カテゴリー ‘ 航空関連書ブックレビュー

フェデックスの経営者、フレデリック・スミス

さて、今日からときどき「航空会社の経営者」に目を向けてブックレビューをしていこうと思います。
更新はマイペース。気が向いたときにとびとびでの紹介になりますが、ゆっくりとおつき合いいただければと思います。
今回は、この本。

「世界的企業100社のターニングポイント」(エクスナレッジ刊/2007年)

あるとき、父に言われたことがあります。
「ゼロックスとってきてくれる?」

「ゼロックス」とる、って!!!
ちなみに、出力機はヒューレットやエプソン、コピーはキヤノンとかリコーとか。ゼロックスってどうしたらいい? みたいな状況(富士ゼロックスになる前の話かと)。いや、それまでも大昔から「ゼロックスして」って言葉は聞いてましたがテレックス同様、何のことだかさっぱりで、エンジニア用語かなんかだと思っていました。

でもコピーの意味だと知った時、「なんだかカッコいいじゃん」って思ったのです。実際には業界用語や専門用語ではなく、宅急便(=ヤマト運輸の商標:通常は「宅配便」)、セロテープ(=ニチバンの商標」通常は「セロハンテープ」)ママレモン(=ライオンの商標:食器用洗剤)と同様で、メーカー名がそのまま根付いた時期があったようなんですね。50代以上の方には馴染みがある言葉なんだとか…。

それと同じようにアメリカには「フェデックスする」という言葉があるようです。「明日届けるよ」という意味だそうです。語源はお分かりですよね?(笑)。

長い間「フェデラル・エクスプレス」(Federal Express)でおなじみだった、現・フェデックス(1994年に改名)はフレデリック・スミスによって立ち上がりました。スミスはベトナム戦争から戻ってすぐの27歳のときに、父の遺産を相続。その資金を全て投入して、ふつふつとわいていた野望に向かっていったのです。ちなみに、スミスの父はバス路線事業の創業者で、スミスが4歳の時に他界してし、スミスに400万ドルという大金を残したのでした(そもそもが大金持ちなのに全財産をしかける勇ましさに注目)。その「野望」は、1965年にイェール大学で経済学を学んでいたときに書いた論文に原点があるようです。

・コンピュータの普及台数が増えると、修理の需要が増える
・メーカーにとっては素早く修理することが重要になり、修理部品の調達需要が高まる

論文には、こんなことが書かれていたようです。この論文を書いた翌年の1966年、スミスはロースクールには行かずに海兵隊に入隊して4年間をベトナム戦争で過ごしました。それからベトナム戦争から戻って、継父の飛行機修理の会社を買収して、やっぱり修理部品を取り寄せることの困難を思い知ることになったのです。ちなみに、スミスは10代のときに既に飛行技術は習得していて、大学在学中にもチャーター機のパイロットをしていました。

それでスミスは、イェール大学時代の論文を洗い直して、配送物の内訳を調査した。
そこで発見したのは、いくら航空網が発達しているアメリカといえど、小口の荷物の80%がその航空輸送に引っかかっていない、ということ。パイロット経験者のスミスは思った。「これ、ジェット機だったらすぐに届けられるんじゃないの?」と。それを、効率的に行うには、銀行間の相互決済の仕組みをヒントにして、「全ての地域をカバーするには中心となる「ハブ」をおいて、そこに荷物を集中させて届け先別に仕分けして送り出す」という現在の「ハブ化構想」と同じものを思いついてしまったのだ。

「これはいける!」と確信したのか、父からの遺産に加え、投資家を集めてきて9,000万ドルの融資を受けた。
さらに、そのハブには「メンフィス」を選んだ。
メンフィスといえばブルースの発祥地で、エルビス・プレスリーの育った町。
そのメンフィスは真夜中から朝にかけてほとんど使われていない上、天候が安定していて、地上での待機時間は年間を通してごく僅か(10時間?!)で済むから!! という賢人ぶり。

おまけに従業員を動かす才能にも富んでいるようだ。
交通業界特有のストライキの時期、ライバル会社のUPSがストで混乱したときのエピソードがある。
フェデックスに流れ込んだ貨物をさばいたのは、自主的に集まった何千人もの従業員だ。本当に自主的かどうかは、眉唾だけれど、彼らの動きを称えるために、海軍式の褒め言葉で「でかした」と書いた新聞広告を全面に乗せ、ボーナスも弾んだ。
さらに、民間パイロット組合のクリスマス繁忙期のストですらも、パイロットを除くフェデックスの従業員の多くはメンフィスの通りに集って、会社を支持しようと集結し、非番の日に飛んだパイロットもいたのだとか。

ベトナム戦争での経験で200人を率いたというスミスは「何かビジネスを始めるくらいで、怖じ気づくことなど全くなかった」と語る。

父からの遺産も残されていて、ロースクールへは行かなかったといえど、名門のイェール大学に身を置いたのだから、黙っていても将来は明るかったはず。なのに海兵隊に入ったということ。それからその後、遺産のほとんどに加え、莫大な借金を抱えてまで事業を興したということ。スミスのエピソードを読んでいると、なぜだか度胸がすこぶるいい。

フェデックスは1970年の設立後も、最初の2年で2900万ドルの損失を出し、黒字になるまで1975年になってからだ。計画が何度も頓挫する中、従業員への給与支払いに窮して、200ドルを持ってラスベガスへ行ってブラックジャックを…、そして26,000ドルを手にしたとか。ギャンブルに託すエピソードひとつとっても、度胸意外のなにものでもないかも、と。

なにがどうしてそんな度胸を秘めたのかは分からないけれども、もともとあった度胸を強固にしたのは、やっぱりベトナム戦争での経験のようだ。人を動かす才能に富んでいるのも、ベトナム戦争なのかもしれない。この本で紹介されているスミスの言葉の裏には、ベトナム戦争で「死」を見た人の言葉のような気がしてならないのです。

この本は、タイトルそのままで、世界の100社のターニングポイントと設立のエピソードなどが紹介されています。
600ページくらいあるので、好きなところだけちょい読みしても、なかなか面白いです。
日本からはユニクロや任天堂、ヤクルトなんかも登場しています。日本人なら日本企業のことをある程度は(聞きかじりだったとしても)知ることはあると思いますが、馴染みはあるのによく知らなかったタッパーウェアとか、レゴなんかでも面白い。それからたとえば「ダニ・アッシュ」(ストリッパー出身の女社長がポルノサイト最大手にのしあがるまで)という、初めて聞いた企業もへぇ、へぇ〜、っと楽しめるないようになっています。

「ビジネスとは金に過ぎない、命や死でもない。大局観がなければ、所詮は些細なことでパニックに陥ったり、周章狼狽したりするはめに陥るだけ」

フェデックス社長・フレデリックスミス

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空港と旅の物語を紹介した雑誌

こんにちは、竜子です。

飛行機が好きなのは、そこには見たこともないような空の景色があるから。そして、そんな景色をくぐり抜けると、想像はしていたものの、それでもやっぱり知らない土地が現れ、よくわからない言葉が聞こえ、見慣れない光景と予想以上の出来事に出くわすからだ。そんな未知なる状況へ連れて行ってくれるのが、飛行機だ。

空港が楽しいのだって、そんな状況へのゲートとして存在しているからだ。
だいたい、日本に居るのに「出国審査場で出国スタンプを押したらそこは外国の扱いだ」という、なんだか曖昧な感じからして成田空港に居る時でも開放的な気分になっちゃう。以前、出国スタンプを押してもらいつつも、その出国が無効になっちゃったことがあるんだけれども、無効になっても、飛行機に乗っていること自体が楽しかったわけで、楽しいものはやっぱり楽しかった。

何年か前の年末に、成田から中国の瀋陽に出かけようと思ったら、現地に煙(?!)があるからという理由で、1時間近くも上空で待機した。確かにまわりには霧のようなもので覆われていたけれども…、みんな「野焼きかしら?」なんて噂していたけれども、実際は定かじゃない。この後、大連に向かうことになった。けれどもこんどは大連は雪で降りれない、ってことで関空に向かうことになった。機内アナウンスでは瀋陽や大連ほか、降りれない飛行機が成田空港に向かっていて成田空港がたいへん混み合っている、ということだった。実際にはそれに加えて22:00までに成田に到着するの厳しいんだろうな…、っていう時間だった。
こんな年末のタイミングに極寒の瀋陽に向かう日本人は、よほどの物好き旅行者か、ギリギリまで仕事をしていて旅行のプランを練れなかった人と思われ、たいていはみんな静かに過ごしていたし、私もダイバードデビューとなるかもしれないと、不謹慎ながら…ちょっとワクワクしていた。でも、お正月に故郷へ帰ろうとしていた中国人の人たちは溜まったもんじゃない。ってことで中国人のみんなが団結して既にブーイングの荒らしだった。「しょうがないよね」なんて言おうもんなら、「しょうがないじゃすまない!」とつかみかかってきそうな勢いで私たちも面罵されたほど。

そんな中、ダイバード先の関空に着いたらどう過ごそうか、あらたに旅のプランを練り直していた頃、成田空港での受け入れの見込みが立った、ということで成田に引き返すことになった。この間、「大連に到着したらどう過ごそうか」「関空に到着したらどう過ごそうか」と、考えては見たものの、結局は成田に戻ってきたので、ゼロ地点に戻っちゃったようなものだ。
実際は成田→瀋陽は3時間半くらいらしいのだけれども、8時間半のフライトになった。結構、燃料って積むんですね…。

いけないいけない。話がおもいっきり逸れた。

それで、そのときに成田から出国してどこの国にも降り立たずに、また成田に戻ってきたときに、私のパスポートにあった出国スタンプの上に「VOID」スタンプが押された。これで私の出国は無効になったわけだけれども、初の「VOID」スタンプに喜んだのも束の間、次からは色々と手続きをしなくちゃいけない。
まず頭によぎったのは、天候不良などの自然災害でキャンセルになった場合の、航空チケットの取り扱いだ。そもそもが正規運賃ではないホテルとパック料金の格安チケットなので、戻ってこないかもしれないよな…。おまけに8時間半も乗っちゃっているわけだから、払い戻しがなかったとしても仕方がないよな…と考えつつも、こういう場合はたいてい振替チケットが用意されたり、全額払い戻しされる場合が多いのもどこかで知っていたので、払い戻しがなくてもともと、全額払い戻されたらラッキー、位の考えだった。そして出国審査場を抜けると、実際にJALの係員の方が待ち構えていて、代替チケットの発券、もしくは全額払い戻しで対応してもらえることになっていた。その日は30日の便だったけれども、代替便は元日とのことで、もうダイバード飛行だけでもこの年の締めくくりとしてお腹いっぱいな経験だったので、迷わず全額払い戻しとさせてもらった。タダで飛行機に乗れちゃって、本当にラッキーだった。係員のみなさんの「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」という言葉に、「いえいえ、とんでもないです!」と答える私の顔は、きっと満面の笑みだったに違いないっ(笑)。

それから、次に待っていたのは、ちょっと想像していないことだった。
当然といっちゃ当然なんだけれども、それは出国審査後の免税店での買い物を全てキャンセルしなくちゃいけない、ということ。もちろん、機内で購入したものも返品しなくちゃならなかった。ブランド品を成田で買う、なんてことは私にはないのだけれども、お化粧品などの日用品はデパートで買うよりもかなり安いし、タバコや細々した雑貨なんかは、ちょっとしたお土産にも鉄板アイテムなのでついつい買ってしまう。特にJALカードやANAカードを使用すると、免税の上にさらに割引が適用されるわけで、同じ化粧品でも結局半額くらいで買えてしまうので、けっこうおいしい。
でもって、そんな細々したものは、レシートだってあやふやなので「ん、もうぅ〜」と思いながら、荷物をかき出すことになる。

あれ…。
また話がずれてた。

で…。ともかく日本に居ながらにして、日本を出国したことになっちゃったり、どこかへ渡航した気分になっちゃう、国境線の曖昧な「空港」は、とにかく奥が深い。飛行機の玄関口、空の玄関口、異国への玄関口。形容は尽きないけれども、この空港という玄関口には人の数だけストーリーがあって、その場に立つだけで心が疼く。

そんな「空港」と「旅」を特集した「TRANSIT」という雑誌(ムック)の、今季の特別号がとても面白かったので紹介します。

まず、この「TRANSIT」という雑誌(ムック)なんですが、「トラベルカルチャー」という触れ込みで、毎号世界の旅の特集をしている雑誌なんです。たとえば、インドとかタイとかアンデスとかヒマラヤとか。旅の雑誌といえば、「るるぶ」とか「じゃらん」とか、そん情報誌が有名で、あとは本でいえば「地球の歩き方」とか…。ここ最近は旅のスタイルも三者三様になって、いろんな情報誌や本が出ていますが、ま、いずれも「情報誌」ですね。
一方の「TRANSIT」は、情報誌ではなくってカルチャーマガジン。普段、飛行機の本ばかり探していると、こういうスタイルの本を見落としてしまいがちですが、たまに覗くと、様々な分野の人の「空港」や「旅」の視点が覗けて、とても面白いのです。

たとえば「空港を読む」というコーナーでは、
これまでも旅にまつわる紀行エッセイなどもいくつか執筆されている角田光代さんが登場していたり、私も「えっ?!」と思うような人たちが登場していて「へぇ〜」ってなる。中でも、サブカルチャー誌で有名なライター・北尾トロさんなんかがロサンゼルスで無くしたチケットの話を披露していたり、いっつもひねくれた見方で私を楽しませてくれる漫画家の辛酸なめ子さんがCAと自分の女子力について語っていたり。さすがにカルチャー誌とあって、娯楽感満載だったのが新鮮でした。

それから、出発ゲートと到着ゲートに居た人たちのスナップ写真もなかなか。
人の分だけあるストーリーを眺めたり、人の旅のスタイルなんかを楽しく眺めたのでした。

雑誌は、雑誌にしかない楽しさがあって、たまには面白いですよ。
近隣で見かけたら、立ち読みでもしてみてください。
ちなみに680円です。やっぱり驚異的な価格の出せる雑誌は強いですね。

内容の紹介
[特集]NRT×Fashion 今日も成田は [撮影:水谷太郎]
[特集]時を越えて導かれる、愛すべきインド [撮影:在本彌生]
[特集]オランダ、幸せな街の作り方 [撮影:小野博]
[特集]ミスターメキシカン!荒野とサボテンと陽気なオヤジ[撮影:石塚元太良]
[特集]世界の国、アラカルト(イラン、ウィーン、ロシア、中国、パプアニューギニア)
[特集]エピローグ〜空と雲 [撮影:山内 悠]
・旅人の肖像
・成田って何だ?
・エアライン紹介
・成田のヒミツ&トリビア
・世界の美しき空港建築
・世界ビックリ空港図鑑
・空港で、あそぼう!
・成田空港パーフェクトMAP
・旅を彩る厳選アイテム
・空の旅で聴きたい音楽
・名優は空港がお好き?
・旅の手触りをなぞる10冊

