B747コックピット「ヨーロッパ飛行」第7回

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ヨーロッパ飛行画像(haruhikon提供)

「高度3万5000フィートへ 機長アナウンス ドイツ ライン管制」

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★「ヨーロッパ飛行」挿入07

※「▶」の再生ボタンをクリックすると航空サウンドが流れます

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ライン・コントロール管制に移管したJAL412便は、高度3万3000フィートで東西両ドイツの国境に沿って、北上している。管制官より承認高度である3万5000フィートへの上昇の交信が入った。
「ジャパンエア412 クライム トゥ 350」(日本航空412便へ。3万5000フィートに上昇して下さい)
「ラジャ リクリア フライト レベル 350 ジャパンエア412」(3万5000フィートまで上昇します)
眼下には緑の丘陵地帯とドナウ川が見渡せる。今日のライン・コントロール管制区域は多くの飛行機で大変混雑している。無論、JAL412便も例外ではない。ヨーロッパは幾つもの国が身を寄せ合うように連なり、人の往来も多いので、飛行機だけに限らず鉄道網も整備されている。言わば空と陸の競争が活発なので、ヨーロッパ域内は交通手段が非常に発達している。と言っても熾烈な競争だけではない。ヨーロッパ域内の国の名立たるフラッグキャリアが鉄道を運営しているぐらいである。更なる利便性を向上させる為には、競争しつつも鉄道との連携も不可欠である。
まもなく巡航高度3万5000フィートに達する前に、飯田航空機関士は巡航速度を鈴木機長に尋ねた。
「クルーズ (マック)84でいいですか?」
「(マック)82」
マック(Mac)はマッハ(MACH=音速)のことで、この場合マック82というのは、0.82マッハのことで音速に達していない(亜音速流)ことである。
管制官が次の管制エリアの周波数の交信をしてきた。
「ジャパンエア412 コール バイ 132.15」(日本航空412便へ。132.15メガへルツに交信して下さい)
「ジャパンエア412 132.15」(132.15メガへルツに交信します。さようなら)
「ライン・コントロール ジャパンエア412 クライム トゥ 350」(ライン・コントロール管制へ。日本航空412便です。3万5000フィートに上昇中です)
「ジャパンエア412 グッドアフタヌーン レーダー コンタクト」(こんにちは。貴機をレーダーで捕捉しています)
先程と同じライン・コントロール管制だが、幾つかに管制域を区分している。名称は同じだが周波数は違う。
「412」
副操縦士の「412」の交信は、「ラジャ」の意味もあり、特に何も無ければ、便名のみで交信することも、しばしばである。決して愛想が悪い訳ではない。
ここで、航空管制について簡単に説明をしておく。航空機はパイロットの判断で勝手に動かすことは出来ない。必ず管制官の指示に従わなければならないことになっている。乗客を乗せてトーイングカーで押し出される時(プッシュバック)、地上走行する時(タキシング)、離着陸の許可、上昇・巡航・下降の際の高度・方位・速度など、航空機の全ての動きを管制官は目視やレーダー画面上で監視し指示する。
チューリッヒからここまで、以下の様に7つの管制に引き継がれて来た。

航空機の動き 担当する管制
出発承認(Delivery)
駐機所から離脱(Push Back)
滑走路までの地上走行(Taxing)
チューリッヒ・グランド管制
(118.1MHz)
滑走路進入(Line Up and Wait)
離陸の許可(Takeoff)
チューリッヒ・タワー管制
(118.1MHz)
離陸後の方位(Heading)
飛行制限高度(Distriction Altitude)
チューリッヒ・ディパーチャー管制
(125.95MHz)
上昇(Climb) チューリッヒ・コントロール管制
(131.15MHz/131.3MHz)
上昇(Climb)巡航(Cruise) ライン・コントロール管制
(134.8MHz/132.15MHz)

ヨーロッパは広大な国土の中に幾つもの国と地域が混在している。その広範囲なところに網の目の様に航空路が入り組んでおり、引っ切り無し飛行機が運航されている。その航空路を飛行する航空機を管制するのは並大抵のことではない。そこで高度によって管制エリアを細分化し、確実に安全に管制していくのである。
そして、パイロットは次の管制周波数を聴き間違いをしないように神経を集中させる。余談だが、管制での交信は英語が公用語になっているが、中国やロシア、フランスは自国機に対して母国語を使用する。あと英語でも各国の言語の訛りがあるので聞き難いのだが、慣れる以外に解決方法は無い。
同じ管制エリアを飛行している航空機が管制官に交信している。

