YS-11コックピット・ドキュメント「雨中航路」第8回

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航空ドキュメンタリー YS-11コックピット「雨中航路」

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大阪伊丹空港へアプローチ

 YS-11は現在、奈良県を飛行している。この先、大阪伊丹空港への進入口ヤマト・ポイント上空で高度を6000フィートにしなければならない。
「キンキョリ9175 ターン ライト ヘディング 310 メインテイン 6000」(日本近距離航空9175便へ。機首を310度に右旋回して、6000フィートに降下して下さい)
「キンキョリ9175 ラジャ ターン ライト ヘディング 310 メインテイン6000」(了解しました。機首を310度に右旋回して、6000フィートに降下して下さい)
「ライト クリア」と機長は、副操縦士に右方向に異常がないか確認を指示した。
「ライト サイド クリア」(右方向、異常なし)
 予定より早めに右旋回を始め、伊丹空港へ向かう。 続けて管制官は日本近距離航空のYS-11のすぐ後から下降している花巻発大阪伊丹空港行きのTDA634便YSに指示を出した。
「トーアドメス634 イクスペクト ライト ターン イン 5マイル」(東亜国内航空634便へ。5マイル先で右旋回を予定しています)
「634 ラジャ」(了解しました)
 今度は宮崎発大阪伊丹空港行きの全日空510便ボーイング767へ7000フィートまでの下降許可を出した。
 これで日本近距離航空9175便YSの後に東亜国内航空634便YS、そのあとに西から進入してきた全日空510便767がつづく。そして日本近距離航空9175便YSの前方下には、全日空296便鳥取発のYSが3500フィートで、その前をロメオ・キロを通過して最終進入に入ったシンガポール6便が伊丹に下降している。
「オールニッポン510 フライ ヘディング 080 ディセンド アンド メインテイン 7000」(全日空510便へ。機首を080度に旋回し、7000フィートまで降下して下さい)
 高度12000フィートを飛行している全日空のボーイング767へTDAのYSの後へ7000フィートまで下降して7000フィートで高度を維持する旨、指示が出る。
「510 ヘディング 080 ディセンド 7000 リービング 12000」(080度に旋回し7000フィートまで降下します。現在の高度は1万2000フィートです)
「このまま、(空港まで)真っ直ぐですね…」ランウエイ32へのアプローチはこのあと、生駒上空を3500フィートで通過してロメオ・キロで2500フィートにならなければならない。