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飛行機と空港の写真とエアメールでビタミン補給

こんにちは、竜子です。

今日で東日本大震災から1ヶ月。いまだ気分が晴れませんが、そういう気分とも上手くつき合えるようになってきました。今日も夕方に余震がありましたが、わたしは車の運転中で「風にあおられたか?」とおもいつつ、もしやと思ってナビをテレビに切り替えるとやっぱり地震。あともう10分ほどで帰宅、スタバでも寄っていこうというところ、葛飾近辺におりましてここで震度4。車を停めてしばし様子を伺っていましたが、車の中で感じる地震って地球をそのまま感じているようで、ちょっと不気味でした。震央の方々は、毎日止まない余震に、生きた心地がしないのではないかとおもいます…。

わたしは、ちょうど仕事の切れ目を迎えようかというところで、先月の地震。タイミングだけでいえば、人に迷惑をかけることなく幸いだったので、この流れにあらがうことなく、身を任せようと考えていますが、ネットでかき集める有象無象の情報の中にあって、ちょいちょい不安がかすめる1ヶ月だったと振り返っています。

3週間も経つと、みんなみるみるうちに元気になっているように思えて、「まじでっ?」と自分だけが取り残されているような…、焦りもわいてきましたが、最近になって分かったのは案外気丈そうに振る舞っている人ほど不安を抱えていたり、普段、理知的な人なのに「自分は弱い人間だ」と吐露していたり、なんだかみんなそうなんだなぁと少しホッとしました。

そんな日々を支えてくれた、といっては大げさですけれども、輪番停電のアナログ感が漂う生活の中で、やっぱり飛行機や旅のトキメキは、おおいに励みになりました。飛行機が主食だとすると、本は栄養補給ですねっ。
というわけで、すこしビタミン補給的な本を紹介しようと思います。
今日はコノ2冊です。

「雲の上の散歩」沼田元氣

「雲の上からの手紙」沼田元氣

著者の沼田元氣さんは、ポエムグラファー(写真家詩人)と自称している方で、前衛芸術家としてデビューされた方だそうです。アンディ・ウォーホールのテレビ番組にも出演されたのだか。
わたしはこの本を手にするまで、この方を知りませんでしたが、「マトリョーシカ大図鑑」だとか「鎌倉スーベニイル手帖〜ぼくの伯父さんのお土産散歩ブック」だとか、ご自身のコレクションを披露した著書をたくさん持っている方で、どうも飛行機旅行だけが専門といったわけではなさそうです。
ちなみに「披露」といってはちょっと変な表現ですが、ほんとうに見るだけの本です。個人的な写真、風景の写真、絵はがきの写真(スキャン)等々、写真絵本といったほうがふさわしいかもしれません。

ちょっと本に書いてあるプロフィールを見てみましょう。

■「雲の上の散歩」
航空写真家/エアポートフォトグラファー/エアメールアーティスト
雲の上をこよなく愛する散歩詩人。著書に『雲の上からの手紙』(ブルース・インターアクションズ)他多数。
日本孤独の会々員。

■「雲の上からの手紙」
郵便愛好家/切手収集家/メールアーティスト/ラヴァ・スタンプ詩人
著書に『ぼくの伯父さんは、ゆかいな郵便屋さん』(平凡社)他がある。
日本孤独の会々員。

2冊比べてみると、実に多くの肩書きがある方なのだと思った。日本孤独の会々員、というのはどうも確固たるものらしい。正直なところ「航空写真家」としての知名度はいかに…、という感じだけれども、こういうのは名乗った者勝ち、といっては著者さんに失礼だとは思うけれども、きっとこの作家さんの他の著書を見たとしても、その本に即した肩書きが同じように書かれているんじゃないかと思う(…未確認です)。
ちなみに予想通りといってはなんだけれども「日本孤独の会」の活動内容は不明。

カバーには窓が抜かれていてセロファンが貼られている。じつはこの2冊の本、書店で見たときはビニールで梱包されていたので、中身は見れなかったのだけれども、見るからに表紙は凝ったつくりで、中身云々ではなく「持っておきたい」と思わせるオーラが漂っていたのです。よく、CDなんかで「ジャケ買いした」なんていうけれども(ジャケ買い=ジャケットがさも好きそうな雰囲気だったので買ってしまった、の意味)、この2冊もまさにジャケ買いだった。ちなみにグルグルビニールかけられている本も、書店員さんにひと言声をかければ、ビニールを外して中身を確認させてくれるのだけれども、その必要すら感じずに買ったのでした。

家に帰って、ビニールを空けるときのワクワクさ。
表紙を開けばやっぱり期待した世界が広がっていました。

まず、「雲の上の散歩」。
これは、沼田元氣氏が見た外国の空港の様子、空からの眺めが広がっています。職業カメラマンの方からしたら、あるいはプロ顔負けの趣味で写真をされている方からしたら、ピンが甘いだとか手ぶれだとかなんとか(効果というよりも本気の手ぶれだったりして)、いろいろ突っ込みどころあるんだとは思うのですが、1枚1枚が作品のクオリティを成していなくても、一連の写真を見ていると、この沼田元氣氏の視点が、私の空港にときめく理由が凝縮されているような気がして、ページをめくっていると、笑みがこぼれてくるんですね。
時折、色合いもトイカメラで撮ったような極彩色のものが出てきたり、おもちゃ箱のような本。文章は少ないし、写真にそれぞれ詩があるわけではないのだけれども、なんだか詩的な雰囲気を味わうのです。
なんだか「航空写真家」といわれれば確かにそうかもしれないし、「エアポートフォトグラファー」といわれてもそうかもしれない。けれども、この本は写真で綴ったポエムにも思えるし、結局のところ、この沼田元氣さんという人は、なんの肩書きにも収まらない人なのにもかかわらず、人のために肩書きをつけたんだと思った。めんどくさい世の中ですね。

沼田元氣「雲の上の散歩」
沼田元氣「雲の上の散歩」
沼田元氣「雲の上の散歩」
沼田元氣「雲の上の散歩」

それから、「雲の上からの手紙」。
こちらは各航空会社より飛行機上で行われていたエアメールのサービス使って出された絵はがきや、国際郵便をただただ集めた写真集です。写真集というかスキャン画像の「コレクション」。これが、ただのエアメールのくせに、いちいち趣があっていつ見ても楽しい! のひとこと。お国柄溢れる切手ひとつとっても…、消印スタンプをみても…、当時のフォント(書体)をみても、万年筆の筆跡を見ても、ハガキのデザインを見ても。1ページ1点のエアメールで、この1册まるごとひたすらエアメールのみ。

沼田元氣「雲の上からの手紙」
沼田元氣「雲の上からの手紙」
沼田元氣「雲の上の散歩」
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4月15日までなので、こちらもよろしくです。

ANA義援マイルで震災支援

●期間:2011年3月17日(15:00)〜4月15日(23:59)(終了)
●一口:1,000マイル=1,000円相当(1,000マイル以上、以降1,000マイル単位)
●国際人道支援組織「ジャパン・プラットホーム」を通じ、被災者の救済活動に使用します
●義援マイルの詳細:http://www.ana.co.jp/amc/news/info/gien_1103(終了)

なお、「東日本大震災 被災地域復興支援 ANA義援マイル」では、受付件数:5万2995件、総受付マイル数:3億1351万5000マイル(3億1351万5000円)が国際人道支援組織「ジャパン・プラットフォーム」ならびに社会福祉法人「中央共同募金会」を通じて、東日本大震災復興支援の義援金として寄付をされることになりました(2011年4月20日ANA発表)。

JALマイルで支援金

●期間:2011年3月14日〜4月15日まで(終了)
●一口:7,500マイル=7,500円相当(7,500マイル以上、以降7,500マイル単位)
「赤い羽共同募金」でおなじみの「社会福祉法人中央共同募金会」が実施する、被災者の方々への支援活動に使用します
●救難支援マイルの特設ページへ:http://www.jal.co.jp/shien/(終了)

JALの「東日本大震災救難支援マイル」では、受付会員数:1万2875名、総マイル数:1億2261万7500マイル(1億2261万7500円)が「社会福祉法人中央共同募金」へ寄付されることになりました(2011年4月20日JAL発表)。

月刊「エアライン」VS「航空ファン」

こんにちは、竜子です。

飛行機ファンなら読んでいる人も多いと思うのが、イカロス出版の月刊「エアライン」と、文林堂の月刊誌「航空ファン」。「エアライン」が旅客機中心の情報誌なのに対して、「航空ファン」は旅客機のコーナーも充実しているけれども、軍用機についてのコンテンツのほうが圧倒的に多いのが印象です。

実はここ4〜5年ほど、雑誌という雑誌を全く読まなくなってしまい、それまでは月末の発売日ともなれば職場近くの書店へ向かっていた「エアライン」。職場からほんのちょっと歩けば市ヶ谷の防衛庁があるせいか、発売日を逃すと、もともと配本が少ないその書店では売り切れとなることもあって、仕事の最中でもいそいそと買いにいくありさまでした。けれども2年くらい前だったかな? 版型が変わって少しコ洒落た雰囲気の表紙になってからは、立ち読みすらもしないようになった。

なんで買わなくなったのか、そのときは特別な理由はなかったけれど、少しコ洒落た月刊「エアライン」よりもずっと続いていた「エアライン」の味気ないデザインの方が、さも「飛行機趣味」の雰囲気を醸し出していて好きだったのかもなぁ、と今になって思う。その数年前のリニューアルではロゴのデザインも変わって中面の本文レイアウトも少しお洒落になった。版型が変わって(やや縦方向に大きくなった)、その分、いくらか誌面のレイアウトにゆとりができて、スッキリ、整然としたように思うけど、味方によってはスカスカした印象も受けたのです。

この2つのような”雑誌”ではありませんが、当時はエイ出版(枻出版)という、趣味の分野で勢力を上げてきていた出版社が、航空趣味のジャンルにもひょっこり顔を出すようになり、文庫やムックで、面白そうなタイトルと着眼点で、イカロス出版の牙城を壊すのではないかと思えていました。なかでもいくつか刊行された「エアライングッズ」を取り扱ったエイ出版のムック(雑誌タイプの本)は、なんとなく「これはイカロス出版では刊行できないよなぁ…」と思うような、ニュータイプのトキメキと楽しさがありましたし、それに高コストパフォーマンスだとも思いました。

当時だけを振り返って、全体的にみると(いまは違います)、イカロス出版に比べてエイ出版の刊行物は、あか抜けていて、スタイリッシュだったと思う。それに、コバンザメ商法のようなもので、ひとつヒットが出れば別の版元から似たような刊行物が出てきたり、本家を上回るものが出てくるのが本の面白いところで、いくつか類書が出回ったと記憶しています。あくまで私見に過ぎませんが、傍目には、その流れを意識した「エアライン」のリニューアルだったんじゃないかなぁ、と思えたのです。しかし当時のリニューアルは「まさか!」と思うほどの装いにビックリしましたし、その後もちょいちょい立ち読みしたりしてましたけど、思いきったなぁ、と衝撃の連続でした。

でも私個人に関していえば、毎月の雑誌に限っては、なんだか怪しげな雰囲気のほうがたくさん情報がつまっているような気がして…。さらに言うと、趣味に関しては無骨な雰囲気のほうが、好奇心に駆られるというか、「扉を開いてやるぞ!」という冒険心をかき立てられるというか…。背伸びするくらいのモノを欲するのです。
(でも、もちろん「エアライン」の誌面は好きですよ。カジュアルだし、コンテンツも豊富だし、広告も情報のひとつになっていて読み応えがあるので)

その点、「航空ファン」ってずっとダサいんですよね…。おまけにとっつきづらいし…。いっつも軍用機が表紙だし、ロゴもマイナーチェンジはしているんだと思うのですが、長い間ボテボテっとした雰囲気を壊さず、雑誌の「顔」を変えていないような気がします。けれども媚びがない。それが良いのか悪いのかよくわかりませんが、そういう無骨さが私は好きなのです。ともかくそのあか抜けなさが、カッコいいんです。
中の誌面も写真もてんこ盛りで文章も多い。もしかしたらその量は「エアライン」とさほど変わらないのかもしれないけれど、キュウキュウに詰まっていて(デザイン的に?)、パッと見、誌面が威圧してくるような印象です。ミニタリーを扱っているせいか、内容も堅いですしねっ!

すみません、両誌はターゲット層も違うので、比べるものではありませんね…。
でも無理やり…まとめちゃいますっ!

男性にたとえるなら、
「エアライン」は話題も豊富で聞き上手。おまけにおいしいレストランや雰囲気のあるデートコースをコーディネートしちゃうような…、おまけにさりげなくレディーファーストをする男性。
「航空ファン」は興味のあること以外は寡黙だし、デートでの食事はラーメンやお好み焼き屋、奥のソファ席は自分で座る「半歩下がってついてこい」タイプ。といったところでしょうか…。
「航空ファン」は「いいな…」とはなるけど、実際につき合うのは「エアライン」だったりするんですけどね…。

ところで…。
今回の震災を受けて、いろんな国の人たちが手を挙げてくれました。なかでも米軍はこのミッションを「Operation TOMODACHI」と名付けてやってきました。ご存知の方も多いと思いますが、この米軍の方々が、腕にワッペンをつけているのですが、これは「航空ファン」の付録バッチや誌上販売バッチを製作している「NavyGear4u」というミニタリーショップの関係者が作成したものだそうです。
もともとは、日頃からお付き合いのあった米軍の方が「Operation TOMODACHI」に参加するのを知って、感謝の気持で善意で作ってプレゼントしました。それが波及して、逆に米軍や自衛隊でもつけたいということで、逆に米軍から発注がかかっているとのことです。

2011年4月21日発売の「航空ファン」6月号で、このワッペンが誌上販売されるそうです。
いまは、この発端となった「NavyGear4u」さんでも、キャパを超えてしまったため、被災者救援に向かわれる団体を優先し、個人で欲しい人は「航空ファン」での誌上販売を推奨しているようです。売り上げのうち、利益の分は日本赤十字社を通して寄付されます。
このような支援もありますので、ぜひどーぞ。

では、またね。

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ANA義援マイルで震災支援

●期間:2011年3月17日(15:00)〜4月15日(23:59)(終了)
●一口:1,000マイル=1,000円相当(1,000マイル以上、以降1,000マイル単位)
●国際人道支援組織「ジャパン・プラットホーム」を通じ、被災者の救済活動に使用します
●義援マイルの詳細:http://www.ana.co.jp/amc/news/info/gien_1103(終了)

なお、「東日本大震災 被災地域復興支援 ANA義援マイル」では、受付件数:5万2995件、総受付マイル数:3億1351万5000マイル(3億1351万5000円)が国際人道支援組織「ジャパン・プラットフォーム」ならびに社会福祉法人「中央共同募金会」を通じて、東日本大震災復興支援の義援金として寄付をされることになりました(2011年4月20日ANA発表)。

