B747コックピット「ヨーロッパ飛行」第10回

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ヨーロッパ飛行画像(haruhikon提供)

「ハノーバー上空から北海へ コペンハーゲン管制」

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★「ヨーロッパ飛行」挿入10

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右旋回を終えたJAL412便はコペンハーゲンに向かって飛行している。揺れること無く、スムーズな飛行を続け、束の間の時間だが乗客も寛いでいる。そんな中、コックピットでは下降・着陸に際しての打ち合わせが始まった。
「それではランディング・ブリーフィングをやります」
「はい」
「エクスペクト レーダー ベクター トゥ ILS 22レフトですね。タッチダウンゾーンが11フィート、ミニマムが211(フィート)、ミスド・アプローチは真っ直ぐ行って、ティアドロップのホールディング・パターンに入ります。高度が2500(フィート)、それだけです」

カストラップ空港

簡単に幾つかの用語を説明しておく。上にあるチャート図をご覧頂きたい。
先ず、ILS(Instrument Landing System:計器着陸装置)は、着陸進入する航空機に地上から電波を出し、視界が悪い時でも安全に滑走路に誘導できるシステムのことである。その電波は、滑走路進入経路の左右のズレを検知するローカライザ、進入する高さを検地するグライドパス、滑走路までの距離を検知するマーカービーコンの3つの電波から構成されている。

次に、ミスド・アプローチ(Missed Approach)は、着陸進入中にディシジョン・ハイ(Decision Height:滑走路末端からの高さ)まで降下しても滑走路を視認できなかった場合、そのまま上昇することをいう。ちなみにゴーアラウンド(Go-Around)はディシジョン・ハイを通過して更に降下した時、滑走路上に障害物や先行機との距離が短かったり、着陸寸前でウインドシエア(急激な気流の乱れ)が発生した場合に急上昇を行なうことである。ミストアプローチした際、再着陸する為の飛行ルートが決まっていて、各空港のSTAR(Standard Terminal Arrival Route:標準到着経路)などのチャート図に図面として掲載されている。尚、ティアドロップという言葉は聞き慣れないが、何らかの事情で着陸出来なかった場合、その先にあるホールディング・パターンと云って、一定の場所を旋回する場所がある。その旋回ルートに進入する形跡が涙(tear drop)のように見えることから、ティアドロップと言われている。

JAL412便の空港進入・着陸は、計器による滑走路22レフトへの進入で、滑走路接地場所は11フィートで、最終着陸決定高度は211フィート。着陸し直しで滑走路に再進入する場合は、そのまま真っ直ぐ(方位223度)に上昇して、空港VORから5.0DMEの地点で機首を190度に左旋回し、サウスウエスト ホールディング(パターン)上にある空港VORから10.0DMEの地点まで飛行し、その時の高度は2500フィート。管制官から指示があるまで、旋回をし続ける。
打ち合わせが終わると、マーストリヒ・コントロール管制から交信が入った。

「ジャパンエア412 コンタクト コペンハーゲン 119.55 シェーネン ターク」(日本航空412便へ。以後はコペンハーゲン・コントロール 119.55メガヘルツに交信して下さい。よい一日を)
「ジャンパンエア412 コペンハーゲン 119.55 ヴィダゼーエン」(コペンハーゲン・コントロール管制119.55メガヘルツに交信にします。さようなら)
通過する国への感謝・敬意を示す意味でも母国語で挨拶を交わす光景は、微笑ましいものである。

岸田副操縦士は、管制周波数をコペンハーゲン・コントロール管制119.55メガヘルツにセットし、交信を始めた。
「コペンハーゲン・コントロール ジャパンエア412 グッドアフタヌーン フライトレベル 350」(コペンハーゲン・コントロール管制へ。日本航空412便です。こんにちは。高度3万5000フィートで飛行しています)
「グッドアフターヌーン ジャパンエア412 レーダー コンタクト」(こんにちは。日本航空412便へ。貴機をレーダーで捕捉しています)
「ラジャ」
管制域がコペンハーゲン・コントロールに移管された。
「コダン(CODAN)ですか?」
「コダン(CODAN)です」
岸田副操縦士はVHFにコペンハーゲン・カストラップ空港の進入口であるウエイポイントのコダン(CODAN)の周波数114.9メガヘルツに合わせた。コダンからの電波を捉え、機内には規則的な電波の音が響いた。
「ID オーケーです」
「はい」
ウエイポイントであるCODANは、北極圏を飛行する航空機にとってヨーロッパの玄関口とも言える。

ルフトハンザ25便が同じ管制域に入ってきた。日本航空412便と同高度で飛行している。今度はエアインディアが同管制域を離れる交信が入ってきた。
「エアインディア112 コンタクト マルメ 124.15」(エアインディア112便へ。以後はマルメ・コントロール管制124.15メガヘルツに交信して下さい)
「124.15 グッディ」(124.15メガヘルツで交信します。さよなら)

ブリティッシュ・エアウエィズ(英国航空)が交信が入ってきた。ブリティッシュ・エアウエイズのコールサインは「スピードバード(伝書鳩)」である。もともとこのコールサインは、ヨーロッパ域内の国際線の英国海外航空だったが、昭和49年にイギリスの国内線の「ブリティッシュ・ヨーロピアン航空」と合併し、今の会社となりコールサインはそのまま引き継がれて今に至っている。

この付近の空はヨーロッパの中でも屈指の交通量の多さである。
「到着55分で晴れの12度」
鈴木機長は飯田航空機関士に空港到着時刻と天候を伝え、キャビンにいるチーフパーサーに伝えた。鈴木機長は岸田副操縦士に降下する許可を貰うよう指示を出した。
「コペンハーゲン ジャパンエア412 リクエスト ディセンド」(コペンハーゲン・コントロール管制へ。日本航空412便です。下降許可を要請します)
「ジャンエア412 クリア ダイレクト コダン フライト レベル70 アフター コダン ラディアル ヘディング030」(日本航空412便へ。コダンに直行し7000フィートまで下降して下さい。コダンを通過後、機首方向を30度にして下さい)
「ジャパンエア412 クリア ディセンド 70 アフター ダイレクト コダン アフター コダン ラディアル 030」(7000フィートまで降下しながらコダンに直行し、コダンを通過後、機首方向を30度にします)
「ザッツ コレクト」(その通りです)
412便は下降を開始し、まもなくコペンハーゲン空港への進入が始まる。

桃田素晶

「B747Cockpit ヨーロッパ飛行」
解説:桃田素晶/録音:武田一男 ©Director’s House

【著作について】「B747Cockpit ヨーロッパ飛行」で収録している音声、音源等は武田一男、及びディレクターズハウスが著作権を保有しています。商用、非商用に関わらず無断転載、複製の一切を禁止いたします。また、解説は桃田素晶、表紙写真はharuhikonに著作があります。詳細については当ブログ管理人までお問い合わせください。

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