航空ドキュメンタリー「最後の飛行」第2回 ハーレクインエアDC-10操縦室

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 ゲート1番に翼を休めるハーレクイン8673便DC-10の操縦室。
 スピーカーから関西空港グランドコントロールの管制交信が聞こえている。その交信のボイスに混じって三宅機長がウエイポイントをコールする声が響いていた。
「はい。ウエイポイント 1 ノース 34・23、0。 (北緯34度23分)、
イースト135・00、3。(東経135度00、3分)。NO2 ノース 34・16、8。(北緯34度160、8分)、イースト135・00、3。(東経135度00、3分)。NO3 ノース 33・54、6。(北緯33度54、6分)……」
 INS(イナーシャー・ナビゲーター・システムの略。自動航行装置)に入力された関西空港を離陸してホノルル空港に着陸するまでの飛行航路の全部で24の通過地点(ウエイポイント)の緯度と経度を確認するルーティング作業は、いつものことながら神経を使う。現在は出発前にコンピューターで目的地までのすべての通過地点データはダウンロードされ、その確認事項は最小になりクルーの負担も減ったが、INSが日本の飛行機に最初に搭載されたときは通過地点データはわずか8つのポイントの入力であった。そしてこのDC-10-30では改良されて24ポイントの入力が可能になっていた。
 飛行機はこのとき入力されたNO1からNO24の通過地点(ウエイポイント)の緯度、経度の数字を辿りながら自動的に飛行するので、仮りに間違った数字を入力すると飛行機はあらぬ方向へ飛ぶことになる。それだけに通過地点の入力にはひとつたりともミスが出来ないのだ。
 三宅機長とダウニング副操縦士は何度も確認しあいながら、延々と数字を確認する作業を続けた。
 出発前の準備にコックピットは多忙である。しかし、今日はその多忙さがいつのまにか脳裏からラストフライトであることの感傷を消して、第二の本能のように身についた仕事の手順が、三宅機長をいつものパイロットの精神状態に戻していた。
 ルーティング作業が終わると、今日の重量、離陸方式、目的地までの飛行距離、高度などのデーターを入力しその間に航空機関士がテイクオフ・データーを算出する。
 三宅機長がパネルから顔を上げて、右席にすわっている副操縦士のダウニングと後の航空機関士席に座っているネイヤーに声をかけた。
「テイクオフ ブリーフィング(離陸の打合せ)を始めようか」
 今日は操縦を三宅機長が、管制官との交信と操縦補佐を副操縦士役のダウニングが担当することになっていた。
 赤毛で長身のアメリカ人、ダウニングは五十八才でDC-10の機長の資格を持っている。一見、神経質とも思える繊細なタイプの彼は、アメリカ海軍からコンチネンタル航空に入り、ボーイング727の機長をえて、平成九年の夏にハーレクインエアに入社するまではハワイ航空でDC-10の機長として飛んでいた。飛行時間一万七千時間のベテランパイロットで現在もハワイ・オアフ島に住んでいる。
 フライトエンジニアのネイヤーはインド系のシンガポーリアンである。四十四才で昭和63年(1988年)から日本の空を飛んでいる。

コックピットのダウニングさんとネイヤーさん

 東亜国内航空(現在の日本エアシステム)にA300のフライトエンジニアとして入社し、平成九年にダウニング機長より数か月早くハーレクインエアに移り、DC-10のフライトエンジニアとして乗務をつづけていた。飛行時間は約一万二千時間だが、そのうち二千三百時間をDC-10で乗務しているベテランのフライトエンジニアであった。
 ネイヤーは明るい性格の持ち主で、その陽気な人柄は長時間、密室状態になるコックピットの人間関係を良い雰囲気にする。ダウニング機長のパイロットとしての技量と冷静な判断、その経験も頼りになった。
 ハーレクインエアのDC-10乗員部はわずか16名で運航を切り盛りしている。
 日本エアシステムの国際部門のチャーター便を請け合う航空会社として三年前に設立されたハーレクインエアは、持ち株の100パーセントを日本エアシステムが有する子会社である。その乗員部には三宅機長のように日本エアシステムから出向した日本人パイロットと、設立の時に採用した外国人のクルーがいた。
 ハーレクインエアにはMDー80を使って福岡を中心にした国内線のウエットリースをするセクションとDC-10を使って世界各地にチャーターフライトを飛ばせる国際線のセクションがある。
 三宅機長やダウニング、ネイヤーはDC-10乗員部に属し、この三年、ハワイやカナダ、オーストラリアやニューカレドニアそして東南アジアにも日を明けずに飛んだ。
 とくに1999年サッカーのワールドカップがフランスで開かれたときは、日本各地からサポーターを乗せて過密なスケジュールでヨーロッパを飛行した。
 その間で日本人クルーと外国人クルーには深い信頼感が生まれていた。
 ダウニングとネイヤーとは、三宅機長も幾度もチームを組んでお互いの気心を熟知しあった仲間であった。しかしそのダウニング機長もネイヤー航空機関士も今月末でハーレクインエアを退職することになっていた。
 その背景にはハーレクインエアーの、そして親会社である日本エアシステムが直面している経済的な事情があった。
 三宅機長は自分のラストフライトもさることながら、このハワイへのフライトが彼らにとってもハーレクインエア最後の乗務になることも、いっそう彼を複雑な思いにさせるのだった。
「オーケ、打合せを始めるよ」
 機長は身を半身にして後を振り向き、意識をフライトに集中させるように少し声を高めた。ダウニングとメイヤーがメモを用意してうなづく。コックピットにはいつもの阿吽の呼吸のような仲間意識が感じられた。三宅機長はひと息おいて英語で離陸に関する手順を話し始めるのだった。