JALマイルで支援金

●期間:2011年3月14日〜4月15日まで(終了)
●一口:7,500マイル=7,500円相当(7,500マイル以上、以降7,500マイル単位)
「赤い羽共同募金」でおなじみの「社会福祉法人中央共同募金会」が実施する、被災者の方々への支援活動に使用します
●救難支援マイルの特設ページへ:http://www.jal.co.jp/shien/(終了)

JALの「東日本大震災救難支援マイル」では、受付会員数:1万2875名、総マイル数:1億2261万7500マイル(1億2261万7500円)が「社会福祉法人中央共同募金」へ寄付されることになりました(2011年4月20日JAL発表)。

「恋する空港 あぽやん2」

久々に、本の紹介をします。
以前紹介した「あぽやん」。この小説はかなり楽しめ、竜子のお気に入りのひとつです。そして今日紹介するのが、その続編となる「恋する空港 あぽやん2」。2010年6月に刊行されました。この本の面白いところは、ヨーロッパ映画のようなテンポの良さと、日々のさりげない人たちの描写がユーモラスだったところです。

最初は誰かのブログを読んでいるような、朴訥とした語り口調で、1章を読み終えるまではそのペースに頭をシフトさせるだけで終わったように思いますが、あれよあれよという間に「あぽやん」の世界へ舞い込みました。登場人物のキャラクターが立っていて、笑ってしまうこともしばしば。気づけば映画を見ているように、物語が進んでいくんですね。最初は飛行機ファンの下心でセレクトした小説だったけれども、いつの間にかヒューマンドラマの世界へテレポートしてしまったわけです。

「あぽやん」というのは、「AIRPORT」の「アポ」に、「やん」をつけてた愛称。昔なら空港に長けた職人としての敬称だったはずが、いまや蔑称として使われるにいたった「あぽやん」のお話。
1作目では、旅行会社のちょっと小生意気な新人として働く「僕」に起こる、奇妙キテレツなお客さんと職場のヒューマンドラマが描かれていました。ベースは成田空港。海外旅行に出発するお客さんを手際よくさばくようになってゆく「僕」の姿が微笑ましくもあり、また同世代の主人公がときに嫌なヤツだったりするのですが、そのあからさまな素直さが好感の持てるキャラクターだったのです。とくに大きな出来事はないのですが、そうしたささやかな日常風景が、素朴な後味を残しました。

そして、2作目の「恋する空港 あぽやん2」。新入社員からスーパーバイザーに昇格し、中堅どころとなった「僕」が、ちょっとクセのある新人を育成するのに奮闘したり、傾きかける「僕」の会社(JALを思わせるような関連子会社がモデル)の中で起こった事が描かれています。1作目ではちょっと変わったお客さんが登場する程度でしたけれど、2作目ではテロリストが登場したり、ストーカーが登場したり、かなりキテレツなキャラクターの人が登場しますが、全体的にはそれでもほんわかヒューマンドラマです。
「恋する空港」がメインタイトル、「あぽやん2」がサブタイトルになっていますが、内容に「恋」の要素は思ったほど多くなく、やっぱり、「あぽやん」の続編です。

変わったことと言えば、1章1章が、完結作としても読めること。そして、その章ごとに大きな話の山場がひとつは盛られていること。さらにその山場がこれまでになかったほどのドラマチックさがあること。娯楽小説感がなおのこと際立った気がした。

たとえると、1作目が映画だったのに対して、2作目はテレビドラマになった感じだ。わたしなんかはひねくれているので、「下心だしたな!」とか思っちゃったりもするのですが、そこを差し引いてもやっぱり面白い。だって、このままドラマ化されても何の不思議もないんですよね。ってか、むしろテレビ局かなんかとそういう話になっているのか? とまで勘ぐったりしちゃいます。
テレビドラマ、というと変に誤解されるかもしれませんよね。チープな作りかと。
けど、そんなんじゃないんです。それくらいあっという間のスピードで、映像が頭に浮かぶ、というたとえです。たとえではあるんだけれど、これがテレビドラマになるとしたら、このシーンはスローだな、とか、今カメラがパンした、とか。そういう細部まで映像として浮かんでしまうのです。

ここまで言ってると、世界の亀山モデルになるんじゃないかとまで思えてきました。
「恋する空港」がドラマ化、次に「あぽやん」が映画化、その間にまたまた「あぽやん」続編が描かれて…ドラマ化決定。だとか。

ちなみに、「世界の亀山モデル」…。テレビドラマと映画といえば、「世界の亀山モデル」が密やかに有名です。「世界の亀山モデル」といえば、言わずとしれたシャープのアクオスなどのテレビに貼られた国産モデルのブランド。三重の亀山工場で作られた国産モデルである、という称号なのですが…。

実は、映画でいう「世界の亀山モデル」って、シャープとは全く関係がないんですね。えと、テレビフリークの方ならすぐにお分かりかとは思うのですが、テレビドラマ黄金期にあった「ロングバケーション」だとか「あすなろ白書」だとかのプロデューサーとして馴染みのフジテレビの亀山千広プロデューサー。彼の立てたビジネスモデルに食って掛かった称号が「世界の亀山モデル」です。近年の「踊る大捜査線」シリーズで、テレビドラマから派生させて映画の劇場公開をおこないましたが、その史上に残るヒットの要因が、自社広告を含めたメディアミックス型の戦略にあったことから、こんな風に呼ばれるようになりました。

いまは、亀山プロデューサーのものでなくともフジテレビのものでなくとも、民放のテレビドラマから派生した映画を、「世界の亀山モデル」といいます。みんな模倣ですからね。つまり、今や映画の中身はともかく、ビジネスとして成り立ちさえすればいい、というのが世界の亀山モデル。脚本がつまらなくても、演出がイマイチでも、映画になっちゃうし、それなりに観客動員数もある(テレビでの自社CMなんかで話題性があると思い込んでしまう)、というのが「世界の亀山モデル」なんですねー。

余談はさておき。そういう意味でのチープさは、この「あぽやん」シリーズ2作を読む限りではないんです。「やっぱり面白い!」それだけです。私は好きです。
パイロットやスチュワーデス、せいぜい整備士さんまではドラマや映画、小説にもよく出てきますが、なかなか、航空会社の子会社である旅行会社のことまでは語られることのない世界なので、興味ある方にはぜひお勧めしたいと思います。

▼「あぽやん」

▼文庫本も発売されました(2010年10月10日追記)

▼「あぽやん2 恋する空港」

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飛行機の歴史がわかるバイブル

「飛行機の歴史」という絵本をご存知ですか?

昨年のクリスマスの時期に、絵本を紹介したのですが、その和書編にも登場した、「ひこうじょうのじどうしゃ」「とべ! ちいさいプロペラき」の作画をしている山本忠敬さんが、かかれた絵本です。

この本は私が大学生の時に買い、いまも大切に思う飛行機の歴史のバイブルなのです。刊行は1999年。山本忠敬さんは、絵本の版元では有名どころの福音館書店から数多くの乗り物の絵本を刊行しています。活動は、1958年から。1970年代には、本当に数多くの絵本を刊行し、私の年代では、乗り物の絵本といえば山本忠敬さんの絵といっても過言でないくらい、乗り物絵本の大家なのです。パトカー、消防車、トラック、新幹線…。こうした本は歯医者になんか行くと、子供のスペースに置かれていたりしますが、絵本は一度出されると本当に息が長く、こうした乗り物の絵本の多くが、いまもなお山本忠敬さんの絵本だったりします。

しかしこの「飛行機の歴史」。やはり、福音館書店から刊行されていて、飛行機の手書きの描写は、水彩の筆遣いが見て取れ、アナログ感たっぷりな色調で、これまでの山本忠敬さんの絵本のタッチではあるものの、何かが違う。いえ、絵が違うのではないです。違うところといえば、まず、価格が高い(笑)。そして、ページ数も多い。それから…、あんまり差し出がましくないですね。子供向けの「こうしましょう」「ああしましょう」「こうなのです」というような、教示的な内容でもありません。あと、飛行機の歴史が網羅されているその内容は、子供向けとは思えないくらい、充実していて、資料になるんですね。それで、大人でも没頭して読めるのです。

こんな絵本が本当に子供向けなのかといったら不謹慎だとは思うけれど、昔、人間が空を飛ぼうと夢見た時代が、彩色をもって書きおこされて、想像だけで昔にタイムスリップできてしまうような感覚になる。
漢字のひとつひとつに、ルビがふられているのをみて、あ、子供向けなんだった、と思うくらいなんです。

私にも重要な本というのはいくつかあります。
私の場合は頭の事情で、あまり知識が残らないので、想像力が膨らむものが重要なのですが、それでも、「航空知識のABC」のような本は、航空ファン、と名乗るには必須の本だったと思うし、パイロットが書いた本や、リンドバーグやサンテグジュペリの本、さらにはイカロス出版の本なんかも、好きではあるのですが、歴史のバイブル、といったら、この本に限ります。

まず、大空を飛ぶことを夢見た先人達の残した彫刻や神話の紹介から始まり、レオナルド・ダ・ヴィンチへ。そして熱気球や飛行船が飛んだ1780年代から、飛行船へ。そしてリリエンタールのグライダーからプロペラの時代へ。
ここからは、各飛行機や飛行艇、そして旅客機へと要所要所の飛行機が絵とかんたんなプロフィールつきで紹介されています。さらに、ジェット時代へ。大型旅客機はもちろん、ビジネスジェットや小型機も網羅しています。ワイドボディ機のたけくらべや胴体断面図など、資料価値も高いのです。
飛行機の歴史を見る上で、重要な飛行機や、出来事が凝縮されている、唯一無二の絵本はいかがですか?

最後に。
この本の「まえがき」にあった山本忠敬さんのことばのほうが、私の説明よりも分かりやすいので引用します。

40年前に(中略)、挿絵を描いたのがはじまりで、いつの間にか乗り物絵本作家になってしまった。どうせ乗り物絵本作家といわれるならば、徹底的に乗り物のことを調べてやろうと考えた。そして調べだしたら、乗り物の生い立ちがおもしろくて、おもしろくて。
調べながら、いろんな写真や図版をスケッチしてコレクションをしたのを年代順に並べてみると、時の流れやその形の違いや進歩していくのがみえてきて、あ、この後ろに歴史があるぞと感じた。

わたしは乗り物の歴史にも機械工学にも素人だが、いまから10年ほど前に飛行機を調べているうちに、いままでのような子どもの絵本ではなく、子どもも大人も楽しめる歴史の絵本ができるのではないかと考え、この飛行機の本ができた。これは歴史の専門書でも航空機械工学の専門書でもない、民間の旅客機を主体にした、空とぶ歴史の絵本だ。

「飛行機の歴史」(山本忠敬)

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嵐の中のパイロット 〜フェレット物語〜

ずっと探していた赤い箱に入った子供向け文学全集。「カラー版名作全集 少年少女世界の文学」というものなのですが、いざ押し入れから出てきたのはいいのですが、欠番がちらほら。あれから1年…。ヤフオクやらアマゾンのショップなどから探し出してきて、ちょっと奮発をしながら、とうとう全巻揃えてしまいました。1年に渡って狙いを定めながら、欠番を見つけては購入、の繰り返し…。7冊ほどですが、全部が揃うのに半年かかりました。

たまにこの文学全集の中から、忘れてしまった物語なんかを読んでみたりしています。先日はピーターパンを読みました。
ピーターパンは、いたずらっ子で、身勝手で、自慢屋さん。親と別れて、永遠に子供のままでいれるネバーランドに住んでいるのですが、ある日、街に住む兄弟のウェンディーとジョンとマイケルをネバーランドにつれてくるんですね。人間の子供でも妖精の粉を体にかけると空を飛べるようになるのですが、飛べるようになった3人の兄弟は、慣れない飛行で頭をぶつけたりしながらも、それが嬉しくって嬉しくって、友達に見せびらかそうとするんですね。
大人になってから童話を読むと、物語の中の子供があまりに無垢で、純真で、のびやかで。邪気すら無邪気に見えてしまうほど、とても清々しい気分になります。

さて、「フェレット物語 嵐の中のパイロット」なのですが、この物語は「かもめのジョナサン」で有名なリチャード・バックの小説。リチャード・バックは元空軍パイロットとあって、空を題材にした小説は、簡単なようで深く、深いようで簡単で、本当に面白い。このフェレット物語は、「海の救助隊」「二匹は人気作家」「大女優の恋」「名探偵の大発見」とこの「嵐の中のパイロット」の5作があって、リチャードバック自身が飼っているフェレットを観察しながら作った、というもの。

町から町へ物資を運ぶ女性パイロットのストーミィ。妖精たちの企てで、波乱のなか飛行をするのだけれど、なぜだかどんな困難もへこたれずに懸命に取り組むストーミィ。ストーミィの担当をしている妖精のバクスターは「もういいよ、そこれあきらめていいんだから!」ってな具合にストーミィを応援しているのですが、読んでいるこちらは、なんかストーミィの気分になってきちゃって、あきらめないで頑張れ! といつの間にか、思い入れも強くなっていくのです。

このストーミィ、ほんとにまっすぐな女の子のフェレットです。文中で、こんなことを言っていました。

空を飛ぶすばらしさを自分の中だけに閉じこめておくなんて、もったいなすぎるわ。飛ぶことをほんとうに愛しているからこそ、このすばらしさをみんなに伝えなくちゃいけないのよ。空を飛ぶ喜びを、鏡に映る自分の目の中にだけ見るなんて、つまらない。誰かの目の中にそれを見ると、ほんとうにうれしくなるわ。

「フェレット物語 嵐の中のパイロット」

これは、空を飛ぶ素晴らしさを知っているリチャードバックの言葉そのものだと思いますが、こうして物語という作品に飛ぶことの素晴らしさを詰め込んで、世に送ってくれる、先人達の素晴らしさに、ありがたさを感じ、リチャードバックの子供のような純真さに、心をうたれたのです。

大人が読む童話だと思います。操縦や管制とのやり取りは、たかだかフェレットの童話とはいえない、さすが元飛行士のリアリティ。ぜひ、一読をお勧めしたいと思います。

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飛行機がなぜ飛ぶか、実はよく分かっていない?!

この記事は、いただいたコメントを併せて読んでください。「ベルヌーイの定理」について、重要なコメントをいただいております。修正も考えましたが、誤りも含め、残すことにしました。
また、巻き添えにしてしまって申し訳ないのですが、当エール・ジャポンと共同運行をしているキネマ航空の博物館「揚力のはなし」では文献の紹介もあるので、こちらも面白いです。
http://kinema-airlines.movie.coocan.jp/museum.html
正直なところ「何がどうなって」の部分の理解がキャパシティを越えてしまって、このまま修正するよりもうちょっと別の本を読んで紹介したいなと思っています。

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飛行機好きのみなさん、「飛行機ってなんで飛ぶの?」と聞かれたとき、なんて説明していますか??

