ボーイング777コックピット「続・機長席」第8回

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この作品は過去、ベストセラーを記録した航空ドキュメンタリーの傑作CDブックを電子書籍化したものである。
新千歳空港を折り返したボーイング777は東京・羽田 空港へ向かう。折しも、羽田上空は九州、大阪、沖縄から飛来した航空機と北から下ってくる航空機が一緒になって夕べの空のラッシュアワーだ。それら数十機の航空機をまるでオーケストラの指揮者のように鮮やかにさばいて羽田空港に着陸させる管制官の仕事には息を呑む緊迫感と感動がある。東京湾上空のスリリングな舞台裏をあますところなく描いたクライマックスは、この作品最大の読みどころであり聴きどころである。

第4章 羽田空港進入_2

▼羽田へのルートマップ
羽田へのルートマップ

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★「続・機長席」挿入08

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 今日はオビツには高度3000フィート前後で到達している。オビツで滑走路16レフトへの進入許可をもらって東京の湾岸にある江東VOR/DMEから発信される電波KWEー140に沿って(インターセプト)、機首方向320度で東京湾の真中にあるジョウナンに向かって高度2000フィートになるように下降する。それから高度2000フィート、スピード170ノットで江東VOR/DMEを目指す。
江東VOR/DMEに近づくと、東京アプローチから羽田空港のタワーコントロールへ引き継がれる。無論、今日はレーダー誘導なので若干の近道などがあるが、大体そのルートで誘導されている。
オールニッポン862 ターンライト ヘディング 260
(全日空862便へ。右旋回して機首方向260度(ほぼ西)で飛行してください)
862便が復唱する。862便の位置はアビオン付近でこれからオビツに向かって右旋回するのだ。
オールニッポン90 ディセント 2000 クリア フォア VOR/DME ランウェイ16レフト アプローチ
(全日空90便へ。高度2000フィートに下降し、滑走路16レフトへのVOR/DMEアプローチを許可します)
オールニッポン90 ディセント 2000 クリア フォア VOR/DME ランウェイ16レフト アプローチ
全日空90便は、オビツ付近を高度3000フィートで東京湾へ飛行している。これからジョウナンに向かって高度2000フィートになるように下降するのである。
東京アプローチの管制官が全日空862便を呼んだ。862便はアビオン付近を飛んでいる。
オールニッポン862 ターンライト ヘディング290 インターセプト コートー140レディオ
(全日空862便へ。右旋回して機首を290度方向にし、江東VOR/DMEの140度のコースに沿って飛行してください)
アンダースタンド オールニッポン862 レフトターン 290 インターセプト コートー1・・4.・0レディオ
オールニッポン862 ファーマティブ アンド セイ スピード
(その通りです。現在の貴機のスピードを知らせてください)
ウィ アー ディデューシイング スピード 230?
(スピードを230ノットにしますか?)
ラジャ ファーザー ディデュース スピード 210ノット プリーズ
(了解。スピードを210ノットに減速してください。お願いします)
ラージャ。ウィ ドゥ
東京アプローチの管制官と全日空862便のパイロットの交信は、便名を間違えたり、数字を聞き違えたりするが、なんとなくほのぼのとした感情の交流が感じられて楽しい。全日空862便はオビツに向かった。
ここで現在の各飛行機の位置を再確認しておくと羽田空港に近い順から、まず、東京湾上のジョウナン付近に全日空90便。その後にこれからオビツに向かっている北からの全日空862便。御宿からオビツに向かって飛行する日本航空106便とエアシステム114便が、東と北からほぼ同時に862便を追っている。その次に日本航空368便が東から、全日空744便と全日空870便が北から、そして日本航空386便が東から続いて進入している。
これのあとかなあ?
森田機長がコックピットのレーダーに映る飛行機の機影を見ながら、どの飛行機の後方につくか考えている。これ、とは日本航空106便ジャンボである。
114便より日本航空106便ジャンボの方がわずかに先行して、全日空862便の後につきそうな気配である。
どうも、そんな感じになってきましたね
木村副操縦士もレーダーに視線を投げて言う。
オールニッポン90 コンタクト トウキョウ・タワー 124.35
(全日空90便へ。以後は羽田空港タワーコントロール124.35メガヘルツへ連絡してください)
東京湾上空のジヨウナン付近を飛行している90便が羽田タワーに引き継がれた。
その間にはちょっと、5マイルしかないので・・・ギリチョンで
木村副操縦士は、全日空862便と日本航空106便の間に入りたいが、距離はわずか5マイルしかないので入り込むのは無理だと言う。
106便は本来ならば、18時20分羽田着でエアシステム114便の18時45分着より25分早いアライバルの筈であるが、今日はディレイ(遅延)しているので少しでも早く先行したい様子だ。
オールニッポン744 ディセント メインテイン 3000
(全日空744便へ。高度が3000フィートになるように降下してください)
