機長席第11回 新千歳空港着陸

新千歳空港着陸

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▼新千歳空港エアポートチャート
千歳空港エアポートチャート

▼新千歳空港トラフィックパターン
新千歳空港トラフィックパターン

 夕べの佇みが忍ぶ機窓にはオレンジ色の光陽が北の大地の田園地帯を潤し、のどかな早春の黄昏の中でそれは絵のように美しい。低い安定したエンジン音が音楽のように響くこの時間はすべてがゆっくりと過ぎていく。
じゃあ、早来だけ言っときますので」と木村副操縦士は管制に伝えた。
アプローチ エアシステム115 ナウ ハヤキタ インサイト
(こちらエアシステム115便です。早来に近づいています。早来を視認しました)
115 ラジャ リポート エアポート インサイト
(115便へ 了解しました、空港を視認しましたら報告して下さい)
エアシステム115」(了解しました)
 目のまえに小高い丘が表れる。森田機長がCRTスクリーンの中でウェイポイントを確認した。
早来ですね
はい、1000 レベル オフ」(早来通過まであと高度1000フィートです)
エアポート インサイト」(空港を視認)と森田機長。左手、オレンジ色の光りの中に空港が見える。すぐ木村副操縦士が報告した。
レーダー エアシステム115 エアポート インサイト
(進入管制へ。こちらエアシステム115便です。空港を視認しました)
 空港が目視出来た115便に管制官はあらためて有視界進入の許可を出した。
115 ラジャ クリア フォア ビジュアル アプローチ ランウェイ 19レフト ヴィア ハヤキタ メインテイン 3000 トゥ ハヤキタ」(115便、了解しました 3000フィートで早来を通過し、19レフトに有視界進入をして下さい)
クリア フォア ビジュアル アプローチ 19レフト ヴィア ハヤキタ メインテイン 3000 トゥ ハヤキタ エアシステム115
(エアシステム115便です。3000フィートで早来を通過し、19レフトに有視界進入をします)
クリア ビジュアル アプローチ」(有視界進入します)
クリア ビジュアル アプローチ」(了解しました)
 ふたりのバイロットはお互いに有視界進入方式を確認しあう。
スピード V‐NAV パス」(ヴァーチカル・ナビゲーション作動)
スピード V‐NAV パス… ビジュアル アプローチ アルト ホールド
(ヴァーチカル・ナビゲーション作動、進入高度を維持)
アルト」(高度維持しています)
アルト」(了解)
エアシステム115 4 マイル サウス ハヤキタ コンタクト タワー 118.8
(エアシステム115便へ 現在地は早来の南4マイルです。以後は千歳タワー管制118.8メガヘルツに連絡して下さい)
コンタクト タワー 118.8 エアシステム115」(了解しました)
フラップ1」(下げ翼を1度にして下さい。)と森田機長が指示した。
フラップ1」(了解しました)木村副操縦士はフラップを下げると新千歳空港のタワー管制を呼んだ。
チトセ・タワー エアシステム115 2 マイル トゥ ハヤキタ スポット 16
(千歳タワー管制へ こちらエアシステム115便です。早来の2マイル手前です スポット16番の予定です)
エアシステム115 タワー ラジャ リポート デパート ハヤキタ ランウェイ 19レフト ウィンド 220 アット 12」(エアシステム115便へ 了解しました 早来を超えるときに報告して下さい 滑走路19レフトは風向が220度から12ノットです)
チェック デパート ハヤキタ 19レフト エアシステム115」(早来上空で報告します)
フラップ1」下げ翼が1度になったことを計器で確認して木村副操縦士が報告した。
ラジャ」(了解)
ノースエアー6252 コンタクト グランド 121.6」(ノースエアー6252便へ 以後は千歳グランド管制121.6メガヘルツに連絡して下さい)エアシステム115便の前に着陸したノースエアー機がグランドコントロール管制に移管される交信が聞こえる。
ノースエアー6252 コンタクト グランド 121.6」(了解しました)
フラップ5」(下げ翼を5度にして下さい)と森田機長。
フラップ5」(了解しました)すぐに木村副操縦士がフラップを下げた。
1600 1600」トラフィックパターンに入った高度を1600フィートに設定する。
ラジャ」(了解)
フライト レベル チェンジ」(高度変更します)と森田機長。
スラスト フライト レベル チェンジ スピード
(オートスロットル・モード確認、下降速度にします)
スラスト フライト レベル チェンジ スピード
(オートスロットル・モード確認、下降速度)

