第35回「マニラリベンジ作戦」その2

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前回までの経緯をまだ見てない方はその1をご覧ください!
いよいよ、作戦開始です。どんな展開になるのでしょうか?

S君は私から演技を誉められたこともあって、かなり乗ってきた(笑)

「先輩、何かこうワクワクしてきましたよ!」
「S君、ここは1発、やってやろうじゃないか!」
「はい、なんか、全くの別人になりきって演じるのって、結構面白いって感じっすね。」
「英語のダメな芸能プロダクシヨンの社長と、英語の堪能な元インテリ・ヤクザのマネージャーだからな!」

私はS君にデュポンのライターを渡して、我々はホテルの玄関に向かって歩き出した。彼はタバコは吸わないのだが、僕がタバコをくわえたら彼がさっと火を点けるのが、ヤクザ映画の場面にもよく出てくるし、さまになっていいと彼が提案したのである。元インテリ・ヤクザになりきっているようだ(笑)
いよいよ、これから5時間(結果的に9時間)にわたる、映画のタイトルをパクッた、自称「ステイング・イン・マニラ」の舞台の幕がいよいよ切って落とされたのであります!

玄関で、さっきのドアボーイの1人が駆け寄ってきて、満面の笑顔で、「社長、お出かけですか? お車をお呼びしますか?」。S君が「マニラで1番の高級ナイトクラブはどこだ?」とたずねる。もう1人のボーイも寄って来て「それでしたら、ミス・ユニバースかレクサスです!」
そのいずれの名前も、事前にリベンジ作戦の標的の候補にあげていた5つの中にある店だ。S君は偉そうな態度で、
「こちらの社長は東京の芸能プロダクシヨンを経営しているので、ショーを見たいのだ!」と言った。
「だったら、レクサスがお勧めです」と先輩格のボーイが応じた。
「特にダンス・ショーはこの店だけで、評判がいいらしいですよ」ともう1人のボーイが意味ありげな笑みを浮かべながら言った。

S君は軽くうなずきながら、
「では、シャンペン付きの最高のリムジンを呼んでくれ。このホテルに戻る…そうだな零時過ぎまで使うから、金額の交渉も頼む。料金は最後にまとめて払うからと言ってくれ!」

私が玄関でタバコを一服している間に、黒塗りの高級リムジンが玄関に横付けされた。
先輩格のボーイが運転手と交渉して、「明朝まで貸切で2000ペソと言っていますが…」
S君「いいだろう、ところで君は今夜何時までここにいるのか?」
「はい、私も彼も明朝3時までですが、何時頃お帰りになられますか?」
S君「その頃までには戻るつもりだ」
「では、お待ちしております。部屋の鍵はお預けになってますよね?」
S君「ああ」
「どうぞ、マニラの夜を存分にお楽しみ下さい。ドライバーは元警察官で、日本語はダメですが、英語は話せますし、絶対に信頼の置ける人間ですから、何かあったら彼に言って下さい」
S君「それは安心だ、有難う」と言って、彼等に100ペソづつチップを渡して、車に乗り込んだ。
「先輩、ついてますね。運転手は元警察官で英語もOKで、信頼できるそうですよ」
「…らしいな」

車内の小さな冷蔵庫には、ビールとシャンペンがほど良く冷えていた。我々はシャンペンを飲みながら、15分ほどの行程だったが、その間に再度打ち合わせをした。やがて、大通りのサークルを過ぎてチモッグ通りにさしかかると、いかにも高級クラブという外観の派手なネオンサインの建物が見えてきた。時計はちょうど7時を回ったところだった。少し早いかなという気がしたが、盛りだくさんのメニューを予定してるので、ジックリ堪能するには丁度いいかと思い、車から降り立った。

最高級(ぼったくりでも!)のナイトクラブであるレクサスの玄関横の広い専用駐車場は手前の方から半分近くが高級車で埋まっていた。玄関に、不似合いな小銃を携帯した警備員が2名と黒服が1名立っていた。運転手は我々に「少しお待ちください」と言い残すと、小走りで玄関先に向かった。彼は警備員や黒服とも顔見知りのようで、我々の方を見ながら何か話をしていた。やがて、彼は黒服を伴って戻ってきた。黒服が車のドアを開けて丁重に挨拶をして我々を店の玄関の階段から2階に案内した。

