飛行機がなぜ飛ぶか、実はよく分かっていない?!

この記事は、いただいたコメントを併せて読んでください。「ベルヌーイの定理」について、重要なコメントをいただいております。修正も考えましたが、誤りも含め、残すことにしました。
また、巻き添えにしてしまって申し訳ないのですが、当エール・ジャポンと共同運行をしているキネマ航空の博物館「揚力のはなし」では文献の紹介もあるので、こちらも面白いです。
http://kinema-airlines.movie.coocan.jp/museum.html
正直なところ「何がどうなって」の部分の理解がキャパシティを越えてしまって、このまま修正するよりもうちょっと別の本を読んで紹介したいなと思っています。

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飛行機好きのみなさん、「飛行機ってなんで飛ぶの?」と聞かれたとき、なんて説明していますか??

よく本では「揚力」や「ベルヌーイの定理」という言葉で説明していますが、わたしの場合は、ある機長の書いた本の説明が(私にとって)とても分かりやすかったので、人に説明する時にもそれを使って説明しています。
「水道の蛇口をひねって水を流して、そこにスプーンの曲がっている方を近づけると、水の方にスプーンが引き込まれるような感覚ってない?? 水にスプーンが吸い付くような…」とはじめます。本当に感じたことがあるかどうかは分かりませんが、なんとなく想像してもらえるようで「うんうん」と返ってきます。
そして、「蛇口から流れる水の周りに、他の空気よりも早く流れる空気が出来ているんだけれど、それの応用で飛んでいるんだよ」と続けます。「この2つの空気を飛行機の翼の上面を流れる空気だとすると、翼の上面と下面で空気の流れるスピードに差が出るんだけれど、その翼の上面と下面に流れるスピードが違うために、上面では圧力が低下して上に持ち上げられる作用(揚力)が起こる…」云々、と続けるのです。

少し前に「笑っていいとも!」のゲストに岩城滉一さんがゲストででていました。いくらタモリさんが好きとはいえ、さすがにわたしも「笑っていいとも!」を見れるほどではないのですが、その日はたまたま居合わせたんですよね。岩城滉一さんはバイクをはじめ多趣味で知られていますが、最近では曲芸飛行もされているそうなんです。陸海空、と制覇した男! なのだそうです。マニアックな話題でお客さんが静かになっていく中、さらに男の趣味の話になってゆきます。

ふと、タモリさんがこんなことを言いました。
「あのさ…飛行機が飛ぶってのは、翼の揚力云々カンヌンで、っちゅうのは分かるんだけれども、なんで背面飛行ができるの、あれ落っこちゃうんじゃない??」といった主旨のことを質問したのです。「そうそう!」と思っいますよね。だって、翼の曲面が上にあることで揚力を作り出しているはずの飛行機が、アクロバット飛行ではそれが間逆になってしまうのですから。
でも岩城滉一さんは「あれねぇ、背面飛行に入る直前に機首をクルっと上に向けるんです」とこう説明していました。私もまた「なるほど〜〜〜!」となるわけですね。タモリさんも「へぇ〜〜っ」と感心していました。

でも、ズルい。機首を上げてクルッと回転すれば落ちないそうだ、ということだけは分かったのですが、しばらくして理屈を知りたかったのに、操縦の技術的なことでかわされちゃった気がしてきます。背面のママしばらく飛び続けるアクロバットもありますよね? あれって一体どうなってるんだろう?? とか。頭がハテナになってる時、「いったんCMで〜す」ってなって、その話が途切れてしまいました。

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)

今日紹介する本は、2006年に刊行された新書でとてもヒットした本です。科学のほぼすべてが「仮説」で成り立っているということを説明している本です。そして、ちょっと横暴ですがこの本をまとめちゃうと、その仮説を疑うことで自分の思考力を鍛えよう、と言っている内容の本だと思います。結局、哲学の本だったというか…。アインシュタインの相対性理論や、ターウィンの進化論などなど、世の中に「定説」としてあるものを引き合いに出しながら説明していたり、素粒子に関しても科学のむずかしさを微塵も感じさせないあたり、評価すべきところが多いと思う。