「ライン・コントロール …88B パッシング 25 フォア 240」(ライン・コントロール管制へ。こちら…88B便です。2500フィートを通過し、2万4000フィートに上昇しています。)
「…88B ラジャ スクォーク2575」(…88B便へ了解しました。貴機の認識番号は2575です。)
「…88B レーダー コンタクト コンティニュー クライム トゥ 280」(…88便へ。貴機をレーダーで捕捉しています。そのまま2万8000フィートまで上昇して下さい)
「88B ラジャ」(了解しました)
岸田副操縦士は高度計器が3万4000フィートを示したことをコールした。
「ワン サウザント」
巡航高度まで残り1000フィートである。指示された高度3万5000フィートまで、もう間もなくである。
コックピットにブザー音が響いた。3万5000フィートに達し、巡航に入った。岸田副操縦士は管制官に報告の交信を行った。
「ジャパンエア412 リーチング フライト レベル 350」(日本航空412便へ。3万5000フィートに達しました)
「ラジャ」(了解)

ここから暫くは巡航(クルーズ)に入る。コックピットの前に広がる景色にヨーロッパの優雅さが伝わってくる。シートベルトの着用サインの点灯が消えた。乗客から溜息にも似た安堵の息が聴こえる。おもむろに煙草に火を付ける人、お手洗いに行く人、各々がくつろぎ始めた。機長は操縦を副操縦士に任せた。通常、ここで機長は副操縦士が行なう管制官との交信を行なうのだが、機内アナウンスの準備を行なうので、「ATC モニター」と管制官との交信も副操縦士に任せた。
同じ管制エリアを飛行する航空機が、別の管制エリアに移管する交信が聞こえる。
機長は機内アナウンスの原稿を片手に、客室に通じる無線マイクを取り、アナウンスを始めた。
「ご搭乗のお客様、本日は日本航空412便、コペンハーゲン、アンカレッジ経由東京行きご利用頂きまして、まことにありがとうございます。操縦席よりご案内申し上げます。ご搭乗機、現在、飛行高度3万5000フィート、約1万700メートルの高度、毎時約950キロの飛行で順調に飛行を続けております。ご搭乗機のコペンハーゲン・カストラップ空港到着は、只今から約1時間のち、午後2時55分頃を到着を予定しております。現在のコペンハーゲン地方、曇り、気温は摂氏9℃との報告を受けております。僅かな時間ではございますが、どうぞ、ごゆっくりお過ごし下さいませ。本日は日本航空をご利用頂きまして、まことにありがとうございました」
操縦室からのアナウンスは、旅情を醸し出す重要なアイテムであり、また飛行機が順調に飛んでいることを実感できるものである。
JAL412便はTANGO・VORを通過し、機首を007度に向けて航空路UG5に乗り、一路ハンブルグに向かって飛行する。

桃田素晶

「B747Cockpit ヨーロッパ飛行」
解説:桃田素晶/録音:武田一男 ©Director’s House

【著作について】「B747Cockpit ヨーロッパ飛行」で収録している音声、音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。また、解説は桃田素晶、表紙写真はharuhikonに著作があります。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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    • 竜子
    • 2011年 3月27日 6:42am

    お待たせいたしました〜!
    すんごい久しぶりの「ヨーロッパ飛行」です。
    バンバン「航空ランキング」クリックをお願いしますっ!!

    • hiro
    • 2011年 3月31日 7:24pm

    待ってました!!
    じっくりじっくり噛み締めるように聞かせて読ませていただきます。
    ぽちっとな。

    • 竜子
    • 2011年 4月5日 3:59pm

    ■hiroさん
    次回のこのコンテンツは、更新が遅くなると思います。
    著者の桃田さんは福島の応援に回っているそうです。
    けれども、大筋で最後までは仕上がっていますので、お時間はいただきますが必ず掲載しますので、お待ちくださいね。
    ■読者のみなさま
    それと…。
    メールのほうで作品の問い合わせをいただいております。
    私のほうからは、著者さんのご都合を優先いただきたいと思い、ゆっくり作業されるよう、桃田さんにお伝えしてあります。
    みなさまにはなにとぞご理解賜りたく存じます。
    なお、掲載前の作品を個別にお送りすることはしておりません。
    楽しみにしていただいていることと思いますが、ブログで掲載する趣旨とは外れますのでご理解ください。

    • hiro
    • 2011年 4月6日 2:48am

    竜子さん
    著者の方が変わったんでしょうか???

    • 竜子
    • 2011年 4月6日 9:27am

    ■hiroさん
    すみません、間違えました…。
    コメント削除しました。ごめんなさい。

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