2階の入り口から店内に入ると、50卓くらいあるテーブル席までの通路に約60名程のホステスが両側に並んで「いらっしゃいませぇ〜」と独特の日本語で出迎えてくれた。フロアーの正面にステージがあり、天井にはミラーボール、後方には照明室があり、当時としては珍しい多彩なレーザービームを照射していた。時間が早目なのか、お客は3割程度で、我々はステージの最前方中央のテーブルに案内された。フロアー・マネージャーとおぼしき男がチーフと称する女性を伴って挨拶に来た。2人の名刺をもらったところで、
「この店は初めてだから、とりあえずこの店のトップクラスを5、6人呼んでくれ。それから先ずはサンミゲルビールを!」とS君。
「承知しました。できればお名刺を頂戴できますか?」
「こちらは、東京の芸能プロダクシヨンの社長で、私はマネージャーだ。彼は英語は話せない。名刺は、ビジネスの相手にしか渡さないことにしている」とS君もなかなか堂々とした対応をしている。
彼女は「大変失礼致しました、ごゆっくりお楽しみ下さい。何かあれば、何時でもお申し付け下さい」と席を離れた。30歳位で、鮮やかな紫のスリットの深いチャイナドレスがよく似合っている。白磁のような肌の中国系の美形で、プロポーシヨンも申し分なかったが、難を言えば笑顔がない。1分もしないうちに、この店のトップクラスにふさわしい5人の若いホステスがやって来て、我々の両脇を固めた。いずれも豊かな胸の谷間が露出したドレスを着ている。ビールを持ってきた黒服に「この子達にも飲み物を」とS君は打ち合わせ通りに真顔で指示する。

我々はやはり緊張していたので喉の渇きを覚え、直ぐにビールを飲みたかったが、彼女達の飲み物が来るまで我慢していた。これは、我々が初めての客なので、さっきからずーと我々を観察している、フロアー・マネージャーと女性チーフに、いかにも遊びなれた印象を与えるポイントなのだ。乾杯をして、一息に飲み干す。サンミゲル1本の値段は町中なら日本円で35円、そこらにあるゴーゴーバーで100円、ちなみに、この店では幾らかをS君に聞かせると300ペソ(600円)とのことであった。やはり、噂通りのぼったくりの代表店だなと彼と頷き合った。

ビールの次に、フルーツの盛り合わせとドンペリの辛口のシャンペン2本を注文して、しばらく女性達と談笑することにした。やがて、フル・オーケストラの演奏でTVで人気が出始めたという現地の女性歌手が3曲歌った。アップ・テンポでリズム感のある歌は民族の歴史的なものなのだと思うが、さすがに聴かせる。

次はマニラホテルのボーイが言っていた、この店自慢のセクシーダンスだった。ブラとパンテイは着けているが、これにレーザービームを照射すると乳首やヘアーが浮き上がって見えるのだ。それも総勢20人程の女性が次から次へとステージを乱舞するのである。これは見応えがあった。なにせ我々の席の直ぐ前で20人分の乳首とヘアーが入れ替わり踊るのだから(笑)もう最高! すっかり、普通のお客気分で我々2人はご満悦状態だったのです。

ショーの1回目が終ったので、私はS君に、さっきのセクシーダンサーを5、6人呼んでそろそろ、VIPルーム(この情報はリムジンの運転手から事前に入手していた)に移動しようと伝えた。彼は傍にいたホステスに、さっきの女性チーフを呼ぶように言った。
直ぐに女性チーフが来て、S君はその旨を伝えながら、ホステス達5人に500ペソ(1000円、彼女達の日当分になる額である)ずつチップを渡した。わずか1時間ほどで法外なチップをもらったのだから、彼女達の喜びようと言ったらなかった。これも筋書き通りで、S君はもしかしたら役者になっても飯が食えるのではと思ったほどである。

彼女達はこのテーブルに付くように指示してくれた女性チーフにも感謝の意を表していた。チーフも我々に愛想笑いを浮かべて感謝していた。私はやはり、彼女の笑顔と真顔の落差が気になって、スッチーの採用面接試験なら、きっと不合格になるタイプ(笑)だと考えていた。
そんな時、S君は突然何を思ったのか、このチーフにもチップを渡そうとしたのだ、それもなんと1万ペソ(2万円)もの紙幣を! これにはホステス達も驚いていたが、当の彼女がビックリして、あわてて「ダメダメ!私は違う!」と手と腰(笑)を振りながらあとすざりした。 

