機長席第7回 高度4万フィートへ

高度4万フィートへ

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東北空路地図

▼ナビゲーションログ
ナビゲーションログ

ジャパンエア544 ディセンド クロス アミ アット 13000 QNH3019」(日本航空544便へ 降下し阿見を1万3千フィートで通過して下さい 気圧は3019インチです)
 管制官は高度2万4000フィートで阿見VORに向かっている日本航空544便に下降許可を与えた。
ジャパンエア544 ディセンド クロス アミ 13000 3019 アルト レポート リービング」(降下し阿見を1万3000フィートで通過します。気圧は3019インチ 降下開始時に連絡します)
 管制官は544便に近くに他の飛行機がいることを伝えた。
ジャパンエア544 コンファーム … トラフィック インサイト?」(日本航空544便へ 飛行機が確認できますか?)
ジャパンエア544 トラフィック インサイト」(確認しました)
ラジャ」(了解)そして管制官はエリアの最も西にいる日本航空512便札幌発羽田空港行き747-400を羽田空港進入管制へ移管させる。
ジャパンエア512 コンタクト トーキョー・アプローチ 119.1」(日本航空512便へ 以後は羽田空港進入管制119.1メガヘルツに連絡して下さい)
ジャパンエア512 119.1」(羽田空港進入管制119.1メガヘルツに連絡します)
 つづいて管制官は日本航空512便のすぐあとを下降していたJA8701にも移管交信をした。
ジュリエット アルファ 8701 コンタクト トーキョー・アプローチ 119.1」(JA8701へ 東京進入管制119.1メガヘルツに連絡して下さい)
8701 ラジャ コンタクト トーキョー 119.1」(了解しました 東京進入管制119.1メガヘルツに連絡します)
 航空管制が使用する無線交信の周波数の波長は、LF(長波)から極超短波(UHF)までその波長によって分類されるが、管制官と115便が交信するのは、VHF(超短波)電波で、一般にはFM電波と呼ばれている。
 このVHF電波の周波数の76メガヘルツから90メガヘルツはラジオのFM放送、170メガヘルツから222メガヘルツは、民放のTVの音声周波数で使われている
 管制官と民間航空機の交信は、VHF118メガヘルツから136メガヘルツまで波数を専用している。このFM波は比較的電波の届く範囲が狭く、3万3000フィート(約1万メートル)の高度で約400キロ前後である。それ故、内陸部の航空路管専用周波数として使用されている。   
いい天気ですね、今日はね」と森田機長が笑った。現在、離陸して16分経過している。115便は福島県の那須へ向かっており、高度3万3000フィートを通過し3万7000フィートへ上昇中である。
ですね」と木村副操縦士も空を見上げる。管制官がエアシステム154便に下降の指示を与えた。
エアシステム154 ディセンド クロス アミ アット 13000 QNH3019」(エアシステム154便へ (降下し阿見を1万3000フィートで通過して下さい 気圧は3019インチです)
エアシステム154 ディセンド クロス アミ アット 13000 3019 リービング 260
(高度2万6000フィートから降下し阿見を1万3000フィートで通過します 気圧は3019インチです)
 管制官は高度2万4000フィートで飛行している日本航空544便747-400に先に下降のクリアランスを出し、544便より先行し高度が2000フィート高いエアシステム154便MD90に遅れてクリアランスを与えた。これは高度差の為だろう。