よく本では「揚力」や「ベルヌーイの定理」という言葉で説明していますが、わたしの場合は、ある機長の書いた本の説明が(私にとって)とても分かりやすかったので、人に説明する時にもそれを使って説明しています。
「水道の蛇口をひねって水を流して、そこにスプーンの曲がっている方を近づけると、水の方にスプーンが引き込まれるような感覚ってない?? 水にスプーンが吸い付くような…」とはじめます。本当に感じたことがあるかどうかは分かりませんが、なんとなく想像してもらえるようで「うんうん」と返ってきます。
そして、「蛇口から流れる水の周りに、他の空気よりも早く流れる空気が出来ているんだけれど、それの応用で飛んでいるんだよ」と続けます。「この2つの空気を飛行機の翼の上面を流れる空気だとすると、翼の上面と下面で空気の流れるスピードに差が出るんだけれど、その翼の上面と下面に流れるスピードが違うために、上面では圧力が低下して上に持ち上げられる作用(揚力)が起こる…」云々、と続けるのです。

少し前に「笑っていいとも!」のゲストに岩城滉一さんがゲストででていました。いくらタモリさんが好きとはいえ、さすがにわたしも「笑っていいとも!」を見れるほどではないのですが、その日はたまたま居合わせたんですよね。岩城滉一さんはバイクをはじめ多趣味で知られていますが、最近では曲芸飛行もされているそうなんです。陸海空、と制覇した男! なのだそうです。マニアックな話題でお客さんが静かになっていく中、さらに男の趣味の話になってゆきます。

ふと、タモリさんがこんなことを言いました。
「あのさ…飛行機が飛ぶってのは、翼の揚力云々カンヌンで、っちゅうのは分かるんだけれども、なんで背面飛行ができるの、あれ落っこちゃうんじゃない??」といった主旨のことを質問したのです。「そうそう!」と思っいますよね。だって、翼の曲面が上にあることで揚力を作り出しているはずの飛行機が、アクロバット飛行ではそれが間逆になってしまうのですから。
でも岩城滉一さんは「あれねぇ、背面飛行に入る直前に機首をクルっと上に向けるんです」とこう説明していました。私もまた「なるほど〜〜〜!」となるわけですね。タモリさんも「へぇ〜〜っ」と感心していました。

でも、ズルい。機首を上げてクルッと回転すれば落ちないそうだ、ということだけは分かったのですが、しばらくして理屈を知りたかったのに、操縦の技術的なことでかわされちゃった気がしてきます。背面のママしばらく飛び続けるアクロバットもありますよね? あれって一体どうなってるんだろう?? とか。頭がハテナになってる時、「いったんCMで〜す」ってなって、その話が途切れてしまいました。

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)

今日紹介する本は、2006年に刊行された新書でとてもヒットした本です。科学のほぼすべてが「仮説」で成り立っているということを説明している本です。そして、ちょっと横暴ですがこの本をまとめちゃうと、その仮説を疑うことで自分の思考力を鍛えよう、と言っている内容の本だと思います。結局、哲学の本だったというか…。アインシュタインの相対性理論や、ターウィンの進化論などなど、世の中に「定説」としてあるものを引き合いに出しながら説明していたり、素粒子に関しても科学のむずかしさを微塵も感じさせないあたり、評価すべきところが多いと思う。

飛行機とは関係のない本に見えますが、この中に「飛行機はなぜ飛ぶのか? じつはよく分かっていない」という章があります。そこでの解説を読むと、あら不思議…。飛行機が飛ぶ理屈ってちょっとおかしいんだ、と思うのです。
揚力の前提というのは「翼の上面は弧になっていて、下面よりも距離(長さ)が長いの。飛行機が前進すると、翼に空気がぶつかるでしょ。そこをスタート地点だとすると、空気はふたてに分かれるよね。翼の上に行った空気は弧の分、距離が長いので速いスピードで駆け抜けることになる」ってことですよね?
この理屈だと、ひとつ重要なことが抜け落ちてるんです。

そもそも、なんで上と下でスピードが違うか? それは、ベルヌーイの定理での、上面と下面の距離(長さ)が違うから…云々ということでしたけれど、それって同じスタート地点をもった空気が、同じゴール地点に同じタイミングで到着することが前提となっています。けれど、同じタイミングでゴールして合流するということが、どうして言えるのか、そこについての立証がないのだそうです。さらには、風洞実験をしても、実は上下に分かれた空気は同時には合流していない、ということが分かっています。
「ベルヌーイの定理」というものが、同時に合流することが前提となっている説なので、飛行機が飛ぶ理屈を「ベルヌーイの定理」”だけ”では説明できないことになってしまうのです。

しかし、別の実験を重ねて確実に分かっているのは、翼の上を通った空気の方がやっぱり早いということです。これはだけ確かなこと、なのらしい。

空中を、人間がコントロールして飛ばすものの中には野球のボールがありますよね。配球にはストレートの他にも、変化球があります。変化球は皆さんが知っているように、ボールに回転をつけて飛ばすわけです。すると回転したボールによって、ボールの周りには意図的にゆがめられた流れの空気ができます。
この流れ、ボールの回転につられて上と下に別な流れの空気が生まれて、揚力が働いていることになります。変化球も「ベルヌーイの定理」ということになります。でも野球のボール自体は回転していますよね…。飛行機は回転なんかしていません。

では、航空力学の専門家は飛行機が飛ぶ仕組みをどう考えているのかが不思議ですよね…。それについては「飛行機は渦で飛ぶ」というように考えているらしいのです。さらにそれがなぜかというと、飛行機が空を飛んだ後に、翼の後ろには渦ができるということは風洞実験でも実証済みなのです。渦ができている、ということこそがボールの回転と同じような運動が翼に起こっている、と仮定しているということです。

以上ここまでが、この本で紹介されているお話(だから「99.9%は仮説」なのだ、と)。

一方で、この竹内薫さんの本で書かれていることは、物理学者でデビッド・アンダーソンさんが2001年に発表した「Understanding Flight」という本で発表しています。この本では、飛行機が飛ぶのは、ニュートンの運動の法則で説明できる、といっているのです。

Understanding Flight, Second Edition

デビッド・アンダーソンさんがどんな風に説明したかというと、揚力が発生するのは、コアンダ効果というもので、揚力が発生すると説明しました。コアンダ効果というのは、流れの中に物を置くと、その物に貼り付いて流れ変える性質のことで、発明家のコアンダさんがジェットエンジンの実験中に発見したもの。
たとえば、蛇口からひねって流れている水に、冒頭の説明のようにスプーンを近づけます。
水はスプーンの曲がった縁を伝って、流れる方向を変えますね。同時に、水の方向へ引き込まれる力が出てくる。この、水側に引き込まれるのが、空でいうところの揚力ということ。
私が友達にしている説明なのですが、あのままでは間違っているんですね。蛇口の例えまではOKだと思います。でも、上下の圧力差は、流れるスピード差によって揚力が生まれる、のではなく、もともと圧力差があるから、上下のスピードが違う、というもの。正しくは、空気には粘性があって、流れる空気の中に置かれた物体は、その粘性に巻き込まれるようなかたちで渦が発生し、揚力を発生させていたのです。

わかりますか??
言葉の問題もあるかもしれませんが、「揚力」についての根本の考え方は違うのです。おおざっぱに言ってしまえば、それが解釈次第で説明が変わる、とも言えてむずかしいのですが、ともかく「そうだったのか!」と思わせるのです。

私自身、揚力についての説明を、あちこちで目にしているうちに、自分の中での解釈が、揚力が生まれるのは上下のスピード差(ベルヌーイ的な)と、微妙に間違ってきていたのです。実際に飛行機が飛ぶのを説明できるのは、コアンダ効果だったのです。
コアンダ効果(=流れの中に物体を置いたときにその物体に沿って流れの向きが変わる粘性の有る流体の性質のこと by wikipedia)のように、大きなエネルギーの方に巻き付かれていく、という…、私自身がニュートンの力学の証明みたいな気が…。

しかし、「飛行機がなぜ飛ぶかは説明できない」というのは、無茶がありますね。とても面白い本だと思いますが。
そんな科学的思考回路なんてどうでもいいって言えば、それで片付いちゃうし、そんなのは都市伝説だ、といえば、それはそれまで。だけれど、なぜ飛ぶか? の実証作業や科学的回路でのひも解き作業がなければ、今のような文明の発達もない。
この本を読んで分かりましたが、科学はそもそも哲学であって、その哲学的な思考回路の説明のひとつひとつが定理や、法則や、理論といった「科学」なんだと思うのです。その科学的思考の元では、飛行機がなぜ飛ぶのか説明できないにしても、どういう仕組みでどう作ったら良いのか、というのは、科学的思考の説明段階でも導きだすことは出来るし、これまでの経験則で説明が出来るものです。また、どうしたらどうなる、という計算だって出来ているのです。

仮説がいろんな物事の根幹を支えていることは分かりました。
飛行機は安全。大丈夫!

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ルシアン・ネイハム「シャドー81」を読んで(B777さんより寄稿)

※当原稿は、2010年1月3日に配信した、武田一男さんの「航空小説の楽しみ」に対する、B777さんからのレスポンスです。
「航空小説の楽しみ」には、誰でもがたのしめる航空小説の素敵なエッセンスがたくさん詰まっていますので、よろしければこちらも併せてご覧ください!

シャドー81 (ハヤカワ文庫NV)
「シャドー81」ルシアン ネイハム,中野 圭二訳

・軍隊が出て来る、それも大概がアメリカ軍。
・最新鋭の戦闘機やミサイルが旅客機を損傷または爆破する。(実際に存在するかは不明)
・「神の名の下」や「世界平和」という偽りの戯言で攻撃を始める。
・本のキャッチコピーで、「パニック」「スリル」「アクション」の3つが入る。

 突然ではあるが、航空小説は大概こんな感じで描かれているであろう。云っておくが、航空小説を茶化しているのではない。特にパニックものは、危機感を持てない現代の日本にとっては、良い刺激を与えるものである。航空小説を読み出したのは、ここ最近なので偉そうに云えないが、紹介されてスカッ!と読めたのが航空ファンの必読書「シャドー81」である。「シャドー81」の素晴らしいところは、他の航空小説と違って誰も殺さない。それと爆発などで機体が損傷して負傷者や死傷者が出る、所謂、血みどろの話は一切ない。そう言う類いの話は好きではないので、最近読んだ本で云えば「霧のソレア」や「超音速漂流」は、好きになれない。

 ちなみに「霧のソレア」はスリル感はあまり感じられないが、B747-200Bの操縦系統の描写が細かくテクニカルな面に於いては素晴らしい。舞台となるB747-200Bはクラシック・ジャンボと云われる機種であるが、本の中ではFMS(Flight Management System)が搭載されている。読んでいておかしい…と思いつつも、知り合いに聞くとクラシック・ジャンボにはFMSが搭載されたことはないとのこと。テクニカルな面をご存知な方は一読されては如何だろうか。また小説の中と云えども日本の自衛隊は素晴らしいと感じた作品でもあった。最後は全てが無かったかのように揉み消された政治的な部分で物語が終わるのが、如何にも日米同盟の真髄を見たかのような感があった。

 「超音速漂流」はパニック航空小説だが、ホラー小説を読んでいるかのように思えて、
描写が非常にリアル感を醸し出している。ストラトン797という音速旅客機なのだが、ジャンボ機とコンコルドを足して二で割った感じの旅客機である。高度62000フィートで航行中に、アメリカの戦闘機が発射したミサイルが本来の標的を外して、ストラトンの胴体を突き抜け、それによって機体内の気圧が急激に減圧され乗客は酸欠による脳損傷を起こしゾンビ化する。そこで意識を回復した一人の客室乗務員がゾンビ化した乗客の青年に鉄の棒で殴り殺され、同じく一人の乗客がゾンビ化しつつある家族と共に、貫通した胴体から身を投げる。読んでいてその光景を浮かべると、さながらホラー映画である。ハッキリ云って読後感は満たされなかった。

 話を戻すが、「シャドー81」では誰も傷害されていないし、ましてや誰も殺されていない。最初から最後までスリルを味わえる小説であることは間違いない。パニックという面はそれほど感じられない。アクション面はスリル面と合い間っているので感じられないが、スリル同様最後までアクション感はある。

 本書はベトナム戦争を舞台にした軍人としてのプライドと誇りを掛けた男達の話である。アメリカ空軍のグランド少将が極秘裏に開発された垂直離着陸TX75Eのパイロットとして北ベトナムを攻撃し、任務完了間近、行方不明に・・・そしてエンコ中将指揮の下、捜査を始めるが発見されない。それより数週間前、アメリカのミステリ作家デントナーが大型船と小型船を香港で購入し、南シナ海のパラセル諸島の小島に到着し小型船で香港に引き返す。ほぼ同時に行方不明として捜索対象となっていたグランド少将は、北ベトナム攻撃中に味方を巻いてTX75Eを強奪したのである。そして大型船が停泊している小島に向かい、戦闘機を船に乗せて一路、北米大陸へ向かう。数日後には到着し戦闘機でその場を立ち去ることに。時を同じくしてロサンゼルス国際空港を出発したパシフィック・グローバル航空のB747が離陸後、グラント少将が操縦するTX75EがB747の後尾に付き、パイロットにハイジャックを宣言する。

 アメリカの威信を掛けた戦争であると同時に、最新鋭の戦闘機TX75Eの開発中止が決まり、その責任者であるアメリカ空軍大将が中止によってプライドと誇りを傷付けられ恨みを晴らすべく、若手パイロットである大尉を取り込んでジャンボ機をハイジャックする。ハイジャックと言えば、犯人が機内に乗り込んで乗客を人質にして銃を振り回し、挙句の果てに射殺するというストーリーを想像させるが、本書は全く違ったハイジャックを行なう。TX75Eを操縦する大尉がジャンボ機の背後にピッタリとつけて、且つ同じところを旋回させる。そしてハイジャックされているという恐怖心を煽る為に、ジャンボ機を太平洋上の低い高度で飛行させ、後方を飛行しているTX75Eからミサイルをジャンボ機の前方の海面に打ち込む。戦闘機の姿は見えないが、逆に見えないだけに精神的に追い込み、恐怖心をより増幅させる方法としては抜群である。この作戦の首謀者である大将は、アメリカ本土で着々と遂行していく。さすが軍人と頷けるものである。ここであまり詳細に亘って書いては、未だ読まれていない方に申し訳ないので省略する。

