ボーイング777コックピット「続・機長席」第6回

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この作品は過去、ベストセラーを記録した航空ドキュメンタリーの傑作CDブックを電子書籍化したものである。
新千歳空港を折り返したボーイング777は東京・羽田 空港へ向かう。折しも、羽田上空は九州、大阪、沖縄から飛来した航空機と北から下ってくる航空機が一緒になって夕べの空のラッシュアワーだ。それら数十機の航空機をまるでオーケストラの指揮者のように鮮やかにさばいて羽田空港に着陸させる管制官の仕事には息を呑む緊迫感と感動がある。東京湾上空のスリリングな舞台裏をあますところなく描いたクライマックスは、この作品最大の読みどころであり聴きどころである。

第3章 クルージング_2

 114便は五番目の通過点CANNA(北緯37度56分6 東経140度41分5)をフライオーバーして航空路Y10を茨城県の大子に向かって飛行している。
あと8分ほどで114便は降下を始めるのであった。
それに先立ち、コックピットクルーは羽田空港の最新のインフォメーションを知る必要がある。電送又は音声で空港情報ATIS(アティス)を入手する。

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★「続・機長席」挿入06atis.

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トウキョウインターナショナル エアポート インフオメーション I(インデア)
0900 VOR/DME アプローチ ランディングランウェイ16レフト ディパーチャー ランウェイ 16ライト ディパーチャーフリクエンシー126デシマル0
ウィンド 200ディグリー 19ノット マキシマム29ノット ミニマム13ノット ビジビリティ30キロメーター ブロークン ハイトアンノーン テンパラチャー14 デューポイントー1(マイナス・ワン) A3018インチ アドバイス ユー ハブ インフォメーション インデア

(東京国際空港の9時(日本時間18時)のインフオメーションI(インデア)です。
空港への進入方式はVOR/DMEアプローチで、着陸滑走路は16レフト。離陸滑走路は16ライトを使用しています。出発管制の周波数は126.0メガヘルツです。
風は200度方向(ほぼ南南西)より19ノット吹いています。最大風速が29ノット、最小が13ノットです。視界は良好で30キロメートル。雲はありません。
気温は摂氏14度で露点温度はマイナス2度、気圧3018インチです。
インフォメーションI(インデア)を受信したことを通報してください)