ジャパンエア544 リードバック トラフィック ナウ スタート トゥ ディセント 13000」 (日本航空544便へ、。高度1万3000フィートへ降下を始めていますか?  現在の状況を知らせてください)
ジャパンエア544 リービング 240 フォァ 13000」(2万4000フィートから1万3000フィートに降下を開始します)
ラジャ」(了解しました)と管制官は544便の飛行状況を確認して再び、近くに他の飛行機が飛んでいることを告げた。高度2万6000フィートから下降を開始したエアシステム154便MD90のことである。
ジャパンエア544 コンフォーム、 ジャスト インフォメーション トラフィック ナウ 12 オクロック 5マイル T・I・A イン バウンド パッシング 255 フォァ 13000」 (日本航空544便へ、確認をします。あ、インフォメーションです。今、12時方向5マイル先に羽田空港方面に向かって高度1万3000フィートへ下降している航空機が2万5500フィートを通過中です)  注 T・I・A・A  Tokyo International Airport Authorityの略
ジャパンエア544 トラフィック インサイト」(航空機を確認しました)
 羽田空港への下降が始まる阿見VOR付近は、管制官にとって非常に神経をとがらせる場所でもある。今度は下降中のエアシステム154便MD-90への速度についての交信をする。
エアシステム154 ベリファイ スピード アジャストメント 320 ノット オブ レーダー」(エアシステム154便へ。現在、スピードがレーダー上では320ノットになっていますが、正しいですか?)
エアシステム 154 スピード 325 ナウ」(現在、325ノットです)
ラジャ」(了解しました)
ジャパンエア562 ディセンド アンド メインテイン フライト レベル 150」(日本航空562便へ 1万5000フィートまで降下して下さい)
 管制官が海側のR211ルートを飛行中の日本航空562便に下降の許可を与えた。この飛行機はSWANPからCOSMOを経由し成田空港へ着陸する予定だ。
ディセンド 150 ナウ ジャパンエア562」(1万5000フィートに降下をします)
ラジャ」(了解しました)
ライト クリア」 と木村副操縦士。
ラジャ」と森田機長。無線から日本航空562便と管制官の交信が聞こえる。
コンファーム ジャパンエア562 ディセンド 150 ナウ パイロット ディスクレクション」(日本航空562便ですが、パイロットの判断で1万5000フィートに降下してよろしいですか?)
ジャパンエア562 ディスタンス クロス 20 マイル ノース オブ スワンプ(SWAMP) フライト レベル 150」(日本航空562便へ ウェイポイントのスワンプの北20マイルを1万5000フィートで通過して下さい)
20 マイル ノース オブ スワンプ(SWAMP) 150 ジャパンエア562」(スワンプの北20マイルを1万5000フィートで通過します)
 つづいて、管制官はエアシステム110便を羽田空港進入管制へ移管させる。
エアシステム150(110の間違いコール) コンタクト トーキョー・アプローチ 119.1」(エアシステム110便へ 以後は羽田空港進入管制119.1メガヘルツに連絡して下さい)
エアシステム110 119.1」(エアシステム110便です。羽田空港進入管制119.1メガヘルツに連絡します)

