航空ドキュメンタリー「最後の飛行」最終回 ハーレクイン8673、ホノルル管制へ

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★「最後の飛行」挿入29

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 ハーレクインエアはホノルル管制エリアに入った。
 現在、高度37000フィート。
 漆黒の闇だった東の空に濃いブルーの色が混じり、僅かに水平線が現れてくる。
 先ほどから、副操縦士のダウニングに代わって管制交信をしているネイヤー航空機関士が、無線機の周波数をホノルル管制センターVHF119.9メガヘルツに切り替えると、ホノルル空港へ進入承認を受けた日本航空92便がクリアランスを復誦するボイスが聞こえてきた。
ジャパンエア92ヘビー クリア トゥ ホノルルエアポート プレゼントポジション ディレクト ブック ブック 8 アライバル リービング フライトレベル390 サンキュー
(日本航空92便です。現在地点からダイレクトにBOOKE BOOKE8進入方式でホノルルエアポートへ高度39000フィートから下降を開始します)
 アメリカ合衆国では小型機も国際空港に差別無く離着陸出来るので、小型機と区別するために大型機は便名のあとに「ヘビー」という言葉を入れることが定められている。この日本航空92便は新潟発ホノルル行きのDC-10で大型機である。
 日本航空の交信のあと、ネイヤーがマイクを取ってサンフランシスコ管制との最後の交信で指示されたようにホノルル管制を呼んだ。

▼ホノルルエリア飛行地図
ホノルルエリア飛行地図

ホノルルセンター ハーレクイン8673ヘビー フライトレベル370 10メネツ アット サイバッド
(ホノルルセンター こちらハーレクイン8673便です。高度37000フィートで飛行しています。あと10分でサイバッドに達します)
ハーレクイン8673 ホノルルセンター
(ハーレクイン8673便へ。こちらはホノルルセンターです)
ゴーアヘッド ハーレクイン8673ヘビー」とネイヤー。
ハーレクイン8673ヘビー スクウォーク 2754 フライトレベル370
(ハーレクイン8673便へ。貴機のレーダー認識番号は2754です。そのまま高度37000フィートを維持して下さい)
 ネイヤーがホノルルセンターの指示を復誦して交信を終わった。その交信を三宅機長が確認してネイヤーにHF無線機を切る指示を出す。これから着陸までVHFによる交信となる。
OK HF OFF」そして、キオラ(KEOLA)の緯度と経度を確認する。
(ノース)21・17・9 ウエスト158・29・4?
(キオラは北緯21度17分9。西経158度29分4だよね?)
そうです」とダウニング。
 キオラはホノルル空港のすぐ西の洋上にあり、普段はキオラ経由で離陸に使用するポイントだが、早朝のホノルル空港は離陸が少ないので、西から飛行した航空機に対して有視界着陸の場合はキオラ経由で滑走路4や8に着陸する場合が多い。
ダイレクト トゥ トゥ。ダイレクト?」と三宅機長が確認する。現在の位置からキオラにダイレクトに進入することが出来れば、サイバッドとカウアイ島南の通過予定地点を経由することなく、最短距離で滑走路4又は8に着陸することが可能なのだ。
  ネイヤーがすぐマイクを取って管制官に尋ねた。
ホノルルセンター ハーレクイン8673ヘビー ウィ キャン プロシード フロム プレゼントポジション ダイレクト キオラ?
(ホノルルセンターへ。こちらはハーレクイン8673便です。現在地点からダイレクトにキオラへ進入することが出来ますか?)
8673 ラジャ ダイレクト
(ハーレクイン8673便へ。どうぞ。直行して下さい)
8673 ダイレクト キオラ」(8673便。直行します)
 ネイヤーがにゃりと笑って親指を立てて復誦交信を終える。

「あら…。金星が出てきた」
三宅機長が操縦室の窓ガラスから水平線を指さして言った。指の先には限り無く黒に近い紺色の空に信じられないように大きく黄金の玉のような宵の明星が光っている。
 日本エアシステムとハーレクインエアを支えた三宅機長のラストフライトは、夜明けの金星の光のようにあと数十分で終わろうとしていた。
 コックピットのスピーカーから、近づくホノルル空港の管制が伝えるATIS(空港情報)が聞こえてくる。