飛行機とは関係のない本に見えますが、この中に「飛行機はなぜ飛ぶのか? じつはよく分かっていない」という章があります。そこでの解説を読むと、あら不思議…。飛行機が飛ぶ理屈ってちょっとおかしいんだ、と思うのです。
揚力の前提というのは「翼の上面は弧になっていて、下面よりも距離(長さ)が長いの。飛行機が前進すると、翼に空気がぶつかるでしょ。そこをスタート地点だとすると、空気はふたてに分かれるよね。翼の上に行った空気は弧の分、距離が長いので速いスピードで駆け抜けることになる」ってことですよね?
この理屈だと、ひとつ重要なことが抜け落ちてるんです。

そもそも、なんで上と下でスピードが違うか? それは、ベルヌーイの定理での、上面と下面の距離(長さ)が違うから…云々ということでしたけれど、それって同じスタート地点をもった空気が、同じゴール地点に同じタイミングで到着することが前提となっています。けれど、同じタイミングでゴールして合流するということが、どうして言えるのか、そこについての立証がないのだそうです。さらには、風洞実験をしても、実は上下に分かれた空気は同時には合流していない、ということが分かっています。
「ベルヌーイの定理」というものが、同時に合流することが前提となっている説なので、飛行機が飛ぶ理屈を「ベルヌーイの定理」”だけ”では説明できないことになってしまうのです。

しかし、別の実験を重ねて確実に分かっているのは、翼の上を通った空気の方がやっぱり早いということです。これはだけ確かなこと、なのらしい。

空中を、人間がコントロールして飛ばすものの中には野球のボールがありますよね。配球にはストレートの他にも、変化球があります。変化球は皆さんが知っているように、ボールに回転をつけて飛ばすわけです。すると回転したボールによって、ボールの周りには意図的にゆがめられた流れの空気ができます。
この流れ、ボールの回転につられて上と下に別な流れの空気が生まれて、揚力が働いていることになります。変化球も「ベルヌーイの定理」ということになります。でも野球のボール自体は回転していますよね…。飛行機は回転なんかしていません。

では、航空力学の専門家は飛行機が飛ぶ仕組みをどう考えているのかが不思議ですよね…。それについては「飛行機は渦で飛ぶ」というように考えているらしいのです。さらにそれがなぜかというと、飛行機が空を飛んだ後に、翼の後ろには渦ができるということは風洞実験でも実証済みなのです。渦ができている、ということこそがボールの回転と同じような運動が翼に起こっている、と仮定しているということです。

以上ここまでが、この本で紹介されているお話(だから「99.9%は仮説」なのだ、と)。

一方で、この竹内薫さんの本で書かれていることは、物理学者でデビッド・アンダーソンさんが2001年に発表した「Understanding Flight」という本で発表しています。この本では、飛行機が飛ぶのは、ニュートンの運動の法則で説明できる、といっているのです。

Understanding Flight, Second Edition

デビッド・アンダーソンさんがどんな風に説明したかというと、揚力が発生するのは、コアンダ効果というもので、揚力が発生すると説明しました。コアンダ効果というのは、流れの中に物を置くと、その物に貼り付いて流れ変える性質のことで、発明家のコアンダさんがジェットエンジンの実験中に発見したもの。
たとえば、蛇口からひねって流れている水に、冒頭の説明のようにスプーンを近づけます。
水はスプーンの曲がった縁を伝って、流れる方向を変えますね。同時に、水の方向へ引き込まれる力が出てくる。この、水側に引き込まれるのが、空でいうところの揚力ということ。
私が友達にしている説明なのですが、あのままでは間違っているんですね。蛇口の例えまではOKだと思います。でも、上下の圧力差は、流れるスピード差によって揚力が生まれる、のではなく、もともと圧力差があるから、上下のスピードが違う、というもの。正しくは、空気には粘性があって、流れる空気の中に置かれた物体は、その粘性に巻き込まれるようなかたちで渦が発生し、揚力を発生させていたのです。

