第26回「スチュワーデスをカモにした結婚詐欺師」その1

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スチュワーデスの多くは素直でやさしい反面、人を信じやすい傾向があるのも事実。
そんな純粋な彼女達の女性心理を巧妙な手口で騙した結婚詐欺師がいたのです。
約20年前、一時期スチュワーデスの間で噂になった事件である。

この男は熱海市の自称青年実業家で数枚の名刺を使い分け、スチュワーデスだけを狙ったワルだが、私の知ってるだけで当時20人のスチュワーデスが被害に逢い、被害総額は1億円を超えたとのことであった。

年齢32歳既婚、ごく普通の容姿であり何故賢いスチュワーデス達が彼のカモになってしまったのか?
そこには、スチュワーデスという職業と女性心理を巧みに突いた巧妙な手口があったのです。

先ず、ターゲットになったのは、現在特定の彼氏はいないが、結婚願望の強いスチュワーデス。
彼は以前にも結婚詐欺で逮捕された前科があったとのことだが、スチュワーデスを狙うようになったキッカケがあった。それは、彼が結婚する前に国内線で知り合ったスチュワーデスに付き合いを申し込んだが、冷たく断られたことによるものであった。そこで、近所に高校の同級生でスチュワーデスになった知り合いがいて、その彼女からスチュワーデスの世界のことを聞き出し、それをヒントに詐欺を働くようになったとのことである。

当時、彼は小・中学生を対象にした英語の教材の訪問セールスをした経験もあり、少しは英語が話せたことも都内有名私立大学卒と言っても疑われなかったのだ。さて、ではその手口とは?

毎回、ホノルル線のファーストクラスに乗る。座席は必ず最後列で隣が空席の座席を指定。
つまり通常の場合は最前列から埋まっていくので、満席でない限り最後列にはお客は座りたがらないので隣が空席になる確率は高い。事前の予約段階で空席の多い便を選んでいたのだ。スチュワーデスは基本的に最前列から飲み物や食事のサービスを始めるので最初は緊張しているが、後方になると緊張感が緩んでくる傾向にある。前方座席の場合スチュワーデスに話しかけると、周囲のお客に聞かれる可能性があるし、スチュワーデスSも次のお客のサービスをしなければという気持ちがあるので長々と話しかけられるのを敬遠するが、最後列の場合ならそのチャンスがあるという訳だ。
いわんや隣が空席なら、話しの内容を大きな声で話さない限り、他のお客に聞かれる恐れはない。ファーストクラスを担当するのはやはり同乗メンバーの中でも気立てが良く、容姿もそれなりのスチュワーデスが担当することが多いので、それも計算に入れたのだ。

そこで、彼は必ず大人しくてスチュワーデスにとって扱いやすいお客を演じる。
新聞は日経新聞と英字新聞を依頼する。ホノルル線では観光客が主体なので、日系人でなければ英字新聞は読まない。
いわゆるスチュワーデスの結婚対象の条件に合致する男性を演じるのである。話しかける声のトーンもわざと低くしてスチュワーデスが聞き取りにくいので(機内は常時エンジンの騒音がしている状態)、スチュワーデスは自然と近くに接近せざるを得ない。それを繰り返すことで女性特有の警戒感を無くしていくのである。

彼はその間シッカリと彼女の制服の中の体をC’Kしていたのである。
彼女の方も彼のネクタイや服、靴、腕時計の値踏みをしていたのだろうが・・・
しかし、ここで直接彼女を食事に誘うようなことはしない。

ホノルル到着直前になって、ファーストクラスを担当している、その便の客室責任者であるチーフパーサー(現在はサービスコーデイネーター)に「僕の道楽なんだが、ホノルルで君のチームを全員食事に誘いたいのだが、どうだろう?」と切り出す。
ここでチーフが渋ると
「実は毎月2、3回は仕事の関係でJALさんにはお世話になってホノルルに来てるんで、毎回乗務員の皆さんと夕食をするのが楽しみなんです」
それでもチーフが渋る場合は
「いやー、ホノルル支店長の○○君も来ることになってるんだがねー」とたたみかける。

