「ボーイング767コックピット ANAフェリーフライト」

今日は仕事のことを書きます。

ネット配信用航空サウンドの9月配信分を編集していますが、その中の一作品「ボーイング767コックピット ANAフェリーフライト」を今終えたところです。

これは全日空が購入した最初の767二機をシアトルからアンカレッジ経由で羽田まで空輸するドキュメンタリーですが、その途中、いろんなことがありました。カナダ上空でオートパイロットが故障したり、交信で「オールニッポン8481」とカナダやアメリカの管制に機番のコールをすると、「ジャパンエアー 8481」と返されてその都度、怒ったりがっかりしたり・・、慣れない通過ポイントの位置報告ができなかったり、これも慣れないHF交信が聞き取れずに、後から飛んでくる日本航空便に無線で通訳してもらったり・・今の全日空ではとても考えられない海外フライト「創世記」の姿が取材テープには残っているのです。当初、CDで発売したときは、それらをすべてカットしてノーマルな飛行をした767のイメージで編集していたのですが、今回は年月も経ったし全日空の、そして日本の航空歴史の一端として残すためにも、カットした部分も入れて再編集したのですが、聴き終えて前回よりとても人間的な暖かみが加わり微笑ましく納得出来る作品になりました。

コックピット録音中には実はいろいろなことがあって、たとえば「機長席」の取材のとき777が木更津の手前でジャンボ機の後流につっこみ、震度6強の直下型地震に遭遇したように上下に揺れパイロットも思わず声を出すシーンがありましたが、発売に際してはすべてカットしました。エールフランスのコックピット取材では、モロッコに着陸する寸前、離陸してきたルフトハンザ機と正面衝突しそうになったこともCDではカット。
でも、この767や「Man Without Woman」などは「直角な性格」で空に挑むパイロットの姿をそのまま描くのがむしろ良いのかもしれませんね。竜子さんが「台風飛行」のことをジャーナリズムの香りがすると過大に褒めてくれましたが、ジャーナリズムまではほど遠いにしても、聴く人の心に少しは触れることが出来るのかも、と感じています。
では、また。

武田一男

【竜子から】
武田さんの「機長席」(朝日ソノラマ)、これはずいぶん売れたようです。
ということは、この本を購入されたのは、飛行機ファンだけではないのでしょうか? そんな「機長席」をお持ちの方は必見の裏話ですね!

機長席(←Amazonの紹介ページへ)
武田 一男(朝日ソノラマ)
機長席(朝日ソノラマ)武田一男

台風飛行(←Amazonの紹介ページへ)
武田 一男(朝日ソノラマ)
台風飛行(朝日ソノラマ)武田一男

「Man Without Woman」、こちらはレコードです。
「Man Without Woman ヨーロッパ-東京16,000キロエアバスA300大空輸作戦」上巻/下巻(いずれも2枚組)
がタイトルです。竜子は下巻のみで、上巻は持っていません。
これは…なかなか手に入らないと思うので、今はオススメはしかねるのですが、おおざっぱにいってしまうと、「台風飛行」同様に「熱い」オトコのヒューマンドラマ。

東亜国内航空のA300第1号機の3日にわたるフェリーを追っています。全行程16,000キロで16カ国を通過・寄港しているのですが、当時の世界情勢ゆえの緊迫したドラマがあったり、いまではそんなにたいそうなことではないかもしれないけど、当時、日本人によって大型機を運ぶことがどれだけスケールの大きなオペレーションだったのかを思うだけでも胸が熱くなるのです。
そのうち配信があることを期待しましょう(笑)

私からの補足(蛇足)が長くなってしまいました。

【武田一男さんプロフィール】映像ディレクター・音楽ディレクター・航空サウンドディレクター。
「機長席」(朝日ソノラマ)、「台風飛行」(朝日ソノラマ)、「ラストフライト」(愛育社)などの航空ドキュメンタリーの著作をはじめ、雲の写真集「成層圏飛行」など数多くの執筆、著作がある。

にほんブログ村 その他趣味ブログ 航空・飛行機へ
    • まったり
    • 2008年 7月3日 9:52am

    実はあまり航空無線に関しては
    撮影時にちょっと活用する程度だったので詳しくないんです。
    その為、無線の内容などは把握しにくそうですが、8481が
    どうやってフェリーされてきたのか気になります!!
    あのA300の初フェリーにもあれだけの日時が掛かるとは
    驚きですね。確かTDAの初A300はA300-600Rではない
    A300B2K-3Cと呼ばれるタイプで航続距離もフルペイロードで
    2000km程度だから無理もないでしょう・・
    そんな事を思うと今のA330-200なら日本〜欧州間をひとっ飛びで
    来れるようになったのは凄い事なんだなと今更ながら思えます。