わかりますか??
言葉の問題もあるかもしれませんが、「揚力」についての根本の考え方は違うのです。おおざっぱに言ってしまえば、それが解釈次第で説明が変わる、とも言えてむずかしいのですが、ともかく「そうだったのか!」と思わせるのです。

私自身、揚力についての説明を、あちこちで目にしているうちに、自分の中での解釈が、揚力が生まれるのは上下のスピード差(ベルヌーイ的な)と、微妙に間違ってきていたのです。実際に飛行機が飛ぶのを説明できるのは、コアンダ効果だったのです。
コアンダ効果(=流れの中に物体を置いたときにその物体に沿って流れの向きが変わる粘性の有る流体の性質のこと by wikipedia)のように、大きなエネルギーの方に巻き付かれていく、という…、私自身がニュートンの力学の証明みたいな気が…。

しかし、「飛行機がなぜ飛ぶかは説明できない」というのは、無茶がありますね。とても面白い本だと思いますが。
そんな科学的思考回路なんてどうでもいいって言えば、それで片付いちゃうし、そんなのは都市伝説だ、といえば、それはそれまで。だけれど、なぜ飛ぶか? の実証作業や科学的回路でのひも解き作業がなければ、今のような文明の発達もない。
この本を読んで分かりましたが、科学はそもそも哲学であって、その哲学的な思考回路の説明のひとつひとつが定理や、法則や、理論といった「科学」なんだと思うのです。その科学的思考の元では、飛行機がなぜ飛ぶのか説明できないにしても、どういう仕組みでどう作ったら良いのか、というのは、科学的思考の説明段階でも導きだすことは出来るし、これまでの経験則で説明が出来るものです。また、どうしたらどうなる、という計算だって出来ているのです。

仮説がいろんな物事の根幹を支えていることは分かりました。
飛行機は安全。大丈夫!

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  1.  自分は幼児時代にプロレスのアントニオ猪木のモノマネをしすぎてアゴが発達しすぎて、小学生時代〜中学生時代まで都内:表参道の与五沢矯正歯科まで通院してまして今回は自分の歯も撮って貼ったです。芸能人・タレントも「顔」と「歯」が命だと思ってますが、「岩城滉一は、綺麗な歯並びですね」・・多くの最近〜少し前の芸能人の歯並び写真を拡大して貼って評論してみたのです。歯に関するおもしろい川柳も貼ってみたので笑ってくれたら最高です!だいぶ涼しくなってきましたが、まだ残暑は続くとか。なにやら?冬はメチャ冷えるらしいという情報を耳にしましたが:NASAの研究調査では「月」が収縮してるそうで、寒さ対策も考えときたいですね?・・(*^_^*)トラックバックをさせて戴きとう思っております。<m(__)m>

    • 匿名
    • 2015年 5月24日 6:22pm

    デビッド・アンダーソン氏の書籍の理論は、部分的に正しいものの、ベルヌーイの定理について
    航空機の翼との関係を正確に理解しないままそれを否定してるよいう点で、誤っています。
    書籍の記述にはいかにも素人が描いた専門書ならではの矛盾もあり、たった数行の文中に
    論理的に矛盾した主張が混在し、そこを読むだけで明らかに誤りであるとわかるような個所もあります。

    しかし、それ以前から存在した、ベルヌーイの定理の誤った解釈による矛盾を、一見、見事に解消
    したかのように見える為、「ベルヌーイの定理による揚力の説明は間違っている!」という
    誤解を世に広める結果になりました。

    ベルヌーイの定理は、上下に分かれた気流が翼の後端に同時に合流すること(いわゆる同着説)が
    前提となっている説ではありません。

    ベルヌーイの定理は、物体の表面の流速により圧力が変化する、その度合いについての定理なので
    翼の上下に分かれた気流のうちどちらが翼の後端に先に到着するかとはもともと無関係なんです。