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★「最後の飛行」挿入30

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ホノルル・インタナショナルエアポート インフォメーション ブラボー(B) 1453 ウィンド050/8ノット ヴィジビリティ10 スカイクリアー テンパラチャー 22 デューポイント18 オクティメーター30・05 ランディングランウェイ4 ディパチャーランウェイ4アンド8 イクスペクト ILSアプローチ オア ビジュアルアプローチ アドバイズ イニシャルコンタクト ユー ドウ インフォメーション ブラボー
(14時50分のホノルル国際空港の情報Bをお知らせします。風は05度から8ノット、視程は10キロメートル、快晴です。気温は22度、露点は19度、気圧は30・05インチ、着陸滑走路は4、出発滑走路は4または8、着陸方法はILSアプローチか有視界進入です。インフォメーションBを受信したことをお知らせ下さい)
 ATISでクルーは空港の着陸状況を知る。

「これ、もう、カウアイ島が出てきましたよ」三宅機長がレーダースクリーンを指差して言った。
「もう、ホノルルまで238マイル…」
 まだ、闇の中に沈むカウアイ島がレーダーの中で緑色の島影を見せていた。
 カウアイ島はハワイ諸島の西に位置し、古来、ポリネシアン民族がタヒチ諸島からハワイへ移植したときも、この島を最初に訪れたという。ハワイの中でも最も自然が美しく、ポリネシアン文化の歴史が残る島である。
 三宅機長がインターホン電話でキャビンクルーに乗客の状況をたしかめて、着陸前の機長アナウンスを始めた。

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★「最後の飛行」挿入31

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ご搭乗の皆様、おはようございます。操縦席よりご案内申し上げます。どうも長いあいだご苦労さまでした。お疲れのことと思います。あと40分程でホノルル空港へ着陸いたします。ホノルル空港の天候は東よりの風が4メートル、晴れで素晴らしい良い天気です。地上の温度は現在、22度と報じられておりまして、若干涼しいようです。あと暫くでございます。どうぞ、ごゆっくりおくつろぎ下さい
 関西空港発の日本航空1092便にホノルル・センターが呼び掛ける。
ジャパンエア1092 ディセント パイロット ディクリッション メテンテイン フライトレベル 190」(日本航空1092便へ。あなたの判断で高度19000フィートまでの降下して下さい)トラック11を飛行した日本航空1092がハーレクイン機より先に下降許可が出た。
 日本航空1092が復誦すると、ホノルルセンターはハーレクイン機に下降の準備が出来ているかどうかを尋ねる。
ハーレクイン8673 ディセント パイロット ディスクリッション メインテイン 190」(ハーレクイン8673便へ。あなたの判断で19000フィートへ下降できますか?)
パイロット ディスクリッション 190 ハーレクイン8673
(19000フィートへ下降できます。ハーレクイン8673)
 19000フィートまでの降下許可が出ると操縦室は下降の準備に入る。
 スピーカーから、ハーレクイン8673のあとに関西空港を離陸したノースウエスト16便747が、やはり日本航空機し同じトラック11を飛行してホノルル管制エリアに入った交信が聞こえる。
グッドモーニング ホノルル ノースウエスト16 ユー アー 10メネツ トゥ ダンノ(DANNO) フライトレベル 370 スコーキング 2756
(ノースウエスト16便へ。グッドモーニング。こちらホノルルセンターです。ダンノ(DANNO)まであと10分、そのまま高度37000フィートを維持してください。レーダー認識番号は2756です)
 DANNOはカウアイ島の北東にある洋上通過点で、前述したようにトラック11のハワイ側の出口である。
 日本からパコッツ・ルートでホノルルへ飛来した航空機で日本航空92便や1092便、ノースウエスト16便などトラック11経由の場合は、ダンノからブック ブック8進入方式を、ハーレクイン8673やそれに続く全日空1056便などトラック12を経由した航空機は、サイバッドからキオラへダイレクトにアプローチさせる進入方式を、ホノルル管制はとっているのだ。