関西空港離陸

「テイクオフ・ブリーフィング。今日の離陸は滑走路24からだね。滑走路上の風は320度から14ノット。右側からの横風。気温は10度で気圧は30・00(オクトパスカル)ですでにセット済みだ」
 飛行機の高度は気圧高度計で計るので、気圧は飛行機の運航にとって最も大切なデータのひとつだ。その基準となる滑走路上の最新気圧が逐次、管制官から航空機に知らされることになっている。
「滑走路は離着陸ともに24(240度方向、西南西を向いた滑走路のこと)を使用している。出発方式(SID、スタンダード・インストルメント・ディパーチャーのこと)はキタン・ワン(KITAN 1)デパーチャーで串本トランジッション(経由)だ。これもセット済みです」
 まず、滑走路24から淡路島に向けて離陸し、大阪湾の真中にある飛行地点キタン・ポイントの上まで飛び、和歌山市の沖合にあるトモVOR/DMEへ向けて左旋回し、御坊VOR/DMEから紀伊半島をかすめて紀伊半島の南端にある串本を経て太平洋に出るコースが今日、与えられた関西空港を離陸飛行する方式、キタン・ワン出発方式であった。
 三宅機長はマニュアル通り、万が一離陸時の事故を想定して話を続けた。
「離陸時にエンジンが故障した場合は、V1スピード以前は、私の指示に従ってください」 V1(ヴィ・ワン)スピードとは離陸決心速度ともいい、離陸を始めてこのV1スピードに飛行機の離陸速度が達していないときは離陸を中断することが可能である。V1以前にエンジン等の故障が発生したら、機長が「リジェクト テイクオフ」とコールし離陸を中止するアクションをとる。
 この離陸するスピードはそのときの飛行機の重量や滑走路の風の強さなどで決まるが、今日のV1スピードは146ノット、時速約245キロであった。そのスピードが離陸時に最も重要なものとなる。
 続いて三宅機長はV1スピード後で起こったエンジン故障の際のそれぞれ各クルーがとるべき行動を副操縦士とフライトエンジニアに確認した。
「V1以後の事故発生の場合はそのまま離陸してSID(空港が定めた出発方式)に従います。そして5000フィート(約1500メートル)まで上昇して、それからレーダー誘導を受け滑走路24にも戻り着陸する」
 それから…、と機長は航空機関士のネイヤーに尋ねた。
「燃料投棄する地点までは何分かかる?」離陸に失敗し再着陸をする場合は着陸時に発生するかもしれない火災を予期して、搭載している全燃料を機外に捨てなければならない。
「イレブンメネッツです」燃料に関する仕事は航空機関士の領域である。ネイヤーは即座に答えた。
「11分か。オーケー。レーダー誘導で燃料投棄地点まで飛び、此処へ戻る。いいね」
 最後に三宅機長は確認するようにふたりの顔を見た。そして副操縦士役と機関士が了解する様子を確認して「よし。プリパレーション計器点検(エンジン始動前に行う計器点検のこと)を始めるよ」と左角に置いた機長カバンからチェックリストを取り出した。