    物体周辺の流体に速度差が発生しているとき、その速度分布から圧力の分布を計算することが
    できるので、その総和である揚力の大きさも求められるという事です。
    例えば「翼の周囲の流体がこのような速度分布の時、物体はこの方向に力を受ける」と言うことが
    わかります。

    ベルヌーイの定理によって「揚力が発生する」のではなく「揚力が求められる」のです。
    よって、ベルヌーイの定理だけでは、物体の周囲の流体の速度を細かく求めることなどは出来ません。
    そういう目的の定理ではないからです。

    そのため、揚力が発生するメカニズムそのものを説明したり、実際に物体の周囲の速度の分布が
    どのような状態になるかを求めるためには、当然他の理論が必要になります。

    上下に分かれた気流が翼の後端で同時に合流するとする、気流の同着説(誤り)に、翼の上側が
    膨らんだ形状による経路長の違いの効果を加えることで予想される気流の速度の違いには、
    ベルヌーイの定理を当てはめても正しい揚力は得られません。
    同着説をもとにすると速度分布の予想が実際と違うので、当然の結果です。

    実際の飛行機の翼では、翼の上側の気流が先に後端につくため、それによって、上下の気流には
    気流が同時に合流するよりもさらに大きな速度差が出来ています。
    この正しい速度分布が正確にわかれば、ベルヌーイの定理を当てはめると、正しい揚力が得られます。

    流速が速いから圧力が低くなるのではなく、圧力が低いから流速が速くなるのだとおっしゃいましたが、
    これはどちらが原因でどちらが結果かと言うより、相互作用の結果、圧力と流速が正しい関係で
    釣り合った状態で安定するだけであって、どちらかが原因でどちらかが結果と言う、一方通行の
    作用ではありません。全ての出来事には作用と反作用があるものです。

    飛行機がなぜ飛ぶか分かっていないという噂は、ここ数年でまことしやかに囁かれるようになった
    誤った考えで、これには竹内氏の本も大きく影響していると思われます。しかし、実際には
    約100年前から正確にわかっていて、計算上も実験とほぼ同じ揚力を導き出すことが可能です。

    これは、「仕組みは分かってないけどなぜかこの式に当てはめれば揚力が計算できる」という風な
    あやふやなものではなく、ちゃんとなぜそうなるのかまでわかっています。

    ただ、多くの物理学者は、剛体の運動については正しく理解出来ていても、流体力学について
    不慣れであるために、この揚力発生の仕組みを正しく理解していないことが多く、それもあって
    このような誤った認識が広まってしまったのでしょう。

    • 竜子
    • 2015年 10月16日 3:51am

    匿名にもかかわらず、ここまで仔細にわたりコメントくださり、心より感謝申し上げます。
    なぜ飛ぶか分かっていない、というのは誤りなんですね…。
    単純におもしろくって取り上げてしまったのですが、
    「ベルヌーイの定理の誤った解釈」について、ふむふむ、なるほどと、拝見しました。
    「揚力が求められる」定理であること、作用・反作用があること。
    頭がごちゃつきそうですが、興味深く読ませていただきました。
    どうもありがとうございます。
    追って、本文のほうにも追記させていただきますね。

    • mee
    • 2016年 2月28日 2:40pm

    飛行機が、何故飛ぶのか?

    なぜか翼断面での説明になっているものがほとんど。

    翼断面形状は、強度確保及び効率追及の結果では、ないのでしょうか?

    それだと紙飛行機が説明出来ない。 私は『 飛び石説 』を支持しています。

    竜巻の秒速うん10メートルの風で、タンクローリーやら機関車が飛ぶでしょう

    相対的に秒速うん10メートルの速度を出して、適切な迎角を翼に与えて、それを再現しているものだと思います。

    紙飛行機や凧は、軽いので ”そよ風”程度の風速で飛びますが・・・

  1. 2017年 2月28日