YS-11コックピット・ドキュメント「雨中航路」第10回

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今、大阪伊丹空港に着陸。
 日本近距離航空9175便は大阪伊丹空港に着陸した。午後5時25分であった。
「スタンバイ グランド」
「フラップ15」
「OK、グランド ファン」

着陸のメカニック

 キャプテンはメイン・ランディング・ギアから接地させた後、速やかに且つ静かにノーズ・ランディング・ギアを接地させ、直ちにロー・ストップ・レバーのグランドを指示する。副操縦士は着陸に際しては、キャプテンに不測の事態が起こることも考慮して、いつでも操縦できる体制でなければならない。然し、メイン・ランディング・ギアが接地するまでは直接コントロール・ホイールを握ってはならない。副操縦士は、メイン・ランディング・ギアが接地した時、ロー・ストップ・レバーに左手を添えて、機長の指示があれば直ちにグランドとする。右手はコントロール・ホイールに添えて、ノーズ・ランディング・ギアが接地すると共に、コントロール・ホイールを前方に押す。ロー・ストップ・アンセーフ・ライト及びビロー・ローストップ・ライト2基の点灯を確認し且つエンジン計器に注意して回転がスムーズに低下し、TGTが低下しつつあることを確認して、「ライト・オン」「エンジン・ノーマル」とコールする。キャプテンはプロップ抵抗とブレーキの使用により、減速しなければならない。キャプテンは直進の為、ラダー、ステアリング・ハンドルの操作により方向を維持する。キャプテンは機速が60ノット インディケーターのスピード以下に低下後、ガスト・ロックをオンと指示し、副操縦士はガスト・ロック オンの操作を行なう。ガスト・ロック オンとした後、TGT600℃以下になるまでタキシーの為のパワー・レバーをアドバンスしてはならない。ランディング・ロール中のフラップ・アップの操作の時期は、ランウェイ上のスラッシュ、水等でフラップが破損する恐れがある場合のほかは、ブレーキの使用が終わった後とする。キャプテンは適正な速度で地上滑走を実施しなければならない。副操縦士のコール・アウト・アイテム、「ライト・オン」ロー・ストップ・ライトが点灯したことを確認した後「ライト・オン」「エンジン・ノーマル」をコールする。
「DC ノーマル」
「60」
「ガスト ロック オン」
 揚力を失ったYSは重力に押しつけられ、風の抵抗で急激に減速した。副操縦士は正常に電源が供給され、操舵系統をロックした旨をコールした。甲高いプロペラ音がコックピットにごうごうと響く。
「トーアドメス634 クリア トゥ ランド 32ライト ウインド220 ディグリーズ 2ノット」(東亜国内航空634便へ。滑走路32Lへの着陸を許可します。風は220度から2ノットです)日本近距離航空9175便の後から進入してくる東亜国内航空634便が着陸許可を貰った。日本近距離航空9175便はまだ滑走路32レフトで減速しながら滑走路末端に向かっている。

▼大阪空港のチャート
大阪空港のチャート

「(トーアドメス)634 クリア トゥ ランド 32ライト」(滑走路32Lに着陸します)
「キンキョリ9175 タキシーウェイ ターン ライト ウイスキー7 タクシーウェイ ホールド ショート 32ライト」(日本近距離航空9175便へ。誘導路W7に入って滑走路32Rの手前で待機して下さい)管制官が日本近距離航空9175便へタキシングの指示を出す。
「キンキョリ9175 ラジャ ウイスキー7」(了解しました。W7に進入します)
「そこですね…ホールド ショート Aランウェイ」
 日本近距離航空9175便は速やかに滑走路32レフトから離れ、滑走路32Rの手前まで走行を続けた。

