空の青さをみつめていると

前回は武田さんに航空小説をたくさん紹介していただいたので、今日はちょっとゆるめに、そらの本を紹介します。

ところでエーリッヒ・ケストナーという、ドイツの作家をご存知ですか?
そのケストナーの詩集に「人生処方詩集」って本がある。たしか私が最初に読んだのは「処方箋」って名前がついた記憶だったんだけど…、ないみたい。私も「人生処方詩集」をいま愛用しているのだけれども、でもタイトルは「処方箋」っていうほうがぴったり合う。ま、愛用といっても、3、4年に1回開けばいい方なんだけどね。それでもこの本との付き合いは15年になる。
ケストナーは「ふたりのロッテ」だとかを書いた児童文学で知られる作家で、大好きな人のひとりなんだけど、この本はちょっと趣向がちがう。内容はいろんな詩が「お薬」として処方される、「家庭薬局」というものなんだ。
頭痛には頭痛薬を、胃もたれには胃薬を、喉の痛みにはうがい薬を、絆創膏にヨードチンキ…、こんな富山の薬売りみたいな家庭常備薬があっても、効かない時がどうしてもある。そんなときにこの詩集を。「詩」なので、その他の解説がないという、いかにも「薬」的なのがミソ。
ケストナーいわく「類似治療について、行っておかなければならないことは、手榴弾をもって大ざっぱに的を狙うよりも、一本の矢をもって黒星に射あてる方がいっそう有効だ、ということである」だってさ。だから索引つきだ。たとえばこんな感じ。

年齢が悲しくなったら→○ページへ
知ったかぶりをするやつがいたら→○ページへ
春が近づいたら→○ページ、○ページへ
お金が少ししかなかったら→○ページ、○ページ、○ページ、○ページ、○ページへ
幸福があまりに遅く来たら→○ページ、○ページへ
子供を見たら→○ページ、○ページ、○ページ、○ページへ
自信がくらついたら→○ページ、○ページ、○ページへ
生活に疲れたら→○ページ、○ページ、○ページへ

「人生処方詩集」

まだまだ病状はたくさん索引にあるんだけど…、ともかく序章の最後はこんな言葉で締めくくられている。
「さらば、服用したまえ!」
人生処方詩集 エーリッヒ・ケストナー
「人生処方詩集」(ちくま文庫)
 E. ケストナー,小松 太郎訳

前置きが長くなったけれど、詩集、ってのはいつもそういう風に役目を果たすよね。
日本の詩人といえば、谷川俊太郎さん。先日、「クリスマスにプレゼントしたい飛行機の絵本」で紹介した「わたしはとべる」の和訳をしたのも谷川俊太郎さんだったりと、絵本を多く手がけていて、「そら」についての著書もある。

空の青さをみつめていると―谷川俊太郎詩集 1 (角川文庫 (2559))
「空の青さをみつめていると」 谷川 俊太郎

でもこの詩集のタイトルでもある「空の青さをみつめていると」というのは、「六十二のソネット」の中のひとつ。
この一片を紹介します。

空の青さをみつめていると
私に帰るところがあるような気がする
だが雲を通つてきた明るさは
もはや空へは帰つてゆかない

陽は絶えず豪華に捨てている
夜になつても私達は拾うのに忙しい
人はすべていやしい生まれなので
樹のように豊かに休むことがない

窓があふれたものを切りとつている
私は宇宙以外の部屋を欲しない
そのため私は人と不和になる

在ることは空間や時間を傷つけることだ
そして痛みがむしろ私を責める
私が去ると私の健康が戻つてくるだろう

六十二のソネット 41(谷川俊太郎)

谷川俊太郎さんの詩には、空が多く登場する。だからアラーキーこと、写真家の荒木経惟とは「写真ノ中ノ空」という本も出している。
いわば大人向けの絵本だね。
そらの写真、雲の写真、そらの写真、飛行機雲の写真、雲の写真、そらの写真…。
この本の中に「空の青さをみつめていると」ではじまる詩が紹介されている。
そして、こっちは空や雲の詩で埋め尽くされているので、空に思いを馳せる人にオススメの詩集だとは思う。べつになんてことないときに読んでもただの詩なんだけど、たまにドクター・ケストナーの薬箱を開くように、詩集を開きたくなるときがある。でも、ドクター・ケストナーは、ちょっとおっかない先生なんだよね。
「使用法の書いてない、レッテルの貼ってない家庭薬局の内容はすべてなんの意義があろう? 全然意義がない! 家庭薬局は毒薬棚になるかもしれない」ときた。だから、「人生処方詩集」には索引がついてるわけだけども…。

写真ノ中ノ空
「写真ノ中ノ空」 谷川 俊太郎,荒木 経惟

空の青さをみつめてみたくって、空を見上げてみるんだけれども、今日は、空を眺めても雲がはっていて、なんだかなぁ…。
とかいって家で過ごすのもなんだから、表に出てこようと思う。

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    • B777
    • 2010年 1月5日 2:27pm

    色んな本を読まれますね。
    私は基本的にあまり読まないですし、読む時間を確保するのも、やっとです。それと読み出すと真夜中だったり、朝方になったりするので、体が堪えます。「沈まぬ太陽」も幾度となく朝方を迎え、一睡もしないまま出社してフラフラになりながら仕事しました。
    どうしたら、気持ちよく読めるのか悩みます。
    「シャドー81」も朝方まで読むんだろうか・・・
    その前に、買わないと・・・
    、と言うことで、カタコトの標準語バージョンのB777でした。

    • 竜子
    • 2010年 1月5日 4:41pm

    ■B777さん
    コメントありがとうございます!
    いや…わたし、恥ずかしながら航空冒険小説をあんまり読んでいないんです。
    もしや通勤は車ですか?
    読書時間は移動時間に組み込むのがいちばん効率的ですよね。
    気持ちよく読むためには…頭を緩くして気が向くまで読まないことかも…ですね(笑)

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