私の方は、この時に、もし彼女がすんなりと「サンキュー!ありがとさん!」って受け取ったらどないしょうとマジに心配したのでした。S君に「どうして、あんなことをしたんだ?」と聞いたら、ホステスへのチップの相場は50から100ペソだということと、チーフは席にも呼べないし、チップはもらえない規則だと言うことをホステス達から聞き出していたので、チョットからかってみたのだという答えが返ってきた。私が「いやー、マジにビックリしたぜ」と言うと「先輩心配しないで、大丈夫ですよっ!」と笑われてしまった。
S君はかなり、余裕が出てきたようだ。この調子なら、次に予定している彼の出番である重要な場面もうまくやれるかもしれないと思った。なにしろ、このリベンジ作戦自体が幾つかのリスクをはらんだ筋書きになっているのですから。S君と私が、この筋書き通りに、阿吽(あうん)の呼吸で遂行していかなければ成功しないのです。少しでもミスをすれば、それはたちまち2人がマニラ湾に浮かぶ危険にさらされる恐れがあるのです。例えれば、漫才の「ボケと突っ込み」に似ているのかもしれない・・・リスクを別にすれば!

VIPルームは上階にあり、そこにはステージが見下ろせる個室が全部で6室ほどあった。

各室にカラオケ装置があり、防音になっていて、クッションの効いた長めのソファーもあり、好みのホステスと2人っきりで存分に楽しむことも可能だということだった。お客は用事のある時には、呼び出しボタン(機内と同じ?)を押せばいいし、防犯カメラも覗き窓もないので、どこからも部屋の中は覗かれない造りになっていた。

セクシー・ダンサーの料金は1人につき、彼女の飲み物も(決まっている数種類)込みで、1時間2000ペソ(4000円)で、ショーの時とは違い、ブラは着けないということだった。若手のダンサー4人を呼んで、我々は相変わらずシャンペンのドンペリを飲むことにした。この時点ではVIPルームは我々だけで、最近はめったにこの部屋を使う客はいないということで、彼女達も呼んでもらえる機会が少なくなったとぼやいていた。ちなみに、ダンサーは最後のショーが終了した後であれば、全員連れ出しOKだとのことだ。
以前は日本人のお客(農協さんではなかったようだ)も来ていたが、最近は少ないと言っていた。それまでも、高い料金だったのに、一気に5割以上も値上げしたんだから当たり前だ。

最初にチップを1人に500ペソ(1000円)渡し、彼女達にも、途中でドンペりを1本追加して飲ませたので、半ば何でもありのまさにVIP状態で、我々も4人を相手にタップリと半ば何でもあり(笑)を満喫し、1時間が瞬く間に過ぎたのでした。ちなみに、彼女達によると、この店のオーナーは中国系だそうで、店の責任者は最初に挨拶に来た一見頼りなさそうなフロアマネージャーだと言うことが分かった。これだけの店をまかされているのだから、一見頼り無さそうに見えるが、相当なやり手なんだろう。彼を相手に、S君はうまく立ち回れるだろうか? 不安が首を持ち上げるのを感じていた。

例の女性チーフはオーナーの親戚の娘で、キャッシャーの年配の女性がオーナーの娘だということもわかった。
ここのオーナーは香港、上海にも店があり、マニラには全部で6軒の店があるとのことで、彼女達は2日交代でマニラの系列店を回っているということらしい。我々は次の作戦にした運転手からの情報による「秘密ショーの見物」を、彼女達にも確認して、決行することにした。ダンサーの彼女達を帰して、呼び出しボタンを押すと直ぐに黒服が来た。
「フロアマネージャーに勘定を持って来るように! それからドンペリをもう1本とチーズの盛り合わせ、それと新しいグラスを5、6個」とS君が伝えると、黒服は「かしこまりました」と答えて退室した。
「ところで、フロアマネージャーは日本語は分からないんだよな?」とS君に確認する。
「アッ、それ聞くのをすっかり忘れてました!」
「それによって、脚本を変えなきゃならないぜ。まーいいや、俺が確かめるよ」
ドアをノックする音がして、一見頼りなさそうな彼が、よくある愛想笑いを浮かべながら
「今夜はお楽しみ戴けましたでしょうか、女の子達に過分なチップを頂戴して、従業員一同感謝しております」と、おざなりな言葉を並べたてた。