▼大阪伊丹空港ILS RWY 32Lアプローチチャート
大阪ヤマト進入チャート

「ラジャー・キング(ロメオ・キロ)まで15マイルの内、2500(フィート)まで落とさないといけないからね」
「キンキョリ9175 ディセンド アンド メインテイン 5000」(日本近距離航空9175便へ。5000フィートまで降下して下さい)
「キンキョリ9175 ラジャ ディセンド トゥ 5000 リービング 6000」(了解しました。6000フィートを離れ5000フィートまで降下します)
「1000 ビフォア」副操縦士は飛行高度の1000フィート前のコールをした。現在高度4000フィートである。
 管制官は福岡発大阪行きの日本航空320便DC-10を呼んだ。
「オオサカ・アプローチ ジャパンエア320 メインテイン フライト レベル150」(大阪アプローチ管制へ。こちら日本航空320便です。1万5000フィートを飛行しています)
「ジャパンエア320 オオサカ・アプローチ レーダー コンタクト ディセンド アンド メインテイン7000 リデュース 250ノット」(日本航空320便へ。大阪アプローチ管制です。貴機をレーダー捕捉しています。7000フィートまで降下して、250ノットまで減速して下さい)
「ラジャ ディセンド 7000 リデュース 250 ジャパンエア320」(了解しました。7000フィートに降下し250ノットに減速します)
 管制官は日本航空DC-10を全日空767の後へつける様だ。そしてヤマト・ポイントの手前を飛行中のTDAのYSをロメオ・キロに向ける。
「トーアドメス634 ターン ライト ヘディング 200」(東亜国内航空634便へ。機種を方位200度へ右旋回して下さい)
「634 ライト ヘディング200」(200度へ右旋回します)
 次々と伊丹空港へ進入する航空機の交信が飛び交っている。
「ナンバー2、ILS入れときます?」ADF2無線機へILSの信号を入れるかどうかを副操縦士が尋ねた。
「まだ、いいです」まだ、ロメオ・キロまで達してはいない。ILSはその先の生駒VORにある。
「ヤマト(ポイント)、過ぎましたね」現在、大阪への進入、ヤマトポイント上空を通過した。
「オールニッポン296 4マイル フロム ロメオ(R)キロ(K) ターン ライト ヘディング290 ディセンド アンド メインテイン 2500 クリア フォア アプローチ コンタクト タワー 118.1」(全日空296便へ。RKから4マイル手前で機首を290度に右旋回して降下し、高度2500フィートを維持し、以後は、大阪タワー管制118.1メガヘルツに交信して下さい)
「ラジャ 290 2.5 クリア フォア アプローチ 296」(了解しました。290度に旋回し、2500フィートに降下、維持します)管制官は日本近距離航空9175便の 前を飛んでいる鳥取発の全日空296便鳥取発のYSを空港タワーコントロールに移管させた。
「オーケー、それじゃね、ナンバー2を…」
 機長は副操縦士にADFの周波数をILSに合わせる指示を出すと同時に、管制官から新たな交信が入った。
「キンキョリ9175 ディセンド アンド メインテイン 3500 フォア ザ ローカライザー」(日本近距離航空9175便へ。3500フィートに降下し、ローカライザーに乗って下さい)まさに最高のタイミングで管制指示が出た。
「9175 ディセンド 3500 リービング 5(000フィート)」(3500フィートに降下します。現在5000フィートです)
 副操縦士が中央ペデステルにあるADFを操作しているので、機長が替わりに交信を行なった。
「ILSをセットして、そちら(ナンバー1)をラジャー・キング…じゃなかった113.9入れといて…」
 113.9とは伊丹空港内に設置されているVOR/DMEの周波数である。
 雨雲が切れて奈良から大阪につながる市街地が灰色の中に浮かび上がる。
「トーアドメス634 ターン ライト ヘディング 230 メインテイン 5000」(東亜国内航空634便へ。機首を230度に右旋回して、5000フィートに降下して下さい)
「634 ライト ヘディング 230 メインテイン5000」(了解しました。230度に右旋回し5000フィートに降下します)
  管制官はTDAのYSを日本近距離航空9175便の後へ並ばせようとしている。次ぎにTDA634便の後にいる全日空510便宮崎発のボーイング767へ指示を出す。
「オールニッポン510 リデュース 210ノット」(全日空510便へ。210ノットに減速して下さい)速度が遅いTDA634便YSが前方にいるので、管制官が全日空510便進入速度の調整をした。
「510 ラジャ」(了解しました)
 機長は伊丹空港に進入する際の確認項目、アプローチ・チェックリストを副操縦士に指示する。
「はい、アプローチ・チェックリスト」
「ブースター ポンプ…ボース オン」
「フュエル ヒーター…」
「キャビン サイン…オン」
「アンチ スキッド…オン」