クロス・セクション・チャートで ちょうど3万7、8000がトロポになってますので、押さえられると揺れるかもしれないですね
 トロポポーズは経度によって異なるので南北に飛行する場合はどうしても影響を受けてしまう。今日は3万7000から3万9000フィートにある。それでその付近の気流の悪化が予測されるのだ。
エアシステム186 レジューム ノーマル スピード」(エアシステム186便へ 標準のスピードにして下さい)
エアシステム186 ノーマル スピード」(標準のスピードにします)
ジャパンエア544 リービング 240 フォァ 13000」(日本航空544便です 2万4000フィートから1万3000フィートに降下しています)
ジャパンエア544 ラジャ」(了解しました)
 管制官が下降する飛行機を列に並べたところでスピード制限を解除した。少しは緩和されたが、阿見VORへ下降する航空機の調整がまだつづいている。
エアシステム154 レジューム ノーマル スピード」(エアシステム154便へ 標準のスピードにして下さい)
エアシステム154 ノーマル スピード」(標準のスピードにします)
ジャパンエア544 レジューム ノーマル スピード」(日本航空544便へ 標準のスピードにして下さい)
ジャパンエア544 レジューム ノーマル スピード」(標準のスピードにします)
 航路上では屡々起こることであるが、もし、突然に軍用機が航空路の中に進入してきた場合はどうするのであろうか。軍用機は必ずしも決まった航空路を飛行するわけではないので尚更厄介である。 そのときは旅客機のパイロットは偶然レーダーでみつけるか、肉眼で視認するしか他機の存在を知ることはできないので、軍用機の突然の飛行を旅客機のパイロットに逐一知らせるのも管制官の大切な業務のひとつである。過去、この東北、雫石上空で全日空機と自衛隊戦闘機の空中衝突があったことが思い出される。
あのせいかな? トラフィック 10 オクロック」 と森田機長が窓に顔をよせて10時方向の下を飛ぶ銀色の機影を指差した。その飛行機との間隔を取るために管制官は115便を高度37000フィートで押さえていたものと考えられるのだ。
近いですね」と木村副操縦士。
 管制官がエアシステム154便を羽田進入管制に移管させた。
エアシステム154 コンタクト トーキョー・アプローチ 119.1」(エアシステム154便へ 以後は羽田空港進入管制119.1メガヘルツに連絡して下さい)
エアシステム154 トーキョー 119.1 グッディ」(羽田空港進入管制119.1メガヘルツに連絡します さよなら)
グッディ」(さよなら)
 雲もなくすっきりと青空が広がっているのに3万7000フィートに近づくと、予報通り気流が悪くなって機体が揺れ始めた。成層圏と対流圏の境目、トロポポーズに入ったのである。
 ブザーが鳴ってあと1000フィートで高度3万7000フィートに到達することを知らせる。
1000 レベル オフ」巡航高度まで残り1000フィートであることを森田機長が伝えた。かなり揺れがひどい。
ラジャ」(了解)と木村副操縦士。
 森田機長が4万1000フィートへの上昇許可をリクエストする。早く気流の悪いトロポポーズを抜け出したいのだ。
エアシステム115 スタンディング バイ ハイヤー 410」(エアシステム115便です 4万1000フィートに上昇する準備ができています)
 ここで管制官が交代した。新しい管制官はエアシステム115便にすぐ上昇許可を出した。
エアシステム115 クライム アンド メインテイン 410」(エアシステム115便へ 4万1000フィートまで上昇して下さい)
エアシステム115 サンキュ クライム 410」(ありがとう 4万1000フィートまで上昇します)
 森田機長はにやりと笑って素早く高度設定をして上昇に移った。
410 クライム」(4万1000フィートへ上昇します)
はい スラストレフ V-NAV スピード」(ヴァーチカル・ナビゲーション作動)
スラストレフ V-NAV スピード」(ヴァーチカル・ナビゲーション作動)
エアシステム154 コンタクト トーキョー・アプローチ 119.1」(エアシステム154便へ 以後は羽田空港進入管制119.1メガヘルツに連絡して下さい)
スピード インターベーション
ラジャ
 高度が上がるにつれて空の青色がますます濃紺色に変わっていく。
マイナス58度…59度」 森田機長が外気温をチェックした。気温が低いと気流が悪い。115便はまだ揺れが続いている。 
マック82」 森田機長が上昇スピードを少し上げた。ともかく、この気流をぬけなければキャビンサービスに影響する。
ジャパンエア544 コンタクト トーキョー・アプローチ 119.1」(日本航空544便です 以後は羽田空港進入管制119.1メガヘルツに連絡して下さい) 管制官が日本航空544便を羽田進入管制へ移管させた。
ジャパンエア544 アプローチ 119.1 グッディ」(羽田空港進入管制119.1メガヘルツに連絡します さよなら)
グッディ」(さよなら)
