第27回「スチュワーデスをカモにした結婚詐欺師」その2

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今回は、この結婚詐欺師が東京で、どんな方法でお目当てのスチュワーデスを誘い出し、彼女達からお金を搾取するかの話です。

帰国した彼は頃合(1、2週間後)を見て、ターゲットにしたスチュワーデスに電話をする。

「仕事で今東京にいる。 夕方取引先との約束が先方が来日出来なくなって、時間を持て余しているので、夕食を一緒に付き合ってもらえると嬉しいんだが・・・実はもうホテルのレストランを予約してしまったんで・・・先日言ってた、君の好きなフランス料理だけど、少し強引だったかな?」
と誘い出す。

彼は交通の便の良い品川の某ホテルを常時この舞台として利用していたのである。
レストランやフロント、バーのボーイとは顔馴染みで、彼等もいわば彼の犯罪の援助をさせられていたことになる。実は、警察の捜査でこのホテルでフロアー・マネージャーの私の知人は、かなりしつこく彼との関係を追及されて迷惑をこうむったと話していました。

最上階のレストランでフランス料理を食べながら、言葉巧みに彼女の結婚願望を掻き立てる会話と、女性の母性本能をくすぐる会話をちりばめ、デザートの頃になると
「実は君にチョットしたプレゼントを買ってきたんだけど・・・アレッおかしいな?」とポケットを探す素振りをする。
「アッ、部屋のバッグに入れたままだったんだ。チョット部屋までついて来てくれるかな? たいしたモノじゃないけど、君にピッタリの指輪があったので・・・」

これで当の彼女はレストランのボーイ達の彼に対する特別対応もあり、すっかり信用して「そんな、指輪なんて戴く筋合いは・・・」と言いつつも、その魅力に負けて彼の部屋にお供してしまい、上野のバッタ屋あたりで買った2、3千円のルビー、サファイヤ(勿論ただのガラスだが素人には判別しずらい)を提供され、有頂天になって、そのまま彼の腕の中となってしまったのです。
制服を着ていれば、やはりスチュワーデスとしての見識やプライドが維持出来るのですが、私服でプライベイトな時間帯はそれらが希薄になるのがスチュワーデスといえども一般的な女性のサガかもしれません。

ここですっかり、彼の犯罪への布石は完了したのです。彼は後で結婚詐欺で訴えられることを懸念して、彼女がすっかり眠りこけているあられもない姿をシッカリと写真に収めていたのです。これがために、多数のスチュワーデスが被害者となっても「会社に写真を送りつけるぞ!」と逆に脅されて泣き寝入りするケースが大半だった訳です。

次に実際にお金を手に入れる方法についてです。
彼は当の彼女とそんな関係を2,3回続け、彼女が成田空港の事務所に乗務(最低4日間のパターン)の為に出社した頃を見計らって、事務所に電話を入れ
「申し訳ないが、急遽今からニューヨークに飛ぶのに、会社にキャッシュカードを忘れてしまった。すまないがチョット君のキャッシュカードを貸してくれないか?」
と依頼するのです。

「でも、私のカードは一回に30万が限度なんですが・・・」
「OK、ファーストの片道は60万なので、幸い40万は現金が財布にあるので、今はとりあえず君のカードで20万を借りることになるが・・・向こうに行けば何とでもなるので」
「分かりました。どこに届ければいいのですか?」
「JALのFカウンターにいる」

そこで、彼女はけなげにも持っていたドルと現金と大事なカードを彼に届けたのです。

1回のキャッシュの引き出し限度額は確かに30万ですが、当時はスチュワーデスの場合一般的に最高200万迄の引き出しが出来ます。

更に、いわゆる当時のヤミ金業者に持ち込めば更に300万迄は融資してくれたのです。
彼は彼女が手渡した一枚のカードで何と合計500万を搾取したのです。

当初の投資額(ホノルル便のファーストクラス往復運賃60万、ホノルルでの食事代、日本でのホテルでの諸経費)を差し引いても確実に400万の利益を入手出来たことになります。

1ヵ月後、カード会社とヤミ金融からの請求書を見た彼女の驚愕はいかばかりか・・・
結婚詐欺にひっかかったスチュワーデスの1人が私の配下でした。
たまたま、郷里も同じだったこともあり、困惑した彼女から相談を受けたのでした。

彼女のプライバシーに関わることなので、関係者から詐欺師の男性に関する客観的な事実を最初の出会いであるホノルル便の機内の様子と、滞在ホテルでの状況、また当時のホノルル支店長もよく知っていたこともあり、事情聴取を始めました。

1ヵ月後、私は知人の弁護士と旧知の警察幹部(以前にも登場した警視正)に相談したのです。
また、カード会社の役員(某料亭のおかみとのつながりで)に依頼して、とりあえず彼女の返済を延期してもらい、彼女に被害届けを出してもらって、警察も結婚詐欺事件として本格的に捜査することになったのです。

彼女と同乗したチーフパーサーや、スチュワーデスの事情聴取の過程で、他にも犠牲者がいるということが判明したのです。
そこで、いっせいに職場でのこの事件に関する事情聴取が密かに開始されたのです。ところが、直接の被害者の場合は、自分の恥になることもあって、なかなか本当のことを話してくれるスチュワーデスがいなかったのです。
1日も早くこの詐欺師の男を逮捕しないとスチュワーデスの仲間に被害者が続出することになる点を何度も説いて話を聞きだそうとするのですが、裁判になった場合、証言をすることは拒否するのでした。

なかには、その男に搾取されたお金の請求を求めたスチュワーデスもいたのですが、例の「写真を会社に送りつけるぞ!」と逆に脅されて泣き寝入りをしたスチュワーデスもいたのです。

当時としてはトンデモナイ結婚詐欺事件でした。
この事件はJALという会社の対面を傷つけるということで会社はマスコミにリークしないようにあらゆる手段を講じたのは言うまでもありません。その後の警察の調べで判明しただけでも、家宅捜査で26枚のカード(20枚がスチュワーデス)が見つかり、捜査員は本当にビックリしたそうです。何と1億数千万の被害総額だったとのことです。
更に、悲しいことに被害者のスチュワーデスのうち2人はあろうことか、彼の子供を身ごもっていたのでした。

後日談になりますが、この事件は社内でも誰が発信源かは分かりませんが、噂が広まり、その為に大半の犠牲になったスチュワーデスは退職しています。
私の配下のスチュワーデスの場合は、両親からカード会社への支払いをしてもらって退職しました。

彼が搭乗した時の乗務員はほぼ全員が事情聴取を受け、その時のチーフパーサーのなかの数名は監督責任を問われ、戒告処分を受けたとのことです。
いずれにしても実になんとも後味の悪い事件でした。

風天マン

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