 TX75Eは架空の戦闘機であり垂直離着陸機である。当初ハリヤーに似ている戦闘機と思ったが、大尉がジャンボ機に向かって飛行する時に、コックピットに食料品を積み込むシーンがある。それだけの物を積み込む程のスペースがあるとは思えず、頭の中で思いついたのがステルス爆撃機であった。しかしそれでは大型船に載せられない。航行中にアメリカ海軍に怪しまれるだけである。実際に大尉が油断してかアメリカの戦艦が近付いて来て、怪しまれるシーンがあるが結局それをやり過すことになる。粗雑なイメージだが、ステルスとラプターを足して二で割って、そこにハリヤーを少し掛けた感じと云えば云いのだろうか。

 登場人物も非常に面白い。大尉の自己中心的な価値観、作戦首謀者である大将の物静かだが気高いプライド。云うに及ばず、どちらも一匹狼だが何故か合い間見える感じに違和感を覚える。大尉が大将に唆されたのか分からないが、促されて作戦の実行部隊として遂行するのだが、パイロットとしての腕が良いのは承知のことだが、やはり軍人である。指示や命令に絶対服従で確実にこなして行く様は、流石と頷く。大将は身分を逸脱せず冷静沈着で粛々と実行に移し、完璧なアリバイを作っていく。そして驚きの格好をするのだが、最初は「誰?」と思わせ、軽く読み流す感じだったのだが、後で後悔した。そして作戦を順調に遂行して行くのだが、最後辺りで大尉がベトナムで捕虜になるという作戦変更を言われる。当然大尉は騙されたと思い反発するのだが、大将が懇々と説明し挙句の果てには上官としての命令により、泣く泣く承諾し捕らわれることになる。そして大尉は釈放され、アメリカ国民の英雄として賞賛され、作戦が完結する。

 どちらが善で、どちらが悪かは読み手によって変わるだろうが、私はどちらでもない。どちらも正義の名の下で行なわれている。戦闘機を略奪しハイジャックするのが正義なのかと言われれば、決して正義では無い。平和と自由を脅かす存在である以上、アメリカ政府は決して黙殺する訳がない。大佐から言わせれば、平和と自由と秩序を守る為に戦闘機を開発したが、様々な事情で中止を判断した政府に憤りがあったのだろうし、何よりアメリカ軍人として自らの力を世界に誇示、いや鼓舞する為には不可欠と考え、それがアメリカの為と思ったのだろう。軍人としての絶対的な規律を無視し、その力を利用して反旗を翻した。これは絶対許されることではない。しかし、国を守ると言う意識が政治家と違い現場にいる軍人の方がはるかに強い。上官の命令は絶対であるが、その上官である政府の命令に従わず、立場を利用して作戦を遂行させるその気概に、私は不思議と納得してしまった。

 何度も言うが、この作戦は一切人を殺傷していない。人を傷つけず恨みを晴らした。私はそれに感動した。軍事という脅威を振りかざしはしたが、天晴れとはこういうことを言うのだろう。善悪は抜きにして素直に読めば、本書は最高に面白い。因みに私は仕事が終われば喫茶店で黙々と読み耽り時計を見れば午後9時…。慌てて家に帰れば嫁さんに角と牙が生えていたことが幾度もあった。

B777

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世界おもしろヒコーキ旅

こんにちわ。
だいぶ長い間、アイスランドの噴火で世界の空港が混乱していましたね。
足止め期間が長引いている、ホテルがとれない、資金がつきそうだ、現地では鉄道やバスの切符も手に入らず、タクシーが大繁盛。日本では旅行へ行けない、国へ帰れない渡航者、シャケが日本に空輸されない…、などなど。ビジネスマンなら焦りも相当なものでしょうね…。
しかし、わたしが一番感心したのは、ロッテルダムに入っていたエストニアの3人のビジネスマンの話です。ホテルに泊まっても高いし、鉄道とバスも完売。そんな彼らの選択は、995ユーロの安い中古車を買って自力で陸ルート。2250km先のエストニアを目指す、というもの。ひとり4万円ちょっとで帰れるわけです!
おそらくは必死になって考えた選択で、現実的な決断なんだろうけれども、その帰国への道のりに映画のような楽しさ(まさにロード・ムービー!)があったらいいな、なとど思わずにはいられないのは不謹慎でしょうかね。噴火という地球の生命力。自然に挑んだ飛行機。そこで生活しているわたしたち人間。毎日あたまにいろんな物語を妄想しています。
空港の閉鎖によって混乱しているニュースは伝わってきますが、アイスランドの人はどんな風に生活しているのでしょうか?

さて、いまそんな自由な飛行機旅行を想像している場合ではないからこそ、紹介したいこの1冊。
チャーリィ古庄さんの「世界おもしろヒコーキ旅」。
飛行機好きなら一度は経験してみたい、そんな飛行機を舞台とした文庫本サイズの旅行カタログ。いえ、旅行カタログとしての本ではないと思うんです。ただ、こうして1冊の本にまとまっていると、世界遺産が1冊でわかる、みたいな手軽さがあるのです。

世界おもしろヒコーキ旅 (えい文庫 178)

スイスへはユンカースJu52に乗りに行く旅。このエピソードは、どういう人たちが集まって、観光飛行しているのかが描かれていたり、月刊エアラインでおなじみの著者さんだけあって、そのディティールや歴史も分かりやすい表現で盛り込まれている。
それから、DC6のエンジン音を撮りに行く旅(実際は著者が「ALLWAYS 続・三丁目の夕日」のコーディネータとして同行)、ハワイへ体験操縦しに行く、といったものでは、なんだか耳にDC6のブルブルブルブル、という音がかすったかのような気持ちになったり。

さっき旅行カタログだなんて言ったけれど、旅行カタログって、読んでいるだけでも一瞬はその観光地に行った気になって、あれしたい、これしたい、と日程やルートを組んでいくわけですよね。パッケージ旅行やツアーなんかは、逆にシビアに日程の行間を読みながら、こうしてああするんだ、ってイメージするし、自分が行ったことがある先の、パッケージツアーのカタログをみた場合は、行った先々でみた景色を思い出しながらもう一度感動を味わったり、感傷にひたったりする。
そういう旅行カタログのように、個人個人のイメージが広げられる本、というのかな。写真だけでは広がらないエピソードとディティールがあるからこそ、わくわくするんだ。

たとえば、大型機も離着陸するホノルル空港に、小型機で乗り付けることもできるというエピソードを著者の笑顔の写真と一緒に読んでいると、こちらも目の前にブルー・オーシャンが広がったりなんかする。
かとおもえば、マッキンレーに登山家を運ぶ飛行機のエピゾードを読んでいると、その自然の描写のおかげで、目の前は一面白銀の世界が広がったりもする。
そして、モニュメントバレーの礫漠の赤さを思い出しながら著者さんが飛行機で空を飛ぶ姿を読んでいると、青・白・赤の原色の世界が錯綜して、心はどっかに飛んでしまうほど!

ビーチスレスレに飛行機が降りてくる空港(セント・マーティン)、プラーベートジェットに乗ってみる、それからニューヨークの摩天楼をヘリで飛ぶ(しかも背筋を伸ばし、デキるビジネスマンを気取って、というプランつき)、飛行艇に乗る、おなじみだけれど砂漠にある飛行機の中古屋さんに行ってみる、だとかB727に住むおじさんを尋ねるだとか…。

もちろん、飛行機ファンにはおなじみのものは多いのだけれど、単なる著者さんの旅行記ではなく、旅行カタログとして機能するあたり、オススメの1冊です。

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千葉県人は飛行機好き!?「オールフライトニッポン」

千葉県人って、凄く地味だと思いませんか…。房総半島の先っちょには南房総という、温暖な気候でほんの少しだけ名の知れたところがあります。温暖な気候のところにはラテン系の血が流れるものなんじゃないかな、なんて思ったりしますが、そんなにカラっとした気質でもなさそうだし、なんだか明るさに欠けるような気がするんですよね。
例えば、神奈川県だったら海沿いは、マリンスポーツなんかがメジャーですが、千葉県の場合は隠れスポットとして狭い範囲で知られる程度というんですかね。「海行こうぜ!」となったら、たいてい湘南・鎌倉あたりになりますし、「御宿(おんじゅく)行こうぜ!」「勝浦行こうぜ!」みたいなノリにはなりません…。いつだってマイナー。
べつに頼みもしないのにディズニーランドが、「東京ディズニーランド」となってしまったり、成田空港が「新東京国際空港」だったり、と。そうすること今度は「東京じゃないくせに生意気な」的な扱いをされたりと、踏んだり蹴ったりですよ。特に私の住む市川市というところは、東京駅までが15km〜20kmくらいの場所で、電車で20分弱ですかね。そうなると、学校も仕事も、みんな当たり前のように都内へ出ますし、あるいは他府県から都内への通勤者がこしてきたりして、市が独自の発展をしないんですよね。働き盛りの30〜40代の人は平日も休日も、市内で過ごす時間は少ないんじゃないでしょうかね。
で、そうなると、今度は千葉の中でもちょっとしたくくりが出来てきたりするわけです。「千葉都民」とか。余計なお世話ですよね。こっちから千葉都民と名乗ってるわけもないのに、わざわざ都民みたいな顔をしてるとおもわれるのもうんざり(ただ…キムタクのように千葉県育ちなのにも関わらず、いつの間にかプロフィールが東京出身になっているという、脱北者も大勢いますけどね)。
それから千葉県にはこれといった観光スポットがないんですよね(なにせ、ディズニーランドは「東京ディズニーランド」ですから)。そして、今後観光の発展もなさそうな気がしてならない(森田健作なんてエセだ!)。
いや、いいんです、地味でも。ただ、なんか存在感みたいなのが欲しいなとは思うんですよ!
それから、ちょっと前に流行ったアイデンティティ、とでもいうんですかね。県民ショーが流行ったりしていましたが、アレがうらやましくってですね…「そうそう! 千葉ってそうなのよ!」という地元共通の何かが欲しい、なんてことも思ったりします。

しかしそんな私にもひとつだけ誇りというか、千葉県ならでは、と思い込んでることがあります。それは…飛行機ファン(潜在ファン含む)がすんごい多いのではないかということ! だって、日本の空の玄関口・成田空港があるじゃないですか。東京湾には羽田空港があるじゃないですか! 両方共に離発着回数抜群、千葉県で空を眺めれば、ほとんどの場所で飛行機が眺められるわけです。

その証拠に…、この2冊の本に登場する噺家さん3人は、みな千葉県出身! そして、私も千葉県人(肩を並べるなって?)! というわけで、今日は「オールフライトニッポン」と「ANAの女性たち―オールフライトニッポン(2)」を紹介します。

オールフライトニッポン
「オールフライトニッポン」柳家 三太楼,柳家 三之助

まずは、「オールフライトニッポン」。
刊行間もなく一般書店で見かけて購入したのですが、これがこれまでに読んだことのないタイプの飛行機関連本でブックスフジに入るのがちょっとだけ遅かったように思います。
落語家の柳家三太楼さんと柳家三之助さんがパーソナリティを務めながら、ゲストを迎えてインタビューしています。国内線のパイロットに国際線のパイロット、それから整備士さん合わせて3名のゲスト。本を読みながらにして、本当に噺家さんの声を聞いているかのように、テンポよく話が進んでゆくのです。
そう! ニッポン放送のおなじみ「オールナイトニッポン」を想像してみてください。「ぱぁ〜パラッパ♪ パッパララ〜 タッタラッ♪」そんなノリではじまります。若い世代の人だとちょっと分からないかもしれませんけれど(笑)。
柳家三之助さんは、飛行機ファンにはおなじみですよね。よく月刊エアラインにも登場していました。そんな三之助さんですから、ゲストの話を聞き出すのも思いっきりファン目線。そして深夜ラジオの、あのどこまでもマニアックな方向に、分かる人にだけ分かればいいや、というノリで進行していくので、読んでいる方も「うんうん!」「分かる!」「そうっ!!」ってな感じで、ファンならスカーーーッと、するはず。全編インタビュー形式ですが、備考欄が常にあって、そこで解説もしています。ちょうど、邦画のDVD特典映像のような感じですかね。本編を見ながら役者と監督が、この時はこうだったとかって回想しながらの解説を特典映像にしている、みたいな…。あるいは、3チャンネル放送とでも言いましょうか。副音声として備考が入っているのです。ともかく噺家さんたちの話についてけなかったとしても、ちゃんと三之助さんのフォローが懇切丁寧にはいっているのです。
飛行機ファン目線の質問だから、かなり具体的に話を聞き込んでいます。それは技術的な話だとか他の本を読めば分かるようなことではなくって、感覚的なことを良く聞いています。ゲストで質問される側も気分がノッて、つい話し込んじゃった、という雰囲気が伝わってくる、面白い本ですね。
中に出てくる整備士さんとの会話のところで、操縦士の腕前を見ることもあるというエピソードがあります。それで、三太楼さんがドラマ「GOOD LUCK!!」の第1回のように尻もちを(コパイ役のキムタクが着陸で機首を上げ過ぎて機体の尾部を滑走路にこすってしまい、整備士役の柴咲コウに「ヘッタクソ!」とがなられるシーンがある)するという話をふるのですが、そこで「申し訳ない」というひとも入れば、「シラを切っちゃう人もいる」と。
この「シラを切っちゃう人もいる」に代表されるように、なんだか発言が生々しくって読んでいて楽しいんですよね。生身の言葉を聞いているようで。人が書き下ろすものだと、この辺りがきれいに整形されてしまうのですが、深夜に放送される「オールナイトニッポン」が面白いのと同じように、この本は垂れ流しのようで(もちろん手は入っていると思うのですが、リズム感がそのままという意味で)面白いのです!
それから、飛行機のドラマやツウの情報など飛行機ファンならではのエッセンスもあちらこちらにちりばめられているので、ごく最近飛行機ファンになったという方がいらっしゃれば、この本を入門書代わりにすると、楽しく余計な知識が身に付いて良いと思いますよ。

ANAの女性たち―オールフライトニッポン〈2〉
「ANAの女性たち―オールフライトニッポン(2)」三遊亭 遊雀,柳家 三之助

いま紹介した「オールフライトニッポン」は、2006年1月に刊行されたものですが、これから紹介する「ANAの女性たち―オールフライトニッポン(2)」はこの続編として、2008年11月に刊行されたものです。ちょうど映画「ハッピーフライト」が公開される直前の、「ハッピーフライト」関連本バブルの最中のことでした。
客室乗務員と広報部を兼務する秋山さん(表紙にも乗っている方で、ANAが取材協力している雑誌や書籍でもこの方の顔写真はよく見かけます)をはじめ、ステーションコントロール部(運航支援者=ディスパッチャー(運行管理者)の卵)、ラインハンドリング部(=グランドハンドリング)所属、CAさん、計4名に話を聞いています。タイトルの通り、ANAの関連子会社を含めた、女性陣とのお話。
CAさんの話はこの本でなくとも見聞きできるものですけれど、運航支援やグラハンの仕事についている人の話は必見ですね。ただ、この続編のパーソナリティは、三遊亭遊雀さんと、「オールフライトニッポン」から引き続き柳家三之助さんが務めていて、相変わらずテンポが良くて楽しく読める。
ただひとつ…気になったのは。話を聞く相手がきれいめな女性だからなのか、ちょっとマニアック度というか、「ソコはどうしてなの?」という「なぜなに」の質問の突っ込みどころが、浅いところで終わってしまっているようなのが残念だったかなぁ…。全体的にアッサリしている感じ。
大げさにいっちゃうと、楽しい飲み会になればいいかなぁ、と思って臨んだ合コンだったが、想像以上にきれいな女性が来ちゃって、くだけた会話が出来ずに「おいおい、マジかよ…、ラッキーだけど…」みたいな妙な緊張感のまま、おひらきになってしまった、みたいなね。
もうちょっと男臭い方が、趣味の本としては面白いんだけれど…。もうちょっとグイグイかじりついて聞いて欲しかったよ! 噺家さんのシャイな一面を見てしまったようで、あ〜あ、が残ってしまった。

というわけで、2冊紹介しました。
いずれも楽しいですよ。類書がないのでね、おススメします!