ちょっと揺れましたから、いま減速して 早く(早めに) 上昇したんです
 森田機長は揺れる時間を少しでも短くしようと上昇角度(ピッチ)を少し増やして高度4万1000フィートを目指していた。そんな対応にもベテラン機長の乗客への心配りが現れる。上空は雲もなくすっきりと濃い青空が広がってやっと揺れも収まった。
風も弱まりましたね」先ほどまで100ノット近く吹いていた風が今では80ノットほどになっている。木村副操縦士も緊張をほぐすように肩をまわした。
 エアシステム186便A300が下降のクリアランスを求める。
トーキョー・コントロール エアシステム186 リクエスト ディセンド」(東京コントロール管制へ 降下許可願います)
エアシステム186 ディセンド クロス アミ 13000 QNH3019」(エアシステム186便へ 降下し阿見を1万3千フィートで通過して下さい 気圧は3019インチです)
3019 リービング 240 アミ 13000」(気圧は3019インチ、2万4000フィートから降下し阿見を1万3000フィートで通過します)
スピード インターベーション
ラジャ
緑のマークが(計器の中の)飛行機(マーク)の前にあるんですが?あれは何ですか」 
 計器の中で進行方向を示す飛行機マークあり、その前に緑色のしるしがついていることを森田機長が説明する。
はい これはこの4万1000(フィート)の到達するポイントなんです」 
 飛行プランによると那須VOR(NZE)を過ぎて83マイル地点が4万1000フィートに到達するリーチングポイントになっている。その位置に緑のマークが付いているのだ。
エアシステム115 コンタクト トーキョー 118.9」(エアシステム115便へ 以後は東京コントロール118.9メガヘルツに連絡して下さい) 
 管制官が115便に東京コントロール東北セクターへの移るようにという交信が入った。
エアシステム115 トーキョー・コントロール 118.9
(東京コントロール118.9メガヘルツに連絡します)
 これより東京コントロール東北セクターを飛行する。そして札幌コントロール三沢東セクターへと引き継がれてゆくのだ。 
トーキョー・コントロール エアシステム115 リービング 396 クライム 410
(東京コントロール管制へ エアシステム115便です 現在3万9600フィートで4万1000フィートに向けて上昇中です)
エアシステム115 トーキョー・コントロール ラジャ」(了解しました)
 那須VOR(NZE)を過ぎた。、あと1000フィートで高度4万1000フィートに達する。
1000 レベル オフ」森田機長が高度4万フィート通過をコールする。
ラジャ」(了解)
 管制官が仙台に着陸予定のJA8846便に下降の許可を与えた。
ジュリエット アルファ 8846 ディセンド アンド メインテイン 8000 QNH3019」(JA8846へ 8000フィートまで降下して下さい 気圧は3019インチです)
8846 ディセンド アンド メインテイン 8000 QNH3019」(8000フィートまで降下します 気圧は3019インチ)
ラジャ」(了解)
(気温が)5度ぐらい、上がってきた トップは3万9000
それぐらいだったですね
 トロポポーズは予想通り3万7000フィートから3万9000フィートであった。揺れは完全に収まった。115便は福島県上空高度4万1000フィートでクルージングに移った。
 ここで、これまでの飛行航路を要約すると、115便は羽田空港を離陸し茨城県の守谷(SNE)から空の東北ハイウェイY11に乗った。守谷を過ぎて栃木県に入り下妻市の東をぬけ東北本線と平行して飛び矢板市の東から福島県那須VOR(NEZ)に向かい、現在、高度4万1000フィートで那須高原上空を過ぎた。このあと東北自動車道路としばらく平行して飛び、白河市の西から猪苗代湖の東、安達太良山の上空から蔵王高原上空へと福島県を縦断する。

武田一男

JAS BOEING777 Cockpit「機長席」/全11回
羽田〜新千歳 フライトドキュメント
録音:武田一男/解説:武田一男・桃田素晶 ©Director’s House

【著作について】「機長席」の文章、及び音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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    • B777
    • 2009年 10月26日 5:55pm

    東北上空地図、逆さになっていませんか?

    • 竜子
    • 2009年 10月26日 7:35pm

    ■B777さん
    進路が上方向とのことで、このままでよいそうです。(もちろん、逆さにしてもよいのですが…)
    ご報告ありがとうございました!

    • B777
    • 2009年 10月26日 7:54pm

    失礼しました。

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