第6回 プロローグ・最終号「生い立ちから入社まで」6

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<初めて飛行機で上京、最終試験に挑む>

いよいよ、東京での最終試験を受けるために、当時の板付空港(現在の福岡空港)から、初めてボーイング727という飛行機に乗ったのです。まさに天にも昇る心地でしたが、あのフワッとする離陸の時の気持ちは何とも言えない下半身がスーッと冷やされるような、そんな不安な感じでした(笑)。その便には、九州から8名が最終試験を受けるために乗っていました。素敵なスチュワーデスのお姉さんが、我々の席に来て「頑張って、合格してね。今度は一緒に仕事をしましょうね。楽しみにしてるわよ!」と笑顔で囁かれた時に、こんな綺麗な女性達と仕事ができるんだと、改めて絶対に受かってみせるという思いを強くしたものでした。

当時、東京丸の内にあったJALの本社で役員面接があり、「君は短所に男尊女卑とあるが、一緒に仕事をするのはスチュワーデスで、お客さんにも女性がいるが大丈夫か?」と聞かれ、「はい、そこは仕事ですから、適当にやります」と答えた。

次に「君はフランス語が得意だということだが、フランス語で自己紹介をしてくれ」。
これは得意だったので、「なかなか発音がいい」と誉められました。

最後の決め手は「空手をやっているようだが、何かひとつやってみせてくれるか?」と言われ、失礼しますと学生服を脱ぎ、派手な空手の型を気合を発してやった。
「これはハイジャックの時に役立ちそうだな!」と役員全員がうなずいていたので「やったぜ!」と、その時点で内心、合格を確信したのでした。

3日後、合格の電報が滞在ホテルに届き、ついに最後の体力・適性試験を受けることになったのです。体力や適性検査には絶対の自信があったので、これであの綺麗なスチュワーデスのお姉さん方と一緒に仕事も出来るし、高い給料も、外国にも行けるとウキウキしていたのです。ところが、ここで思わぬ窮地に陥ったのであります。

大学2年の時に、肥料工場でバイトをしていた時、密室の状態の工場で、突然塩素ガスのパイプが壊れ、そこからガスが噴出、作業をしていた社員や我々バイト生が声帯と目をやられ、私は緊急入院したのですが、その事故が原因で視力が2.0から0.6迄低下したのです。応募資格には「裸眼で1.0以上」でしたが、何とかごまかせると考えていたのです。視力検査の前に、例の検査表は2.0まで全部覚えていたのですが、検査担当者の指す棒の先がちゃんと見えず、疑念を持たれてしまったのです。別の顕微鏡の親玉みたいな機械で視力検査をされたので、もうバレバレです。検査担当者の「これじゃ、ダメだな!」の冷酷なひと言で、ガーン!でした。

1次の筆記試験から始まり、2ヶ月間でやっとここまでこぎつけたのです。ここで、断念するのは何としても口惜しいという気持ちが強く。こうなったらいちかばちかの勝負に出る(?)しかないと決めて、ある作戦を決行することにしたのです。

2次面接試験から役員面接試験、そして今回の適性検査までずっと私の次の順番にいて一緒にここまで受かってきた、N君に頼み込んで、適性検査票を確認している看護婦さんを一瞬離席させて、その間に私が自分の視力の項目を書き直す計画に協力してくれるように頼み込んだのです。

それまで、私が常に彼より先に試験が終わるので、その都度、彼には有益な情報を流していたこともあって、私の土壇場の起死回生作戦に全面的に協力してくれて、結果的に、この冷や汗ものの作戦計画は成功したのです。その作戦とは、適性検査の終ったN君に、急に腹痛になって床を転げ回ってもらい、検査表の担当者の看護婦さんにも離籍してもらうことでした。その一瞬の間隙をぬって、私の検査表を訂正したのです。訂正印も、机にいくつかあった印鑑のうち三文判ではなく、正式な印鑑を拝借した。入社後わかったのだが、その時の印鑑はなんと適性検査の責任者の印だったのです。

こうして、結果的になんとかスチュワード訓練生として、入社できたのでした。
翌年、御殿場にある自衛隊の戦車部隊への体験入隊から始まった半年間の厳しい訓練期間を経て、正式にスチュワードとして辞令をもらったのは、その年の暮れのことでした。半年間の訓練期間中に、東京大卒の同僚をはじめ3名が専門訓練中に辞めさせられたのでした。赤軍派による、「よど号ハイジャック事件」が起きた年でもあり、私自身、一時期学生運動で逮捕されたこともあったので、私は自分の運の強さに感謝したものです。

当然ですが、その後の数年間は、あの同僚のN君には頭があがりませんでした(笑)

風天マン

実録「ハチャメチャ乗務員の飛行日誌」
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