショート オブ アウター アドバイス ウェン レディ」(こちら日本空港195便、アウターの手前で待機します)
 コックピットではエンジンスタート後の計器点検を終え、木村副操縦士がグランドコントロールを無線で呼び出した。滑走路に向かって地上を走行する許可(クリアランス)を貰うためである。
グランド エアシステム115 リクエスト タクシー」(グランド管制へ こちらエアシステム115便です 地上走行の許可を願います)
エアシステム115 タクシー トゥ ランウェイ16ライト ヴィア パパ3 ジュリエット2 ウイスキー2 アウター」(エアシステム115便へ パパ3からジュリエット2 ウイスキー2、アウターを経由して、滑走路16ライトへ走行して下さい)
ランウェイ16ライト パパ3 ジュリエット2 ウイスキー2 アウター エアシステム115 」(エアシステム115便です パパ3、ジュリエット2、ウイスキー2、アウターを経由して、滑走路16ライトへ走行します)

▼羽田空港の地図
羽田空港の地図

 115便の現在地はゲート2の誘導路入り口P3である。ターミナルビルのゲート2から、ターミナルビルとウエストメンテナンスエリアの真中を走っている誘導路J2を通り、J2がアウターと呼ばれ滑走路に平行している外側にある誘導路O-TWAYとが交差するW2地点を右折し、そのままアウター誘導路(O-TWY)でランウェイ16ライトまで走行をしなければならない。すなはち、羽田第一ターミナルの南東の端にあるゲート2から、ターミナルビルを右に半周し、ターミナルビルの正面をAランウェイに沿って延々とウエストカーゴビルの端、Bランウェイの側まで行くかなり長い地上走行になるのだ。
レフト クリア」森田機長が機外の左側の障害物を確認し、木村副操縦士が右サイドを確認する。
ライト クリア
パパ3 ジュリエット2… 」(P3の現在地からJ2誘導路を通って…) と森田機長がタキシングのコースを再確認した。
はい、ウイスキー2 アウター ですね」(それから、ウイスキー2地点を右折し、アウター(O-TWY)を通ってランウェイですね)。と木村副操縦士。、森田機長は頷いてスラストレバーを若干アドバンス(前進の位置)にしエンジンのパワーをあげた。
いってらっしゃい」と地上で飛行機の出発をとり仕切るランプコーディネーターや整備員が一列に並んで飛行機に手を振るのが見える。
 森田機長も窓越しにそれに答えて、パーキングブレーキを外すと115便は滑走路へ向かって地上走行に移った。
 航空機が地上を走行するタキシング・スピードは25ノット以下という目安がある。約時速50キロだ。地上走行のスピードでは操縦桿は使えないので(操縦装置は時速80ノット以上、約150キロ以上のスピードでないと使えない)横にある小さなステアリングハンドルを使う。
森田機長は「レフト クリア」と左側の障害物の有無を確認してJ2誘導路に入りW2に向かった。 地上走行が始まると、「フラップ5」(下げ翼[フラップ]を5度にセット)と森田機長がフラップを離陸時の位置にするように副操縦士に指示を出す。
 木村副操縦士がすぐフラップ位置を下げる。「フラップ5」(下げ翼[フラップ]を5度にセットします)。
 フラップが作動しているかどうかは、コックピットの中央パネルにあるEICAS(通常、アイキャスと呼ばれる)のカラー液晶デスプレーで確認することが出来る。両翼のさげ翼がゆっくりと降りてきた。
 115便は滑走路16Rに向かってアウターを順調に走行している。Aランウェイに平行したこの長い誘導路の前方には、すでにタワー管制下にある日本航空195便熊本行きB777が、すぐ前には、まだグランド管制下の日本航空105便大阪行きB747-400が、115便の後には札幌行き全日空67便B747-400機が続き、一列に並んだ。この時刻の羽田空港は離陸する航空機で混雑している。
ジャパンエア105 コンタクト タワー 118.1」(日本航空105便へ 以後はタワー管制の118.1メガヘルツに連絡して下さい)
ジャパンエア105 グッディ」(日本航空105便、了解 さよなら)
グッディ」(さよなら)
 管制官が滑走路に近づいている日本航空105便をタワー管制に移管した。その交信のとぎれを縫って、スポットを離れて誘導路入り口W2でエンジンを始動させている全日空函館行き861便が管制官を呼んだ。
グランド・コントロール オールニッポン861 タクシー インストラクション」(グランド管制へ、こちらは全日空861便です 地上走行の許可を願います )
オールニッポン861 タクシー トゥ ランウェイ16ライト ウイスキー5 アウター」(オールニッポン861便へ ウイスキー5からアウター経由で滑走路16ライトへ走行して下さい)
ウイスキー5 アウター オールニッポン861」(ウイスキー5、アウター 了解しました)
 滑走路までの地上走行中にコックピットクルーがしなければならないことの一つに操縦装置のチェックがある。操縦桿や方向舵などの操縦装置が確実に作動するかどうか、地上で確かめるのである。
コントロール チェック」と機長がコールして操縦装置のチェックが始まった。
ラジャー。エルロン、エレベーター、チェックド(補助翼、昇降舵チェックしました)」と副操縦士。
ラダー チェックド(方向舵チェック)」と機長。
 飛行機の操縦に必要な機器は、主系統(プライマリー・コントロール・システム)と補助系統(セコンドリー・コントロール・システム)の二つの系統がある。タクシー中は主系統のシステムをチェックする。
 まずエレベーター。これは昇降舵とも呼ばれるものだ。飛行機の上昇や下降は主翼でなく尾翼にあるエレベーターを使っておこなう。エレベーターは水平尾翼についている。これが作動すると飛行機が上昇下降をする。次ぎはラダー。これは方向舵だ。垂直尾翼の後部に建て方向についている。操作はパイロットの足もとにあるぺダルを踏んで使う。
 そして最後はエルロン。補助翼だ。これは主翼についている。エルロンはフランス語で鮫のひれを意味する言葉で、操縦桿で操作し飛行機の水平を保ったり旋回時に使用する。
 操縦装置の点検が終わると、森田機長は離陸前の点検を指示した。
ビフォァ テイクオフ チェック リスト」(離陸前の計器点検をお願いします)
中央ぺデステル上にあるMFDモニターに現れた項目を木村副操縦士が素早く読み上げる。
フライトコントロール」(操縦装置の点検)
チェックド」(完了) ふたりのパイロットが同時に確認する。
ビフォァ テイクオフ チェック リスト コンプリーテッド」(離陸前計器点検完了)
 115便は滑走路近くまで来た。コックピットの窓からランウェイの様子が見える。全日空機釧路行きのB767がジェット音を響かせて離陸を開始した。滑走路の待機位置では日本航空195便熊本行きのボーイング777が離陸許可を待ち、日本航空105便は滑走路の待機路に入ろうとしている。午後の光りの中で羽田空港が息づいて見えた。
 エアシステム115便へタワー・コントロールへ移管する交信が入る。
エアシステム115 コンタクト タワー 118.1」(エアシステム115便へ 以後は東京タワーコントロールの118.1メガヘルツに連絡して下さい)
ラジャ」(了解)
エアシステム115 118.1」(118.1に連絡します)
 グランド・コントロールの管制エリアはここまでである。木村副操縦士は周波数をタワーコントロール118.1メガヘルツに合わせた。

