第15回 暴走族と知り合う

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もともと、深夜に騒音を撒き散らしたり、昼間も信号無視したり、逆走する彼ら暴走族は大嫌いでした。

以前、自宅近くに妻と買い物に行く途中の信号で、子供達も渡っていたところに、彼らが信号無視して突っ込んできたことがありました。
その時に「バカヤロウ!なにやってんだ!」と怒鳴りつけたのです。彼らはそのまま走り去ったのですが、その20分後にコンビニで買い物を済ませて出てきたところに、さっきの連中のうちの4名がやってきて、偶然店出入り口で対面したのでした。

彼らも私の顔を覚えていたようで私を睨みつけて「おっさん、かっこつけるなよ」と因縁をつけてきたのです。
「何!ちょっとこっちに来い」とその店の裏手にある駐車場に向かって歩き出したのです。
妻は心得たもので、見物するつもりだったようで、さっさと駐車場の見える歩道橋の上にのぼって行きました。
「お前らの頭は誰だ?」と言うと、一番背の高いのが私の真正面に立ったのです。

私は、彼等の暴走行為が多大な迷惑をかけていること、人のいない海岸や山中でやっても注目されないが、それは仕方ないことだ、等と説教をたれたのです。それに対し、リーダー格の19歳の青年が「うるせーんだよ、おっさん!」と、いきなり私の襟首を掴んできたのです。
彼は片手を自分から使えない状態にしたのですから、ケンカ慣れしていないことは直ぐにわかりました。
「おい、お前はあまりケンカは強くないな、おじさんは少しばかり強いぞ。そのつもりでかかって来いよ」
途端に、彼は私の襟首を掴んだ手を離し「オイ、やばい、帰るぞ!」とその場の仲間3人に言いながらその場から走り去ったのでした。

それから、半年後の冬のことです。
妻と近くの居酒屋に飲みに行ったのですが、襖を隔てた隣の部屋の若い連中が余りにもうるさいので、少し襖を開けて、「すみませんが、もう少し声を落としてくれませんか?」と声を掛けたのです。隣室で騒いでいたのは7,8人の若者でした。そして、何と、そこに以前私の襟首を掴んだ男の子がいたのです。
彼も私のことを憶えていて、即座に「スミマセン」と謝ったのです。他の連中はキョトンとした顔をしていました。
私は、その態度が可愛くて、「オイ、おじさんと一緒に飲まないか?」と声を掛けたのでした。
その中の酔っ払った1人が「面白いおっさんじゃないか、おっさん、飲もう飲もう」と言ったのがキッカケで、襖を開け放して、テーブルを移動して、彼らと飲み始めたのです。

妻も「ホントに好きね〜」といった表情で、私に付き合って彼らと一緒に飲み始めたのでした。
そのうちに、彼らが「河岸を変えようぜ、おじさんも一緒にどう?」と誘ってきたので、妻は「もう付き合いきれないから、あなた一人で行ってきて」ということになり、私と彼らは別の店に行くことになったのでした。
ブラブラ歩いて、彼等の馴染みの店に行く途中で、一人の若者が酔っ払って道端でうずくまっているのを見つけた彼らは、その若者に声を掛け、介抱し始めたのです。そして、リーダーの男が仲間の1人に「彼は悪酔いして動けそうにないからおぶって家まで送っていって来い! 送り届けたら、いつもの店にいるから」と指示したのです。
私は、そのうずくまっていた男の子は、てっきり彼等の仲間だと思っていたのですが、実は全く知らない男の子だったのです。

私は、それを聞いて、暴走行為をやってる彼等に別のやさしい一面を見て嬉しくなったのでした。
大人の我々だって、見ず知らずの酔っ払いが道端でうずくまっていて、素通りする人も多いし「大丈夫ですか?」と声を掛けることはあっても、わざわざその人をおぶって家まで送り届ける人がいるだろうか?

