【航空100年】DC-3特集 DC-3が舞台の冒険小説特選集

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 DC-3ダコタは航空冒険小説にしばしば血湧き肉躍る場面に登場します。それらの冒険小説を簡単にご紹介しましょう。
前回同様、ハワイで録音したDC-3の音を聞きながらお楽しみください。

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★「DC-3」挿入:dc3_cockpit.mp3

※「▶」の再生ボタンをクリックすると航空サウンドが流れます

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ちがった空」ギャビン・ライアル
(松谷健二 訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)
ちがった空

 以前、このブログのブックレビューでもご紹介しましたが、英国冒険作家の第一人者、ギャビン・ライアルのデビュー小説です。僕はこの本に出逢いDC-3ダコタを知りそのファンになってしまいました。だから、この DC-3の特集が書けるのも、まさにギャビン・ライアルの「ちがった空」のおかげです。内容はエーゲ海を舞台にした冒険小説ですが、くわしくは、恐れ入りますが僕のブックレビューをご検索下さい。

 僕はこの本を再読するたびに DC-3のサウンドをイヤホーンで聴きながら読むことにしています。それはまさに忘我の世界ですよ。
 さてDC-3は第一次大戦と第二次大戦の間に開発された飛行機なので世界のいろいろな国で使用され、また、ライセンス生産をされました。ですから、第1回のDC-3特集でご覧になったDC-3の記念映画「a Lady Remembered」で紹介されたように各国で呼び名がちがいます。日本軍は零式輸送機とよび、アメリカではスカイトレイン、そして英国ではダコタです。航空冒険小説の名作のほとんどがイギリス人作家によって書かれた本が多いし、彼等が好んでDC-3を小説の中に登場させたので、DC-3、イクオール、ダコタになったのだと思われます。次に紹介する作品も英国冒険小説です。

鷲は舞い降りた」ジャック・ヒギンズ著
(菊池 光 訳/ハヤカワミステリィ文庫)
鷲は舞い降りた

 英国の作家ジャック・ヒギンズを世界的に知らしめたベストセラーの冒険小説ですね。 内容は第二次大戦ノ最中、ヒットラーの命を受け、ドイツ軍の尖鋭、クルトシュタイナー中佐とアイルランドの愛国者、リーアム・デヴリンが16名の部下と一緒にイギリスヘ落下傘下降しイギリスのチャーチル首相を誘拐する話ですが、全編にロマンの香気溢れる人間の高貴なる精神をうたいあげた冒険小説で、人間として忘れてはいけない気高さ、を思い出させてくれることが、この本の絶えられない魅力となっています。ともかくお奨めです。まだ、お読みでない方は、だまされた、と思って読んでみて下さい。 
 DC-3、活躍しますよ。イギリスに向かうシュタイナー中佐らを運ぶドイツ人パイロットのペイター・ゲーりケ大尉がダコタに逢うシーン。「そーっと手を伸ばして翼に触り、いかにも優しい声で言った。「久しぶりだなあ、おい」。余談になりますが、アメリカの航空小説はどちらかと言えば、事故パニック小説や謀略がからんだ航空もの、それにハイジャックをテーマにしたものが多い。日本の航空小説もその影響を受けていますが、イギリスはちがいますね。主人公が単身、僻地で困難に挑むチャレンジの中で物語が展開する内容が多いですから、まさに血肉躍る航空冒険小説になっています。だから、僻地で難行苦行を強いられる冒険者にはダコタが最も似合うのでしょうね。

クメールからの帰還」ウィルバー・ライト著
(染田屋 茂 訳/角川文庫)
クメールからの帰還

 これもイギリスの冒険小説です。内容がわかりやすいので文庫の裏表紙にある概説をそのまま引用します。「名機ダコタは恐怖から飛び立つ! カンボジアの奥深い谷に旅客機ボーイング707が墜落、炎上する。生存者は4人。元英国空軍パイロットのドナルド・カーターと16才の少年と14才の少女、そして美貌のカンボジア人のキャビンアテンダント 。彼等はモンスーンのジャングルを彷徨い失われたクメール王朝の秘密に遭遇する。だが、四方を切り立つ崖に囲まれたこの谷から帰還するためには米軍が放置していったダコタDC-3を修理して飛ぶ以外にない。秘境に投げ出された人間の恐怖と葛藤、甦る名機ダコタを描く待望の傑作冒険小説」なんといいますか、深さや感銘はないのですが、流れるような活劇はあります。出張のおり、新幹線の中で気楽に楽しむ冒険小説ですね。それにしても、著者の名前、ライト兄弟の兄と同姓同名。きっと著者はペンネームをつけるとき、元空軍のパイロットだったこともありライト兄弟にこだわったのでしょうね。飛行機がたまらなく好きというのがよくわかります。