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★「続・機長席」挿入06

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エアシステム羽田ディスパッチルームが羽田周辺の天気情報を電送でアップリンクしてきた。
コミニュケーション」と森田機長が液晶ディスプレイを確認しながら下降(ディセント)のフリーフィングを始めた。
東京アプローチのインフォメーションです
副操縦士もメモを取りながら聞き入る。
アバーブ24000でライトタービランス。イクスペクテッド 関東エリア。ビロー 24000 スムーズ エクスペクテッド あとビロー 7000 オケージョナリー ライトマイナスタービランス
(24000フィート以上で軽いタービランス(乱気流)があります。関東エリアです。そして24000フィート以下はスムーズに下降できます。あと7000フィート以下で場合によっては軽い乱気流が予測されています)
キャンセルメッセージ」と機長が言って次の項目へ進もうとした時、ナビケーション・ディスプレイのレーダー画面に対向してくる飛行機の機影が映った。
トラフィック。ワンオクロック ハイ」(飛行機が上空一時の方向にいます)
木村副操縦士がコールする。
イン・サイト
森田機長が目視して確認する。パイロットが目視で他の飛行機を探知可能な距離は約20マイル(約36キロ)前後の範囲である。
エア・ドゥ15 ラジャ ナウ クライム フォア 410
羽田空港を17時25分に離陸し高度39000フィートで新千歳空港にむかっているエア・ドゥ15便、ボーイング767ー300が乱気流のため高度41000フィートに上昇する許可を東京コントロールに貰う交信を傍受する。
41000!
114便の右前方彼方を飛ぶエア・ドゥ機に、森田機長が感嘆の声を上げた。41000フィートの高高度飛行を飛行できる機種はそう多くない。ボーイング777でも重量が重いと上がれない時もある。
再びATISを電送で取って、木村副操縦士が羽田空港の情報を再確認する。
東京はVOR/DME。16のレフト。200の17ノットですね
(東京のアプローチはVOR/DME(これをボルデメと発音する)方式で、滑走路は16レフトを使用。滑走路上の風は200度方向から17ノットですね)
了解
確認して森田機長は下降のブリーフィングを再開した。
それではフラップス30。オートブレーキ2(着陸時のフラップは30度、オートブレーキは2の位置です)」
ディセント・プリパレーション
森田機長が降下に関しての打合せの指示を出した。
スポット(羽田空港到着時のゲート)は2番です。滑走路16レフトの場合は特に大きなノータム(空港の情報)はありませんので。マイサイド ディセントプリパレーション コンプリーテッド(完了です)」
木村副操縦士は自分側の各種の準備を終えて言った。
旅客機の場合は、下降、進入、着陸、そして着陸が出来ない場合の着陸やりなおし(コーアラウンド)の手順などを下降開始前に打ち合わせてしまう。下降や進入に入ると時間がないからだ。
ユー ハブ コントロール
アイ ハブ コントロール
森田機長は副操縦士と操縦を交代して、手元のデーターを見ながらいろいろなセットを行い着陸時の打合せを始めた。
ランディング ブリーフィング。シップ、OK。ノータム了解しました。とくになし。(使用滑走路は)ランウェイは16レフト。(滑走路上の風は)200度17ノット。ライト、クロスですね
羽田空港の着陸時は滑走路右側からの横風(クロスウィンド)になることを確認して森田機長はブリーフィングを続けた。
天気は良好。ノーシーリング。14度の2度 3019
今日の羽田空港の天気は良好だが風は強い。雲はなく視界は良い(ノーシーリング)。気温は摂氏14度。露点温度は2度、気圧は3019インチと高気圧であった。
シーリングとは雲底高度、すなはち地上から見た雲の高さのことで、もし羽田空港のシーリングが1000フィート以下では、このVOR/DME16レフトの進入方式では着陸することが難しいのである。
ボルデメ(VOR/DME)16レフト。レーダーベクター(レーダー誘導)」
打合せは空港への進入方法に移った。
羽田空港には何種類かの進入方法があり、そのときの風や雲の状態を見て空港管制官が決める。
今日の羽田空港のアプローチ方法は、VOR/DME16レフトと呼ばれる方法で、九州や大阪など南から飛来した飛行機は千葉県の御宿上空で左旋回し、機首方向320度で房総半島を横断して東京湾に出て、東京湾の真中に設定されたポイント、ジョーナン、湾岸にある江東VORをえて羽田空港滑走路16レフトに着陸する。
114便のように北から進入する飛行機は、霞ヶ浦の西にある阿見VOR上空から千葉市の東を通り、右旋回して南の飛行機と合流して機首方向320度でジョーナンに至る。ジョーナンから南の飛行機と同様に羽田空港滑走路16レフトに着陸する。
南北どちらにしても、ほとんどの場合、羽田空港の進入は管制アプローチコントロールによるレーダーで最終進入コースまで誘導される。
MDAが1000ですね。江東(VOR)へはインバウンド320度。コンストレインはさっき言った通りです。LーNAVでファイナルコースへ飛行します。江東(VOR)以北(東京の市街地)は、騒音関係であまり北に行かずに早めに曲がりますから
江東VORから北は東京の市街地が広がっているので、飛行には細かい騒音規制があるのだ。
次に森田機長は着陸やりなおしの場合を想定した打合せをおこなった。
最後はフライパス・ベクターはマイサイドでアプローチします。ゴーアラウンドは、アイ コール ゴーアラウンド・フラップ。ポジティブ・クライムでギヤアップ。ミスアプローチコースに沿って浦賀、舘山方向に飛行します。高度は4500(フィート)上昇。早めにコンタクトしてもらって再度、(レーダー)ベクター(誘導)を受けます
最後に機長は滑走路への着陸と着陸あとの事柄にふれた。
ヴァーチカルに関しては、VNAVパスで。多分ダウンウィンド1500くらいまではいきますから。ランディングフラップスは30。VTGはプラス6で130を予定しています。オートブレーキ2。一応降りたら(着陸したら誘導路は)チャーリー(C)4、ジュリエット(J)3を考えています。スポットは2番予定ね。何かありますか?
ありません」木村副操縦士が答えて進入、着陸時の打合せが終わった。
アイ ハブ コントロール
ユー ハブ コントロール
ふたりはコールし合って操縦を交代する。114便は降下(ディセント)準備が完了した。降下ポイントまであと30マイルである。

武田一男

ボーイング777コックピット「続・機長席」/全9回
録音・解説:武田一男 (C)Director’s House

【著作について】「続・機長席」で収録している音声、音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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