たいていの場合、これで「全員は無理だと思いますが・・・」
「じゃー今日のファースト担当の皆さんだけでも」とアプローチすれば、チーフとしてもファーストクラスの常顧客でもあり、大事にしなければという職業意識を刺激されて「承知致しました」となるのでした。

全員が彼らの宿泊先のプリンセスカイウラニホテルのロビーに夕刻に集合する。
実はそこで彼は巧妙な手口を使う。
ホノルルノ支店長も一緒だと言った場合は、自分でホテルのフロントに館内電話を使って電話し、自分の名前を告げて自分自身を呼び出してもらう。

この時点でロビーで待っている乗務員達と合流し、ベルボーイが名前を書いたプラカードをロビーに持ちまわっているのを目ざとく見つけて「僕に電話が入ってるらしい」と宣言して館内電話の方に行き、受話器を取り、さも彼等に聞こえるように、今度は大きな声で「支店長もお忙しいんだねー、まー今回は勘弁してやろう・・・」とやや偉そうに話すのだ。チーフはこれで「支店長にあんな調子で話してるのだから、相当親しいのだろう、いずれにしろ上顧客には違いない」と勝手に思い込んでしまうのである。
そして、仕事熱心な余りチーフとしても、ファーストクラスの上顧客でもあり、大事にしなければという職業意識を刺激され
「支店長も出席する予定だったらしい。ここは彼にご馳走になることであり、君達も上手く今夜の夕食会を盛り上げてよネ」とスチュワーデス達に依頼するのでした。

そこで、彼は前もって予約していた行きつけのレストランを告げる。
レストランまでは、もっぱらチーフと自分の仕事のことなんかを近くを歩いているお目当てのファーストクラスを担当したスチュワーデスに聞こえるように、大声で話すのです。

レストランに着くと、彼は当然、これとマークした彼は当然、これとマークしたスチュワーデスの隣の席にさりげなく座るのである。
そこで彼は「じゃー、先ずはシャンペンで乾杯といこう!」と言うのです。しかし、そこはチーフが気を効かしたつもりで「いえ、ワインが皆好きなので、ワインにしましょう!」と彼の負担軽減策を提案し、ワインで乾杯する。彼にとっては先行投資が少なくて済むのでもっけの幸いである。

さて、お目当てのスチュワーデスの隣に座った彼は、決して彼女だけに話しかけるのではなく、全員にまんべんなく話題を振り、全員から「いい人ネ」という印象を抱かせる演技をするのである。チーフ以下当の彼女も彼のことをすっかり信頼し、彼に対する警戒感を喪失する。
かなり盛り上がった頃を見計らって、彼は
「いやー、今回のメンバーは素晴らしい。また是非今度東京で食事会をしたい! チーフを始め皆さんの電話番号を教えて下さいよ!」と準備したメモを回す。この時、決して当の彼女を誘うような素振りはしない。あくまでも紳士的な態度でJALの上顧客に徹するのである。ただし、さりげなくタイミングをとらえて、お目当ての彼女のその後のスケジュールを聞き出すのだ。

この男の事件に関わった乗務員からの事情聴取によると、いくらレストランで全員で盛り上がった場合でも、その後2次会に行ったり、ターゲットにしたスチュワーデスの部屋に電話をしてきたりすることはなかったようである。

これも、独身の青年実業家で紳士的なふうを装うことに徹していたのだと思われる。また、JALの場合は、ホノルルからの帰便で別のスチュワーデスを誘ったりはしていない。他社のスチュワーデスの場合はグアム便を使って、逆に帰便でも誘っていたそうだ。この点は警察でも首をかしげていた。
つまり、彼は結婚詐欺の舞台をホノルル便とグアム便に決めて、2年間で50名近いスチュワーデスをターゲットにしていたのです。

風天マン

実録「ハチャメチャ乗務員の飛行日誌」
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