「恋する空港 あぽやん2」

久々に、本の紹介をします。
以前紹介した「あぽやん」。この小説はかなり楽しめ、竜子のお気に入りのひとつです。そして今日紹介するのが、その続編となる「恋する空港 あぽやん2」。2010年6月に刊行されました。この本の面白いところは、ヨーロッパ映画のようなテンポの良さと、日々のさりげない人たちの描写がユーモラスだったところです。

最初は誰かのブログを読んでいるような、朴訥とした語り口調で、1章を読み終えるまではそのペースに頭をシフトさせるだけで終わったように思いますが、あれよあれよという間に「あぽやん」の世界へ舞い込みました。登場人物のキャラクターが立っていて、笑ってしまうこともしばしば。気づけば映画を見ているように、物語が進んでいくんですね。最初は飛行機ファンの下心でセレクトした小説だったけれども、いつの間にかヒューマンドラマの世界へテレポートしてしまったわけです。

「あぽやん」というのは、「AIRPORT」の「アポ」に、「やん」をつけてた愛称。昔なら空港に長けた職人としての敬称だったはずが、いまや蔑称として使われるにいたった「あぽやん」のお話。
1作目では、旅行会社のちょっと小生意気な新人として働く「僕」に起こる、奇妙キテレツなお客さんと職場のヒューマンドラマが描かれていました。ベースは成田空港。海外旅行に出発するお客さんを手際よくさばくようになってゆく「僕」の姿が微笑ましくもあり、また同世代の主人公がときに嫌なヤツだったりするのですが、そのあからさまな素直さが好感の持てるキャラクターだったのです。とくに大きな出来事はないのですが、そうしたささやかな日常風景が、素朴な後味を残しました。

そして、2作目の「恋する空港 あぽやん2」。新入社員からスーパーバイザーに昇格し、中堅どころとなった「僕」が、ちょっとクセのある新人を育成するのに奮闘したり、傾きかける「僕」の会社(JALを思わせるような関連子会社がモデル)の中で起こった事が描かれています。1作目ではちょっと変わったお客さんが登場する程度でしたけれど、2作目ではテロリストが登場したり、ストーカーが登場したり、かなりキテレツなキャラクターの人が登場しますが、全体的にはそれでもほんわかヒューマンドラマです。
「恋する空港」がメインタイトル、「あぽやん2」がサブタイトルになっていますが、内容に「恋」の要素は思ったほど多くなく、やっぱり、「あぽやん」の続編です。

変わったことと言えば、1章1章が、完結作としても読めること。そして、その章ごとに大きな話の山場がひとつは盛られていること。さらにその山場がこれまでになかったほどのドラマチックさがあること。娯楽小説感がなおのこと際立った気がした。

たとえると、1作目が映画だったのに対して、2作目はテレビドラマになった感じだ。わたしなんかはひねくれているので、「下心だしたな!」とか思っちゃったりもするのですが、そこを差し引いてもやっぱり面白い。だって、このままドラマ化されても何の不思議もないんですよね。ってか、むしろテレビ局かなんかとそういう話になっているのか? とまで勘ぐったりしちゃいます。
テレビドラマ、というと変に誤解されるかもしれませんよね。チープな作りかと。
けど、そんなんじゃないんです。それくらいあっという間のスピードで、映像が頭に浮かぶ、というたとえです。たとえではあるんだけれど、これがテレビドラマになるとしたら、このシーンはスローだな、とか、今カメラがパンした、とか。そういう細部まで映像として浮かんでしまうのです。

ここまで言ってると、世界の亀山モデルになるんじゃないかとまで思えてきました。
「恋する空港」がドラマ化、次に「あぽやん」が映画化、その間にまたまた「あぽやん」続編が描かれて…ドラマ化決定。だとか。

ちなみに、「世界の亀山モデル」…。テレビドラマと映画といえば、「世界の亀山モデル」が密やかに有名です。「世界の亀山モデル」といえば、言わずとしれたシャープのアクオスなどのテレビに貼られた国産モデルのブランド。三重の亀山工場で作られた国産モデルである、という称号なのですが…。

実は、映画でいう「世界の亀山モデル」って、シャープとは全く関係がないんですね。えと、テレビフリークの方ならすぐにお分かりかとは思うのですが、テレビドラマ黄金期にあった「ロングバケーション」だとか「あすなろ白書」だとかのプロデューサーとして馴染みのフジテレビの亀山千広プロデューサー。彼の立てたビジネスモデルに食って掛かった称号が「世界の亀山モデル」です。近年の「踊る大捜査線」シリーズで、テレビドラマから派生させて映画の劇場公開をおこないましたが、その史上に残るヒットの要因が、自社広告を含めたメディアミックス型の戦略にあったことから、こんな風に呼ばれるようになりました。

いまは、亀山プロデューサーのものでなくともフジテレビのものでなくとも、民放のテレビドラマから派生した映画を、「世界の亀山モデル」といいます。みんな模倣ですからね。つまり、今や映画の中身はともかく、ビジネスとして成り立ちさえすればいい、というのが世界の亀山モデル。脚本がつまらなくても、演出がイマイチでも、映画になっちゃうし、それなりに観客動員数もある(テレビでの自社CMなんかで話題性があると思い込んでしまう)、というのが「世界の亀山モデル」なんですねー。

余談はさておき。そういう意味でのチープさは、この「あぽやん」シリーズ2作を読む限りではないんです。「やっぱり面白い!」それだけです。私は好きです。
パイロットやスチュワーデス、せいぜい整備士さんまではドラマや映画、小説にもよく出てきますが、なかなか、航空会社の子会社である旅行会社のことまでは語られることのない世界なので、興味ある方にはぜひお勧めしたいと思います。

▼「あぽやん」

▼文庫本も発売されました(2010年10月10日追記)

▼「あぽやん2 恋する空港」

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