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★「最後の飛行」挿入01

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▼プレパレーションチェックリストの図

プレパレーションチェックリスト

 この飛行機、DC-10ー30タイプには計器の点検の項目が百以上もある。その中でエンジン始動以前に行うプリパレーション点検は、計器やスイッチ類の最も基本的な点検である。
 ダウニングがリストを読み上げ、機長とネイヤーがそれぞれ担当する計器類をすべて点検していく。
 以前、パンアメリカンのボーイング747のコックピットに乗った時、コックピット・クルーが計器点検をする声が耳にテンポ良い音楽のように響いた記憶がある。そのときパンナムの機長は「この計器点検のリズムがクルーの一体感と士気を高めるんだよ」と話してくれたことを思い出す。
 今、ハーレクインのクルーが行っている流れるような点検はきびきびとして、プロフェッショナルなクルーの、まるで出発前の儀式にも似て聞こえた。
 「ファイブミニッツ…いいですか?」
 点検が完了すると副操縦士役のダウニングが日本語で三宅機長に尋ねた。
 飛行機に燃料を搭載したり、乗客の荷物を積み込んだり、ケータリング(乗客やクルーの食事や飲物などを搬入する作業)など地上の仕事一切と乗客の搭乗、そしてコックピットのエンジン始動前の準備が終わると、出発という次ぎの段階に移る前に、クルーはクリアランス・デリバリー(目的地までの飛行計画を承認する担当管制)をする出発管制官に目的地までの飛行計画の承認を受けるために交信をしなければならない。その交信をファイブメネッツ・コール(出発五分前の交信)と呼び、航空機の出発の大切な確認作業となっている。
「いや、どうかな…」と機長が外を見て言った。
「まだまだ、乗客のボーディングが終わってないよ」とネイヤが開いたままのコックピットドアから客席を振り返って笑った。
 そのときキャビン・クルーに見守られて搭乗してきた車椅子の老婦人とその連れの女性の姿が入り口の側に座っているネイヤーの目に入った。
 老婦人はコックピットドアの外側の通路に車椅子を止めてクルーに挨拶をする。
「いいよ。いいよ」三宅機長が手を振って急に照れたように笑った。
「ああ、私の母ですよ。それと妻と娘…」
 彼女逹は父の、夫の、そして息子の最後のフライトに同乗するためにこのフライトに搭乗したのであった。
「よろしくお願いしますよ」
 車椅子の上から母は機長席に座っている息子に毅然とした態度で言葉をかける。それは新しい小学一年生の入学式で総代の挨拶をする小さな息子を心から誇りに思い、励ます母親の声のようであった。
 ああ、わかってるよ…と言わんばかりに、三宅機長は子供のようにうなづいて母親から無理に視線を外した。
 そのとき三宅機長は、この飛行が過去何千回と数かぎりなく飛んだ乗務のひとつではなく、特別の、大切な家族に見守られた特別な最後の飛行であることを新ためて身にしみるように感じるのだった。
 よし。ファイブメネッツ・コールだ。それから数分後、乗客のボーディングがすべて完了した報告をキャビン担当者から受けると機長は感傷を振り切るように、ダウニング副操縦士役に飛行プラン承認の交信を始める指示を出した。
 ダウニングがマイクを取って管制官を呼びかけた。