アフターランディングのメカニズム

 パイロットは着陸後、次の点について点検を行う。ロー・ストップ・レバーがグランド状態にあるか、プロップ関係の各ライトが全て点灯しているか、ガスト・ロックをオンとしているか、レディオ・ラック・クーリング・ファンをオンとしているか、防氷系統は全てオフとしているか、無線航法機器は全てオフとしているかなどを確認点検する。フュエル・ブースター・ポンプは1基ずつ使用し、トリム・タブは中立位置に戻し、フラップをアップにする。ウォーター・メタノール系統は全てオフとする、客室与圧が完全に抜けているか否かを点検し、コックピットのテンプ・オート・マニュアル・スイッチをオフとする。

タクシーウェイに入った後、またタクシーウェイが無い空港ではランウェイ末端で180度旋回後、アフター・ランディング・チェックリストを実施する。
「オールニッポン211 ホールド ナンバー2 サプライ ワン ミニッツ」(全日空211便へ。貴機の離陸は2番目です。1分後です)大阪発福岡行きのボーイングB747-SRである。
「オールニッポン510 クリア トゥ ランド 32レフト ウインド 220 ディグリーズ 3ノット」(全日空510便へ。滑走路32Lへの着陸を許可します。風は220度から3ノットです)
「(オールニッポン)510 クリア トゥ ランド 32レフト リービング」(滑走路32Lに着陸します。降下中です)管制官が宮崎発大阪伊丹空港行きの全日空510便ボーイング767に着陸許可を出した。つづいて管制官は花巻発大阪伊丹空港行きのTDA634便YSに着陸を許可した。
「タワー (トーアドメス)634 コンファーム クリア トゥ ランド?」(大阪タワー管制へ。東亜国内航空634便ですが、着陸しても宜しいですか)
「634 …クリア トゥ ランド 32ライト ウインド210 ディグリーズ 4ノット」(滑走路32Rに着陸して下さい。風は210度から4ノットです)
「ラジャ クリア トゥ ランド 32ライト」(了解しました)
 副操縦士は着陸直後の計器操作を終えた後、YSが正常に働いているかの計器チェックを行い、それが終わったことを機長に知らせた。
「アフター ランディング チェック オールコンプリートです」
「はい、どうも」
「クランド クーリング ファン 入れますか?」
「いいんじゃない」
 着陸後、速度を落とす為に使用したブレーキ板の熱を下げる冷却装置を作動させるか聞いたが、まもなくスポットインするのもあって、必要がなかった。
「オールニッポン475 タクシー イン トゥ ザ ポジション アンド ホールド 32ライト」(全日空475便へ。滑走路32Rに進入し待機して下さい)
 大阪発高松行きのYSである。
「ラジャ (オールニッポン)475 イン トゥ ザ ポジション アンド ホールド 32ライト」(了解しました。滑走路32Rに進入し待機します)
「トーアドメス634 ターン ライト C(チャーリー)4 タクシーウェイ コンタクト グランド コントロール」(東亜国内航空634便へ。誘導路C4に入り、以後は大阪グランド管制へ交信して下さい)
 日本近距離航空9175便につづいて東亜国内航空634便YS-11が地上管制に移管した。
「トーアドメス634 C(チャーリー)4 コンタクト グランド」(誘導路C4に入り、大阪グランド管制へ交信します)
「キンキョリ9175 フォロー イング トーアドメス YS オン ユア ライト クロス ランウェイ コンタクト グランド コントロール」(日本近距離航空9175便へ。東亜国内航空のYSの後に続いて、滑走路を横断し、以後は大阪グランド管制へ交信して下さい)

