B747コックピット「ヨーロッパ飛行」第3回

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ヨーロッパ飛行画像(haruhikon提供)

「コペンハーゲンへ向けてエンジン始動」

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★「ヨーロッパ飛行」挿入03

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岸田副操縦士はチューリッヒ・グランド管制の周波数121.9メガヘルツで、出発準備が整ったことを告げた。
「ジャパンエア412 クリア スタート アップ ランウエイ28 (QNH)1019」(日本航空412便です。エンジン始動の準備は整っています。離陸滑走路は28、気圧は1019ヘクトパスカル)
グランド管制が日本航空412便にコペンハーゲン空港までの飛行承認を発出する交信を始めた。
「ジャパンエア412 クリア トゥ コペンハーゲン バイア チューリッヒ・イースト・ワン・ウイスキー ディパーチャー フライト レベル 80 スクォーク 3005」(日本航空412便へ。コペンハーゲン空港までの飛行を承認します。チューリッヒE1W出発方式で、飛行高度は8000フィート。貴機の認識番号は3005です)

発出された飛行承認に鈴木機長は、右の親指を上にして了解する合図をし、岸田副操縦士はその承認を復唱した。
「ジャパンエア412 クリア トゥ コペンハーゲン バイア チューリッヒ・イースト・ワン・ウイスキー・ディパーチャー メインテイン 80 イニシャリー スクォーク 3005」(日本航空412便です。チューリッヒE1W出発方式で、離陸後の高度は8000フィート、当機の認識番号は3005です)
管制官は発出した飛行高度と復唱した飛行高度に相違があったように思ったのか、飛行高度を再度復唱させた。
「ジャパンエア412 アイ セイ アゲイン フライト レベル 80」(日本航空412便へ。飛行高度を8000フィートと再度復唱して下さい)
「メインテイン 80」(高度8000フィートです)
ディスパッチャーが提示した飛行高度は3万5000フィート。だが、ヨーロッパ域内は網の目のように航路が張り巡らされ、且つ多くの航空機が飛行している。また上空の管制エリアも細分化されているので、安全の為に低い高度での飛行を承認している。
岸田副操縦士は空港ランプエリアを管制するチューリッヒ・ランプの周波数121.75メガヘルツに合わせ、プッシュバックの許可を要請した。
「チューリッヒ・ランプ コントロール ジャパンエア412 リクエスト プッシュバック ゲート ブラボー(B)33」(チューリッヒ・グランド管制へ。日本航空412便です。プッシュバックの許可を願います。当機は駐機所B33にいます)
「ジャパンエア412 グッドアフタヌーン クリア トゥ プッシュバック フェイシング ウエスト」(日本航空412便へ。こんにちは。プッシュバックを許可します。機首を西に向けて下さい)
「フェイシング ウエスト クリア プッシュ ジャパンエア412」(機首を西に向けてプッシュバックをします)
「はい、グランドに言って下さい」鈴木機長は、飯田航空機関士にプッシュバックを開始することを地上整備員に伝えるよう指示した。
「グランド ウィ ア クリア フォア プッシュバック」(プッシュバックを始めて下さい)
「オーケー… リリース パーキング ブレーキ」(了解。パーキング ブレーキを解除して下さい)
「パーキング リリース お願いします」飯田航空機関士は鈴木機長に解除するよう伝えると、機長は「ブレーキ リリース」とコールし、機長席の右にあるパーキング ブレーキを下に押し込むと、機首部の車輪に掛けられていたブレーキ装置が解除された。それを確認した航空機関士は、地上整備員に「パーキング ブレーキ リリース ナウ」(パーキング ブレーキを解除しました)と伝えた。

「はい、18分」鈴木機長が出発時間をコールしたと同時に、トーイングカーはエンジンを目一杯吹かし、JAL412便をプッシュバックし始めた。
鈴木機長はビフォア・スタート・チェックリストのドットライン以降のチェック項目(アイテム)の確認を岸田副操縦士に指示した。
「じゃあ、チェックリスト(の続き)」
「ビーコン ライト…オン」
「ギャレー パワー…オフ」
「パック バルブ…ワン オープン」
「スタート プレッシャー…41 PSI」
「(コックピット)ドアーズ…クローズ」
「ビフォア・スタート・チェックリスト コンプリーテッド」
チェックリストのアイテムを読み上げて計器確認を完了すれば、その旨を必ずコールしなければならない。
ランプエリアをタキシングする飛行機が次々と交信している。JAL412便の次にプッシュバックを要請する交信が聴こえ、管制官は機首を北に向けるよう指示している。
そんな交信が終わるのを見計らってか、チーフ・パーサーが出発のアナウンスを始めた。

「みなさま、大変長らくお待たせ致しました。お客様の人数の確認が出来ましたので、まもなく出発致します。ご協力ありがとうございます」
トーイングカーはエンジンを目一杯吹かしJAL412便を押し、地上走行する地点で止まった。地上整備員がパーキング・ブレーキをセットするように呼び掛けてきた。