▼ホノルルILSアプローチRWY8Lと4R
ホノルルILSアプローチRWY8Lと4R
ホノルルILSアプローチRWY8Lと4R

はい。ランディング・ブリーフィング」と三宅機長は英語で着陸の打合せを始めた。
天候は、8ノットの微風、気温22度、気圧は30・05インチ、使用滑走路は多分、滑走路8L(レフト)、ディシジョン・アルティテュード(最終的に着陸するかどうか決める高度は)213フィート、タッチダウン13、もし、ミスアプローチをした場合、右旋回してホノルルエアポートから171度方向でアラナ(ALANA)へ向う。アラナまで13、9マイル飛び、アラナ上空で高度3000フィートで待機する。ABS(着陸時のオートブレーキ)はミディアムを使用。進入速度はプラス5ノットの147ノットでセット済み。オール OKだね
 三宅機長が確認するとダウニングとネイヤーが了解しましたとコールする。続いて機長は下降時の計器点検を指示した。
ディセント チェックリスト」(下降の計器点検を始めるよ)

▼ディセント・チェックリスト
ディセント・チェックリスト

 下降の計器点検が終わると、ノースウエスト機とホノルルセンターの交信が聞こえた。
ノースウエスト16 レーダーコンタクト 70マイル イースト オブ ダンノ(DANNO)クリア トゥ ホノルルエアポート ダイレクト ブック ブック8 アライバル メインテイン フライトレベル 370
(ノースウエスト16便へ。レーダーの視野に入りました。現在地点はダンノまで70マイル地点です。ホノルル空港へはブックブック8進入方式でアプローチ。高度は37000フィートを維持して下さい。)
OK ディレクト ブック ブック8 アライバル トゥ ホノルル ノースウエスト16 メインテイン 370」(OK。ホノルルまでブック ブック8進入方式。高度37000フイート。ノースウエスト16便)
オールモスト ストレート」(ほぼ、まっすぐだね)と三宅機長が後を振り向いて、「たあー」と右手を前方へ突出して微笑む。
 その手の先にはホノルル空港があるオアフ島が夜明けの薄青色の大気の中から、透し絵がにじみでるようにぼんやりと姿を見せ始めていた。
ホノルル グッドモーニング ジャパンエア84 フライトレベル 360
(ホノルル管制へ。おはようございます。日本航空84便です。現在、高度36000フィートで飛行中です)
 名古屋発のホノルル行き日本航空84便、B-747がホノルル管制エリアに入った。
ジャパンエア84 コール ミー 360?」(日本航空84便へ。36000フィートですか?)
ジャパンエア84 ラジャ
ジャパンエア84 スコーク2762」(日本航空84便へ。レーダー認識番号は2762です)
 高度36000フィートに注目してもらいたい。ハーレクイン機やノースウエスト機は37000フィートで飛行している。その差は1000フィート。
 三宅機長は1000フィートの高度差で飛行させているのが、前述したRVSM(リデュース・バーチカル・セパレーション・システム)による管制システムだと説明する。
 それにしても夜、日本の各地を出発して早朝にホノルルへ到着する航空機がいかに多いことか。ハワイが日本人にとってどれほど人気あるディスティネーションであるか、改めて痛感する。

 ハーレクインエアがハワイに頻繁にチャーター便を出していたころの話を三宅機長が語ってくれた。
「ホノルルではなく、ハワイ島のコナへ日本から直行便を飛ばしていたときね。コナに早朝、それもまだ、暗いうちに着くんですよ。その時間では空港の管制塔はまだ誰もいなくて滑走路のライトさえついていない。それでコナの近くまでくるとVHFのタワー周波数で無線機のマイクボタンをカチカチと5回プッシュするんですよ。すると自動的にランウェイライトが点灯するようになっている。のんびりしていますね。多分、今でもそうですよ。コナはね」