あー、ラジャ。オールニッポン744。3000
長崎発日本航空186の777が、房総半島の東、御宿VOR付近に到着して東京アプローチに最初の交信をしてきた。この飛行機は日本航空368便の後にいる。
トウキョウ・アプローチ。ジャパンエア186。インフォメーション インデア ディセンディング160
(東京アプローチへ。日本航空186便です。ATIS(空港情報)Iを聞いています。現在高度16000フィートへ下降中)
ジャパンエア186。トウキョウ・アプローチ。フライヘデング080 コンテニュー ファイナルアプローチコース ディセント アンド メインテイン 10000
(日本航空186便へ。こちら東京アプローチです。機首を080方向で引き続き最終進入コースに入ってください。下降して10000フィートを維持してください)
フライヘデイング080 ディセント アンド メインテイン 10000 ジャパンエア186
114便のコックピットではふたりのパイロットが打合せを始めた。
ライトターンをしてからアプローチチェックをやりますから」と森田機長。
114便はオビツの少し手前まで到着した。まもなくもう一度右旋回の指示がきて機首を東京湾に向けることになる。機長は機首を東京湾に向けてからアプローチの点検をするつもりであった。
オールニッポン862 ディセント アンド メインテイン 2000 クリア フォア VOR/DME ランウェイ16レフト アプローチ
(全日空862便へ。2000フィートまで降下しください。VOR/DME滑走路16レフトの進入を許可します)
オビツを出て東京湾に向かっている862便に進入のクリアランスが出た。862便が独特のトーンでコールバックする。
オールニッポン862 2000フィート クリア VOR/DME ランウェイ16 レーェフト アプローチ アウト オブ 3500
(全日空862便です。2000フィート。滑走路16レフトへVOR/DMEアプローチ了解。高度3500から下降します)
そのとき、東京アプローチの管制官があわただしく114便を呼んだ。
エアシステム114 トラフィック ジャパンエアジャンボ アンド ワンオクロック 5マイル ノースウエストバウンド インターセプト140 ラディアル リービング フォア
(エアシステム114便へ。日本航空のジャンボ機が近くにいます。一時方向、5マイル地点。北西方向。インターセプトコース140(ジョウナンへ向かうコース)の高度4000フィートを通過しています)
イン・サイト
すぐ前に日本航空106便がいる。すばやく機長が目視で確認してコールする。普通は15マイルぐらいの距離でトラフィックインフォメーションがあるが、5マイル(約9キロ強)、しかも夜だ。木村副操縦士も直ちに応答した。
エアシステム114。トラフィック インサイト
(エアシステム114便。飛行機を確認しました)
右側の眼下には木更津と君津海岸のコンビナートの明かりが見え、夜の東京湾を走る船のライトが筋を引いて幾重にも重なっている。そして海を隔ててきらびやかな東京の街明かり。高度4500フィートを通過して下降中。
オールニッポン862 ディデュース スピード 190ノット
(全日空862便へ。エアースピードを190ノット(約時速350キロ)に減速してください)
190 ビロー アンダスタンド 862」相変わらずユニークな応答である。
オールニッポン744 ターンレフト トゥ ヘディング 180
(全日空744便へ。機首方向180度で飛行してください)
744便が復唱して千葉市の東でオビツ方面に向きを変える。114便の後方だ。
今度は東京湾を飛行する全日空862便を羽田空港タワー・コントロールへ移管させる。
オールニッポン862 コンタクト トウキョウ・タワー 124.35 グッディ
(全日空862便へ。羽田タワー 124.35メガヘルツへ連絡してください)
オールニッポン862 124.35 ラジャ サンキュー グッディ
全日空862便は東京アプローチ管制区を離れた。
エアシステム114 ターンライト ヘディング 200
(エアシステム114便へ。右旋回して機首方向200度で飛行してください)
ラジャ 200 エアシステム114
114便に右旋回の指示がでた。「ライト、クリアー」と副操縦士が右側の窓の外を確認すると森田機長はゆっくりと機首を200度方向に向けるため右旋回に移った。
東京湾が右前方に広がり始める。高度3800フィート通過。
ジャパンエア368 ターンレフト ヘディング350 インターセプト コートー140ラジアル
(日本航空368便へ。左旋回して機首方向を350度にして江東VOR/DME 140度のコースに沿って飛行してください)
福岡発の日本航空368便、ボーイング747ー400が御宿VORの手前を左旋回して、房総半島を横断しまっすぐジョウナンに向かうコースに乗った。
1000 トゥ レベルオフ
114便のコックピットでは、高度計を見ながら木村副操縦士がコールする。指定高度3000フィートまであと1000フィートである。
ジャパンエア186 ターンレフト ヘディング040 ディセント アンド メインテイン 3000
(日本航空186便へ。左に旋回して機首を040(ほぼ東北東)に向け、高度3000
フィートまで下降してください)
ジャパンエア186 ターンレフト 040 ディセント メインテイン 3000」 長崎発の日本航空186便は17時羽田着予定の777である。現在、房総半島の上空を日本航空368便を追って飛行している。