私は、日本語で「いやー、満足したよ。ところで幾らになるの?」と言ったが、彼は苦しげな表情で「日本語、チンプートン、カンプートン、ノージャパニーズ」と答えたのです。ちなみに、「チンプートン」は聞こえない、「カンプートン」は見えないということで日本語の「チンプンカンプン」の語源で「わかりません」という意味の北京語です。
「オイ、本当に分からないのか?金払わないぞ!」と日本語で言うと、日本語は本当にダメらしく、彼はますます困った顔になり、S君にかなり癖のある英語で、「社長さんは何を言ってるのですか?」と聞いてきたので、私は「もういいから、勘定を見せてもらおう」とS君に伝えた。そして、マネージャーが差し出した立派な皮製の勘定書きを挟んであるフォルダーを受け取った。

高級クラブ「レクサス」で2時間余りを過ごし、高級なシャンペンのドンペリを3本も空けたのです。いったい幾らの勘定書きになるのでしょうか? その支払いはどうするのでしょうか? そして、筋書き通りにS君はうまくできるのでしょうか?

風天マン

※次回は竜子の判断で未成年禁止にさせていただきます!

実録「ハチャメチャ乗務員の飛行日誌」
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【著作について】実録「ハチャメチャ乗務員の飛行日誌」のすべては風天マンが著作権を保有しています。一般的な「引用」の範囲を超える紹介を除き、商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。詳細については当ブログ info@airjapon.com(管理人:竜子)までお問い合わせください。

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  1. 風天マンさん、はじめまして、Eagleと申します。これまでの記事も楽しませていただきましたが、今回は最高!早く次が読みたい、1週間後が楽しみです。

    • みちこ
    • 2011年 6月6日 10:54am

    つづきが超気になります!!
    次回が楽しみ〜。

    • 竜子
    • 2011年 6月6日 2:16pm

    ■Eagleさん
    こんにちは。コメントありがとうございます。
    1週間しないで出しますね。
    ■みちこ
    みっちゃん?! コメントありがとうw
    なるべく早めに出します。
    今週は、ぼつらぼつらとした更新になりそうです。

    • 吉田 
    • 2011年 6月7日 9:10pm

    西南学院大学の後輩です。母校にこれほど硬派の先輩がおられることに感激しております。西南は現在女子学生が6割強を占め女子大化しつつありますし女子高生が大学進学を考えた時、母校が目標にされているようです。大学スポーツでも女子の方が活躍しています。ユニバシアード ベオグラード大会で水泳女子が銅メダル、ラクロス女子が全日本選手権ベスト4、アイスホッケー女子が全日本3位等々。男子学生の奮起が望まれる今日このごろです。早いうちに在校生の前で是非講演をお願いいたします。次の更新楽しみにお待ち致します。

    • 風天マン
    • 2011年 6月8日 2:03am

    Eagleさん、みちこさん、私の記事を楽しんでいただきありがとうございます。
    これから、かなり文部科学省の非公認の内容になるので竜子さまもかなり掲載するか否か悩まれたのだと思います。
    吉田さん、そうですか、後輩なんですね!
    女子化してるのですか?う〜ん、もっと男子が肉食にならんとイカンですね。
    実は私も母校で就活のキモを、長く面接官をやっていた経験から講演をしたいと考えています。
    声をかけていただければ、いつでも飛んで行きますよ。
    久留米の自宅で私塾もやってますので、コチラも覗いてみて下さい。
    http://kn24.dyndns.org/~you/

    • 竜子
    • 2011年 6月8日 11:58am

    ■吉田さん
    コメントありがとうございます!
    風天マンさんの母校出身とのこと。女子にとって憧れの大学なんですね。
    ラクロスが活躍している学校って、なんだか健やかそうでいいですね。
    ■風天マンさん
    悩みました…。次回はいよいよ…ですので、掲載方法が少しイレギュラーになると思います(笑)。

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