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★「最後の飛行」挿入32

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ジャパンエア1092 ディセント 8000 ホノルル アクティメーター イズ 30・05」(日本航空1092便へ。高度8000フィートまで降下を許可します。ホノルルの気圧は30・05インチです)
 日本航空1092が復誦する。
 現在地はPUPPIから99マイル地点。
OK リービング」(OK。高度を下げるよ)と、三宅機長がコールをした。高度計が37000フィートから、ゆっくりと数をへらし始めた。
 もう、夜が明けて水平線は鮮やかなオレンジ色に変わり、眼下にはカウアイ島が濃い緑の島肌が、薄青色の珊瑚礁に囲まれて灰色の海の上に軍艦のように浮かんで見える。
 ダウニングがマイクを取って、下降を開始したことを告げた。
ホノルル ハーレクイン8673 リービング 370 190
(ホノルルセンターへ。ハーレクイン8673便です。37000フィートを離れて19000フィートへ下降しています)
 着陸前のカンパニー交信をするために、ネイヤーがマイクで会社のハワイ運航セクション(コールサインはアロハディスパッチ)を呼んだ。
アロハ・ディスパッチ ドウ ユー リード ハーレクイン8673?
(アロハ・ディスパッチ こちらハーレクイン8673便です。聞こえますか?)
ラジャ ハーレクイン8673」(聞こえます。ハーレクイン8673)
グッドモーニング ハーレクイン8673 ウィルビー オン ブロック アット 1630 リクエスト ゲートプレイス?
(おはようございます。こちらハーレクイン8673。ブロックタイム(ゲート到着時間)は16時30分、ホノルル時間で朝、6時30分の予定です。現在の飛行は順調です。ゲートナンバーを教えてください)
ユア ゲート 24 バゲージクレイムナンバー イズ 4 ジスモーニング
(今朝のゲートは24番で手荷物の受け渡し台のナンバーは4です)
スポットナンバー 24 アンド バゲージクレイム 4
 指定されたスポット・ナンバーを聞いて三宅機長始めクルー全員が歓声をあげた。
24! ナイスプレイス
 24番スポットはホノルル空港の正面に位置するセントラルコンコースにあるスペシャルゲートのひとつで乗客にとって最高に便利なゲートである。普段はディリーでホノルルへ定期便を飛ばしている大手航空会社が使用している。日本エアシステムのハワイ初便はお祝いの意味をこめて隣の25スポットが用意されていた
 不定期なチャーターフライトの場合は、メインビルディングから遠く離れたスポットが割り当てられ、乗客はスポットからバス(このバスを”ウキウキ・バス”という)で到着口まで行かねばならない。
ノー ウキウキでしょう」とダウニングが笑った。今日はそのバスに乗らなくてすむのだ。ハーレクイン8673がホノルル到着に際してスポット24番へ駐機出来るのは特別な計らいであった。9年前に日本エアシステムのハワイ初便はお祝いの意味をこめて隣の25スポットが用意されていたそれ以来である。
 空港に頼んでこの特別な手配をしたのは、アロハ航空を定年で退社しハーレクインエア・ハワイアメリカ地区駐在責任者になったハワード・大下氏である。
 彼は三宅機長最後のフライトにあたって特別なスポットを用意し、翌日行われた三宅機長のラストフライトのパーティをセットするなど、ハワード氏は最高のもてなしで三宅機長を迎えたのだった。
 ホノルルセンターが無線で呼び掛けてきた。
ハーレクイン8673 ディセント メインテイン8000」(ハーレクイン8673便へ。8000フィートまでの下降を許可します)
 いよいよハーレクイン8673便はホノルル空港への下降に移った。
 まだ太陽は水平線上には昇ってはいないが、幾分空は明さを増し、刻々と高度を下げる機窓には朝靄の中に紺色の海が美しい表情を見せ始めた。
 客室では朝食のサービスも終わり、ホノルル着陸の準備でキャビン・クルーは多忙であった。この便のチーフパーサーは宮島智美さん。キャセイ航空からハーレクインエアに移った飛行時間約7000時間のベテランパーサーである。
 後に彼女がホノルル便の客室の状況について会社に報告したレポートを紹介しよう。