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★「最後の飛行」挿入02

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「カンサイデリバリー。ハーレクイン8673」
(こちらはハーレクイン8673便です)
「ハーレクイン8673。カンサイデリバリー。ゴー アヘッド」
(ハーレクイン8763便へ。関西デリバリー管制です。どうぞ)
 管制官の声がコックピットのスピーカーから聞こえる。
「ハーレクイン8763。スポット・ナンバーワン。トゥ ホノルル。フライトレベル330 ウィ ハブ インフォメーションD(デルタ)」
(ハーレクイン8673です。現在、スポットNO.1に駐機しています。ホノルル空港へのフライトで高度33000フィートを予定。最新のATIS(エアポート・ターミナル・インフォメーション・システムの略。空港の最新の天気や滑走路の情報)デルタを入手しています)
「ハーレクイン8763。スクォーク6013 スタンバイ フォー クリアランス」
(こちら関西デリバリーです。貴機のレーダー認識符号は6013です。そのまま待機してください)
 すでに運航課が管制機関に提出した飛行プランに基づいて発出されるクリアランス(承認)をクルーは機内で管制官から無線で受取る。その順番がくるまで待機するのである。レーダー認識符号を復誦してダウニングは無線を終えた。レーダー認識符号は離陸以後、その飛行機の識別標識になる。6013が便名と共に管制レーダーに表示されるのでその確認は重要となるのだ。
「カンパニーフリクエンシーはこれですか?」ネイヤーが機長に尋ねる。
「129・6(メガヘルツ)。イエス」と機長。通常、コックピットの無線交信は大別すると3つになる。ひとつは管制との交信だ。そのとき操縦を担当していないパイロットがこれを受け持つ。もうひとつは国際緊急交信である。この周波数は全航空機に同一のメガサイクルが与えられ、3個あるVHF無線機のひとつに常時設定され全員がその無線を傍受している。そして最後のひとつが、自分の所属する航空会社の運航部とつながるカンパニーフリクエンシーだ。この無線で運航状況を報告したり、逆に運航部からデータをもらったり、運悪く機内で病人が出た場合などの連絡に使用する。現在はエーカーズと呼ばれる無線に代わるメール通信機が搭載されているが、離着陸などの連絡はカンパニーフリクエンシーを使うことが多い。
「コールサインは?」ネイヤーが関西空港にある日本エアシステムのカンパニーフリクエンシーの無線呼び名を尋ねた。
「コールサインはカンサイだ」
「最終のウエイト&バランスを聴きます」ネイヤーは会社の運航課に自社の周波数で出発前の最終報告を聞こうとしていた。
 ウエイト&バランスとは離陸する飛行機には欠かせない情報のひとつである。それは飛行機の重心位置を測定したデーターで、その都度異なる乗客の数や貨物、燃料等の重量によって機体の重心位置が変わるので、すべての搭載が終わった出発直前に確認しなければならない。そのデーターは運航部のコンピューターが自動的に計算し、その数値が飛行可能な許容範囲にあるかどうかを算出している。

 ネイヤー航空機関士はマイクを取って運航課に連絡を始めた。
 話しはそれるが、航空機の発展とともにコックピットの乗員は少なくなる一方である。まず初めはコックピットから通信士がいなくなった。
 通信士の仕事は航空機の交信がモールス信号から音声交信に変わったことでパイロットが代行するようになった。
 次ぎは航空士である。ダクラス6Bや7Cのプロペラ旅客機の時代、コックピットには機長、副操縦士、航空機関士以外に、航空士(ナビゲーター)と呼ばれるクルーがコックピット乗員に加わっていた。
 航空士の仕事は飛行機の現在位置を測定し、そのときの気象状況を加味して目的地までの正確な航路や到着予定時間などを算出し、操縦に必要なナビゲーション・データーを機長や副操縦士に提供することであった。

 操縦席の天井に小さな窓があり、飛行中、彼らはその窓から何度も六分儀や八分儀などで星を天測し飛行機の現在位置や航路を測った。ジェット旅客機の時代になっても第一世代といわれるボーイング707やダグラスDCー8などの初期のタイプには操縦席の天窓が残っていて航空士が乗務していた頃がある。日本航空のDC-8の名機長として有名だった松尾さんに航空士の面白い話を聞いたことがある。航空士は普通、コックピットのいちばん後に黒いカーテンで囲った場所があり、その上に天窓があってそこから天測をしていたそうであるが、その航空士は人嫌いか、孤独を楽しむタイプだったのか、離陸から着陸まで一回もその黒いカーテンから出てこないで、位置報告のポイントがくると黒いカーテンから手がにゅーと出てきてその後の進路や位置を手書きで書いたメモをクルーに渡したそうである。それを羽田からサンフランシスコまでくり返し、結局、飛行機を降りるまで松尾さんは航空士の顔を見なかったという。コックピット・コミュニケーションを重んじる今では信じられないような話である。

 航空士の仕事はその後、ロランや慣性航法システムの発達でなくなり、以後コックピットは三名の乗務に変わる。
 そしてボーイング747-400、767、777などの第四世代の航空機では、機長と副操縦士の二名乗務が普通になり、現在、航空機関士(フライトエンジニア)の仕事はコンピューターが代行している。

 航空機関士は飛行操縦技術とは別の高度な航空機の知識や経験が必要とされた。出発前には前述のウエイト&バランスや燃料搭載の管理など、飛行中は燃料を始め各システムの維持や管理を行う飛行に伴うメカニックな側面を仕事とする。
 プロペラ旅客機の頃は航空機関士は地上整備員の延長と考えられていた。すなはち整備員がコックピットに同乗していたのである。しかしジェット旅客機の時代になってからは地上整備とは別の職種となった。その後航空機関士専門職という人たちとは別に、セカンド・オフィサーと呼ばれて航空機関士を副操縦士になる過程の仕事とする航空会社も多くなった。
 ただ、パイロットのステップではなく、たとえばネイヤーのように専門の航空機関士は、パイロット人種とはかなり異質で、どちらかと言えば博学な学者タイプも多かった。例えばルフトハンザ航空には航空機関士の仕事をしながら、宇宙工学や機械工学などの博士号を持った人がいたし、フライト業務がないときは大学で生物学の講義をしているというオランダ人の航空機関士にKLMのフライトで会ったこともある。。
 ネイヤーが運航課と連絡をしているとき、「ユナイテッド810 クリアランス」と関西デリバリーの管制官がサンフランシスコへ向かうユナイテッド航空810便の飛行プランを承認する交信が聞こえた。