緑の地に眠れ」ダンカン・カイル著
(田村義進 訳/ハヤカワ文庫)
緑の地に眠れ

 この本と次にご紹介する本「DC-3の積荷」は類似点があり、ともに登場するダコタの飛行シーンはありません。ひとつは密林の中に、もうひとつは砂漠の中に墜落したダコタが核となって物語が展開する構成になっています。さて、「緑の地に眠れ」の著者ダンカン・カイルは英国冒険小説の雄、アリスティァ・マクリーンの後継者といわれる骨太い作風で知られる英国の作家です。余談ですが、アリスティァ・マクリーンの代表作「女王陛下のユーリシーズ号」という海洋小説を最初に読んだとき、僕はその荒れた海の描写に圧倒され、船酔いに似た気分になったことがあります。ダンカン・カイルもマクリーンの後継者、それだけに迫力ある描写でぐいぐいと引っ張ってくれます。軍人あがりの銀行家、トゥニクリフ(ちょっと、異色の主人公です) が、ある女宣教師がもたらした情報、元パイロットだったトゥニクリフの父親がインドネシアのボルネオ島(現、カリマンタン島)で墜落して死亡、そのときダコタに巨額のルビーが積まれていたという情報を聞き、女宣教師とその仲間と共にダコタ機を探しにボルネオの密林深く分け入ります。だが、彼等を待ち受けていたのは想像を超える苦難でした…。この本は新幹線の中ではなく、土曜日の夜、ウイスキーを飲みながら読む本ですね。ダンカン・カイルは「標的の空」という航空冒険小説も書いています。大西洋横断飛行を背景に展開する物語ですが、面白いので機会があればお読み下さい。

DC‐3の積荷(上)」グレイグ・トーマス著
DC‐3の積荷(下)
(田村源二 訳/新調文庫)
DC3の積荷

 この本は航空冒険小説でなく、スパイ小説です。作家、グレイグ・トーマスはケネス・オーブリーという英国情報部の長官が率いる英国秘密情報部の優秀なスパイ、パトリック・ハイドやトニー・ゴドウィンなどが活躍するスパイ・シリーズを書き続けていますが、この「DC-3の積荷」もそのひとつです。内容は亡命した元イギリスの警視庁長官が影で糸を引く大がかりな国際的密輸事件を捜査中の英国秘密情報部はアフリカに墜落したDC-3を発見する。その積荷をもとに物語は波瀾万丈のスリリングな展開をみせる。話が横道にそれますが、「スパイ小説はアメリカ人の発明より、イギリス人の発明である」という論があるように、イギリスには伝統的にスパイ小説が百花爛漫しています。古くはエリック・アンブラーからグレアム・グリーン、レイ・ディトンやジョン・ル・カレ、そして愛すべき007シリーズを書いたイアン・フレミングなどなど…、僕は航空小説を語るよりスパイ小説の話をする方が饒舌になる傾向があり、このブログの編集長竜子さんに「何を書いているのですか?」とお叱りを受けそうなので、今はやめますが、グレイグ・トーマスもその伝統ある英国スパイ小説流れをひいた作家のひとりです。
 しかし彼が世界的に名を知られたのは、スパイ小説ではなくて航空謀略小説といいましょうか、皆様よくご存じの「ファイヤー・フォックス」を発表してからです。クリント・イーストウッド主演で映画にもなりヒットもしましたね。ソビエトの超近代型戦闘機ミグ31を盗み出すという作戦を立てたアメリカとイギリスの諜報部が、アメリカ空軍のパイロット、ミッチェル・ガントを単身、モスクワに送り込みます。その潜入と脱出のドラマはまさにわくわくするような冒険航空小説でした。この「ファイヤー・フォックス」がヒットしてグレイグ・トーマスは続編として「ファイヤー・フォックス ダウン」も書きました。ダコタは登場しませんが、折りをみてこちらもご一読下さい。

 さてさて、お楽しみ頂けましたか?
 DC-3特集最後は、空撮の名カメラマン、アメリカのクレー・レーシーが撮影した美しいダコタの空撮映像を当時の音楽、グレンミラーのビッグバンド・スウィングにのせてお届けしましょう。ご期待下さい。では、また。

武田一男

【航空100年】DC3特集
著作・録音 武田一男 ©Director’s House

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