 115便は早来上空に達した。
チトセ・タワー エアシステム115 デパート ハヤキタ」(千歳タワー管制へ。こちらエアシステム115便です。早来に到達しました)
エアシステム115 ラジャ リポート ベース ランウェイ 19レフト ユー ア ナンバー1 ノー トラフィック」(エアシステム115便へ 了解しました ベースレグに入ったら報告して下さい 19レフトには1番目の着陸になります 滑走路には航空機はいません)
ラジャ」(了解)
リポート ベース 19レフト ウィ アー ナンバー1 エアシステム115」(ベースレグで報告します 滑走路は19レフトに1番目に着陸します)と木村副操縦士が答えた。
 まもなく115便はダウンウィンドの南端に到達する。そこでダウンウィンドに入るために右旋回が始まるのだ。
チェック ライト サイド」右側を確認して下さいと森田機長が指示する。
ライト クリア」右側を確認して木村副操縦士が報告する。そして「カンパニーやっちゃいますね」とエアシステム新千歳空港の運航部にカンパニー無線を入れる。115便はゆっくりと右旋回して機首方向010度でランウェイ東側のダウンウィンドに入った。
エアシステム千歳 115便 ダウンウィンドに入りました スポット16番… スピード アルト
スピード アルト」(了解しました)と森田機長。
エアシステム千歳 了解 16 クリアです どうぞ
了解 16番 クリア
トラック セレクト

トラック セレクト
 そのとき管制官が離陸する飛行機があることを115便に告げる。
エアシステム115 トライスター デパーティング ランウェイ 18レフト
(滑走路18レフトに航空機が離陸しています)
エアシステム115 ラジャ」(了解しました)
チェック ライト サイド」(右側を確認して下さい)
クリア」(障害物なし)
トラック セレクト 002
 現在、115便は滑走路と平行して機首方向310度で北北東へ飛行している。高度1600フィート。左手に新千歳空港が広がっている。これから左旋回をして滑走路の軸線へ入りそのまま19レフトへ着陸するのだ。
ラジャ」(了解しました)
アビーム スレッショルド
ゴーアラウンド アルト… フラップ20」と森田機長。
(ゴーアラウンドの高度を確認、下げ翼を20度にして下さい)
フラップ20」(下げ翼を20度にします)
 そして森田機長は車輪を下ろす指示を出した。
ギア ダウン」(車輪を下ろして下さい)
ギア ダウン」(車輪を下ろします)
ギア ダウン フラップ20」(車輪を下ろして、下げ翼を20度)
 すぐ、後を飛ぶ全日空67便の交信が入る。
チトセ・タワー オールニッポン67 オーバー ハヤキタ 3000」(千歳タワー管制へ 早来を通過し、3000フィートで飛行しています)
オールニッポン67 タワー ラジャ レポート レフト ハンド ダウンウィンズレグ ランウェイ 19レフト ウィンド 220 アット 14 デュー トゥ プロシーディング トラフィック ターニング ベース ランウェイ 19レフト」(全日空67便へ 滑走路19レフトの左手のダウンウィンドに入ったら報告して下さい 風は220度から14ノットです 滑走路19レフトのターニングベースに飛行機がいます)
エンター リポート エンター レフト ダウンウィンド オールニッポン67」(左のダウンウィンドに入ったら、報告します)
マイサイド FD オフ」(自動操縦をオフ)と森田機長。
ラジャ ギア ダウン フラップ20」(了解、車輪が下りて、下げ翼20度になりました)木村副操縦士が計器を見て確認した。115便はダウンウィンド・レグの外れに到達した。森田機長が手動で左旋回に入ることを告げた。すかさず、木村副操縦士がタワー管制に報告する。
レフト クリア レフト ターン」(左側、障害物なし 左旋回します)
チトセ・タワー エアシステム115 ターニング ベース 」(千歳タワー管制へ 旋回地点です)

 管制塔が115便に着陸の許可を出す。
エアシステム115 タワー リチェックド ギアダウン クリア トゥ ランド ランウェイ 19レフト ウィンド 220 アット 14」(エアシステム115便へ ギアが降りたのを確認してください。滑走路19Lに着陸を許可します 風は220度から14ノットです)
ラジャ」(了解)
クリア トゥ ランド 19レフト エアシステム115」滑走路19Lに着陸します、と木村副操縦士が確認の交信を入れた。
クリア トゥ ランド、セット ランウェイ トラック」(着陸許可確認、滑走路を設定)
クリア トゥ ランド セット ランウェイ トラック」(着陸許可確認、滑走路を設定)
 トリプルセブンはゆっくりと左旋回に移った。
フラップ30 セット スピード」(下げ翼を30度に、着陸スピードをセット)
フラップ30、セット スピード… フラップ30」(下げ翼を30度、着陸スピードをセットします… 下げ翼が30度になりました)
ラジャ ランディング・チェックリスト」(了解、着陸の計器点検をして下さい)
ランディング・チェックリスト コンプリーテッド」(着陸の計器点検、完了しました)
チェックリスト コンプリーテッド」(計器点検、完了)
 115便は機首を190度にして滑走路の軸線に乗った。
1000」(1000フィート通過) 高度1000フィート、あと300メートルだ。
チェック、ランディング…」高度確認した森田機長は着陸することを告げた。
オートスロットル オフ」(了解しました、着陸します… オートスロットルをオフにします
 コックピットにアラームが響く。森田機長がオートスロットルをオフにしたのだ。