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★「最後の飛行」挿入03

※「▶」の再生ボタンをクリックすると航空サウンドが流れます

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「ユナイテッド810 クリアー トゥ サンフランシスコ・エアポート、ヴィア トモ2ディパーチャー クシモトトランジション ゼン フライトプランルート メインテイン フライトレベル310、メインテイン12000フィート アンティル ファーザー アドバイス。ディパーチャーフリクエンシー ウィルビー 119.2 ゴーアヘッド」(ユナイテッド航空810便へ。サンフランシスコ空港までの飛行を承認します。トモ第二出発方式で離陸後、串本経由で巡航高度31000フィートで飛行して下さい。しかしこちらから指示するまでは飛行高度12000フィートを保ってください。出発管制の周波数は119.2メガヘルツの予定です。復誦願います)
 飛行プランの承認(クリアランス)を無線交信で受領したユナイテッド810便が、管制官の指示を繰り返す。
「ユナイテッド810。リードバック イズ コレクト。コンタクト グランド121.6」(ユナイテッド航空810便へ。復誦は正確です。以後は関西グランドコントロール121.6メガヘルツと交信願います)
 次ぎに関西デリバリーの管制官がハーレクイン機を呼んできた。
「ハーレクイン8673。ウィ ハブ ユア クリアランス コピー」
(ハーレクイン8673便へ。飛行計画の交信をします)
「ハーレクイン8673。ゴーアヘッド」(こちらハーレクイン8673便です。お願いします)とダウニングが答える。
「ラジャ クリアー トゥ ホノルルエアポート ヴィア トモ2ディパーチャー クシモトトランジッション ゼン フライトプランルート メインテイン フライトレベル330。メインテイン フライトレベル12000フィート アンティル ファザー アドバイス。ディパチャーフリクエンシー ウィルビー 119.2 ゴー アヘッド」
(ハーレクイン8763便へ。ホノルルエアポートまでの飛行計画を承認します。トモ第二出発方式で離陸後、串本経由で巡航高度33000フィートの許可します。しかしこちらの指示があるまで高度12000フィートを維持してください。関西出発管制の周波数は119.2の予定です)
 ダウニングが三宅機長の指示で確認の復誦交信すると、
「ハーレクイン8673 リードバック イズ コレクト コンタクト グランド121.6」と管制官は、以後はグランドコントロール、周波数121.6とコンタクトするように指示して交信を終えた。そして飛行機のすべてのドアが閉じられた。いよいよ、プッシュバックしてハーレクイン8763便はゲートを離れる時間が来た。

つづく

武田一男

航空ドキュメンタリー「最後の飛行」
解説 桃田素晶/録音 武田一男 ©Director’s House

【著作について】「最後の飛行」収録している音声、音源は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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    • Mattari
    • 2010年 6月9日 11:10pm

    >>「この計器点検のリズムがクルーの一体感と士気を高めるんだよ」
    そういえばJALのジェットストリームでみた
    ジャンボでも誘導路上で行われる計器点検のシーンでも
    テンポよくやっていたのを思い出すけど、ちゃんと意味が
    あるんだなと思いました。
    ハーレクィーンのDC-10は地方空港で撮影した程度だけど
    懐かしいなぁ。それと関空の1番スポットは長らく
    JASのA300-600Rが中国線など多くのアジア路線用に
    発着していた定番の使用スポットでした。

    • 竜子
    • 2010年 6月10日 2:59am

    ■Mattariさん
    わたしはこのプレパレーションチェックリストのラダースタンバイで「アーーーム・オフ」っていうネイヤー機関士のTHE米語の響きが、お気に入りです。たしかにこの一連のやりとりは一体感が高まる! というか、聞いているほうも、クルーの一員になれる(コックピットに入った気分になる)瞬間というか。
    ハーレクィン機というのは、白に小豆色で、ちょっと日本的ではないカラーリングですよね。

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