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ブックレビュー:「スカイジャック」

今年の3日に新年一発目のコンテンツ、武田一男さんの寄稿、「航空小説のたのしみ」で私宛に紹介いただいた「スカイジャック」のレビューを掲載します。
もし、この「航空小説のたのしみ」を未読の方がいらっしゃったら、ぜひ一読いただくことをおすすめいたします。このブログに原稿を寄稿してくださっているスタッフに宛てたものですが、読むべき航空小説のエッセンスがふんだんに盛り込まれている楽しいコラムでした。

私に推薦していただいた航空小説は、3冊。「かもめのジョナサン」でおなじみのリチャード・バックの「フェレット物語 嵐の中のパイロット」、アーサー・ヘイリーの「大空港」(上下巻)、そして今日紹介する「スカイジャック」。

「航空小説のたのしみ」で武田さんがおっしゃっていた通り、「フェレット物語 嵐の中のパイロット」だけは読んだことがある。そしていつかレビューを掲載しなきゃ、なんて思っていた中での、あの紹介。お正月の寒い中、お風呂で思案を巡らせる武田さんの姿を思い浮かべ、「くっそー! やられた!!」と笑いました。
そして、もう1冊の「大空港」は、上下巻の大作とあって(しかも、なぜか上巻だけを無くしてしまい、武田さんご本人にお借りしました)、いまだ読み終えていません。
なぜ「スカイジャック」になったかといえば、私宛の最後に「この辺で手を打ってこの小説、一度読んでみますか?」などと、挑発されたからに他なりません!

さて、そんな「スカイジャック」の話題に入る前に、想い出話を。
むか〜し、「こちらブルームーン探偵社」というアメリカのテレビドラマを、NHKで放送していたのをご存知の方っていますか? 調べてみると、1986年4月から55話が放送されていたらしいのですが、当時の私は10歳。よくもまぁ、こんな当時のどーでもいい記憶が残っているもんだ、と自分でも呆れるけれど、そのドラマがはじまるのを、母と妹と、夜な夜な楽しみにしていたものです。「こちらブルームーン探偵社」がはじまっちゃう、と放送時間に合わせて、お風呂に入っていたのを思い出しました。
「スカイジャック」を読まなければ、「こちらブルームーン探偵社」というドラマの存在なんか、絶対に思い出さなかったに違いない。しかも「こちらブルームーン探偵社」、我ながら見事なほど完璧にタイトルを思い出し、巨大で青い月の映像と、ネオン風のオープニングまで頭をよぎった。
それもそのはず。「スカイジャック」は小説ながら、ドラマ「こちらブルームーン探偵社」とテイストがそっくり。

その「こちらブルームーン探偵社」は、金髪で頭の切れる探偵社の社長・マディと、とにかくよく喋るデビット(なんと! 当時は知らなかったが、ブルース・ウィルスが演じていて、このドラマは彼の出世作だとか…)のドタバタなサスペンスコメディ。マディは、金髪ウェイビーが子供ながらに印象深く、その印象通り、劇中でも美人でスタイルもよく、元モデルといった経歴の設定。悠々自適な将来を夢みたものの、運命のいたずらで、赤字続きの探偵社を背負うことに…。
一方の「スカイジャック」。こちらはベレッカーとアニーの”元”夫婦のサスペンスコメディ。ベレッカーの華やかな時代は歴史ある法律事務所で一流の仕事をこなし、アニーを秘書に、そして妻として生活を送っていたが、その法律事務所時代にとある婦人とのスキャンダルが報じられ、事務所も結婚生活からも放り出されてしまうというイワクつき。いかにも「ダメ男」なベレッカーは、個人事務所を構えてはいるものの、やはりそれは火の車で、むかしのよしみで、アニーに事務所を手伝ってもらうしかなくなってしまう。

両方に共通するのは、事務所を構えてはいるものの、いつでも傾きかけているということ。そして相手役(相棒役!)を務める女性が超美人で、勝ち気。さらには主役の男性はお調子者で女性には目がない。そのおちゃらけさえなければ、カッコいいのに…、ということ。それからその男女共に好奇心旺盛で、あれこれと首を突っ込むタチ。事件に自ら巻き込まれていくきっかけを作るのは、いつだっておちゃらけた男の方だけれど、女の方も女の方で、懐疑的でイヤイヤながらもそこに相乗りしちゃうということ。それから、それから! いつ結ばれてもおかしくないふたりが、いつものごとくお互いの負けん気でケンカになり、つかず離れず…(腐れ縁ともいう)。こんな男女が繰り広げるやり取りといったら、それはもうやかましい! のひとこと。終始、てんやわんやの騒動で物語は進んでいくのです。

スカイジャック (角川文庫)
「スカイジャック」(角川文庫)Tony Kenrick,上田 公子訳

360人を乗せたジャンボ機が、突如誘拐されてしまう。犯人と思われるところからは、2500万ドルのダイヤを要求されるという、壮大なハイジャック事件が起こったのだ。
この事件の報奨金は10万ドル。経営が逼迫し、好奇心旺盛なベレッカーとアニーがこの難解な事件にのめり込んでゆくのは、至極当然のこと。
行方をくらましたあの巨大な旅客機が一体どこへ行ったのか? ゴルフをしながら思案するベレッカー。どうやってもB747が隠せる条件の場所が見つからない…。
一方のアニーは友達にユニフォームを借りて、スチュワーデスに扮し、空港で聞き込み調査をするつもりが飛行機に乗り込んでしまったり…。お客どころか、クルーまでもが本物と思い込み、機内放送までもさせられることに。こんな感じで、航空ファンをケタケタ笑わせてくれる出来事が盛りだくさん。
それから、ドタバタ劇だけではなく、パイロットがどうして、飛行機乗りになったのか? 美人なスチュワーデスが、なぜスチュワーデスという職を手にしたのか、荷物係員もどうしてその仕事をしているのか? そういった登場人物のヒューマンドラマもありがちだけれどしっかりとしていて映画のようで面白い。
B747がどこへ行ってしまったのか? その最大のミステリーが、常に想像を巡らせ、飽きることなく、最後のどんでん返しの顛末まで続くのです。
ちなみに、「やかましい!」と思わせる男女のやり取りは、前半の1/4くらいまでで、それ以降は「ほんとうにどこへ行っちゃたんだろう…ジャンボ機?」と、頭が物語にのめり込んでしまう。もちろん、その随所にベレッカーとアニーの掛け合いは織り込まれて入るのだけれど、前半を通り越すと、その「やかましさ」がどこかにいってしまい、途中からその賑やかなやり取りが、いいリズムになっているのを、自然と感じ取ることが出来てしまうのです。
男女の掛け合いは、予定調和なのだけれど、このトリックは読んでいて本当に「やられた!」と感じるのです。

これだけのスケールの大きい物語、連載ドラマになったら、どれだけ楽しいか? そんなことを思いました。

著者のトニー・ケンリックは1935年にオーストラリアはシドニーで生まれました。
ほかの作品を読んだことはないのですが、コメディタッチの作品はこの著者の作風なのだそう。
ドタバタのコメディ劇調の物語は、好き嫌いが分かれることですが、「航空小説」としてこんなにユーモア溢れる物語は、あまり見たことがありません。それに、ジャンボ機が失踪する、というトリックもなかなか見事なもの。航空小説をお探しの方、必見の一冊です。

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おばあさんのひこうき

ブログをやったり、とか。楽しいですよ〜。
なにが、って聞かれてしまうと困っちゃうけれど、「ああしたい、こうしたい」と考えてみたりして。
ただ書くのは、もしかしたらそんなに楽しくないかも。でもひとつ楽しいなと思えるのは、何を書いたらいいか分かんないときに、音楽をかけてリズムに乗ったりして、こうやってパソコンのキーボードをパチパチ打っていると、ピアノを弾いてるみたいな気分になる時があるんだよね。でもって、リターンキーでシンバル、パーンッ! みたいな(笑)。こうなったらもうノリノリですね、気分だけは! なにを書いてるんだか分かんないけど、どんどん文字が増えてゆく〜。
なかなか思うようにはいかないのだけれど、なんだか楽しい!
よくよく考えたら、こんな恥をちょくちょく人に見せるなんて、と自分でも思うけど、明日、新しい記事で上書きされればクリアってことで、お許しください!

「おばあさんのひこうき」佐藤さとる(作)/村上 勉(絵)

さて、今回紹介するのはそんなノリでいま決まった「おばあさんのひこうき」です。
「ひこうき」というタイトルに惹かれて買った、いわば「タイトル買い」の1冊ですが、なかなかのヒットです。先日から子供向けの本の紹介が続いてしまいますが、今回も童話になります。
つくることって、なんなんでしょうね?
物語を作る、ということについて作者の佐藤さとるさんがまえがきでこのように紹介しています。

おはなしを つくるのは、あみものをあむのに よく にています。
おはなしは、みんなが しっている ことばを ペンをつかって、ひとつひとつ つないでいきます。
ちょうど、あみぼうを つかって、ひとめ ひとめ、けいとを あんでいくのと そっくりです。
こころを こめて、しんぼうづよく つづけていくと、やがて、できあがっていくとこども そっくりなのです。
佐藤さとる「おばあさんのひこうき」/小峰書店刊

わたしにはお話を作るという経験はないのですが、なんだか楽しそうですよねっ。
編み物って、編んでる時はちっとも楽しくないんですけど、出来上がった時の感動はひとしお。なにより、毛糸を選ぶ時が一番楽しかったりするんですよね…。

さて、お話の内容です。
田舎の外れに、一人暮らしをしているおばあさんがいました。長いスカートを履いた小柄で丸顔のおばあさん。編み物が得意で、オーダーを引き受けていました。町では「おばあさんの編んだセーターを着ると風邪をひかない」と大評判で、おばあさんは夏も冬も毎日編み物をしています。
そんなおばあさんのもとにあるとき孫のタツオから手紙が来ます。「僕たちの街に引っ越しっておいで」といった内容でしたが、おばあさんはまだまだ元気だったのと、タツオの家が団地住まいなのと、それからなにより、いまの町で好きなだけ編み物をしたいと思ったので、断ることにしました。
おばあさんの編み物生活がまたいつもの通りはじまります。今度は新しい模様にチャレンジしていました。おばあさんは編み物名人です。できない模様はないはず、と何度も編んではほどいて編んではほどいてを繰り返しながら新しい柄を模索していました。そんなときにチョウチョが手のひらにとまりました。虫眼鏡で眺めると細かくて美しい模様をしていたので、それを真似ることにしました。
しかし、なんど編み直してもうまく再現できません。編み物を覚えた少女の頃を思い出しながら、朝から晩まで一生懸命がんばります。それでも何日経っても満足いきません。10日ほど没頭して、ようやく5cmを編めたくらいの頃、編んだものがピクンピクンと動き出します。せっせせっせと編んでゆくと収集つかないほど跳ね上がる。どうやらおばあさんは、飛ぶ編み方をマスターしてしまったようなのです。
だからおばあさんは、飛行機を編むことにしました。竹竿やロープや麻ひもなんかを用意して枠を作り、そこに編んだものを貼れば翼になると考えてまた来る日も来る日もせっせと編み続けます。
そうしてできた編み物飛行機。もちろん行き先はタツオの家です。

しかし、この先どうやって着陸して、おばあさんがどうなったかは内緒。100ページほどの物語ですので、立ち読みでご確認ください。

おばあさんの挿絵が、絵に描いたような物語のおばあさんなのでなんだかほっこりしちゃう。
メカニックな飛行機も楽しいのだけれど、こういう飛行機の夢ロマン物語ってとてもいいなって思うんだなぁ。
それから、ものを作るのに没頭するというのも楽しそうだ、ということ。
この本、生まれてくる姪っ子か甥っ子にプレゼントしようっと。

では、また!