 滑走路が目の前に近づいた。
300」と木村副操縦士。あと90メートル。滑走路が矢のように後方へ飛ぶ。
スタビライズ」機体姿勢が安定していることを森田機長が確認した。
 接地に際して電波高度計と連動したコンピューターが、50フィートから接地する10フィート前までの高度をコールする。
 50フィート。40フィート。30フィート。20フィート。10フィート
 メインギヤ(翼についている主車輪)が先に接地し、それからノーズギヤが地面についた。すぐに逆噴射のエンジン音が聞こえる。
マニュアル ブレーキ」森田機長がブレーキで機体の速度をさらに落とす。そこへ管制官からの指示が来た。
エアシステム115 ターン ライト ブラボー9 タクシー ダウン ランウェイ 19ライト アルファ10」(エアシステム115便へ ブラボー9に入り、19Rからアルファ10に入って下さい)
 着陸後、滑走路19レフトの末端にある誘導路B9に右折し滑走路19ライトの端を斜めに横切ってタクシーウェイの始まりであるA10地点に行くようにという管制の指示である。
ラジャ」(了解)
ライト ブラボー9 タクシー ダウン ランウェイ 19ライト アルファ10 エアシステム115」(ブラボー9に入り、19Rからアルファ10に入ります)
60!」 木村副操縦士がスピードが60ノットになったことを告げた。そのとき115便は誘導路ブラボー9の入り口近くに来ていた。「はい、ブラボー9」と森田機長。
ライト クリア」(右側、障害物ありません) 木村副操縦士がブラボー9に入るため機体を右に回すのでライトサイドを確認する。
ラジャ」と森田機長、ハンドルを右に回しゆっくりと115便を誘導路へ入れた。115便が誘導路に入ったことを確認して管制官が続いて進入してくる全日空67便に着陸許可を与えた。
オールニッポン67 チェック ギアダウン クリア トゥ ランド 19レフト ウィンド 220 アット 14 ボーイング777 クリアリング ランウェイ」(全日空67便へ ギアダウンしたことをチェックしてください。滑走路19Lの着陸を許可します 風は220度から14ノット、ボーイング777が滑走路にいます)
クリア トゥ ランド オールニッポン67」(着陸します)
クリア タクシー ダウン」115便が滑走路19ライトからタクシーウェイA10に向かった。
ラジャ… クリア タクシー ダウン、チェック ライト サイド」(了解しました 右側を確認して下さい)
クリア」(障害物ありません) 着陸間際で全日空67便が滑走路上の風の状態を管制官に尋ねた。
オールニッポン67 チェック イット ウィンド プリーズ」(風向を教えて下さい)
220 アット 13」(220度から13ノットです)
ラジャ」(了解しました)
ライト クリア」(右側、障害物ありません)
ラジャ」(了解しました)
ライト サイド クリア」(右側、障害物ありません)
ラジャ」(了解しました)

 115便の管制がグランドコントロールに移管される。
エアシステム115 コンタクト グランド 121.6」(エアシステム115便へ 千歳グランド管制121.6メガヘルツに連絡して下さい)
エアシステム115 121.6」(了解しました)
チトセ・グランド エアシステム115 アルファ10 スポット16
(千歳グランド管制へ エアシステム115便です アルファ10に入ります スポットは16番です)
エアシステム115 グランド タクシー トゥ スポット16 ヴィア ホテル6 タンゴ2」(エアシステム115便へ ホテル6、タンゴ2経由で、スポット16番へ走行して下さい)
ホテル6 タンゴ2 トゥ スポット16 エアシステム115」(ホテル6、タンゴ2経由で、スポット16番へ走行します)
ホテル6、手前ですね
はい、そうです
グランド オールニッポン440 リクエスト プッシュバック スポット5 シエラ」(千歳グランド管制へ 全日空440便です スポット5番にいます プッシュバックの許可願います ATISはシエラ[S]を入手しています)
 札幌を16時30分に出発し新潟に向かう全日空440便A-320の交信である。
オールニッポン440 グランド プッシュバック アプルーブ フェース トゥ サウス」(全日空440便へ 機首を南向きにしてください)
 16時25分。115便は千歳空港へ着陸した。飛行時間は1時間11分。
 使用燃料は17300ポンド。予定より1000ポンド少なく、予定より5分早く千歳空港に到着したのであった。

武田一男

JAS BOEING777 Cockpit「機長席」/全11回
羽田〜新千歳 フライトドキュメント
録音:武田一男/解説:武田一男・桃田素晶 ©Director’s House

【著作について】「機長席」の文章、及び音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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    • turbo
    • 2009年 12月2日 9:31pm

    最終回の中盤で「ハブ ビーン セレクション」というところがありますが、「アビーム スレッショルド!/abeam threshold!(滑走路端の真横)」というコールではないでしょうか?

    • 竜子
    • 2009年 12月3日 12:29pm

    ■Turboさん
    ご指摘いただきどうもありがとうございます。
    すみません、修正が遅くなりました。
    おっしゃる通り、「abeam threshold」でした。
    また、上記に加え、
    「タワー チェック イット アウト」を
    「タワー リチェック ギアダウン」と修正し、解説を一部修正いたしました。
    Turboさん、修正のご連絡をくださった方、どうもありがとうございました。

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