    • 武田一男
    • 2008年 7月3日 8:55pm

    竜子様 まったりさんのコメントにゲストの僕が直接答えていいのか、どうか、わかりませんが、これは僕の方が事情が分かるので許可なく答えます。許して下さい。
    ●まったりさんへ
    ANAフェリーのコックピットは、今のANAではとても考えられない別世界でした。歴史ですね。近々、竜子さんにこのCDRを送りますので彼女と話してコピーをもらって下さい。
    東亜国内航空のA300はご指摘通り短距離機のB2です。だから大変でした。フランスを出て二日目の寄港地アブダビまで飛ばねばならない、しかし航行距離が短いのでアラビア半島が越えられないのです。だからどこかで給油が必要。アテネで給油してレバノン、イラクを通るR-19ルートを使えばアブダビまで最短ルートですが、一週間まえから始まったイランとイラクの戦争のため飛行できない。エルサレムで給油すると以後のアラブの飛行許可が下りないのでこれは論外。となれば、カイロまで飛んで給油しそのままエジプトをナイル川にそって南下、ルクソールで左折しルートA-1に入りサウジアラビアとイラクの国境にそってアラビア半島を横断、バーレンからアラブ首長国に入る方法しかないのです。唯、この場合距離がめっぽう長くなるので、高度33000フィート以上で飛べて強い向かえ風がなければという好条件で何とかアブダビまでとどくのです。が、途中、戦争による飛行制限がなどあって、高度をそれ以下に落として飛ぶように管制の指示が来ればカイロに戻るかサハラ砂漠に不時着してフェリーは終わり、というシビアーな状態でした。結局、何とかアブダビにはとどいたのですが、それはそれで途中、いろいろありました。まず、カイロではエアバス発行給油カードが使えす(当時のエアバス社はまだ信用がなかったのでしょう。とくにアラブ世界では)約200万円の現金が必要になりその調達が大変でした。ともかく拝み倒して給油してもらいアラビア半島に入ると今度は通信不能・・。戦争下のイラク国境上空ですから、国籍不明機に戦闘機が迎撃するかもしれないと、もうコックピットは大緊張状態。このとき前を飛行しているサウジアラビア機にVHFで通信代行をしてもらって国籍不明機ではなくなり、バーレン近くで通信も可能になってアブダビに無事着陸。でも、東亜国内航空のパイロットの腕は見事でしたね。トレーニングフライトでエアバス社の教官が絶賛していました。その頃の香港はまだカイタク空港でした。ご承知のように着陸が難しい空港。ビルの間をぬいながら下降し最後は九龍の山の絶壁ぶつかる寸前、絶壁に書かれた白と黒のフラッグを確認するやすぐ右旋回で着陸する難所も、初見、鼻歌で見事なランディング。そして彼らが最も感激したのは、台北の管制エリアが終わり、沖縄の那覇コントロールに移管されたときでしたね。やっと日本の空に帰ってきたとお互いに握手握手・・・。ともかく手に汗握る3日間でした。           武田一男

    • まったり
    • 2008年 7月3日 11:05pm

    ●武田様
    貴重なお話ありがとうございます!
    イ・イ戦争勃発で使えないフライトルートが生じるとは
    予想外もいいところですね。カイロ〜アブダビの間は
    ルクソールから折れると3000キロ近くありますから
    フェリーだから、ペイロードは抑えられてもキツいフライト
    だったんでしょうね。給油カードの存在はパンナム社の
    カードなどを見たことありますが、黎明期のエアバス社だと
    まだ信用がなかったと聞くのは驚きですね。サウディア機が
    VHFで通信を代行するなんて泣けますね。何かまるで砂漠の
    オアシスみたいな感じで、砂漠を知り尽くしたサウディア機が
    ヘルプするなんてイイ話です。香港の啓徳空港は私にとって
    一生忘れる事が出来ない空港であり、あのライオンロックを
    TDAのA300が香港カーブをするなんて想像するだけで
    たまらないですね。男のドラマを感じますよね。。。

    • 竜子
    • 2008年 7月6日 5:16am

    中東、アフリカ大陸の地理がさっぱりわからないので、武田さんの説明してくれたルートを地球儀で追ってみました。
    ひどいルートですね! ひどいというのは、目もくらむルートという意味で。あらためてビックリ! です。
    沖縄の管制に入っただけで、胸に込み上げるものがあったのもうなづけるなぁ…。
    いいですね、「オトコ」って。

  1. みなさま、はじめまして。
    また、竜子さまコメントいただいていたのを見過ごしていました、申し訳ありません。
    この記事に触発されて”台風飛行”探して手にいれました。
    ただ、CDが未開封なので聞きたくてしょうがないのですが、
    まだ見開封状態ですが・・・。
    フェリーされて新しい機体が来るたびに狂喜乱舞している
    私ですが、こんな話があったとは・・・。
    これからは心して狂喜乱舞いたします。

    • 竜子
    • 2008年 7月17日 12:37am

    ■DAIZUさん
    こんにちわ!
    いらっしゃい(場末のバーのママ風)
    探して手に入れたんですねっ!
    もしかしてDAIZUさんは、コレクション派ですか?!
    でもそれは…はやく開封しないことには!(笑)
    グッときますよ、YSの話。
    DAIZUさんもよく羽田に行かれてますね。
    写真、楽しんで拝見しております!

  1. トラックバック 0