 PAX(乗客)の状況。KIX(関西空港)出発が遅い時間であったため、機内では皆様静かにお過ごしでした。いつになくお年寄やお子様が多い便で、客室乗務員は一時も気を緩めることができなかったのですが、お客様自身がとてもマナーを弁え、多少旅慣れていらっしゃる方もいらっしゃった為、FLIGHTはスムースにOPERATE出来ました。
 CP(キャビンパーサー)や機長ご自身のANN(アナウンス)で、当該便が三宅機長のLAST FLIGHTということをお知らせしましたので、サービス中や降機中に興味を持ってお尋ねになるお客様が多かったように記憶しています。
 三宅CAPのお母様にほんの少しですが、操縦室の中の様子をお見せしたところ、とても嬉しそうに頷いて微笑んでいらっしゃったのが印象的でした。
 また、PREMIUM CLASSにいらっしゃった高齢の歩行困難PAXの降機(車椅子手配に手間取ったため)が遅れている間、失礼かと思ったのですが三宅機長を囲んでささやかなお疲れさま会?を機内で行ったのですが、そのお客様もニコニコしながら一緒に「お疲れさまでした」と呟いていらっしゃいました。
 HLQ(ハーレクインエア)ならではのアットホームな雰囲気を垣間見て頂けたのでは?

宮島智美

 現在、高度5000フィート。
 早朝の薄明かりの中に、ハワイ・オアフ島が近づいてくる。
 左手にマカハ、その少し右手にハーバーズ岬とパールハーバー、真正面にホノルル国際空港。その右手にワイキキの街とシルエットになったダイヤモンド・ヘッドが夜明け前の薄い暗闇の中に灰色に浮き上がって見えてくる。
 三宅機長は少しづつ明けゆく空に視線を投げて、胸に去来する想いを噛み締めながら、時の流れの速さを改めて痛感するのだった。
 彼は日本エアシステム待望の成田ーホノルル線定期便の第一便の機長であった。 
 成田空港での晴れやかなハワイ定期便就航式、新しい飛行機、記念すべき初便に招待された各界の有名人、報道関係、社長始め会社の役員、シャンペン、花束、笑顔…
 あれからもう9年の歳月が流れた。そして今、現役最後のフライトを初便で飛んだ同じホノルル便で終わろうとしている…。
 ぼんやりと目の前の風景がかすんだ。胸にこみ上げる想いが不覚にも予期せぬ涙となってメガネを曇らせている。三宅機長はメガネを外してポケットからハンカチを取り出してそっと拭った。そのとき右肩に暖かい人の手を感じた。振り返るとネイヤー機関士が三宅機長の目を見ながら黙って頷いていた。副操縦士役のダウニングは機長と視線を合わさないように右窓から外をながめている。その目にも涙がにじんでいた。
「ハーレクイン8673ヘビィ ヘディング060 ILSアプローチ ランウェイ4ライト」(ハーレクイン8673便ヘ。そのまま機首方向060度で滑走路4RへILS進入をして下さい)
 ホノルル空港の進入管制が呼びかけてきた。
 飛行時間一万九千五百時間、三十数余年のパイロット人生の想いを胸に、
 三宅嘉光機長は、彼が最も愛した島ハワイの、ホノルル空港へ向けて最後のランディングを始めるのだった。

武田一男

ハーレクインエア8673便 クルーリスト

  • PIC:三宅 嘉光
  • FO:CECIL DOWING
  • FE:ANAHN NAIR
  • CP:宮島 智美
  • AP:吉田 幸
  • 2L:松山 妙子
  • 1R:中山 志史
  • 2R:長尾 華奈
  • 3L:久保川 晶子
  • 3R:渡辺 論理子
  • 4LA    嶋田 裕子
  • 4R:比良 亜希子