▼大阪空港地上走行プロシージャー
大阪空港地上走行プロシージャー

「キンキョリ9175 ラジャ」(了解しました)
 後から着陸した東亜国内航空634便の後ろに続いて滑走路32Rを横断する許可が出た。管制を大阪グランド管制に移管するよう指示された。
「オールニッポン5…コレクション 211 コメンス タクシー ホールド ショート 32レフト」(全日空5…訂正します。211便へ。タクシーを始めて滑走路32L手前で待機して下さい)離陸を待つ大阪発福岡行きのボーイングB747-SRである。
「211 ホールド ショート 32レフト」(滑走路32L手前で待機します)
「はい、ランウェイ クリアです」
「コンタクト グランド 121.7」
副操縦士は右側を確認し、全日空475便が滑走路内で待機している姿が見える。大阪グランド管制の周波数121.7メガヘルツに合わせると、東亜国内航空634便が交信しているのが聞こえた。
「トーキョー…オオサカ・グランド トーアドメス634 C(チャーリー)4 リクエスト タクシー スポット15 オーバー」(東京…大阪グランド管制へ。東亜国内航空634便です。誘導路C4にいます。駐機所スポット15まで地上走行の許可願います)
「トーアドメス634 ラジャ ターン ライト アルファ タクシーウェイ タクシー ヴィア E(エコー)4」(東亜国内航空634便へ。右に曲がりA誘導路を通って、E4を経由して下さい)
「ラジャ アルファ タクシーウェイ ヴィア E(エコー)4」(了解しました。A誘導路、E4を経由します)
続いて、日本近距離航空9175便は大阪グランド管制へ交信した。
「オオサカ・グランド キンキョリ9175 S(シエラ)4 オーバー」(大阪グランド管制へ。こちら日本近距離航空9175便です。駐機所S4です)
「キンキョリ9175 ラジャ ターン レフト アルファ タクシー トゥ ゲート」(日本近距離航空9175便へ。左に曲がり、A誘導路を通って、駐機所に向かって下さい)

▼大阪空港スポット
大阪空港スポット

「キンキョリ9175 ラジャ」(了解しました)
「OK、レフト サイド クリア」
機長はタクシーする方向、左側に障害物がないか確認し、ステアリングを左に切った。
少し奥に視線を転じると、駐機所S4が見える。まもなく、スポット・インである。YSは甲高いダートサウンドを奏でながら、走行を続ける。
「えーっと…一番端っこの方ですね、ジャンボの向こうにある…あー居ますね、迷子になんなくて良かったですね」航空機を誘導するマーシャラーが視認(インサイト)出来た。
「大体、定刻通りですかね」
「そうですね、予定より5分、早かったかね」
「出発が10分、早かったですから」
「そうですね」
「マーシャラー インサイト…はい、インサイト」
マーシャラーが両手に持っているパドルを振り、YSを停止位置まで誘導する。
「新聞社の前ですね、こりゃ分りやすいわ」
「ライト ターン ライト サイド クリア」
マーシャラーが右手で右に曲がるようにパドルを振り、誘導する。
「トリマー ディグリーズ」
「カット オフ」
エンジンが切られ、プロペラの回転数が下がる。機長はフライトの最後の確認であるパーキング・チャックリストを副操縦士にオーダーした。
「パーキング チェック」
「ウインド アンド ピトー ヒーター…オフ」
「スターター システム…オフ」
「ブースター ポンプ…オフ」
「インバーター…オフ」
「オルタネーター…オフ」
「アンチ コージョン ライト…オフ」
「キャビン サイン…ワン オフ」
「フラップ…アップ」
「フュエル スイッチ コックピット ヒーター…マニュアル オフ」
「レーダー レディオ アンド トランスポンダー…オフ」
「ウォーター メタノール…オフ」
「トリム タブ…ニュートラル」
「パーキング ブレーキ…オン」
「パーキング チェックリスト コンプリート スリー トゥ ゴー」
「はい、お疲れさまでした」

YS東京-大阪 離陸して着陸するまで1時間25分のフライト。丁度、新幹線の半分の時間であった。

桃田素晶・武田一男

<おことわり>本作は1985年当時の音源を使用し当時の模様をお届けしておりますが、文中で使用している図は、当時のものと異なります。特に伊丹空港のチャート図などは、当時のものを使用しておらず、スポットまでのルートに違いが生じていますが、参考に必要と考え、そのまま掲載しております。

航空ドキュメンタリー YS-11コックピット「雨中航路」/全10回
解説 桃田素晶/録音 武田一男 ©Director’s House

【著作について】「雨中航路」収録している音声、音源のすべては武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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