東京アプローチから114便に機首方向を260度にするように指示してきた。
エアシステム114便。ターンライト ヘディング 260
すぐ、木村副操縦士がコールバックする。
森田機長はアプローチチェックを命じた。
アプローチ・チェックリスト
リコール アンド ノート
CDUディスプレイに映るエレクトリック・チェック・リストの項目を確認して副操縦士がコールする。
チェック」と機長。
そのときコックピット内でブザーが鳴り、高度が3000フィートに近づいたたことを知らせた。東京アプローチから114便にジョウナン経由江東VOR/DME方向へ飛行せよ、という交信が入る。
エアシステム114 ライトターン ヘディング 290 インターセプト コートー」「140ラジアル
(エアシステム114便へ。右旋回して機首を290度に向け、江東VOR/DMEからの140度のコースに沿って飛行してください)
ラジャ」と森田機長が確認。木村副操縦士が東京アプローチへ復唱交信する。
フライ 290 インターセプト コートー140ラジアル
エアシステム114 セイ スピード?」(エアシステム114 スピードはどのくらいですか?)
えー、210ノット」(えー、210ノットです)
メインテイン スピード 210ノット」(210ノットを維持してください)
木村副操縦士がコールバックして交信を終えた。森田機長はMCPのヘディングノブを回して290度にセットする。
290 アーム LーNAV」と森田機長。
(290度でLNAVをアームに)
LーNAV キャプチャー
右側のディスプレイを見て副操縦士が確認する。
LーNAV キャプチャー
左側のデイスプレイでもLーNAVが有効になったことを確認して機長がコールした。そしてアプローチチェックを続行する。
オートブレーキ2」と副操縦士。
ランディングデーター・・・セット
アルティメター」(気圧高度計)
3018セット」(気圧は30.18インチにセット)
アプローチチェックリスト コンプリーテッド
そのとき突然機体が、グアッと乱気流に捕まって激しく上下に揺れた。
スピード・・VーNAV アルト・・これは後流だね
後流ですね
ふたりは顔を見合わせた。後流とはジェット旅客機が通過した後に起こる激しい気流の乱れだ。114便のすぐ前を飛行する日本航空106便ジャンボが作った後流である。その中にまともに突っ込んだのであった。
オールニッポン744 ディデュース スピード 210ノット
(全日空744便へ。エアースピードを210ノットに減速してください)
114便のあとを追うように飛行する744便が復唱すると、東京アプローチは東京湾上空の日本航空106便に進入クリアランスの交信をする。
ジャパンエア106 ディセント アンド メインテイン 2000 クリア フォア VOR/DME ランウェイ16レフト アプローチ
(日本航空106便へ。2000フィートに下降してVOR/DME滑走路16レフトへの進入を許可します)
すぐ106便がコールバックして確認する。飛行させると言うことは交信や計器類やナビゲーション、すべての確認、確認の連続なのである。
ジャパンエア106 ディデュース スピード 190ノット
(日本航空106便へ。エアースピードを190ノットに落としてください)
106便がコールバックする。190ノット、時速約350キロでボーイング747ー400は東京湾を飛行している。
東京アプローチが続いて霞が浦付近に近づいた全日空870便、旭川発の767へ高度3000フィートまでの下降許可を出した。
オールニッポン870 ディセント アンド メインテイン 3000
ディセンド アンド メインテイン 3000 オールニッポン870
今度は管制官は日本航空106便にスピードを時速約300キロに制限をする。
ジャパンエア106 ディデュース スピード 170ノット
ジャパンエア106 スピード 170」(了解。170ノット)
次に管制官は114便の速度を制限する。
エアシステム114 ディデュース スピード 190ノット
190ノット エアシステム114
森田機長がフラップ(下げ翼)を1の位置に下げる指示を出した。前方に東京の灯が瞬き、右手には幕張、浦安の光が輝く。
フラップス ワン」とフラップ位置を森田機長が確認する。エアースピードが190ノットに落ちた。
ジャパンエア106 コンタクト トウキョウタワー 124.35
ジャパンエア106 グッディ
日本航空106便が羽田タワーに引き継がれる。
スピード 190」と森田機長。
そのとき管制官が全日空744便に呼び掛けた。トラフィック・インフォメーションである。
オールニッポン744 アンド アー プロシーディング トラフィック 12 オア 1オクロック 5マイル ノースウエストバウンド ジャパンエアジャンボ リビイング フォア
(全日空744便へ。先行機が北西12時か1時の方向、5マイル地点に日本航空ジャンボ機が高度4000フィートを通過中です)
トラフィック イン・サイト 744」(飛行機、目視しました。744)
先ほどと同じ場所である。オビツ付近は東から進入する飛行機と北から進入する飛行機が合流するので羽田空港がラッシュアワーのときは、どうしても飛行機同志が接近するのだ。管制官が114便に羽田進入のクリアランスを与えた。
エアシステム114 ディセント アンド メインテイン 2000 クリアー フォア VOR/DME ランウェイ16レフト アプローチ アンド スピード 170ノット

