B747コックピット「ヨーロッパ飛行」第9回

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ヨーロッパ飛行画像(haruhikon提供)

「ハンブルグ上空 ライン管制」

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★「ヨーロッパ飛行」挿入09

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ヨーロッパ飛行ジェプソン地図

「(コペンハーゲン・カストラップ空港)インフォメーション(情報)はアルファ(A)です」
岸田副操縦士は到着地であるカストラップ空港情報(ATIS)を聞き、鈴木機長に告げた。
「ディス イズ カストラップ アライバル インフォメーション アルファ。ランウエイ ユース ランディング 22レフト。ウエザー リポート 1150 220 ディグリーズ 10 ノット ビジビリティ25キロメートル 3オクターズ 2000フィート テンプラチャー 12 デューポイント 5 QNH 1019 ノーシグ トランジッション レベル 40 インフォメーション アルファ」(カストラップ空港への着陸情報アルファです。着陸滑走路は22レフト。11時50分現在の天候です。風は220度の方向から10ノット吹いています。視程は25キロメートル、上空2000フィートに雲があります。気温は12度、露点は5度。気圧は1019ヘクトパスカル。天候の変化なし。気圧を1019ヘクトパスカルに転移する高度は4000フィート。空港情報アルファを受信したことを報告して下さい。)
まずまずの天候に、鈴木機長はホッと胸を撫で下ろした。

ルフトハンザ航空、ブリティッシュ航空と各国を代表する、またヨーロッパを代表する航空機が高度こそ違えど、四方八方に飛行し、交信が飛び交っている。

飯田航空機関士が鈴木機長に尋ねた。
「トランジッション・レベルというのは、日によって違うんですか」
「アルティメーターによって違うんですよ。」
トランジッション・レベル(転移レベル)とは、高高度での気圧値(QNE)から国ごとに定めれた気圧値(QNH)に変える高度のことである。因みにコペンハーゲンのトランジッション・レベルは、QNH値によって変わり、このフライト時のトランジッション・レベルは、4000フィートとなっている。

視線を奥に転ずると街並みが見えてきた。ハンブルグである。JAL412便はハンブルグ上空で機首方向を52度にする為に右旋回をする。岸田副操縦士は、そんな景色に目も暮れず、計器確認など下降準備に余念が無い。
「オペレーション ノーマル、カンパニー宜しいですか」
岸田副操縦士は、飛行状況が問題ないことを確認し、その旨をカストラップ空港内にある日本航空事務局にカンパニー交信で知らせた。
「ジャパンエア・コペンハーゲン ジャパンエア412」
「ジャパンエア412 コペンハーゲン ゴーアヘッド」
「はい、どうも。ETA55分 オペレーション ノーマル」
「(ジャパンエア)412 EAT55分、了解しました。ゲートは、サーティーフォー 34です。どうぞ」
「はい、34番、了解」

ETAは、Estimated Time of Arrivalの略で、到着予定時刻のことである。空港事務局は運航状況を了解し、到着するゲート(搭乗口)を知らせた。
コックピットから眺めるヨーロッパの景色は優雅な雰囲気で、ゆったりとした時間が流れているように思える。しかし、コックピットのスピーカーからは、多くの航空機が引っ切り無しに交信しているのが聴こえる。

鈴木機長が、正面に見える景色の説明をしてくれる。
「そこにハンブルグが見えますか?」
「ちょっと先に交差した滑走路見えます?」
「あれがハンブルグの飛行場ですね」
「手前が街ですから。そこに湖があるのが分かりますかね。飛行場の手前、ちょっと右側ですね。あれが街の真ん中にある、アルスタードという人口の池です」
ドイツの広大な風景の中にハンブルグの街並みが見えてきた。奥に目を転じると滑走路が交差しているハンブルグ空港、その手前にヨーロピアン・スタイルの建物が建ち並び、穏やかなアルスター川の流れに大小の船舶が行き交っている。ハンブルグは、ドイツ北西部に位置し港湾の街として、またヨーロッパ屈指の観光地であり、ドイツ北部での経済の中心地である。

JAL412便はハンブルグの上空に差し掛かり、旋回角度20度で右旋回し機首を52度に向け始めた。風は216度から24ノットで、右後方からの追い風である。
旋回が終わると下降の打ち合わせ、ランディング・ブリーフィングが始まる。表情が温和だったクルーの表情が、キリっと引き締まる。

桃田素晶

「B747Cockpit ヨーロッパ飛行」
解説:桃田素晶/録音:武田一男 ©Director’s House

【著作について】「B747Cockpit ヨーロッパ飛行」で収録している音声、音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。また、解説は桃田素晶、表紙写真はharuhikonに著作があります。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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急逝された武田一男さんに感謝を寄せて、今週は武田一男さんが撒いてくださった種子をいくつかお届けしたいと思います。

いよいよラストを飾るのは、桃田素晶さん。航空エンターテインメントとして武田一男さんが築かれた「航空ドキュメンタリー」を、引き継いだのが桃田素晶さんです。
比類のないジャンルですので、後継者がいたことは、航空ファンにとっては計り知れない財産だと思っています。また、桃田素晶さんは、もともと武田一男ファンだったこともあって、「武田節」まで踏襲した解説をしているのがミソです。これもまた生粋の武田DNAを引き継いだ作家として、これからも活躍していくことでしょう。

武田一男さんの素晴らしさは、まだ開花していない人の才を見つけてきてはそれを育てようと、努力されたことに尽きると思います。

ちなみに、iPhoneアプリ「機長席」や「続・機長席」で誤解されることもありましたが、航空無線の一言一句をそのまま書き起こした教材ではないんです。あくまで、コックピットの息づかいを伝える、それが「航空ドキュメンタリー」。その点をひっぱってきて「音声が抜けている」「意訳している」といった指摘はトンチンカンなんです。もし、一言一句を正確に記して「勉強」されたいのなら、教材として刊行されている「航空無線の本」があるのでそちらを。ただ、そうした「演出」意外の部分で「ミス」だというところは、作品としての完成度を高めるためにもぜひ、ご指摘ください。

さらに、「航空ドキュメンタリー」を当ブログで配信した、いちばん初期の頃の話。「武田さん、カタカナよりもアルファベットにしませんか?」と提案したことがあります。「いや、それじゃダメなんだよ。僕が大切にしたいのは読み物としてのコックピット」とおっしゃってました。その後「やっぱり、アルファベットだと良いのに、って読者が出てきましたねぇ」と言った私に、「そんなのただの教材じゃない? 僕はカタカナにこだわる。そういうこだわりが作家の創意なんだよ」と。

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