「…セット パーキング ブレーキ プリーズ」
「パーキング ブレーキ お願いします」
「ブレーキ セット」
「パーキング ブレーキ セット コンプリーテッド」
「オール エンジン クリア フォア スタート」
地上整備員は、誘導路上に障害物が無いことを確認し、エンジン始動を促してきた。
「オーケー 4、3、2、1」鈴木機長は始動するエンジンの順番をコールした。
「ターニング ナンバー4 エンジン」飯田航空機関士は、エンジン始動スイッチを入れた旨をコールした。
機首方向に向かって一番右のエンジン(ナンバー4)のエンジンが回り始めた。
「10… 15… N1… 21…」
エンジンの回転が徐々に上がり、機長はエンジンに燃料を注入するコールをする。
「フュエル イン…フュエル フロー…ライド アップ」
「25… 30… 35… 40」
コックピットからはエンジンの音はあまり聞こえない。APUだけの音で比較的静かである。しかし、燃料が入ったエンジンは唸りを上げている。
「(ナンバー4エンジン)スターター カット アウト」航空機関士は、エンジンの回転を制御するスイッチを切った。
続いてナンバー3、ナンバー2と順にエンジンを始動させ、エンジン音が次第に大きくなる。鈴木機長は残りの一番左にあるナンバー1エンジンを始動するコールをし、飯田航空機関士はナンバー1エンジンのスターター・スイッチを入れた。
「ワン(1) スタート」
「ターニング ナンバー1 エンジン」
「10… 15… N1… 21…」
岸田副操縦士は、ナンバー2のエンジンの回転が安定したことを機長に報告した。
「ナンバー2(エンジン) スタイビライズ」
「フュエル イン…フュエル フロー…ライド アップ」
「25… 30… 35… 40」
4基のエンジンが轟音と共に、耳を劈くように唸りを上げている。
「(ナンバー1エンジン)スターター カットオフ」
ナンバー1のエンジンが徐々に回転数を上げているが、その音は他のエンジン音で掻き消されている。

「ディスコネクト グランドに言って下さい」全てのエンジンが回り始めたので、地上整備員にインターフォンを切って、航空機から離れるように指示を与えた。
「ラジャ… グランド ディスコネクト オールグランド イクイップメント アンド インターフォン」(機器と無線機を取り外して下さい。)
「ラジャ ハブ ア ナイス フライト」
「ラジャ」
「ナンバー1(エンジン)スタビライズ」
4基全てのエンジンが始動し、エンジン始動後の計器チェックである、アフター・スタート・チェックリストを行った。
「アフター・スタート・チェックリスト」
「エレクトリカル…ノーライト エンセンシャル ノーマル」
「ハイドロ リックス…オート アンド ノーマル」
「(コックピット)ドア…クローズ」
「エルロン ラダー アンド トリム…ゼロ」
「グランド イクイップメント…ディスコネクテッド」
「アフター・スタート・チェックリスト コンプリーテッド」
計器点検が終わり、鈴木機長はタキシング(地上走行)の許可を要請するよう指示を出した。
「タクシー クリアランス」
「(チューリッヒ)グランド ジャパンエア412 レディ フォア タクシー」(グランド管制へ。日本航空412便です。地上走行の許可を要請します)
「ジャパンエア412 クリア タクシー トゥ ランウエイ28 バイア タクシーウエイ インナー イースト」(日本航空412便へ。誘導路 インナー(Inner)、イースト(East)を経由して、滑走路28に地上走行して下さい)
鈴木機長は走行する誘導路を指で指し示しながら確認し、岸田副操縦士は管制官の指示を復唱した。
「インナー イースト クリア タクシー ランウエイ28 (ジャパンエア)412」(誘導路 インナー(Inner)、イースト(East)を経由して、滑走路28に向かいます)
2名の操縦士は、地上走行(タクシー)をする前に機体両側に障害物や近付いて来る航空機が無いかを確認する。地上走行に関わらず飛行している際も、旋回する前にその方向に異常が無いかを必ず確認しなければならない。

チューリッヒJEPPESEN

チューリッヒ・クローテン空港では、出発承認から地上走行するまでの手順が定められている。JAL412便の場合、出発承認はグランド管制(121.9MHz)、プッシュバックはランプ管制、プッシュバック完了後、エンジンスタートし、地上走行(タキシング)はランプ管制となっている。
「チェック ライト」鈴木機長は右側に異常が無いか確認させた。
「ライト サイド クリア」岸田副操縦士は何も無いことを報告した。
鈴木機長は左太ももあたりにあるステアリング・チラーを握り、機体を操縦する。航空機は地上走行する際、正面にある操縦桿でコントロールは出来ない。ステアリング・チラーといって、小さな円形で機体をコントロールする。
「(フラップ)10」鈴木機長は離陸時のフラップの角度を岸田副操縦士に指示した。
副操縦士はスラスト・レバーの右にある翼の形をしたハンドルを一旦、上に上げて手前に引き、10と書かれた所までレバーを動かした。主翼の後ろに付いているフラップが下に降りていく。その姿をコックピットからは見えない。その姿を見れるのは主翼より後方の窓側に座っている乗客だけで、通路席・中央席の乗客は、その動いている音が聞こえる。
鈴木機長はフラップの指示と同時に、4つあるスラスト・レバーを少し前に押し出した。エンジンは回転数を上げ、機体を前進させる推力を発生させ、機体は徐々に動き出し、離陸滑走路28に向って走行し出した。

桃田素晶

「B747Cockpit ヨーロッパ飛行」
解説:桃田素晶/録音:武田一男 ©Director’s House

【著作について】「B747Cockpit ヨーロッパ飛行」で収録している音声、音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。また、解説は桃田素晶、表紙写真はharuhikonに著作があります。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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