武田一男

JAS BOEING777 Cockpit「機長席」/全11回
羽田〜新千歳 フライトドキュメント
録音:武田一男/解説:武田一男・桃田素晶 ©Director’s House

【著作について】「機長席」の文章、及び音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

にほんブログ村 その他趣味ブログ 航空・飛行機へ
[ad_kichouseki115]

    • Akio
    • 2009年 9月28日 4:43pm

    なぜか、羽田のATCは聞き取りやすいですよね。
    いつも、TWRばっかし聞いてるので
    今日、初めてGNDを聞きました。

    • 竜子
    • 2009年 9月29日 3:34pm

    ■Akioさん
    いつもタワーをきいて、撮影スポットを探しているの?
    グランドは人を盗み見しているようで、申し訳なさと楽しさがありそうだね。実際にレシーバーを持っていると。
    AkioさんはいろんなところのATCを効いているんですね。

    • 雅夫
    • 2013年 1月1日 8:40pm

    昔管制官の大学へいって数年間羽田で勤務していました
    やはりATⅭはいいですね

      • 竜子
      • 2013年 5月26日 6:45am

      ■雅夫さん
      返信がたいへん遅くなり申し訳ありません。
      お正月の投稿、ありがとうございました。
      羽田にいらしたんですね。
      羨ましい限りです。
      もう終わってしまいましたが、ドラマやっていましたよね「東京コントロール」や「東京エアポート」。
      さすがにあんな雰囲気ではないかと思いますが、なんだか夢があって素敵なお仕事ですよね!

  1. トラックバック 0