「ギア レバー…ニュートラル」
「プレスシャリゼーション…チェック」
「ハイドロ レバー…ノーマル」
「アプローチ チェックリスト コンプリーテッド」
 アプローチ・チェックリストは通常、3000フィート プラス エレベーション(空港の標高)に到達した時に実施する。
「はい、オーケー、非常にいい天気だね、レーダースタンバイしましょう」
 今までの豪雨が嘘のように去り、まだ所々に灰色の雲が残ってはいるものの、視界が鮮明になった。右手前方には大阪と奈良の境目である生駒の山並みが、東大阪市から八尾市にかけて、八尾空港を眼下に眺めながら、家々そして中小企業の工場が密集していて、遥か先の左手には高層ビルが乱立している梅田が霞んで見える。
 伊丹空港に着陸する他機の交信が、このエリアを飛び交っている。混雑空港である伊丹空港の進入は、シビアな高度と速度が求められるのでコックピットはもちろん、管制官との間に緊張感が漂っている。この空港は全国的に類を見ない、都市部と住宅街の上空を高度を下げながら着陸する空港である。騒音訴訟、それに伴ってジェット機枠や離陸高度の制限、空港運用時間の制限と縛り付けが多い空港であるが、利便性が良く、羽田に次いで全国各地との路線を持っている有数の空港である。
「あと10マイルで1000フィートね」現在高度4000フィートなので生駒山上空を3500フィートで通過するにはあと10マイルで1000フィート下降しなければならない。
「オールニッポン510 ターン レフト ヘディング060」(全日空510便へ。機首を060度に左旋回して下さい)
「510 レフト ターン 060」(060度に左旋回します)宮崎からの全日空B767が左旋回を始めた。
「ジャパンエア320 ディセンド アンド メインテイン 5000 ディパーテッド シノダ ヘディング 080 フォア レーダー ベクター」(日本航空320便へ。5000フィートに降下し、信太VOR/DMEに到達したら、機首を080度に旋回し、レーダー誘導を行います)
「ラジャ ジャパンエア320 ディセンド アンド メインテイン 5000 ディパーテッド シノダ ヘディング 080」(了解しました。5000フィートに降下し、信太VOR/DMEに到達したら、機首を080度に旋回します)
 西から進入してくる全日空510便767機の後に日本航空福岡発のDC-10機が続く。前方に再び薄い雨雲が広がり始めた。
「エンジン・アンティアイス 入れときましょうか?」
「いや、いいです」
「まだ、ラジャー・キングまで持っていくから」
 機長はエンジンの防氷装置を入れずに、そのまま進入することを伝えた。管制官は花巻発のTDAYS-11を日本近距離航空9175便の後へそろえラジャーキングに向かわせようとしている。
「トーアドメス634 ターン ライト ヘディング 270 ディセンド アンド メインテイン 3500」(東亜国内航空634便へ。機首を270度に右旋回して3500フィートまで降下して下さい)
「634 ライト ヘディング 270 ディセンド トゥ 3500」(270度に右旋回して3500フィートまで降下します)
「14マイル…」3500フィートで生駒のVORを通過した。ラジャー・キング(ロメオ・キロ)まであと14マイルである。そして、空港まで残り22km。着陸に向けて高度を下げ、眼下の建物が迫ってきた。
「キンキョリ9175 6マイル フロム ロメオ(R)キロ(K)ディセンド アンド メインテイン 2500 クリア フォア アプローチ コンタクト タワー118.1」(日本近距離航空9175便へ。RKから6マイル手前で2500フィートになるように降下し下さい。進入を許可します。以後は、大阪タワー管制118.1メガヘルツに交信して下さい)
「キンキョリ9175 ラジャ ディセンド アンド メインテイン 2500 クリア フォア アプローチ コンタクト タワー」(了解しました。2500フィートに降下し進入して下さい。以後は、大阪タワー管制へ交信します)
 最終進入態勢を整えたYSは大阪タワー管制へ交信を始める。灰色に煙る地上の景色が降下と共に、段々と速く後に消えていく…。

つづく

桃田素晶・武田一男

<おことわり>本作は1985年当時の音源を使用し当時の模様をお届けしておりますが、文中で使用している図は、当時のものと異なります。特に伊丹空港のチャート図などは、当時のものを使用しておらず、スポットまでのルートに違いが生じていますが、参考に必要と考え、そのまま掲載しております。

航空ドキュメンタリー YS-11コックピット「雨中航路」/全10回
解説 桃田素晶/録音 武田一男 ©Director’s House

【著作について】「雨中航路」収録している音声、音源のすべては武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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