作も絵も同じ作家さんでも、ふたつの出版社から発行されています。

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空の青さをみつめていると

前回は武田さんに航空小説をたくさん紹介していただいたので、今日はちょっとゆるめに、そらの本を紹介します。

ところでエーリッヒ・ケストナーという、ドイツの作家をご存知ですか?
そのケストナーの詩集に「人生処方詩集」って本がある。たしか私が最初に読んだのは「処方箋」って名前がついた記憶だったんだけど…、ないみたい。私も「人生処方詩集」をいま愛用しているのだけれども、でもタイトルは「処方箋」っていうほうがぴったり合う。ま、愛用といっても、3、4年に1回開けばいい方なんだけどね。それでもこの本との付き合いは15年になる。
ケストナーは「ふたりのロッテ」だとかを書いた児童文学で知られる作家で、大好きな人のひとりなんだけど、この本はちょっと趣向がちがう。内容はいろんな詩が「お薬」として処方される、「家庭薬局」というものなんだ。
頭痛には頭痛薬を、胃もたれには胃薬を、喉の痛みにはうがい薬を、絆創膏にヨードチンキ…、こんな富山の薬売りみたいな家庭常備薬があっても、効かない時がどうしてもある。そんなときにこの詩集を。「詩」なので、その他の解説がないという、いかにも「薬」的なのがミソ。
ケストナーいわく「類似治療について、行っておかなければならないことは、手榴弾をもって大ざっぱに的を狙うよりも、一本の矢をもって黒星に射あてる方がいっそう有効だ、ということである」だってさ。だから索引つきだ。たとえばこんな感じ。

年齢が悲しくなったら→○ページへ
知ったかぶりをするやつがいたら→○ページへ
春が近づいたら→○ページ、○ページへ
お金が少ししかなかったら→○ページ、○ページ、○ページ、○ページ、○ページへ
幸福があまりに遅く来たら→○ページ、○ページへ
子供を見たら→○ページ、○ページ、○ページ、○ページへ
自信がくらついたら→○ページ、○ページ、○ページへ
生活に疲れたら→○ページ、○ページ、○ページへ

「人生処方詩集」

まだまだ病状はたくさん索引にあるんだけど…、ともかく序章の最後はこんな言葉で締めくくられている。
「さらば、服用したまえ!」
人生処方詩集 エーリッヒ・ケストナー
「人生処方詩集」(ちくま文庫)
 E. ケストナー,小松 太郎訳

前置きが長くなったけれど、詩集、ってのはいつもそういう風に役目を果たすよね。
日本の詩人といえば、谷川俊太郎さん。先日、「クリスマスにプレゼントしたい飛行機の絵本」で紹介した「わたしはとべる」の和訳をしたのも谷川俊太郎さんだったりと、絵本を多く手がけていて、「そら」についての著書もある。

空の青さをみつめていると―谷川俊太郎詩集 1 (角川文庫 (2559))
「空の青さをみつめていると」 谷川 俊太郎

でもこの詩集のタイトルでもある「空の青さをみつめていると」というのは、「六十二のソネット」の中のひとつ。
この一片を紹介します。

空の青さをみつめていると
私に帰るところがあるような気がする
だが雲を通つてきた明るさは
もはや空へは帰つてゆかない

陽は絶えず豪華に捨てている
夜になつても私達は拾うのに忙しい
人はすべていやしい生まれなので
樹のように豊かに休むことがない

窓があふれたものを切りとつている
私は宇宙以外の部屋を欲しない
そのため私は人と不和になる

在ることは空間や時間を傷つけることだ
そして痛みがむしろ私を責める
私が去ると私の健康が戻つてくるだろう

六十二のソネット 41(谷川俊太郎)

谷川俊太郎さんの詩には、空が多く登場する。だからアラーキーこと、写真家の荒木経惟とは「写真ノ中ノ空」という本も出している。
いわば大人向けの絵本だね。
そらの写真、雲の写真、そらの写真、飛行機雲の写真、雲の写真、そらの写真…。
この本の中に「空の青さをみつめていると」ではじまる詩が紹介されている。
そして、こっちは空や雲の詩で埋め尽くされているので、空に思いを馳せる人にオススメの詩集だとは思う。べつになんてことないときに読んでもただの詩なんだけど、たまにドクター・ケストナーの薬箱を開くように、詩集を開きたくなるときがある。でも、ドクター・ケストナーは、ちょっとおっかない先生なんだよね。
「使用法の書いてない、レッテルの貼ってない家庭薬局の内容はすべてなんの意義があろう? 全然意義がない! 家庭薬局は毒薬棚になるかもしれない」ときた。だから、「人生処方詩集」には索引がついてるわけだけども…。

写真ノ中ノ空
「写真ノ中ノ空」 谷川 俊太郎,荒木 経惟

空の青さをみつめてみたくって、空を見上げてみるんだけれども、今日は、空を眺めても雲がはっていて、なんだかなぁ…。
とかいって家で過ごすのもなんだから、表に出てこようと思う。

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航空小説の楽しみ

「航空救難隊」ジョン・ボール

航空救難隊
 航空小説を読む場合、むろん内容で選ぶことが最も多い。一方、その小説に登場する航空機の好みで書籍を購入する場合も多々ある。好きな飛行機が活躍する小説であれば、ストーリーはともあれまずは読んでみようとつい買ってしまう。そうして読んだ航空小説はかなり多い。たとえば僕が好きな航空機のひとつにDC-3ダコタがある。ダコタが最もよく描かれている小説は、前述のように英国冒険小説の雄、ギャビン・ライアルの「THE WRONG SIDE OF THE SKY ちがった空」(松谷健二訳 ハヤカワミステリー文庫)だが、この小説を機にギャビン・ライアルのファンになり彼の航空冒険小説を一気に読んでしまった。それは僕の航空小説との出逢いでもあった。 

 今回、ご紹介する「航空救難隊」(村上博基訳 ハヤカワ文庫NV115)も登場する飛行機が好きで読んだ一冊である。なぜならその主役となる飛行機がロッキードの名機「コンステレーション」だったからだ。
 コンステレーションに関しては読者の皆さんの方が詳しくご存知なのでその説明は省略するが、ハワード・ヒューズの生涯を描いた映画「アビエーター」の中でその雄姿をかいま見たのは実に楽しかった。コンピュータグラフィックで造られた映像とはいうものの、空港にずらりと並ぶ赤と白で塗装されたTWAコンステレーションの機影は壮観であった。そしてロッキードの社長がヒューズの格納庫を訪れて新しい旅客機の模型を見せるシーンもいい。ヒューズはひとめ見て新型旅客機を気に入って「まるでイルカみたいだ」といって名前を尋ねる。コンステレーション(星座の意味)だと答えるロッキードの社長にその場で最初に製造される40機を買う約束をする。そのあとヒューズの宿敵であったパンナムの設立者ホアン・トリップがコンステレーションの購入をきめるシーンなどもあり、この映画はアメリカ航空界の歴史の一端を描いて興味深かった。それと最近、BSで石原裕次郎さんの「世界を賭ける恋」という映画を見た。主人公の建築家がヨーロッパへ旅立つシーンでコンステレーションが登場する。4発エンジンが煙りをあげて始動するコンステレーションのうしろには昔の羽田空港が完璧なカラー映像で写っている。この映画はSASとのタイアップで撮影されたので、ヨーロッパへの機内映像やコペンハーゲンなどの空港の昔の映像がふんだんに見ることが出来る。昔の日活映画は航空映像の貴重な宝庫だと思う。

 さて、私ごとで恐縮だが、僕は旅客機の音を、とくにコックピットの音を録音し始めて約40年になる。本職が音楽ディレクターだったこともあり好きな航空機の音を録音するのに技術的かつ録音機材の調達等には問題がなかったが、録音したい航空機の所在を探すことは骨が折れた。当時、どうしても録音したい航空機は3つあって、その内のひとつ、コンコルドはロンドン-ワシントン間を飛行する英国航空の操縦室に乗せてもらって録音を済ませていたので、あとのふたつの航空機を探していた。そのふたつこそコンステレーションとDC-3であった。日本航空のカーゴ便のコックピットを録音する仕事があってニューヨークに行ったとき、ケネディ空港のJALカーゴのマネージャーからコンステレーションがメキシコ航空の貨物便で飛んでいるらしいという話を聞いた。丁度その時期、ニューヨークではテニスの全米オープンが開催されていたのでテニスフリークでもある僕としては全米オープンをみて過ごすか、コンステレーションを追っかけるか迷ったが、結局、コンステレーションが勝って希望に胸ふくらませてその足でメキシコシティに行った。それ以前にもアラスカでコンステレーションを探して不発に終わった苦い経験があるので今度こそはという期待があったのだ。しかしその期待もメキシコ航空のカーゴ担当者の言で無惨にも打ち砕かれてしまう。一年前までメキシコ航空の関連子会社が貨物便で使っていたが、その飛行機はすでに売却されており、今、南米のどこかで不定期では飛んでいるらしいがくわしく調べないと所在はわからないということであった。結局、雲をつかむような話なのでそのときも断腸の想いであきらめざるをえなかった。そして現在までコンステレーションを録音する機会に恵まれてはいない。コンステレーションは僕にとっては見果てぬ夢であるようだ。しかしメキシコの旅はけっして悪い旅ではなかった。ニューヨーク、ワシントン・スクエアーの近所にあったアンティークショップでTWA当時のコンステレーションのステッカーとエールフランスのコンステレーション・ステッカーを見つけたこと、そしてメキシコの帰り道にハワイで島めぐりの貨物便で飛んでいたダグラスDC-3のコックピットに乗せてもらい心ゆくまでダコタの音が録音出来たことなど想いである取材旅行になった。

 さて、余談が長くなったのでこのあたりで航空小説に戻ろう。コンステレーションが活躍する「航空救難隊」の作家はアメリカのジョン・ボールである。ミステリー愛読者ならご存知のごとく、ジョン・ボールはヴァージル・チップスという黒人警官が主人公の社会派警察ミステリー「夜の熱気の中で」を発表、その作品でアメリカの権威ある文学賞MWA最優秀処女長編賞を受賞し、それがシドニー・ボアチエ主演で映画化されアカデミー賞を受賞して(映画のタイトルは「夜の大捜査線」)有名になった作家である。作家になる前、彼はミルウォーキー工科大学を卒業後空軍に入隊、パイロットとして従軍し、後に指導教官をするまでに航空機に精通する。その経験がミステリー小説以外に「航空救難隊」(村上博基訳 ハヤカワ文庫NV115)と「最後の飛行」(沢川 進訳 ハヤカワノヴェルス)の2冊の航空小説の傑作を生んだ。

 ジョン・ボールの航空小説の作風は実に淡々としてドキュメンタリータッチの地味な筆運びである。飛行機に積まれた時限爆弾もなければテロリストもいない。それどころか悪意ある人間も一切登場しない。訳者の沢川氏の表現を借りれば「勧善懲悪などを通り越して勧善勧善といった趣」の善意の小説である。おそらく今の出版業界の作品査定ならば真っ先にボツにされるであろうと思われる作品だ。

 ところが、ところがである。「飛行機をよく知る読者」には彼の単調とも言える展開の中に冷や汗が出るようなサスペンスや恐怖を感じとることが出来るのだ。たとえば「航空救難隊」では単発小型機しか操縦経験がないパイロット二人が病人や避難民を乗せた大型4発旅客機コンステレーションを操縦するはめになる。しかもその飛行機は昇降舵が故障して修正舵(トリムタブ)だけで操縦しなければならないという条件下に物語を設定している。この設定はもし小型機のライセンスを持った読者が読めばまさに手に汗握る究極のサスペンスであろう。憶測すればジョン・ボールの作品には自作のミステリーシリーズは別としても、航空小説に関しては「わかってくれる人だけが読んでくれればいい」という良い意味の開き直りや個人的な楽しみという趣さえ感じられる。それがジョン・ボールの航空小説なのである。さて、「最後の飛行」は後日に譲るとして彼の航空小説の処女作「航空救難隊」を紹介しよう。

 まず主役として登場する航空機は前述のごとくコニーの愛称で呼ばれるあのロッキードの大型旅客機、コンステレーションだ。それもTWAのコニーを中古で購入したという設定である。そして場所はカリブ海とフロリダ、しかも大型ハリケーンが発生した最悪の天候の下の出来事である。こう書けばお決まりの航空冒険小説のようだがそうではない。ゴムボートで漂流している二人の遭難者を捜索する途中、嵐を避けて航空救難隊CAPの複座式単発小型機がカリブ海の小島、トレス・サントス島に着陸する。その島には1500メートルの滑走路がある小さな空港があり、普段はその空港をベースに零細な航空会社が古いコンステレーションとDCー3を使ってカーゴ便を運航しているのだが、CAPの小型機が着陸したとき航空会社の全員は昇降舵が故障したコンステレーションをやむなく空港ターミナルの横に係留し、DCー3でフロリダに待避したあとであった。無人となった空港へ島に住む神父が急性盲腸炎の若い男と全身火傷をおった8才の女の子をつれて来る。そして急病のふたりを一刻も早くフロリダの病院へ運ぶよう航空救難隊のパイロットに依頼する。パイロットは小型機が着陸した際に突風を受けプロペラの一部が破損し今の状態ではとても嵐の中をフロリダまでは飛べないことを神父に話すが、神父はコンステレーション機を指さして、この飛行機でフロリダまで飛んでくれという。4発エンジン機の操縦資格がない若い操縦士、シルベスター大尉と副操縦士兼航空エンジニアのチャン中尉は言下に断るが、結局、神父に押し切られた形で急病人に加えてハリケーンから逃げる島民76名を乗せてサントス島を飛び立つ決心をする。「バイオリンの才能はあるが経験のない初心者がオーケストラを相手にコンチェルトを弾こうとするに似ている」(本文183頁)という状況の中でこの若い二人のパイロットの決断を無謀だと決めつけるのは簡単だが、単発の小型機に慣熟している若い操縦士たちが一度は大型機を操縦してみたいと思うあこがれ、挑戦心、野望などのパイロットの気持ちを著者は心憎いばかりに描ききる。そしてコンステレーション機が滑走路を加速し操縦桿を引き起こす段階で初めて二人のパイロットは昇降舵の故障に気がつく。滑走路末端まであと150メートル。副操縦士チャン中尉のとっさの反射神経が昇降修正舵を引き上げ車輪が海面をなめるような低い角度ではあるがなんとか離陸に成功する。それから機首方向を北に取り高度8000フィートで一路フロリダのマイアミに向かう。途中、乱気流に捕まりながらもトリムタブだけで乗り切る二人のパイロットが次第に大型機に慣れて操縦に自信を持つようになる心理過程も航空機を知り尽くしたジョン・ボールらしい筆の冴えで読者を納得させる。コンステレーション機がバハマ諸島のナッソー近くまでくると若いパイロットたちはマイアミ管制に連絡を入れる。操縦資格はむろん計器飛行の資格もない若いパイロットふたりが操縦する大型機が病人と避難民を乗せて有視界飛行でマイアミに向かっているという情報は民間航空、空軍関係者の間を駆けめぐりマイアミは大騒ぎとなる。それでなくてもハリケーンを避けるためカリブ海各地からありとあらゆる航空機が殺到して管制パニック寸前のマイアミである。

 小説はここから後半に入りサスペンスあふれるクライマックスを迎える。コンステレーション機を熟知した空軍のパイロット、アッシェン・ブレンナー少佐が小型練習機Tー33に乗り込み無線で遭難機を誘導しながらマイアミ郊外にあるホームステッド空軍基地に着陸させるまでの描写は詳細を究め、まるでコンステレーション機の操縦マニュアルを読んでいる気分にさせる。だてにジョン・ボールが空軍で指導教官をやっていたわけではないことが納得出来るシーンの連続だ。そして著者が最後に用意するのは空の男たちの強い契りとヒューマニズムだ。そのラストがすがすがしく、熱く、読後感を素晴らしいものにしている。読み終わったあと読者の耳元で「どうだ。面白かっただろう?」と囁くジョン・ボールの声が聞こえてくるような航空小説である。

 余談だが、世界的なベストセラー作家として名高いアーサー・ヘイリーの処女作「O-8滑走路」(清水政二訳 ハヤカワ文庫NV56)も「航空救難隊」と同じ設定で展開する航空小説なので併読されることをおすすめする。機内食の中毒で意識がない機長と副操縦士に代わって13年前にスピットファイアーに乗っていたが今はセールスマンをしているというひとりの男性乗客が、やはり4発の大型旅客機をカナダのバンクーバー空港に着陸させるまでを描いた小説で、その着陸誘導をカナダ横断航空のトレリベーン機長が管制無線で誘導するというストーリー。ふたつの小説の違いはジョン・ボールが技術的描写に徹するのに比べてアーサー・ヘイリーは読者に視覚的表現で訴えることだろう。そもそもこの小説はアーサー・ヘイリーが映画の脚本用として書いたものを友人のJ・キャッスルがノベライズして完成したものといわれている。しかしこの友人こそ、のちに航空小説のベストセラー作家となるトマス・ブロックそのひとである。アーサー・ヘイリーはその後、航空小説の傑作「大空港」を書くが、この「O-8滑走路」とあわせて映画「エアポート」シリーズが公開されることになった記念すべき作品でもある。