ハーレクインエア8673便 全飛行ブラン

▼ハーレクインの全飛行プラン
ハーレクインの全飛行プラン

▼太平洋からハワイまでのフライトログ
太平洋からハワイまでのフライトログ

▼飛行地図と飛行プランのナビゲーション・ログ
飛行地図と飛行プランのナビゲーション・ログ

あとがき

 最終回までご愛読を頂き深く感謝申し上げます。この作品は「ラストフライト」というタイトルで数年前、CDブックとして発売しましたが、その折、ある読者に「情報が多すぎて何がメインなのかわからない」というきびしいご指摘を賜りました。それでそのご指摘をふまえて、余分な情報を大幅にカットし、「音」も必要な部分のみ挿入することで全面的に再編集し、主人公の三宅機長を中心としたドキュメンタリーとその背景にある太平洋航路の開発に従事した人達の航空史をまじえた作品に修正して、あらためてこのブログで公開させて頂きました。僕自身の中では結果的に”とてもすっきり”して納得がいくものに仕上がったつもりです。
今年の末には僕の他の航空ドキュメンタリーと一緒にこの作品もiPadなど「電子書籍」として発売になる予定です。PRになりますが、もしご興味のある方はぜひ再読して下さい。
それから、お詫びですが、取材の日、このハーレクイン機がホノルルへ向かって高度を下げ始めたとき、突然、収録していた録音機が予備をふくめて故障するという不幸なアキシデントにみまわれました。それでホノルル着陸の「音」が一切ありません。もし、それを期待されていた読者の方がいらっしゃいましたら、ここで深く、お詫びとご報告を申し上げます。すみませんでした。
最後にもう一度、読者の皆様に最終回までおつきあい頂いたことに感謝申し上げ”あとがき”と致します。ありがとうございました。

武田一男

航空ドキュメンタリー「最後の飛行」
解説 桃田素晶/録音 武田一男 ©Director’s House

【著作について】「最後の飛行」収録している音声、音源は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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    • 匿名
    • 2010年 9月23日 8:01am

    武田さん、
    15回に渡る「最後の飛行」、本当にありがとうございました!
    昔読んだ「ラストフライト」を思い出すと共に、新しい人間味あふれるストーリーで最後は本当にジンときました。
    普段、乗客として乗るときには目的地までのただの移動手段で、数あるフライトの単なる1便かもしれませんが、そういった一つ一つのフライトがクルーの皆様はじめ、多くの皆様の支えでフライトが組み立てられている事が良くわかります。プロフェッショナルな方たちの判断や操作が常に繰り返されてフライトが組み立てられているんですね。
    1つ1つのフライトの重さが伝わってきます。
    そして、一人のキャプテンに焦点を当てた場合の本当のラストフライト。。。。万感の想いだったことでしょう。
    永久保存版ですね。
    素晴らしい企画でした。
    ありがとうございました。
    竜子さん、
    こうした”場”を立ち上げ、育て、運営していくのは大変かと思います。
    感謝いたします。
    従来の雑誌以上の新たな媒体開拓のパイオニアですよね。

  1. ↑すみません。無記名になってしまいましたが、
    ”Airman”です。
    IEのせいなのか、理由は分かりませんが、今回は確認画面でもnameほか入っているのを確認したのですが、やはり抜け落ちてしまいました。。。
    申し訳ありません。

    • 竜子
    • 2010年 9月24日 12:59am

    ■Airmanさん
    コメントどうもありがとうございます。
    「最後の飛行」、わたしにとっても永久保存版はもちろん、心に残る作品でした。
    細かなところでは、コックピットにこだまする3人のイントネーションの異なる英語や日本語、それから管制との交信にそれぞれの文化を感じ、終始息のとれたコミュニケーションが、あたたかくて好きでした。
    それから「ラストフライト」は、わたし自身にとっての勉強にもなりました。
    思えば、今のようなブログになったのもこの「ラストフライト」が原点ですし、ひとつの本で母と涙を共有したのもこの作品でした。
    自分の書くことで人を傷つけたり、思うように言葉で感情を綴れなかったり、難しいですよね^^
    わたしもAirmanさんを見習うように、心がけます。
    この作品を提供くださり、ブログ用に書き換えてくださった武田一男さんに、このばを借りてお礼申し上げたいと思います。

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