東京湾上空地図
東京湾上空地図

(エアシステム114便へ。高度2000フィートに降下してください。滑走路16レフトへのVOR/DMEアプローチを許可します。スピードは170ノットにしてください)
木村副操縦士が復唱する。
アイドル VーNAV スピード
ふたりのパイロットコールし合って森田機長がフラップを5の位置にする指示を出す。
フラップ 5
ホールド
スピード170
クリア フォア アプローチ」(管制官から空港進入承認は貰っています)
コックピットでブザーが鳴って高度2000フィートに近づいたことを知らせる。
飛行機が又一機、北から東京アプローチの管制区に入って来た。
トウキョウ・アプローチ。オールニッポン66 リービイング 225 ディセンド トゥ 13000 インフォメーション インデア
(東京アプローチへ。こちら全日空66便です。22500フィート通過。高度13000フィートに向けて下降中。空港情報、I(インデア)を入手しています)
全日空66便は千歳発のボーイング747で、羽田到着予定19時である。
オールニッポン662 トウキョウ・アプローチ ディパート アミ ヘディング 200 ベクターファイナルアプローチコース ディセント アンド メインテイン 8000 クロス アミ アット オア ビロー 13000 
(全日空66便へ。こちら東京アプローチです。阿見VOR上空を通過後、機首方向200度でレーダーによリ最終進入コースへ誘導します。8000フィートまで下降を許可します。阿見VOR上空は13000フィート以下で通過してください)
全日空66便が復唱すると東京アプローチは114便に羽田タワーへの移管を告げた。
エアシステム114。コンタクト トウキョウタワー 124.35
(エアシステム114便へ。以後は東京羽田空港タワーコントロールと連絡してください) 木村副操縦士がコールバックして、114便は東京アプローチ管制区を離れた。
いよいよ羽田空港ランディングだ。

武田一男

ボーイング777コックピット「続・機長席」/全9回
録音・解説:武田一男 (C)Director’s House

【著作について】「続・機長席」で収録している音声、音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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