武田一男

O-8滑走路

査察機長 (新潮文庫)
「査察機長」内田 幹樹

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)
「沈まぬ太陽」山崎 豊子

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航空小説の楽しみ(イントロダクション)

ブックレビュー・イントロダクション

 僕の2回目のブックレビューですが、その前に、日頃、このブログに投稿されている”仲間たち”にぜひ読んで貰いたい航空小説を推薦することにしました。WEBの仲間たちとはいえ、実際にお会いした人は少なく、投稿される原稿などで、「多分、こんな人なのだろう」と想像しながら選書した。ご用とお急ぎの方は、ブックレビュー本編からどうぞお読み下さい。でも、イントロダクションにも沢山の航空小説を簡単に紹介しましたので、お時間のある方はぜひ、読んで下さい。
まずは航空時事問題にくわしい関西の熱血漢、正義の心、B777さんから。

 B777さん。JAL問題や関西空港の件では、機に敏なる航空世評を記事展開されてご苦労さんどした。とくにJAL問題は「沈まぬ太陽」(山崎豊子著 新潮文庫)を5巻も精読しはって、おまけに映画まで見て、腹立ちましたやろ。あの本はよう書けている。それだけにJALを崩壊させた一部OBの悪いやつらの所行には反吐が出まんな。むかむかしてはったやろな。そんなあんさんの中にたまりに溜まった”もやもや”を一掃するような航空小説を読みなはれ。すーっとしまっせ。パンシロン飲むのと同じや。それはやな、ルシアン・ネイハムの「シャドー81」(ハヤカワ文庫NV)(中野圭二訳)という本や。 TX75Eという可変翼の万能の戦闘機にのってボーイング747をハイジャックするんやけど、この犯人はテレビの時代劇でやる闇の仕掛け人みたいな正義感あるやつでな、アメリカの巨悪に対する挑戦と見せしめのためにハイジャックをしますねん。そして大成功。最後は犯人が勝つという勧悪懲善の航空小説や。溜飲下がりまっせ。下がりっぱなしや。ともかくおもろい。読みなはれ。そして「沈むぬ太陽」のけったくそ悪い読後感を早よ消しなはれ。さあ、ぐずぐずせんで、すぐ、本屋さんにいかんかいな、B777さん。

シャドー81 (ハヤカワ文庫NV)
「シャドー81」ルシアン ネイハム,中野 圭二訳

 タイムリーな航空情報と深い知識で人気コラム「ダイキャスト・プレーンでまったり紀行」を書き続けるMattariさんにお奨めする航空小説を考えたときに、どんな作品でも彼の知識の中で消化されるだろうから、反面、どれでもいい、という気もしましたが、航空知識人Mattariさんをうならせ、その知識にない航空小説を探すという難題にチャレンジする意欲もあって結局、選んだ本はイギリスの作家ジェイムス・ブルーム・リンが書いた航空小説「ジェット・レース」(石川好美訳 ハヤカワ・ノベルズ)でした。

簡単に概略を書きますと、イギリスの航空機メーカーの会長アーサー・トッド卿が飛行機事故で亡くなり、彼の残した遺言は双発のビジネスジェットで世界一周レースを挙行し、その優勝者には莫大な賞金とともにトッド卿の愛機、アブロ504を与えるというものでした。このレースには世界各地から現役の民間航空の機長やパイロットから新聞社の社主、イタリアの大富豪、ドイツの出版社社長、ポルノ産業の成金、フランスのワイン製造会社の社長などいろいろな人が、名誉、賞金、航空技術、密輸犯罪などのそれぞれの思惑で参加、そして彼らが乗る飛行機もホーカーシドレー、ガルフストリーム、リアジェット、ダッソーファルコン、ビアッジョ等々…数々のビジネス・ジェット。小説の形式はいわゆる「ホテル形式」とよばれるもので特定の主人公を定めず多くの登場人物のエピソードを織り込んで多彩なストーリーを展開、それがぐいぐいと読み手を惹きつけます。そしてクライマックスはF1なみの壮大な飛行レース。僕がMattariさんにこの小説を選んだのは著者ジェイムス・ブルーン・リンがこの本を書く動機を述べている一文を見たときでした。
「私がこの本を書いたのは、好きな航空機、その飛行、そしてなにより航空旅行について書きたかったからです」
航空旅行をこよなく愛するMattariさん。この本でまたまたあなたの知識がドカーンと増えますよ。

ジェットレース

 飛行機が好きな中学生のAkio君に本を選ぶのは一番難しかった。僕の孫も君と同年配だが、これまで孫に本を薦めて満足に読んで貰ったためしがないからだ。本離れしている中高生を本に誘うのはほんとに難しい、というのが僕の実感。それに中高生を対象にすると、どうしても教育的とか人生の先輩とか、そんな立場で選ぶので面白くなくなってくる。 正直、まず、思いついたのはサン・テグジュペリの「人間の土地」(堀口大学訳 新潮文庫)だった。この本くらいサン・テグジュペリが人間の在り方や行動を熱っぽく語って、彼の思想が凝縮されている作品はないと思っている。だが、この本に共感できるのはもう少し年齢が必要だと思う。たぶん君が大学生になってからだね。

人間の土地 (新潮文庫)
「人間の土地」

そして次ぎに選んだのはポール・ウェブスターの「星の王子さまを探して」(長島良三訳 角川文庫)だった。でも、この本は小説ではない。秀悦な伝記文学だ。英国人でパリの有名な新聞ガーディアンの特派員からドキュメンタリー作家になったポール・ウェブスターがサン・テグジュペリの一生を丹念に取材して書いた伝記である。人が生まれて死ぬまでの歴史を綴った伝記を読むと、その人間の生き様から何かを学ぶことが出来るんだよ。とくにAkio君の年齢の時はね。

星の王子さまを探して (角川文庫)
「星の王子さまを探して」

それでこの本に決めて僕は安心して風呂に入った。風呂に薬用温泉の元という入浴剤(その日選んだのは九州の霧島温泉の元で浴槽が鮮やかな空色になる)をたっぷり入れて湯につかっていると、Akio君がポール・ウェブスターを読むのはまだ早い、高校生になってから読んだ方がいい、と又、迷いだした。しかし温泉入浴剤の空色が僕に答えをくれた。これだ! と思ったのはチャールス・リンドバークの「翼よあれがパリの灯だ」(佐藤亮一訳 恒文社)だった。
結果として平凡な選書に「それならもう、知っている」なんて言わないで、ニューヨーク・パリ間5810キロを単葉機単座のスピリット・オブ・セントルイス号で33時間29分の飛行を成し遂げたリンドバークの死ぬような孤独と不安に耐えた気持ち、そしてそれを克服した偉大なる勇気を味わうようにもう一度読んで欲しいと思うよ。何かが君の中ではじけると思うから。
そのとき僕の耳にB777さんの大阪弁が聞こえた。「わて、その本まだや、わてもよんでみよう」
「あかんって、あんさんは「シャドー81」をまず、読んでからやて。「沈むぬ太陽」のもやもやを消してからや」
AKIO君、無理して直訳ものを読まなくても、図書館にゆけば少年少女名作本があると思うから、それでもいい。ともかく、「リンドバークの気持ち」をイメージして読んでご覧。良い感じになるよ、きっと、ね。

 最初、現役の機長であるFD機長さんに航空小説をお薦めするなんてそんな暴挙をやめようと思いました。しかしあえてご紹介しようと思い直したのはその本が僕に航空小説への興味を与えてくれた最初の本であり、パイロットというか、飛行機野郎同志の心根の「それとない思いやりと友愛」に感動させられたとても良い本だったからです。話はそれますが「査察機長」(内田幹樹著 新潮文庫)という航空小説の冒頭に、ニューヨークへの定期路線審査飛行を翌日にひかえて極度にナーバスになっている主人公のもとに、機長昇格訓練前に”ドゥカティ”という「犬」を散歩させているときに転んで全治1ヶ月の怪我をしてまだ副操縦士でいるという剛胆なパイロットが現れ、ニューヨークでパエリア鍋を買ってきてくれと頼むシーンがあります。査察飛行を前に神経質になりすぎている主人公のパイロットへの飛行機仲間としての「それとない思いやりと友愛」が描写された良いシーンです。そんな気持ちをとても大切にしていらっしゃるFD機長さんだろう、と勝手に想像して、ふたりのパイロットの友情を中心に書かれたギャビン・ライアルの航空冒険小説「ちがった空」(松谷健二訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)をお奨めしたいと考えました。
 ギャビン・ライアル、むろんご存知ですね。英国の冒険小説の第一人者です。ケンブリッジ大学卒で第二次大戦中はイギリス空軍でパイロットとして従軍し、その後新聞社勤務からこの「ちがった空」で作家になりました。この小説はジャック・クレイというフィッシャーマンズ・セーターが似合うDC-3ダコタの機長とその友人のピアッジオを操縦する天才的パイロット、ケン・ワトソン機長の「それとない思いやりと友愛」の物語ですが、内容はエーゲ海と北アフリカを舞台にインドの王様の宝石をめぐって元ナチスの軍人やアラブの殺し屋、インドの王族などが登場する手に汗握る空の冒険小説です。でも、小説の中にダコタとピアッジオのイメージの対比を織り交ぜそれがふたりの機長の人生の生き方を表わすという手法は、のちに世界的大作家になるひとのデビュー作だと納得できる航空小説だと思います。犬の散歩のあとでも読んでみて下さい。それと数々のご無礼お許し下さい。

ちがった空
「ちがった空」

 このブログの女編集長さん。読書家で才女の竜子さんに航空小説を薦めるなんてFD機長さんに747の操縦法を解説するのと同様におこがましいこととは充分、承知しております。このブログで展開する編集長のブックレビューはとても価値あるものです。数ある航空写真中心のブログとは明確な一線をひいてこのブログが成り立っているのは、そのブックレビューに始まる滲むような知性でしょう。それでもあえて薦めるのはFD機長さんの場合と同じく僕の暴挙に他なりません。さて、失礼を顧みず選書したのはリチャード・バックの新作「フェレット物語 嵐のなかのパイロット」(法村里絵訳 新潮文庫)。竜子編集長が紹介する空の絵本のようなファンタジックな寓話による航空小説です。でもDC-3に星形エンジン2基を加えた架空の輸送機FDC4で勇敢な女性パイロット、ストーミィが嵐の空を飛ぶ様子はコックピット・ドキュメント「機長席」を読むように正確な描写。さすがリチャード・バックです。しかし寓話ですから、随所にスビリチアルな展開がある…。

嵐のなかのパイロット―フェレット物語 (新潮文庫)
「嵐のなかのパイロット―フェレット物語」

ここまで紹介したとき、ふと、思いとどまることにしました。なぜなら、この小説は竜子編集長のテイストにぴったり合いすぎます。それに、すでに編集長のブックレビューの予定に入っているとも思われて、急遽、選書を変えることにしました。
竜子編集長には、やはり「空港」をテーマにした小説でしょう。このブログでも今後、世界の空港を取り上げる新コーナーを作るそうですから。空港テーマとなれば、古典とも、基本とも言うべき名著「大空港」(アーサー・ヘイリー著 武田公子・大坪光之訳)より他にありませんね。むろん、映画にもなりました。でも、この大空港は本で読む方が絶対いい。リンカーン国際空港の空港長メル・ベーカーズフィールドが最高にかっこいいですね。空港の機能をすべて取材して書かれたこの本は最高の空のエンタテイメントであり、同時に空港の知識を学ぶには最適のドキュメンタリーでしょう。余談ですが、映画「ハッピー・フライト 」はこの小説をベースにした脚本だそうです。だから、ローマに向かう途中で空中爆破されて故障したトランス・アメリカン航空2便ゴールデン・アゴーシ号が吹雪のリンカーン・国際空港に戻るように、嵐の羽田空港にわざわざ事故機の747が戻って着陸するというストーリーが生まれたのですね。

大空港(下)
「大空港」

ここまで書いて寒くなったので僕は又、風呂に入りました。今夜の入浴剤は信州白骨温泉の元。風呂に入浴剤を入れると積乱雲のように白色が広がります。ゆっくりと白い雲の中で身体を沈め思ったことは、竜子編集長が、読んだことがない、けっしてオーソドックスではない、設定が突飛であるが読み出したらやめられない、という航空小説を選ぶ、すなはち遊び心のいっぱいの選書するということでした。
そして思いついたのが、航空小説、数あれど、航空ユーモア小説はこの一冊、オーストラリア人の作家、トニー・ケンリックの「スカイジャック」
(上田公子訳 角川文庫)でした。内容が奇想天外です。乗客360人を乗せたままハイジャックされた747が、忽然と地上から消えてしまうのです。犯人の要求は2500万ドル相当のダイヤモンド。航空会社やFBI、警察がアメリカ中を捜索しますが、何処に消えたが747と人質は跡形もない。そして発見者には莫大な賞金が。その賞金めあてに747を探し始めたのが、事務所が火の車という若い弁護士ベレッカとその恋人アニー。このふたの会話や行動が抱腹絶倒もの。でも、ハイジャックなどの事件はとてもシリアスに書かれ何と言っても747を見つける最後のトリックは、引田天功さんの野外マジックを見るような面白さです。竜子編集長、この辺で手を打ってこの小説、一度読んでみますか?

スカイジャック (角川文庫)
「スカイジャック」

 そして残るはAirmanさんだけとなりました。

 某有名大学のグライダー部出身、卒業後、アメリカで航空ライセンスを取得。人気航空ブログ「Airmanの飛行機写真館」の管理人であり、航空カメラマン。そんなAirmanさんに薦めたい本は、風呂に入らずとも決まりました。迷いなしです。それはこれから僕がブックレビューを書くジョン・ボールの「航空救難隊」(村上博基訳 ハヤカワ文庫)。
 読んで下さい、Airmanさん。すすめた意味は僕のブックレビューを読めばわかります。あなたの忘れられない一冊になる筈と信じていますよ。

 最後に、皆さんがもし僕が推薦した本がお気に召して楽しまれたあかつきには、ぜひ、その感想、書評、ブックレビューを竜子編集長あてに投稿して下さい。それを読むのを楽しみにしています。また、探しても本が見つからない場合は、Mattariさんのダイキャスト・プレーン同様、僕の書棚にゴロゴロと本が眠っていますのでご一報頂ければ送ります。竜子編集長とご相談下さい。B777さん、「シャドー81」(ハヤカワ文庫NV)を読んだらかならず感想を送ってや。まってるさかい、な。ちゃんと聞いとるのかいな?
尚、僕が書いたブックレビュー ジョン・ボールの「航空救難隊」は以前、航空雑誌「航空情報」に書いたものを手直し追加したものです。

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