YS-11コックピット・ドキュメント「雨中航路」第3回

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航空ドキュメンタリー YS-11コックピット「雨中航路」

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東京湾を上昇、横須賀へ

「オールニッポン589 トラフィック 12 オクロック 12 マイル サウス バンド オールニッポン ワイエス イレブン リービング 7900 アンド クライム トゥ 11000」(全日空589便へ。12時の方向12マイル先に南から離陸したYS-11が7900フィートに向けて現在1100フィートを通過しています。)
「ラジャ オールニッポン589 ルッキング」(了解しました。確認中です。)
 今日は西日本から東日本にかけて梅雨前線が停滞し、厚い雲が広がっている。その雲の中を飛ぶ飛行機に管制官がニアミスを避けるために各飛行機に周辺に飛ぶ他の飛行機の位置を刻々と伝えている。
 管制官がこの周波数にいる全ての飛行機に一斉に交信した。
「オール ステーション QNH2990」(この管制周波数にいる全ての飛行機に伝えます。気圧は2990にセットして下さい。)
 管制官がこの周波数にいる全ての飛行機に一斉に交信した。天候のせいで気圧が、コロコロと変わっている。
「浦賀7分、横須賀12分の予定です。」
「はい」
 YSは東京湾上にいる。副操縦士は、ウエイポイントである浦賀に4時07分、横須賀には4時12分に通過することを機長に知らせた。
「上がりますかね?」
「上がるでしょう」
 雲の中を飛行しているので、なかなか上昇が出来きない。
「オールニッポン589 トラフィック リービング8000 セバレーション 10マイル」(全日空589便へ。10マイル先で他機が現在8000フィートを通過中です。)
「ラジャ オールニッポン589」(了解しました。)
 雲に入れば辺りは真っ白。近隣を飛んでいる飛行機は全く目視できない。頼りは管制官のレポートだけである。
「(浦賀まで)あと13マイル」
 刻々と次のウエイポイントである浦賀が迫ってきた。お客様の搭乗がない分、機体は軽いが、この天候である。思うように進まない。
「大丈夫、軽いからね」
「ギリギリってところですね」
「そうだね」
「4分で(高度)7000(フィート)」
「トーキョー・ディパーチャー オールニッポン677 フライ ヘディング パッシング 150 オーバー」(東京ディパーチャー管制へ。全日空677便です。方位150度に機首を向けて上昇中です。)羽田発広島行きの全日空B767が離陸して上昇中である交信が聞こえる。
「オールニッポン677 トーキョー・ディパーチャー レーダー コンタクト フライ ヘディング150 フォア ベクター トゥ ハネダ クライム アンド メインテイン フライト レベル 140」(全日空677便へ。レーダーで捕捉しています。機首を150度に向けて羽田VORに誘導しますので、1万4000フィートまで上昇して下さい。)
「ラジャ ヘディング150 ベクター トゥ ハネダ クライト トゥ 140」
(了解しました。150度で羽田VORに向かって1万4000フィートまで上昇します。)
「オールニッポン589 ナウ セイム アルチュード ユア クライム アンド メインテイン フライト レベル 280」(全日空589便へ。今の高度から 2万8000フィートまで上昇して下さい。)羽田から松山に向かっている全日空767への交信である。
「ラジャ 589 280」(了解。2万8000フィートまで上昇します。)
大阪のウエザーをカンパニー無線で聴くように機長は副操縦士に指示した。雲はますます濃さを増して今や完全に視界が取れない。その不安を払拭するように力強いエンジン音がコックピットに響く。
上昇を続ける全日空677便へ管制官が問いかけてくる。
「オールニッポン677 セイ アルチュード?」(全日空677便へ。今の高度を教えて下さい。)
「677 ラジャ 3200 オーバー」(3200フィートです。)
「ケア トラフィック 12 オクロック 5 マイル サウス バウンド キンキョリ ワイエス イレブン リービング 4200 ベイ・ワン ディパーチャー」(12時の報告5マイル先に、南から離陸した日本近距離航空のYS-11がベイ・ワン出発方式で南方向4200フィートを通過中です。注意してください)
「677 ラジャ ウィ インクラウド ネガティブ インサイト」(了解しました。現在雲の中にいますので、目視できません。)
 雲又雲で視界ゼロがつづく。
「オールニッポン589 コンタクト トーキョー・コントロール119.7」(全日空589便へ。東京アプローチ管制119.7メガヘルツで交信して下さい)
「119.7 グッデイ」(了解、さよなら)全日空松山行きの767が東京コントロール管制に移管した。
「こちらを横須賀にいれておきましょうか?」
「はい。入れて下さい」
 副操縦士がADF2の無線を横須賀にセットした。ADF1は現在、向かっている神奈川県の浦賀にセットしてある。
「オールニッポン677 コメンド レフト ターン ディレクト ハネダ クロス ハネダ ビトウィーン12000 フライト レベル140」(全日空677便へ。左旋回して直接羽田VORに向かい、羽田VORを1万2000フィートで通過したら、1万4000フィートまで上昇して下さい。)
 羽田空港周辺は離発着機が針の穴に糸を通すが如く、細かく設定されたルートに従い飛んでいるので、引っ切り無しに交信が続く。
2 IDオーケーです。」
「はい、ありがとう」
「大阪のウェザー貰っときましょうか、カンパニーで…」
「レベル オフ(巡航高度に)なってからでいいでしょう」
「浦賀から横須賀 インバウンド 266 11マイルです」 浦賀上空から横須賀へは飛行時間5分、 266度方位で11マイル飛ぶ。
「はい、了解」
 果てしない雲と雲の間をYSは跳び続ける。

つづく

桃田素晶・武田一男

<おことわり>本作は1985年当時の音源を使用し当時の模様をお届けしておりますが、文中で使用している図は、当時のものと異なります。特に伊丹空港のチャート図などは、当時のものを使用しておらず、スポットまでのルートに違いが生じていますが、参考に必要と考え、そのまま掲載しております。

航空ドキュメンタリー YS-11コックピット「雨中航路」/全10回
解説 桃田素晶/録音 武田一男 ©Director’s House

【著作について】「雨中航路」収録している音声、音源のすべては武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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    • 005
    • 2010年 4月13日 10:32pm

    コックピットドキュメント 第3回の間違いですね。

    • 竜子
    • 2010年 4月14日 7:57am

    ■005さん
    わ、本当ですね!
    おはずかしい…。
    ご指摘くださりありがとうございました!

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