車中で酔っ払いにからまれて困っている若い女性がいても、誰もが見てみぬ振りをして、触らぬ神に祟りなしで誰も注意しない場面を、これまで何度か目の当たりにしてきました。そんなズル賢い大人たちに比べ、この若者達の弱者をいたわる純粋な心に感動すら覚えたのです。
私は、かって私の襟首を掴んだリーダー格の若者に「君達の素晴らしい一面を見せてもらった。ありがとう、お礼の意味で次の店は私におごらせてくれ」と言ったのです。彼は「おじさん、こっちこそ、そんな風に俺達をまともに見てくれてありがたいですよ。でもおごってもらえたら嬉しいっす」と嬉しそうな笑顔で答えた。

彼等の馴染みの店で、そこの店長(彼等の仲間)に私のことを紹介して、このおじさんのおごりだから安くしてくれよと伝えた。
私のおごりだと聞いた他の連中は「ヤッター!」と喜んで、私に1人ひとりが「おじさん、遠慮なくご馳走になります!」と礼を言ったのでした。

1時間ほどして、送り届けた男の子が戻って来た。
聞けば、40分ほどおぶって自宅まで送り届けたそうで、何でタクシーを使わなかったのかと質問すると、金がなく、帰りはこの店まで走ってきたとの事だった。送り届けた家人からお礼だとお金を差し出されたが、それも受取らずに戻ってきたとのことで、
その答えに私は、またまた感動したのでした。

それから延々3時間、彼等暴走族の連中と大いに飲み、語り合ったのでした。彼ら8人全員が正業に就いており、中卒と高卒、1人だけ高校中退がいました。成人したら、暴走行為は止めると言っていました。
成人しても族をやるのはアホだとも・・・

私が40代で空手の指導員としてやっている地元の空手道場に、これが縁で暴走族をやっている子供達が他の仲間を誘って、8名入門してきたのですが、練習のきつさに耐えられず、2ヶ月後に残ったのは例のリーダーともう1人の2人だけでした。
そのリーダーの若者はとび職、それも高圧電流をが流れている鉄塔の仕事が専門で、鉄塔と鉄塔の間を渡って修理するのだと言っていました。命綱は当然装着しているが、常に風で揺れている状態なので、最初はとても怖かったが、今は3年目になって慣れたと話していました。
そのせいで、足腰が鍛えられており、バランスも安定して、もともと少林寺拳法をやってたこともあって蹴りワザはいい感じで、2年後に黒帯を取りました。その頃には完全に族から足を洗い、空手を続けながら、電気工事会社の主任として後輩の面倒を見ています。

風天マン

実録「ハチャメチャ乗務員の飛行日誌」
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    • ぐったり
    • 2011年 2月8日 10:51am

    飛行日誌の番外編的なお話でしたが、「ほっこり」するいい話ですね。
    引続き楽しみにしていますので、いろいろ他のエピソードもお披露目して頂けますようお願いします。

    • 風天マン
    • 2011年 2月8日 11:03pm

    ぐったりさん。
    「ほっこり」していただけて嬉しいです。「ほっこり」って言葉は京都とか関西圏の言葉でしょうか?
    素敵な響きの言葉ですね。
    これから、かなりハチャメチャな文部省非認定の18禁の原稿もありますので、竜子管理人の許可が下りたら、掲載したいと考えております(笑)

    • 竜子
    • 2011年 2月9日 11:31pm

    ■ぐったりさん
    こんにちは。そうですね、飛行日誌ではないですね。
    飛行機で見かけるような、スマートな立ち居振る舞いをするチーフパーサーに、こんな、粋でいなせな人がいると思うと、これから見る目が変わりそうですね。
    ■風天マンさん
    「ほっこり」って、私の場合は"ほんわかしたとか、心がほくほくした"というニュアンスでよく使っています。
    でも、10歳年下の妹に「焼き芋じゃないんだから」と言われたことがあるのを思い出しました。学生時代を大阪で過ごしたからかも?
    な〜んて思いつつ、調べてみました。
    京言葉では「精神的に頑張った」というニュアンスがあって、年齢層の上の方たちは「ほっこりしに温泉に行こうか」という使い方をするんだそうです。
    ところ変われば、ですね。

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